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2017.07.08 RESEARCH
かつての記事「コールセンターを支えるPBX(構内交換機)の歴史を紐解く。アナログからデジタル、そしてクラウドへ」でも触れたように、コールセンターの歴史は、電話の登場とともに始まったと言っても過言ではありません。
最初は単なる電話窓口でしたが、問い合わせ数の増加にしたがって組織として整備されました。自動音声応答(IVR)などの技術を採用して、効率化や迅速な応答を追究してきました。
サポート業務として歴史の長い電話は「お客様のクレームにどのように応答すると納得いただけるか?」などのテーマが何度も議論され、ナレッジが蓄積されています。
問い合わせに肉声で丁寧に応えていただけることは、お客様には嬉しいものです。しかし、洗練された応答力を備えたオペレーターを育成するためには、教育研修に時間がかかるなど課題も少なくありません。
一方、最近はスマートフォンが普及し、LINEなどチャットによるコミュニケーションが一般化しました。電話よりテキストのコミュニケーションが中心になりつつあります。そこで、チャットをサポートに導入する企業が増加しました。
チャットによるテキストのコミュニケーションは、電話にはないメリットがあります。チャットサポートが電話に勝るメリットを考察します。
まず、電話サポートとチャットサポートを、1)データ、2)運用の2つの側面から比較してみましょう。
問い合わせのない優れたオンボーディングを備えた商品やサービスが理想ですが、画像や動画などの多様な情報で問い合わせの問題解消を支援できます。
視覚情報は情報量が多く、人間は五感のうち約87%は視覚から得ているという通説もあります。音声だけでは伝えられない情報を補足し、コミュニケーションを改善します。
複数のオペレーターを同時に監視し、テキスト入力時に禁止ワードにはアラートを出します。システムに登録された言葉をもとに自動的に禁止できるため、スーパーバイザーによる教育は不要です。
電話ではうっかり失言することがあります。どんなに教育や研修を徹底しても、人間の発言は完全に制御できません。テキストの発言であれば、入力した時点でチェックして、自動的にトラブルを回避させることが可能です。
テキストは検索、共有がしやすい情報です。頻度の高い質問は、あらかじめWebサイトにFAQなどで掲載して、問い合わせ件数を減らすことも可能です。
コンタクトセンターは離職率が高く、アルバイトやパートなど短期間で契約している社員の比率が高い業界です。そこで、引き継ぎに関わる作業をなるべく少なくしたり、教育研修の期間を短縮化したり、運営の効率化が求められます。
テキストで履歴が残るチャットは、そのまま模範回答として活用できます。電話の場合は応答スキルの個人差が大きくなりがちで、標準化が困難です。
昨今、GoogleやAppleなどの公開サービスでも、音声認識の技術精度が大分上がってきています。また、音声合成技術は先んじてすでにかなり進んでいます。
データの処理上では音声は扱いづらいのですが、「話す」ということは人間にとっては最も自然な行為です。
例えば、スマホなどのディスプレイでテキストを入力したり、ボタンを押したりするよりは、スマホに話しかける方が簡単です。
チャットボットによる自動応答によって、「フライトの予約を変更したい」とテキストで入力すると、「ご予約の変更ですね?」「お客さまの予約番号を教えてください」と応答し、手続きが進められるサービスを実現できます。
これに音声認識と音声合成の技術を組み合わせれば、電話で「フライトの予約を変更したい」と話すと、その内容が音声認識でテキスト変換されることで、チャットボットのエンジンでの処理が可能となり、「ご予約の変更ですね?」「お客さまの予約番号を教えてください」との回答を音声で返すこともできます。
はじめは、認識精度などで心配になるかもしれませんが、電話でのサポート同様、最後に「フライトの変更のお申込みを受け付けました。こちらの内容でよろしいですか?」と確認プロセスを入れ込むことで、チャットエンジンを活用した自動応答電話サポートが可能になるはずです。
電話とチャットのサポートの垣根がなくなる日はまだ先ですが、そう遠くはないかもしれません。