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2017.05.18 TREND
iPhoneを使っているユーザーにとって、Siriは音声対話型AIアシスタントとして馴染みの深いツールでしょう。
Siriに話しかけて、目覚ましのタイマーをセットしたり、天気予報を教えてもらったり、さまざまなことを実現できます。ポケットに入る優秀なパーソナルアシスタントです。
Siriのような音声対話型AIは各社が開発を進めていますが、スマートフォン以外のデバイスとして、現在、AI搭載スピーカーが話題を集めています。
この分野で先行しているのは、Amazonの「Echo(エコー)」です。
2014年以降、アメリカでは爆発的に売れているヒット商品で、2017年内には日本でも発売するだろうと予測されています。
対抗してGoogleも「Google Home」を市場に投入。Appleも6月に行われるWWDCで、Siri搭載の新しいデバイスを発表することが報じられました。
音声対話型AIアシスタントは、あらゆる家電に搭載されていくことでしょう。
いわゆる「スマートホーム」の構想です。自宅の照明や空調などをコントロールしたり、インターネットから情報を得たり、IoTと生活が融合した未来の姿です。
AIによるサポートが身近になると、特別な場合を除いてコンタクトセンターに連絡をする必要がなくなり、家電に「話しかけること」で問題を解決できるようになるかもしれません。
音声対話型AIアシスタントと、各社の現状を整理しましょう。
Amazonの音声対話型AIアシスタントは「Echo」というブランドで展開しています。
2017年5月9日の最新情報では、7インチの液晶タッチスクリーンを搭載した「Echo Show」というモデルが正式発表されました。
Echo Showの予定価格は、229ドル99セント(約2万6,000円)。ビデオ通話が可能になります。EchoによってAI搭載スピーカーの市場を切り拓いたAmazonが、さらに他社から一歩抜きん出た印象です。
Echoが最初にアメリカでリリースされたのは2014年で、2017年にはアメリカ国内で累計3,300万台の出荷到達が予測される大人気のデバイスです。
Echoは縦に長い円筒形ですが、2016年にはミニサイズのEcho Dot、屋外に持ち出しができるAmazon Tap、カメラ搭載型のEcho Lookとラインアップを拡大しています。
音声認識AIはAmazon独自の「Alexa」を搭載。騒がしい場所でも正確にコマンドを聞き取る認識の精度の高さが評価されています。
注目すべきはEchoに「Alexa Calling & Messaging 」という音声通話とメッセージング機能が追加され、Alexa搭載デバイスどうしで無料通話が可能になったことです。
自宅にいるときに、電話でもLINE等による通話でもハンズフリーのスピーカーフォンを利用している人が増えています。家族や友人同士でEchoを利用すれば、電話やスマホを使わずとも簡単に通話が可能になります。
コンシューマー向けに幅広いEC事業を展開しているAmazonは、自社のIoTデバイスを家庭に浸透させることで、買い物から家電の制御まで、ユーザーの生活インフラになることができます。
呼びかければ「こだま(Echo)」のように何でも要望に応える、生活密着型のインターフェースを目指すのが、Amazon Echoです。
Amazon Echoの対して、Googleが発売したAI搭載スピーカーが「Google Home」です。
音声認識AIには「オーケー、Google」で起動させる、Google Assistantを搭載しています。
円筒形のモノリス的なEchoに対して、Google Homeはスタイリッシュなインテリアデザインを志向しています。
下部のベースはメタル素材とファブリック素材で、豊富なカラーバリエーションから好きな色を選択できます。カスタマイズの可能性と自由度の高さがアピールされています。
機能的には、Googleの検索エンジンと直結していることがAmazonに対する優位性といえそうです。
Google Homeは、週末の天気や近くのレストランなどはもちろん、少し複雑な質問にもGoogle検索のデータやノウハウを生かして回答します。学校の宿題をすべてGoogle Homeに質問して済ませてしまう子どもも出てくるかもしれません。
また、Chrome Cast対応のアプリを使えば、スマートフォンから音楽を転送して再生可能です。また、テレビと連携させ、Google Homeのディスプレイとして使うこともできるようになりました。Googleカレンダーの予定やアラームなど、大切なお知らせをプッシュ通知で受け取ることもできます。
Google Homeは、全世界に普及したGメール、Googleカレンダー、Google検索など、Googleが提供するあらゆるサービスのインターフェースとなっていくことでしょう。
AppleはIoTの分野ではAmazonやGoogleに遅れを取った印象が否めません。しかし、6月のWWDCカンファレンスで発表されるデバイスが注目を集めています。
さらにLINEも2017年の夏にAI搭載スピーカーの「WAVE」を日本と韓国で発売することを明らかにしました。ネットショッピングにも利用できます。AIはネイバーと共同開発によるAIプラットフォーム「Clova」を搭載しています。
日本では、ソフトバンクの「Pepper」、シャープの「RoBoHoN(ロボホン)」、Vストーンの「Sota」のようなロボット型端末の開発も盛んです。日本においては、主要な音声AIアシスタントのインターフェースとしての発展が見込まれます。
今回ご紹介した音声対話型AIアシスタントは、まさに家庭用チャットボットです。
AIを搭載した家庭用のIoTデバイスには、家電の制御等を行う生活のコントロールセンターの役割に加え、あらゆる企業サービスのサポート窓口になる可能性が高いといえます。
今後、Amazon EchoやGoogle Homeその他のデバイスが企業のサポートセンターと連携し、よくある質問に自動音声で答えたり、必要に応じてセンターのオペレーターとつながるようになるでしょう。
マウスのクリックやスマホのタップに変わる、これからのデバイス操作の主役は「声」です。
高齢者や子どもにまで普及してきたスマホですが、小さなデバイス上での画面操作は、誰にでも簡単とはいえません。
一方、デバイスに話しかけるだけであれば、子どもも高齢者でも簡単にできます。最もユーザーフレンドリーなインターフェースは、声=音声操作なのです。
人にとっては優しい声での操作ですが、システム的にはひとつ難点があります。
それは音声データの扱いにくさです。
現時点では、音声データを音声のままで処理することは難しいため、入力データは音声認識技術によってテキスト化され、その後の処理に利用されます。
テキスト化された入力データによってデータの検索や処理が行われ、最後に出力データを音声合成で声に戻します。そうすることで初めて、「声で聞き、声で答える」デバイスが実現できるのです。
将来的に、音声対話型AIアシスタントが企業の顧客サポートチャネルとして活用されるためには、デバイスの裏で動く、音声認識、情報検索、意図解釈、自動フロー処理、音声合成など優れたAI技術が欠かせません。
一方で、入力データをすべてテキスト化することにはメリットもあります。音声データに比べ、テキストデータは内容の確認やデータ検索が格段に簡単になり、データ資産としての活用の幅も大きく広がるためです。
Amazon EchoやGoogle Homeが顧客サポートチャネルになるためには、デバイスの頭脳といえる多彩なAI技術を融合させた、高度なチャットエンジンの存在が不可欠なのです。