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2016.12.14 CASE STUDY
企業は、生き残りをかけて多様な消費者のニーズに応え、競合との差別化を図っています。その結果として、世の中の製品やサービスは、ますます複雑化するばかりです。
例えば、携帯電話ショップを思い浮かべるだけでもよくわかります。次々と新しい料金プランやオプション、機種などが出てくるため、店員の継続的な教育が欠かせません。
店舗と同様、コールセンターやカスタマーサポートセンターが直面する深刻な課題は、何より人の確保です。
コールセンタージャパンがまとめた「190社の運営実態に見る国内コールセンターの現状と課題」によると、オペレーターの採用状況について、「拠点に寄ってはかなり厳しい(応募数が確保できない)」が37%、「全拠点でかなり厳しい(応募数が確保できない)」が29%を占め、全体の7割ほどが思うように人を確保できていないことがわかります。
一方、「全拠点で十分な応募数を確保できている」との回答では、正社員中心で10席以下のオペレーションを行う小規模サポートセンターや、地方進出してまだ日が浅い企業が目立っています。
つまり、一定以上の規模でオペレーションを行うコールセンターでは、どこも十分にオペレーターを確保できていないという事実が浮かび上がってきます。
そのような環境下で、これまで企業も様々な離職対策を行ってきました。
これまで盛んだったのは、表彰制度や手当の付与といったインセンティブ制度です。しかしながら、各社で思うほどの成果は見られていません。そこで、今後は、教育やキャリア支援に力を入れる意向の企業が増えてきています。
コールセンターとしては、取り扱う製品・サービスの高度化に伴ってオペレーションが複雑化する中で、採用難と教育コストの上昇の解決が急務といえます。
ここ数年、顧客対応の現場で相次いで行われているのが人工知能の導入です。
給料や待遇、労働環境の大幅な改善が難しい以上、人材の採用や教育ばかりに力を入れることは賢明とは言えません。
人工知能の活用が検討されてきたのは、そのような事情です。
人工知能は、しばしば人類にとっての脅威として語られます。例えば、賢くなったAIは、人の仕事を奪ってしまうだろうという懸念です。
コールセンターのオペレーター業務は人工知能が取って代わる仕事の筆頭として語られています。
しかし、少なくとも現時点においては、現実に起こっていることはその逆です。
コールセンター長は皆そろって、日々スーパーバイザーやオペレーターの採用・確保に頭を悩ませているのです。
機械は人と違い、単純作業の反復などを厭いませんし、疲れてミスをしたりもしません。
十分な人の確保が難しい中、自動応答による問い合わせ削減やオペレーターの支援のために人工知能の活用が始まっているのです。
ここから、人工知能を活用した企業による顧客サポートの事例を見ていきましょう。
東京海上日動火災保険では、2016年8月、東京と大阪のセンターに通話内容を自動でテキスト化するシステムを導入しました。
これによって、オペレーターによるメモの負担が減少し、電話での対話や案内に集中しやすい環境を実現しています。
さらに、通話記録の作成時間が短縮化されたため、電話の待機時間が増え、放棄呼率も低下しました。
課題となる通話内容の音声認識率は8~9割まで向上し、実用レベルに達しています。
副次的な効果として、通話内容がテキスト化されるため、スーパーバイザーや管理者によるオペレーター通話の確認時間が半減しました。
全国244拠点の損害サービス対応部門全体に導入拡大することも視野に入れています。
みずほ銀行は、2015年2月、横浜市のコールセンターに音声認識と米IBMの「ワトソン」を組み合わせたシステムを導入しました。
顧客との会話に応じ、回答候補となる情報を数秒ごとにオペレーター画面へ自動表示する、オペレーター支援システムです。
SOURCE: IBM Japan Channel 「IBM Watson みずほ銀行コールセンター業務の革新」
導入当初は正答率は十分ではありませんでしたが、オペレーターが継続的に「ワトソン」に正答を教えることによって精度が向上、回答候補の上位5位以内の正答率は85%に達しています。
また、オペレーターの発話を正しく音声認識した確率は文字数ベースで88%と目標の80%を超え、実用に耐える水準をクリアしています。
以前は、オペレーターは顧客の質問で不明な事項がある場合、マニュアルを閲覧して確認、回答していました。
ワトソンによる自動回答候補表示により、顧客を待たせる時間が減ったため、通話時間の短縮にもつながっています。加えて、オペレーターの教育コストの低下が見込まれています。
2016年10月以降、200席以上に拡張され、運用されています。
三井住友海上火災保険では、2014年7月より、顧客との膨大な応答履歴(2010年以降で360万件超)を「ワトソン・エクスプローラー」の分析を始めました。
時系列分析で得た問い合わせ時期と件数実績をWFM(ワークフォース管理ツール)に投入し、オペレーター配置を改善することに成功しています。
分析結果をもとにFAQを大幅に増やし、問い合わせの一部をウェブに誘導しました。
その結果、電話応答率は、導入前の88.4%(2013年度)から、94.5%(2014年度)、96.4%(2015年度)へと改善しています。
人材不足に対し、オペレーター配置の最適化によって対応を図る企業は多いですが、成果が出づらいのも事実です。
100席以上、または拠点が複数あるような大規模センターの場合には、現場管理者の感覚によるオペレーター最適配置には限界があります。
季節要因や社会的なニュースなど、様々な事情でコール数は大きく変動します。連休の前には海外保険の問い合わせが増えるという感覚値はあっても、複合的な要因を統計的に処理するような場合には、人間の感覚よりも人工知能の活躍が期待されます。
チャットボットによる自動応答を可能にする、コール/コンタクトセンター・顧客サポート向けチャットシステム「モビエージェント」を開発しています。
ボットによる「自動対応モード」とオペレータによる「有人対応モード」の切り替えも簡単。チャットボットに一次受け対応を任せることで、オペレータによる丁寧な二次対応も可能になるチャットツールです。
また、チャットボットは、顧客からの一時的なコール集中やオペレータの急な離席にも対応可能。「モビエージェント」の採用により、顧客満足度の向上、オペレータストレスの低減、放棄呼の削減や応対効率の改善が実現できます。
チャットシステムの導入検討や活用事例等についてご質問やご相談がありましたら、モビルスまでお気軽にお問い合わせください。
また、多国籍チームで新しいチャットシステムを開発するエンジニアの仲間も募集しておりますので、お気軽にご連絡の上、一度オフィスにも遊びに来てください。