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モビルスでは、「テクノロジーはコミュニケーションをどう変えていくのか」をテーマに【Communication Tech Conference2022】を2022年12月8日(木)~9日(金)の2日間に分けて開催し、当日は合計約2000名を超える方にご視聴頂きました。 こちらのページでは、基調講演に登壇頂いた伊藤穣一氏の講演の一部の内容を要約しました 。

その他の登壇者の基調講演の要約は、こちらのページに公開しています。ぜひご覧ください。

web3の歴史的背景

会計の始まりは約7000年前の粘土タブレットに始まり、その次のインデンテーションとなるのは700年前の複式簿記だと考えています。複式簿記は株式会社や資本主義をコンポーネントするものとなりました。そしてもう一つのコンポーネントが、今出てきているブロックチェーンです。ブロックチェーンは基本的には世界中の誰でも見れて、改ざんできない、過去から未来に向かっていくものとなります。

web3までの歴史

web1.0の前にただのインターネットがありました。そのときのキラーアプリケーションはe-mailでした。ただe-mail自体もまだ利用者が少なかった時代は、faxで十分という時代でした。その後にweb1.0が来ました。ブラウザとサーバーによって世界のどこからでも見ることのできるページができた、ということがweb1.0の重要な特徴となります。

続いてweb2.0です。web2.0はモバイル・クラウドが出てきたことにより、さらに世界のどこからでも見れるようになったことに加え、投稿や書き込みを行うことができるようになりました。

その次に、web3です。web3は特化経済と表現する人も多いですが、「ジョイン」という言葉を使いたいと思います。それは、トークンなどを使ってメンバーになったり、「組織化して参加する」ということが最も重要だと思います。そして一番大きいインパクトは、「組織のあり方」になると思います。

NFTs

今年はweb3元年と言われていてNFTはそのなかでも話題になっています。NFTはトークンの種類の一種で、そのなかでも成功したプロジェクトとしておそらく最も有名なのは「Bored Ape Yacht Club」でしょう。これはOpenseaのような場所で購入することができますが、これを購入するといろいろなことができます。たとえばTwitterのプロフィールでこの画像を使用すると、プロフィール画像が6角形になります。この6角形はNFTがあるという証明で、それをクリックするとアートの裏書を確認することができます。ブロックチェーンにこの情報が記憶されているので、この情報を載せるにあたって、Twitterはどことも交渉する必要はありません。これまでは、情報とはどこかのデータベースに入っているものだったので、情報を持って来ようとすると、引用元と引用先で調整が必要でした。

ブロックチェーンがあることによって、誰のものでもない、誰もコントロールできない場所に情報を置くことができて、そうなると様々なアーキテクチャが変化してくる、というのがweb3の革命でもあります。

Bored Apeでいえば、Bored Apeの持ち主は「だれがBored Apeを持っているか?」は確認することができるので、Bored Ape持ってないと参加できないパーティやチャットルームに参加したり、持っていないと買えないものを買ったりすることもできるようになります。そのような「会員権」という位置づけもあります。

最近は、Bored Apeのコンテンツレイヤーも多くなり、Bored Apeはメタバースも始めるようになりました。今後web3ネイティブの会社でないとBored Apeとすぐに競争はできないだろうと思います。

DAOs

Bored ApeもApeCoinを発行しています。これを持っていると参加したり、自分の意見を言ったりすることができます。ただトークンはお金の性格や証券の性格、またコモディティの要素もあり、利便性は高いが法整備が追いついていない部分もあります。なのでDAOはこれから法律的な定義を考えて行かないといけないと思います。

オーナーシップとガバナンスは始めは国の持ち物だったものに、つぎの株式会社ではそこのマネジメントと株主がオーナーシップとガバナンスを持っているというのが今の大企業です。「ベンチャー」ではストックオプションを発行することによって、平社員も会社が上手くいけばバリューに参加できることになります。

「DAO」は一般の平社員のみではなく、お客さんやユーザーにもトークンが配られます。なので詐欺のような事も可能となり、どのように詐欺を減らして、きちんとお客さんに分配しようとする正しい理念の会社を解析するか、というのは課題の一つだと思います。

ですので、DAOはまず「透明性」として、みんなの投票、みんなの意見、会計、ということが重要です。また「参加型」として株主、投資家、お客さんが誰でも参加できて、基本的に「グロ―バル」でもあります。そして圧倒的に「ローコスト」で「ハイスピード」です。また「アクセシビリティ」の高さも特徴になります。

日本の現状と課題

2022年上旬より、規制改革をしてきちんとweb3を進めていこうという動きが政府内であります。デジタル庁を中心にし、各監督官庁のなかでweb3のタスクフォースが出来てきて、民間の団体もそのような動きがでてきました。

ただ最も重要なのは、規制改革をしてベンチャーやクリプト業界を活性化するのはやりたいが、「フェア」まで持っていくことがベストだと思います。「本当に社会にとっていいことか?」ということを国民と政治で議論しないといけないと思います。また、やってみて初めて動いていない部分や直さないといけない部分がたくさん出てくると思います。web3はすぐに稼げるような状態ではないが、今からでも使いだして、インフラ整備、法整備などどのような直さないといけない事が出てくるのか、日本も企業も個人もこの感覚をつかまないと行けないと思います。