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WFMとは「ワークフォース・マネジメント」つまり『人的資産(労働力)管理』の略語で、WFMを実現するための仕組み「ワークフォース・マネジメントツール」が人材不足・採用難の中で最近また注目を浴びています。

企業のコンタクトセンターでは、SVやオペレータなどスタッフ(人的資産)を適切に配置することで顧客サポートの品質を一定以上に保ちながら、センターの人件費を「最適化」して管理(マネジメント)する必要があります。

「最適化」というのがポイントで、例えば「人件費を縮小するためにオペレータ人員数を必要最低限」にすれば良いのか?と言うとそうではなく「急激な呼量増加」の際には、顧客を電話・チャット上で「お待たせしてしまう」ことになるでしょう。その結果、CX(顧客体験)が損なわれ、顧客サポートの品質が下がってしまう事態につながります。

逆に、問い合わせ数の少ない時に必要数以上のオペレータが電話やチャット対応をせず待機している状況だと、稼働率が下がり人件費の上では「機会損失」につながってしまいます。では、これらの両立のためにはどうすればよいのでしょうか?

過去の問い合わせデータを把握し、需給を予測する

「サポート品質」を保ちつつ「人件費」を最適化するためには、通常期と繁忙期それぞれの問い合わせ数を過去の問い合わせ数データを元に把握し、それぞれの時期に必要な人員数を配置する必要があります。

過去の「月・曜日・24時間のうちの時間帯」「春夏秋冬の季節需要」による問い合わせ数(呼量)変動には、それぞれある程度は一定の傾向があるかもしれません。ただ不定期になってしまう「自社の新製品などの発表、CM、メディアへのPR」あるいは「障害、インシデント」などについては、カスタマーサポート部門以外の変動要因も踏まえて広く情報収集し、人員計画を調整していく必要があります。

そして、これらの時間軸や原因となる事象を元にして、単純に「20人を何月何日の何時から何時に配置」とすれば良いわけでもありません。オペレータにはそれぞれの「スキル」として対応できる問い合わせの種類(※ たとえば製品Aは対応可能だが、B製品は対応不可など)や、「習熟度」として時間帯あたりに対応できる問い合わせ数、対応できるチャネル(電話やチャット、メールフォームなど)にも個人差があります。

センターにおける人材マネジメント周辺の変数(例)

これらの変動要素に、コンタクトセンター全オペレータの勤怠状況、希望シフト、またはオペレータを管理しながら有事にも対応するSV(スーパーバイザー)や管理者のリソースも踏まえて最適な配置をするのは、とても複雑で難しい業務でしょう。別コラムで触れた「コンタクトセンターの人材不足」を鑑みると、ある程度まとまったスキルや勤務状況のオペレータをまとめて長期間確保することも各センターにとっては難しくなっているため、全体最適を見越したマネジメントが現状やりづらくなっていると言えます。

WFM(ワークフォース・マネジメント)ツールを使うとできること

そこで、上記の解決に向けて「WFMツールを使うとできること」を具体的に整理してみたいと思います。

まずセンター運営側では、過去の問い合わせ数のデータを元に、想定問い合わせ数(呼量総数)や、最適な人員数と配置を予測して割り出すことができます。また、それら予測データを元に、時間帯や問い合わせ内容、対応スキルに応じたオペレータのシフト調整、シフト管理をすることができます。各オペレータは属性データ(姓名、連絡先、曜日ごとに可能なシフト、時給、過去の勤怠状況データ、顧客対応のスキルなど)を元に管理されているため、WFMツールをベースにしたセンターの運営設計ができるでしょう。

各ベンダーのWFMツールの種類によっては、シフトだけではなくセンターにおける各種管理業務(オペレータへの座席の割り振り、離席or着席状況の管理、顧客対応状況の管理)やセンター内での情報共有ができるため、グループウェアや品質管理に類似した用途でも活用の幅が広がっているようです。

もしもオペレータ不足が発生しそうな時には、必要なスキルを備えた登録スタッフをWFMツール上でリストアップして、彼らに勤務を打診するための通知を一斉送信することもできたりします。

逆にオペレータ側では、自分が入れるシフトの登録をしたり、個人端末から シフト表を確認したりすることができます。運営側では特定の顧客対応時に必要な業務の知見などスキルの習得状況を整理把握することができるため、オペレータの研修計画に転用されることもあるようです。

これらの意味では「運営側とオペレータをつなぎ」ながら、「サポート品質」と「人件費」を両立させられるメリットがWFMツールにはあると言えるでしょう。

WFMツールでできること(例)

WFMツールの今後の可能性は?

WFMツールは、オンプレミス型の高額なサービスのみではなく、クラウド型サービスの登場と販路拡大によって各センターが少コストでもスタートすることができ、導入障壁も下がってきている傾向があると言われています。

ただ一方で「コールセンター白書2022」によると、リソースマネジメント用にWFMツールを導入している企業はまだまだ少なく、Excelなどで管理している比率が圧倒的に高いことが分かっています。

コンタクトセンター業界では、近年の深刻な人手不足や採用難が直面している中で、WFMツールへのニーズは十分高まりそうなのですが、まだ市場のキャズムを越えられるかどうかは未知の領域かもしれません。

人員配置も、対応チャネル整理やコンタクトリーズン分析を踏まえた「コンタクトセンターの全体設計」から

WFMツールを用いて効率化するセンターの人員配置に際しては、有人チャットや電話窓口、またチャットボットやボイスボットなどのチャネルとそれらに寄せられる問い合わせの内容(コンタクトリーズン)の分析などと踏まえたコンタクトセンターの全体設計が欠かせません。

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