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コンタクトセンターでは AHT、SL、NPS といった特有のキーワードで指標が設定されており、皆さんもよく耳にすることがあるかと思います。これらの指標は顧客サポート部門としてのKPIと定義されて、センター全体で達成のための議論されますが、今回のコラムではこの「コンタクトセンターのKPI」について改めて整理してみたいと思います。

※ 今回のコラムでは主に「電話」チャネル関連のKPIにフォーカスしていますが、「オペレータチャット・チャットボット」関連のKPIについては、こちらの過去記事もご参考ください。

まずは「KPIとKGIの具体例と考え方」について

そもそも KPI とは「Key Performance Indicator」(キー パフォーマンス インディケーター)の略語で 「重要業績評価 指標」という意味があります。これとよく似た言葉に KGI がありますが「Key Goal Indicator(キー ゴール インディケーター)の略語で 「経営目標達成 指標」という意味があります。

このような説明だけだとイメージしにくいはずなので、とても簡単に言ってしまうと
★ KPIは  成果・ゴールのための「プロセス」を測る指標  
★ KGIは 「成果・ゴールそのもの」

とシンプルに理解してみてください。具体的な例で説明すると、

★ KPI (例)
= 応答率を20%上げる、AHT(平均処理時間)を5分短縮する、NPSを+10%に上げる 
など

★ KGI (例)
= 今期中に自社サービスを使うユーザーの解約率を5%下げる
(その結果の今期の売上をXXX億円を達成する) など

などがあるのではないでしょうか。上の例の場合だと「顧客にとっての利便性や、顧客からの問合せへの対応数、サービス評価を向上させて、継続利用定着を図ろう(その結果の今期売上XXX億円を達成させたい)」としていると言えます。 KGIは企業の事業戦略を達成するために、何をもって成果(ゴール)と定義するのか、といういわば経営指標ですが、大きなゴールを達成するには一足飛びでは行かないはずです。

(例えば「夏までに10kg痩せる!」というゴールを設定したら「2月~6月の5か月で毎月2kgペースの減量」としないと達成は困難になりますし、もし5月くらいになって減量方法が間違っていて2kgしか減っていない事が分っても、修正が効かないですよね)

達成までの過程で達成度合いを評価したり、改善の方向性があっているか確認したりする必要があります。このためKPIを設定すると、進捗状況が分かりやすくなり、改善自体に具体的に取り組みやすく、ゴールを達成しやすくなるのです。センターの管理者や責任者に限らず、オペレータやSVなどコンタクトセンターの実務に関わる人でも「自分達が日常追っているKPIが何のためのものか」を理解して、KPIが正しく測定しやすく、何よりも取り組みや努力次第で達成できる、と実感できるような設定が大切です。

KPIは大きく4つに分類される

コンタクトセンターのKPIはいろいろありますが、大きく分けると「業務効率」「センターの運営管理」「対応品質」「売上/解約」 の4つに分類できます。必ずしもすべてをKPI化する必要はなく、自社事業やセンターの実情をベースに設定するのが良いでしょう。以下の章で各KPIの概要を整理してみたいと思います。

(※各KPIの詳細や改善のための手法などは、今後のコラムでもご紹介していく予定です)

1.対応するオペレータの「業務効率」に関するKPI

・平均通話時間(ATT) Average Talk Time
電話で応対を開始してから終了するまでの平均時間(保留時間は除きます)

・平均後処理時間(ACW) Average After Call Work
電話応対が終了した後、オペレータが履歴などをシステムに入力する処理(後処理)が終了するまでの平均時間

・平均処理時間 (AHT) Average Handling Time
電話応対の開始から後処理の終了までの時間の合計

・平均応答速度 (ASA) Average Speed of Answer
電話がかかってきてから応答するまでの平均時間

・CPH Call Per Hour
オペレーター1人が1時間あたりに対応したコール数

2.コンタクトセンターの「運営管理」に関するKPI

・稼働率
業務研修等を除く、顧客対応に使われている時間を実働時間で割った値
(=通話時間、後処理時間、その他の業務時間など)/ オペレータの実働時間

・退職率
在籍するオペレーター数に対する退職者数の比率
(=退職者数/在籍者数)

・欠勤率
予定していたシフト配置に対する欠勤の比率
(=欠勤数/予定シフト配置数)

・占有率
オペレータが個客対応にあたる時間のうちで「通話、保留、後処理」をしていた時間の割合
(=[通話+保留+後処理]の時間/[通話+保留+後処理+待機]の時間)
つまり 「待機」している時間を含めた「通話、保留、後処理」のうちで、どれくらい実際の顧客対応「通話、保留、後処理」をしているかという指標です。

3.顧客の問い合わせへの「対応品質」に関するKPI

・応答率
顧客からかかってきた電話の数のうちオペレータが応答できた電話の数の比率
(=応答件数/入電数)

・放棄呼率
顧客からかかってきた電話の数のうち、オペレータが応答できずに電話が終了した(放棄された)数の率
(=放棄件数/入電数) 

・一次解決率
顧客から最初に問い合わせを受けた電話の時点で問題が解決ができた比率
(=最初の入電で解決できた電話の数/応答数)

・サービスレベル(SL)
顧客からかかってきた電話のうち、あらかじめコンタクトセンターが規定した時間内に応答できた率。サービスレベルの基準はセンターごとによって異なりますが、一般的に電話だと「80%の電話を20秒以内に対応する」ことが基準値だと言われています。
(=規定時間内の対応件数/入電数)

・エスカレーション率
オペレーターだけでは問い合わせを解決できずにSVや他の担当部門にエスカレーション(引継ぎ)をした対応数の比率

・NPS(Net Promoter Score)
顧客推奨度。顧客の満足度合いと、製品やサービスを他社へどのくらい推奨するかを測る指標
(=[推進者−誹謗者]÷全体数)
※ NPSについては、こちらの過去記事 もご参照ください

4.「売上/解約」に関連するKPI

・解約率(チャーンレート)
解約率は、特定の期間において全体の契約数のうちの解約数の比率
※ 解約率については、こちらの過去記事 もご参照ください

・解約阻止率
サブスクリプション型で継続利用の月ごとに売上が発生するサービスにおいて、顧客からの解約の申し出をオペレータが阻止できた数の比率

・成約率
オペレータからのアウトバウンドコール(架電)において、製品やサービスの新規申し込みに成功した数の比率

・アップセル率 /クロスセル率
すでに利用を継続している製品やサービスに加えて、利用ボリュームの増加(アップセル)や他の製品・サービスの追加購入(クロスセル)に成功した数の比率

KPI設定は「SMART」を意識する

コンタクトセンターのケースに限らず、組織のKPI設定では「SMART」の頭文字を取った観点を意識することが大切だと言われています。以下の観点なしでは、KPIやその先のKGI達成にも遠回りになってしまうためです。

S は「Specific」の略でKPIが「具体的であること」を意味します。M は「Measurable」の略でKPIが「測定可能であること」を意味します。ただし測定をして数値を見るだけではなく、結果を定期的に分析して改善案を出すことの前提としての意味があります。A は「Achievable」の略でKPIが「取り組み、努力次第で達成可能であること」を意味します。達成の見込みがあり、かつ現状よりもチャレンジできる現状よりも上の目標値設定をしなくてはいけません。R は「Related」の略で、KPIが「最終目標(KGI)と関連があること」を意味します。T は「Time bounded」で、KPIを達成するまでの「期限を定めること」を意味します。

上記を参考に、現状の自社コンタクトセンター体制や、顧客の実情にあったKPIを設定しましょう。

自社のコンタクトセンターでのKPIの考え方を整理してみよう

今回の記事では、コンタクトセンターのKPIについて整理してみました。事業目標の達成に向けて、適切なKPIを設定し、その達成を経て自社の顧客対応のパフォーマンスを向上させていく事はカスタマーサポート、カスタマーサクセス部門にいらっしゃる方であれば至上のミッションだと思います。自社の顧客サポートのKGIは何か、他社と比較したり顧客の実情を捉えて適切なKPIは何か、その値はどの程度がいいのか、を定期的に振り返ってみることが大切です。

KPIをどう設計すればいいか?自社で設計しCXを向上させながらLTVを向上させていきたいと考えても、一朝一夕での実現は困難を極めるかもしれません。将来的にはそこに至るためにも、現状運用の全体整理に必要なKPI分析やコミュニケーションの改善などと踏まえた「コンタクトセンターの全体設計」が第一ステップとしては必要となってきます。

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