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<2022年11月29日→2024年2月29日更新>

コールセンター(コンタクトセンター)の運営における課題の1つが、慢性的な「人手不足」です。コロナ禍の「他産業からの人材流入」によって採用に追い風となった時期もありましたが、近年の人手不足は、再び深刻な状況となっています。

コールセンターの人手不足の背景には、採用難のほか離職率の高さがあります。コールセンターの離職率はなぜ高いのでしょうか。本記事では、7つの原因と対策6選を紹介します。


<目次>



コールセンターの離職率はどれくらい?

コールセンターは、他職種と比べて人が定着しにくく離職率が高い傾向にあります。「入社一年以内の離職率が7割を超える会社が全体の1/4を占めている」といった時代もあったくらいです。「コールセンター白書2022」によると、全体の離職率は「5%以下」が47%と決して高くはないですが、「新人オペレーターの離職率(過去1年以内に採用したオペレーターを対象とした離職率)」は、「5%以下」は33%にとどまり、「21~30%以下」「31%以上」がそれぞれ25%、21%を占めています。半数近い企業で5人に1人が1年以内に離職している状況です。

(左)直近年度のオペレーター全体の離職率、(右)新人オペレーターの離職率。「コールセンター白書2022」より引用

「オペレーターの雇用形態」は、「すべて自社正社員または無期契約社員」と回答した企業は16%で、58%が「自社正社員および無期契約社員と派遣社員およびパートタイマー・アルバイト・自社契約社員などの有期契約社員が混在」と回答しています。慢性的な人員不足を補うため、アルバイトやパートなどの非正規社員を主力としている企業が多い状況です。


コールセンターの離職率が高い理由とは?

コールセンターの離職率が高いのはなぜでしょう。クレーム対応でのストレスやキャリアップへの悩みなど、理由は多岐に渡ります。詳しく見ていきましょう。

クレーム対応でのストレス

顧客から複雑な相談や、製品のクレームに対応するオペレーターには「高い負担」がかかっています。複雑な業務フローや製品知識を覚え、それらに間違いがないように顧客に説明・対応をする必要があることや、状況次第では電話で「激しい叱責」を受けてしまうことで、業務的・精神的に追い込まれてしまうこともあります。

特に、電話口で声を荒げるしつこいクレーマーの対応にセンターは日々悩まされていますが、「カスタマーハラスメント」への対応基盤が整っている企業はまだ少数です。ただし、製品やサービス自体に問題がある事以外に「コールセンターと長時間にわたって電話がつながらない」ことによる顧客側のストレスも、クレームに拍車をかけて「センターとオペレーターに跳ね返ってきている」ケースがあります。

騒音問題など職場環境の悪さ

コールセンター内では意外にも騒音問題があり、電話サポートではオペレーターの話し声や電話のコール音で騒がしい現場になりがちなため、オペレーターの負担にもなっています。一方で、在宅勤務での電話サポートをセキュリティやスタッフ管理上の理由で導入できない企業も多く、導入できているのは一部のようです。それでも「コールセンター白書2023」によると、在宅センターを継続して運用している企業が半数に達しています。

対応業務や人材育成・管理の困難化

顧客ニーズに沿ってパーソナライズ化された対応や、問い合わせ窓口のマルチチャネル化によって 「個人ごとに異なる対応」が求められる市場では、金融や小売通販や通信などの製品やサービスに関しても、オペレーターに求められる「知識や対応スキル、対応方法」が複雑で専門的になっていると言えます。

とくにITや通信においては製品やサービスの情報アップデートも多いため、その内容に追いついて行くのも容易ではありません。このため、専門業務をこなすのに必要な人数を、「定常的に採用・育成・確保する」ことがとても難しくなっています。

オペレーターの育成や監督を行うSV(スーパーバイザー)自体の採用・育成も難しいため、オペレーターが十分に育たないばかりか定着もせず、その結果SVの負担も増してしまい、全体の改善サイクルを回すリソースが減ってしまうという「負のスパイラル」が起こる場合もあります。

非正規雇用と給料の安さ

売上を創出するマーケティングや販売・セールス部門とは異なり、コールセンターを運営するカスタマーサポート部門は、経営上の成果を評価されにくい「コストセンター」とみなされる傾向が依然としてあります。

継続的なサービス利用や、顧客体験の向上につながるお問い合わせやクレーム対応(お困り事の解消)などがあっても、成果が把握しづらいゆえに経営部門からはコストカットが要求されがちです。

その結果、コールセンターのオペレーターは「非正規雇用、低賃金の傾向」となり、離職率が高い(定着率が低い)状況につながっています。令和3年の(厚生労働省)賃金構造基本統計調査によるとコールセンターに勤務するオペレーターの全国平均年収は349.3万円、平均年齢は41.7歳となっています。また、SVについても「コールセンター白書2023」のデータによると、平均年収は450万円未満が76%、350万円未満が過半数を占めています。平均年齢が30代後半(37.3歳)であることを踏まえると決して高くはありません。

SVのおおよその年収:「コールセンター白書2023」より引用

ノルマや目標が厳しい

受信中心のインバウンドではなく、テレアポのようなこちらから電話をかけるアウトバウンド中心のコールセンターの場合、オペレーターにノルマが課されることもあります。「1日あたり○本の電話をかける」や「今月の成約は△件」といったノルマや目標が設定されると、ノルマがプレッシャーになり、応対そのものよりも数字が気になってしまうことも……。ノルマや目標が厳しいと、本来の顧客満足度向上は二の次になり、オペレーターのモチベーション低下につながる恐れもあります。

業務が単調でキャリアアップのイメージが沸きづらい

毎日同じ質問を受けるコールセンターでは、マニュアルやスクリプトを用いた効率化が図られており、慣れてしまうと業務が単調になる場合もあります。一日中パソコンの前に座って、電話の受け答えをしているだけではスキルが身につかないと焦り、転職を考える人も多いです。オペレーターからSVなど管理職へキャリアアップを図ることはできますが、管理職以外のキャリアや、管理職の先のキャリアアップのイメージが沸きづらいことも離職につながる要因と言えます。

同僚が次々と辞めていく

離職率が高いと、一緒に働いていた同僚が次々と辞めていくため自身も引っ張られてしまうこともあります。高い離職率がさらなる離職を生む負のループにならないよう対策が必要です。


コールセンターの高い離職率がもたらす影響とは?

顧客応対品質の低下

離職率が高いコールセンターは人員の入れ替わりが激しいため、新人オペレーターが多く、全体の応対品質に影響を及ぼします。品質低下の主な要因は、新人オペレーターの不慣れによる「クレーム」と「保留時間の長さ」です。SV(スーパーバイザー)が新人オペレーターのサポートに回るため、全体のフォローが不十分になることも品質低下につながります。

労働環境の悪化

離職率が高いコールセンターでは、常に人員が不足しているため、残業が慢性化していたり、休みの調整が取りづらくなることもあります。そのため、オペレーターの満足度が下がり、更なる離職を招く可能性も出てきます。また、新人が入るとその分SVのサポート業務が増えることで、管理者の負担も増大してしまいます。

採用・教育コストの増大

新しい人材を招き入れるための採用コストがかかるだけでなく、採用した人材を育成するためのオペレーター研修やトレーニングなど教育コストも増大してしまいます。コールセンター全体の運営収支全体にも負荷がかかっていると言えるでしょう。


コールセンターの離職率を下げるための対策とは?

コールセンターの離職率を下げるための6つの対策を紹介します。

定期的なヒアリング

まず、定期的に1on1 MTGを設定し、オペレーターの不満や感じていることの吸い上げと、メンタルサポートをすることが重要です。MTGを通して上司と部下の関係性を築き、いつでも相談できる環境を作りあげることで、離職を未然に防ぐことも期待できます。

職場環境・給料の見直し

机や椅子など従業員の業務に影響のある設備を見直すことで、業務効率化だけでなく、従業員のモチベーション向上につながります。リフレッシュスペースの設置や食事補助サービスなど、福利厚生の充実も離職防止に効果が見込めます。

正社員と非正規社員との給与に格差があることも離職の大きな原因にもつながるため、業務内容やオペレーターの能力に見合う給与体制を整えることも必要です。

研修内容の見直し

実際の業務内容と研修内容が乖離していないか、定期的に現職オペレーターやSVが内容の確認、見直しをするようにします。しっかりとした研修制度を導入することで、新人オペレーターの不安が解消できるだけでなく、応対品質の向上にも効果的です。

適切なノルマの設定

ノルマを設定する際には個人の能力や稼働時間を考慮した上で、達成可能な設定を行うことがオペレーターのモチベーション維持につながります。努力すれば達成できるようなストレッチ目標を設定することで、オペレーターの自信に繋がるだけではなく、業務に達成感を覚えてもらうことで、継続的に意欲を引き出せるようになります。

評価・フィードバックの場の設定

定期的に今後の業務に活かせるフィードバックの場を設けることが重要です。いくつかの評価項目を定めて、定期的に評価を伝える場を設けると良いでしょう。「自分の仕事を誰かが見てくれている」という安心感が、早期離職の防止になります。

業務効率化・DX化によるオペレーターの負担削減

コールセンターの業務効率化・DX化は、オペレーターの負担を減らし、働きやすい環境作りを実現することにつながります。業務効率化・ DX化の例は下記の通りです。

・有人チャット導入により、音声を通したクレームによるストレスの軽減

・チャットボット / AIチャットの導入により、オペレーターが対応する問い合わせを絞る

・顧客情報やマニュアルをツール内に一元化し、検索の手間を減らす

・生成AIの活用で電話応対後の処理作業を自動化し、オペレーターの作業負担を軽減

まとめ

業種により異なりますが、 コールセンターの対応業務には、顧客からの問い合わせ・連絡が入ってくる「インバウンド」対応においては、製品やサービスの受注自体、購入後のトラブル対応や詳細説明、予約受付、資料請求の受付、総合的なお客様相談窓口などの細やかな業務があります。

特にBtoC企業にとって、直接顧客とのコミュニケーションをとるコールセンター、オペレーターの対応次第で顧客体験(CX)のベースとなる企業イメージや顧客満足度などを左右すると言えます。「人材不足」による対応品質の低下は、中長期的にはブランディング、継続購入、LTV(顧客生涯価値)にも悪影響を与えてしまう可能性があります。

コールセンターの離職率の高さや採用難による人材不足を解消することは、顧客体験(CX)の改善にもつながります。

コールセンターの離職率が高くなる要因を知り、対策を図ることで離職を防ぎ人材不足を解消していきましょう。