衛星放送局WOWOWのコンタクトセンターを担う株式会社WOWOWコミュニケーションズは、2023年1月からAI電話自動応答(ボイスボット)「MOBI VOICE」を導入し、番組リクエスト受付に活用しています。導入の背景、活用方法や効果、今後の展望などについて、WOWOW事業部 コンタクトセンター課 札幌 オペレーションマネージャー 関口氏、スーパーバイザー 岡本氏・向井氏、リーダー 高橋氏にお話を伺いました。
※上記写真:(左から)モビルス 柏原、WOWOWコミュニケーションズ 岡本氏、関口氏、向井氏、高橋氏、モビルス 清水
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組織名 | 株式会社WOWOWコミュニケーションズ |
事業内容 | コンタクトセンター事業、デジタルマーケティング事業、データマーケティング事業 |
用途 | 番組リクエストの電話自動受付 |
導入時期 | 2023年1月 |
■導入製品
※記事中の肩書や内容はインタビュー当時(2024年1月7日)のものです。
■課題
・繁忙時の電話対応、貴重なリクエストの声をお待たせしてしまうサービスレベルに課題を感じていた。
■施策
・AI電話自動応答「MOBI VOICE」を導入し、番組リクエスト受付から順次自動応対へ移行。
■効果
・約20時間/月の稼働時間の削減に貢献。
・お客さまをお待たせすることが無い仕組みの構築。
・改善策や新しいアイデア出しなどが積極的に行われるなど、従業員満足度の向上に貢献。
■目次
・はじめに
・自動応対で待たせず顧客のストレス軽減を優先
・月20時間の電話応対コスト削減、完了率は80%
・新しい取り組みに現場のモチベーションも高まる
・WOWOWコミュニケーションズの社長賞を受賞
・SMS送信までできるシンプルなUIが使いやすい
・One to oneコミュニケーションでファンを増やす
はじめに
ーみなさんのお仕事内容を教えてください。
関口氏:
私たちのコンタクトセンターは、日本全国を対象とした衛星放送のWOWOW有料放送局のサポート窓口として、ご加入や契約者の方への技術的なサポートなどお問い合わせ対応を担っています。
電話の受発信のほか、メール対応と有人チャットやチャットボットといったデジタルサポートにも力を入れています。昨年1月から「MOBI VOICE」を導入し、ボイスボットによる電話自動応対をスタートしました。
私自身は札幌拠点の運営管理者として、クライアントであるWOWOWとの折衝やコミュニケーション施策の企画、お客さまの声をもとにした定性データのアウトプット、施策改善活動の推進のほか、後輩の指導や育成などを行っています。
岡本氏:
スーパーバイザーの岡本です。これまで主にインバウンド業務を中心に担当し、応対品質の向上にも長年と携わってきました。ここ数年では、有人チャットの導入やお客さまの声をもとにした分析レポート、番組作品の著作権更新業務を行いながら、「MOBI VOICE」の運営を行っています。
向井氏:
スーパーバイザーの向井です。オペレーターとして入社後、スーパーバイザーとなり、メール、有人チャット業務などを経て現在は、インバウンド業務の管理運営、オペレーターの育成や品質管理など、運営現場管理業務全般を行っています。
高橋氏:
リーダーの高橋です。オペレーターとして入社後、現在はインバウンド業務のチームリーダーとしてオペレーターのフォロー、バックヤード業務の他、コールコントロールを担当し応答率・接続品質向上に取り組んでいます。
自動応対で待たせず顧客のストレス軽減を優先
―「MOBI VOICE」導入前の課題は何でしたか?課題に対して検討した、または実施した解決策を教えていただけますか。
関口氏:
繁忙時の電話に対応しきれない課題に有人チャットやFAQなどデジタルシフトを進めてきましたが、ほかにも自動化できる問い合わせ内容がないかなど検討していました。
番組リクエストはWebからもできますが、電話でリクエストをくださる方も多いです。個人情報の聞き取りもなく会員情報との紐づけも必須ではないため、人に頼らない受付ができるのではないかと考え、まず番組リクエスト受付からボイスボットでの自動受付を開始することにしました。
高橋氏:
繁忙日や入電混雑時には、10分~15分という長い時間待ってくださり、リクエストをお話される方も少なくありません。どうしてもリクエストしたいということだと思います。
関口氏:
本来、私たちの運営上の課題としてお客さまを長時間お待たせすることは申し訳ないのですが、加入の電話が集中するなど、さまざまな事情でお待たせしてしまうこともあります。長時間待って電話が繋がった際、オペレーターに繋がると「いつまで待たせているんだ!」などクレームが来ると思いきや来ません。「よかった!やっと繋がった!」という反応だったのです。
本当は人が応対してリクエストを聞けるのが100%のベストかもしれませんが、80%のベターで「リクエストを受け付けてもらえた」という欲求を満たせることが大事なのかなと。
長時間お待たせして人が応対するよりも、自動応対で待たせずリクエストを受付できることで顧客のストレス軽減に繋がるのではと考えています。
20時間の電話応対コスト削減、完了率は80%
ー導入前後で顧客満足度など数値に変化があったものはありますか?
向井氏:
「MOBI VOICE」での自動応対業務がNPSに影響しているかという数値は測れていません。ただ、「MOBI VOICE」を導入したあとお客さまから「なぜ人でなく機械(自動音声)なのか」というご意見をいただいたことはありません。
「この前リクエストした番組だけど」と、人に話しかける感じでお話されている方や、常連になっている方もいます。
ー導入前後で番組リクエストの受付数に変化はありましたか?
関口氏:
受付数に大きな変化はありませんが、月間800件のリクエスト受付のうち、150件ほどを「MOBI VOICE」で受け付けています。効率化の面だけでみると大きな変化はまだないですが、全くのゼロベースでチャレンジして、極端に減ったり増えたりせず一定数毎月利用されているということは、私たちにとって効果があったと考えています。お客さまもボイスボットを受け入れ、寄り添ってくれていると感じています。
ー「MOBI VOICE」で受け付けている件数はそれほど多くはないとのことですが、時間で考えると結構な短縮につながっているのではないでしょうか?
関口氏:
そうなんです!1件の受付対応時間を比べると、人だけの場合は電話で受けてリクエスト内容を登録するところまで約800秒。「MOBI VOICE」の場合はリクエスト内容を管理画面で確認し、データ入力するところだけを人が対応するので一連の作業が約310秒に短縮されます。月150件なので約20時間の電話応対コストの削減ができています。
「MOBI VOICE」で受付したリクエスト内容をデータ入力する作業は当日中に終われば良いので、電話応対を優先できるため、ほかのお客さまをお待たせしない面でも助かっています。
ー「MOBI VOICE」での完了率や離脱率などの数値を見ていらっしゃいますか?
向井氏:
リクエストの回答までいただけた方を完了とすると、完了率は80%です。「MOBI VOICE」のシナリオをシンプルに構成しているので、離脱する方が少ないのかもしれません。
新しい取り組みに現場のモチベーションも高まる
ー従業員満足度に変化はありますか?
岡本氏:
「MOBI VOICE」の導入研修で、長年働いているオペレーターさんが「うちの会社でほかに誰も使ったことがないものを、初めて自分がやるんだと思うとモチベーションが高まった」と話していました。使い勝手が良いのでオペレーターさんの理解が早く「次はこうしたらどうか」とアイデア出しも積極的にしてくれています。
オペレーターさんは「MOBI VOICE」で受け付けたリクエストをデータ入力する作業もしているので、お客さまの音声や回答を聞いて「この質問は答えにくそうだから、シナリオを修正した方が良い」「この流れは良くないのでは」など鋭い指摘をくれるのです。一緒に考えて取り組むスタンスになっているので、従業員のモチベーションも向上していると感じています。
WOWOWコミュニケーションズの社長賞を受賞
向井氏:
オペレーターさんは日々さまざまな問い合わせに対応しているため、1日に番組リクエストを受ける数は限られていて数件程度です。これまでは自分が応対したお客さまの声しかわかりませんでしたが、「MOBI VOICE」導入により、全てのお客さまのリクエストを聞いて知ることができます。さまざまなリクエストがあることを知り、視野が広がっているようです。
高橋氏:
私もずっとインバウンドの仕事を携わっていて、既に導入されているツールを習得し業務することが圧倒的に多かったのですが、「MOBI VOICE」導入の担当になり、新しいシステムを構築していく過程に携われて、とても良い経験をさせてもらっていると思っています。次は何に活用しようかと考えていくことはとても楽しいです。
関口氏:
「MOBI VOICE」導入が、2022年度のWOWOWコミュニケーションズの社長賞をいただきました。社内で初めての試みを評価いただいての受賞です。ゼロベースでの挑戦が久しぶりだったので、運用開始前は正直不安で、周りのメンバーも半信半疑でした。
導入後はクレームもなく運用できていて、横浜のセンターでもボイスボットを導入していたり、社長賞受賞の記事を見て社内から問い合わせがきたりと活用できています。
実際に応対しているオペレーターさんを含めて、新しい挑戦による満足度・モチベーションの向上へつながったことはとても大きかったと思っています。
SMS送信までできるシンプルなUIが使いやすい
―「MOBI VOICE」をご使用いただいた感想を教えてください。
向井氏:
「MOBI VOICE」の管理画面はシンプルで分かりやすいです。
SMS送信機能を結構な頻度で使っていますが、「MOBI VOICE」の管理画面内で操作が完了するのでほかのツールを使わなくて済むところが非常に使いやすいです。
高橋氏:
「MOBI VOICE」の管理画面の中にマニュアルが搭載されているのが、とても使いやすいです。画面を見て分からないことがあっても自己解決できるので助かっています。使いやすいUIなので現場のオペレーターさんも滞りなく使えています。
岡本氏:
ツールを使うためのマニュアルを熟読しなくても直観的に操作ができ、一つのツール・一つの画面ですべて行えて、UIもとても使いやすいです。
One to oneコミュニケーションでファンを増やす
―今後、どのように運用を広げていくかお考えをお聞かせください。
向井氏:
2つ検討している案があります。1つ目は、お客さまへの料金督促案内の自動化です。料金督促は基本的には定型的な内容の案内をすることが多いため、「MOBI VOICE」のアウトバウンド機能により自動化できないかと検討しています。
2つ目は営業時間外の対応です。夜間や通勤前など何か思いついたときの受け皿として「MOBI VOICE」で自動応対できないか、需要や課題も含めて今後検討していき、お客さまの利便性向上に繋がればと考えています。
関口氏:
ご料金の督促業務に関しては、残念ながら連絡が取れずに解約となってしまうお客さまを一人でも多く減らしたいと考えています。 当然、人で発信はしているのですが、繋がらないと案内ができません。今後は「MOBI VOICE」のアウトバウンド機能を使って様々な情報発信やご案内できる機会を増やせないか考えています。
他にも、ボイスボットで受付した番組リクエストのデータと番組情報を照合し、リクエストが決まったときに「MOBI VOICE」のアウトバウンド機能でお客さまにお知らせすることでOne to Oneのコミュニケーションでお客さまとの関係構築、顧客理解を深めていきたいと考えています。
また2024年度以降、番組リクエスト受付以外も滞りなく「MOBI VOICE」への移行ができるかも検討していく予定です。顧客データベースから個人情報をリアルタイムで認証を取り、住所やクレジットカードの変更手続き変更なども自動応対できるよう考えています。
―今後の他サービスへの拡張プランが楽しみですね。本日は貴重なお時間を頂きありがとうございました!
いかがだったでしょうか? 今回は株式会社WOWOWコミュニケーションズさまのMOBI VOICEの導入事例をご紹介させていただきました。一人ひとりのお客さまとのコミュニケーションを大事にしサービスのファンを増やしていくことは年々重要性が高まってきているように感じます。その中で、Webだけでは拾いきれないユーザーからの声をどう把握していくかに活用いただいた事例でした。より詳しい課題背景や解決の具体策などに興味があるお客さまは、お気軽にこちらよりお問い合わせください。デモ画面を実際にお見せしながらご紹介いたします。