マンションや施設向けインターネットプロバイダーの株式会社ファイバーゲート。コールセンターには月に平均1万4000件もの入電があり、繁忙期は倍近くに増え、応答率の低下が課題でした。

応答率を上げ「繋がるコールセンター」の実現とスタッフの負荷軽減をめざして、電話応答の一部自動化と自己解決を促進すべく、AI電話自動応答システム(ボイスボット)「MOBI VOICE」と、「Visual IVR」を活用いただいています。

運用方法や導入後の効果などについて、お客さまサービス部と障害対応を統括する、株式会社ファイバーゲート 上級執行役員 今川茂範氏にお話しを伺いました。

業種情報・通信
導入ツール「MOBI VOICE」(2021年5月~)「Visual-IVR」(2021年7月~)※インタビューは2021年8月30日実施
利用用途コールセンターに入ってくる営業宛ての電話一次応答を自動化。
FAQや不具合診断など、サポートサイトへの問い合わせ導線を作成。
株式会社ファイバーゲート様、Zoomでのインタビューの様子。
▲インタビューはZoomで行いました。上段真ん中がファイバーゲートの今村氏。他はモビルスメンバー。

電話応答の自動化と自己解決の導線作りで、応答率の向上とスタッフの負担軽減へ

ー「MOBI VOICE」「Visual IVR」を導入した経緯や目的を教えてください。

ここ数年、動画サービスの利用増加と併せて、コロナ禍で在宅勤務が増えた背景から、マンションの入居者さまから通信速度などの問い合わせが増加しています。繁忙期は特に問い合わせが多く、応答率が下がってしまうことが課題でした。

一件でも多くの電話に対応しようと頑張っているメンバーも多く、スタッフの負荷を軽減したい気持ちもありました。

繁忙期も応答率を下げず、スタッフの負担軽減、業務効率化を実現すべく、電話の一次対応の自動化や自己解決できる仕組みを作ることを目的に、「MOBI VOICE」と「Visual IVR」の導入を決めました。

ボイスボットへ可能性を感じていた。製品の機能面、金額感、スピード、営業担当が決め手に

―モビルスを知ったきっかけや、選んでいただいた決め手は何でしたか?

これまで『コールセンタージャパン』を熟読していて、ボイスボットによる電話応答の自動化に可能性を感じていました。モビルスの記事がよく載っていて存在を知ったことがきっかけです。

Webサイトや製品資料を読み込み、必要な機能が備わっていて、金額感も含めて良いなと思いました。導入までのスピード感も良く、何より営業担当の古屋さんの対応が良かったことも決め手になりました。

先行して「MOBI VOICE」を導入し、「Visual IVR」と連携もできると知ったのでデモを見せてもらったところ、欲しかったイメージ通りだったのでその場で即決しました。

負荷を上げていた「営業宛の問い合わせ一次応答」から自動化を開始

―運用開始する際、自動化する内容の選定やシナリオの作成、運用体制などをどのように決めましたか?

AI電話自動応答システム「MOBI VOICE」ご活用イメージ。
▲「MOBI VOICE」のご活用イメージ。コールセンターに入ってくる営業宛の問い合わせへの一次応答を自動化。自己解決を望むお客さまへSMSで「Visual IVR」の案内も行っています。

アパートやマンションの無料インターネットとして使われているので、50種類近いブランドがあり、それに合わせてフリーダイヤルがあります。

コールセンターでは、お客さま(入居者さま)の対応に専念したいのですが、管理会社やオーナーさまから本来は営業宛てにかけるような内容の問い合わせも多くあり、センターの負荷を上げていました。

入居者さまからの問い合わせ対応に専念し手厚く対応できるよう、まず、営業宛て電話の一次応答を「MOBI VOICE」で自動化することを決めました。

全国の営業所を4つに分類してシナリオを作成しています。「MOBI VOICE」でお名前や会社名、物件名、ご用件などをヒアリングし、自動で書き起こしされた情報は各営業所のメーリングリストへメールで届く流れです。

内容を確認し、担当営業が折り返し連絡しています。「MOBI VOICE」の設計や管理は、お客さまサービス部の上席が行っています。

また、コールセンター宛の電話で、すぐにオペレーターに繋がらない際に、「Visual IVR」で作った「ビジュアルサポートページ」へSMSで案内する導線も作りました。

コールセンターに入ってきた電話はビジネスフォンのIVRでオペレーターに振り分けるのですが、お待たせする場合は、折り返しの予約のほか、「障害対応や不具合にすぐに対応できるビジュアルサポートページをご案内しています」とアナウンスを流すことにしました。希望すると「MOBI VOICE」に自動で転送されて、SMSを送信するシナリオが発動します。

負担になっていた対応コストを数値化でき、本来のセンター業務に専念できるようになった

―KPIや目標はどのように設定されていますか?

応答率を上げることをKPIに設定しています。繁忙期でも平均応答率78.8%を落とさないことです。繁忙期は10月から5月なので、まだ繁忙期には至っていません。「MOBI VOICE」を導入した今は、「すぐにでも繁忙期が来て欲しいくらい、どれだけ変わるか」と逆に楽しみです。

―繁忙期はこれからですが、導入して3カ月が経ち、効果を感じている面はありますか?

Beforeは、「営業宛ての問い合わせも多く入ってくるので、お客さま対応に専念したい」「在宅勤務やストリーミング利用増加で、問い合わせが増加。繁忙期は応答率が下がってしまう」「サポートサイトやチャットボットへ案内する導線がない」
Afterは、「営業宛ての問い合わせの一次応答を自動化し、505件/月、2,525分を削減。お客さまの対応に専念できるようになった」「Visual IVR」で電話以外の問い合わせ導線を作り、自己解決を促進。サポートサイトの閲覧数も増加」
▲「MOBI VOICE」「Visual IVR」導入前後の比較。

月に840件を「MOBI VOICE」で対応していて、その6割以上もの505件が営業宛の内容でした。

「営業宛の問い合わせ対応が負担になっている」と現場から声が上がっていましたが、これまでは実際にどのくらいコストがかかっているか調べる術がなかったのです。平均応答時間が5分なので、505件だと2,525分を使っていたことになります。これだけセンターで対応していたのかと、コストを数字で分かったことも収穫でした。本来のセンター業務に専念できるようになって良かったです。

また、「MOBI VOICE」経由の「Visual IVR」の利用は、月に330件ありました。すぐに繋がらないならば自己解決できる他の手段を選ばれる方がこれだけいることが分かりました。

電話番号の記載をやめ、「Visual IVR」で自己解決できる導線を作ることができた

また、ファイバーゲートの無料インターネットは約40万世帯で利用されています。無料インターネットマンションは、シンプルに無料でインターネットを使えるのが売りですが、サポートサイトを案内する導線がこれまでありませんでした。

唯一の窓口が、無線機のカバーに記載しているフリーダイヤルです。これを見た入居者さまから電話がかかってきます。応答率を上げるためには、入電数を減らす必要もあると思い、電話番号の記載をやめ、自己解決も含めた問い合わせ手段を提示したいと考えていました。

「Visual IVR」を導入し、サポートサイトへの導線として「ビジュアルサポートページ」を作りました。FAQなど自己解決できるコンテンツを掲載し、解決しない場合はオペレーターにも繋がるようにしています。

フリーダイヤルの記載から「ビジュアルサポートページ」のQRコードヘ張り替えていく予定です。8月から一部のシールを貼り替え始めたばかりですが、一番多いページだと半月で598件も利用がありました。

「MOBI VOICE」「Visual IVR」の連携でサポートサイトの閲覧数も上がっているので、お客さまの解決手段を増やすことで、今後は入電数の削減にもつながると考えています。

無線機のカバーに記載する情報の変化。従来はサポートセンターの電話番号を記載。QRコードに変更を始めている。ビジュアルサポートメニューの一例。
▲(左)これまではサポートセンターの電話番号を記載していた。(真ん中)電話番号の記載をやめて、「Visual IVR」で作成した「ビジュアルサポートメニュー」のQRコードに差し替えを行っている。(右)「ビジュアルサポートメニュー」の一例。

オリンピック期間の夜間自動応答にも活用。期間限定の窓口も簡単に作れて便利。

「MOBI VOICE」の運用方法で工夫されている点について教えてください。

シナリオの内容や読み上げ速度など、日々細かなチューニングをしています。折り返し対応をする営業から意見をもらうことが多いです。管理会社やオーナー様は年齢層も異なりいろいろな方いるので、「聞き取りにくい」「ボタンが押せない」など様々な声が寄せられます。営業からの意見を参考にチューニングして、何度も聞き直し調整しています。

途中離脱はあまりなく、文字に書き起こす音声認識率も良いです。必要な要素を確実にヒアリングするので、折り返す際も情報が整理されています。

「MOBI VOICE」の管理画面。
▲「MOBI VOICE」の管理画面。設問ごとに読み上げ速度を調整できる。

―「MOBI VOICE」「Visual IVR」の便利な機能があれば教えてください。

全ての機能が便利です。

ここ2年間、繁忙期で非常に困っていて、ようやく今年の春にモビルスさんと出会えました。繁忙期を乗り越える中でいろいろ要望も出てくると思うので、そのときは相談に乗ってほしいです。

また、「MOBI VOICE」はすぐに新しい電話番号を取得でき、シナリオを作れるので、期間限定の対応にも活用しています。

プロバイダーはオリンピックなど大規模なイベントがあると警察庁から24時間対応の要望が来ます。実際には日中にかかってくることが多く、夜間の問い合わせはほとんどありません。しかし、想定外のことが起きないとも限らないので対応する必要があるのです。

スタッフを大事にしたく勤務時間も限りがある中でどうやって24時間完璧に対応すればいいか考えたとき、今回のオリンピックは「MOBI VOICE」で夜間の一次応答をすることに決めました。

期間限定の問い合わせ窓口を作れるなど、イレギュラーな問い合わせ対応にも、簡単に新しい番号やシナリオを作れるので大変便利です。

また、「Visual IVR」もブランドごとに35種類の「ビジュアルサポートメニュー」のページを作っています。当社はブランド数が多いので、一つの管理画面で複数のページを作れるのは有難いです。

「ビジュアルサポートメニュー」の一例。接続トラブル・AIアシスタント(不具合診断)・よくあるご質問・宅内工事概要・新規利用登録・端末追加・オペレーターとの会話を希望、の項目を表示。
▲「ビジュアルサポートメニュー」の一例。ブランドごとに35種類のページを作成している。

「繋がるコールセンター」を作り、サポートをサービス価値として営業の強みに変えていく

―今後の展望を教えてください。

「MOBI VOICE」で電話の一次応答を自動化する範囲を、少しずつ広げていきたいと考えています。まずは、夜間の有人対応を「MOBI VOICE」に置き換えて、自動で対応することが直近の目標です。

また、AI連携や基幹システムとの連携で、自動応答の幅を広げていきたいと考えています。例えば、「障害が起きている」「この部屋の工事が終わっている」といった自動応答の実現も今後の構想として持っています。

「繋がるコールセンター」を築き、サポートをサービスの価値として、営業の強みの一つにしていきたいです。100%電話に出られるのがベストですが、24時間365日、常に有人対応は難しい世の中になっています。他社だと3日繋がらない、土日は対応していないというところもまだまだあります。お客さまが困っているときに、何かしらのアクションができることが大事です。

繋がらず待たされる状況をなくし、「MOBI VOICE」での一次応答や、「Visual IVR」を使った自己解決への案内など、お客さまの声を常に吸い上げられるコールセンターをめざしています。

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ファイバーゲートのコールセンターは、100%在宅勤務!地方のコールセンター出身の方や育児されている方など短時間しか働けない人も含めて、ライフスタイルの変化や暮らす場所など多様な働き方ができるように、コロナ前から在宅体制を整えています。

きっかけは社員が産休に入ることになったタイミングで、育児と両立できるように導入したそうです。「スタッフの負担が軽減されることは、結果的にお客さまの満足度向上にも繋がると思っています」とおっしゃっていたことが印象的でした。

ボイスボットやビジュアルIVRの活用で、従業員満足度も顧客満足度もさらなる向上に繋がると幸いです!

AI電話自動応答システム「MOBI VOICE」とは?

MOBI VOICEは、音声認識・音声合成エンジンを活用し、電話での問合せに24時間365日、自動で応答できるシステムです。管理画面へのログイン後、最短5分で電話自動応答サービス公開が可能で、注文や手続きの一次受付やオリジナルで作成したシナリオ・IVRでの自動音声対応や、自動発信で電話をかけ情報発信するなどアウトバンドコールも実現できます。

採用難で人手不足が深刻化するコールセンター業務や自治体の住民相談窓口、レストラン・店舗での問合せ対応を効率化し、顧客満足度やサービス品質向上をサポートします。最大で1,000件の同時対応が可能です。サービス障害・災害・新型コロナウイルスによる顧客や住民からの電話が殺到した場合にも、状況に応じて自動音声シナリオを即時作成できるため、BCP対応にも活用できます。

https://mobilus.co.jp/solution/voice