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株式会社NTTネクシアは、生成系AI(ChatGPT)の実証実験に、モビルスが開発したオペレーション支援AI「MooAⓇ」を活用し、オペレーターによる電話応対後の要約と応対コンテンツ(QA)の自動生成、オペレーター教育等への活用について検証を行いました。

実証実験の背景、得られた成果、今後の展望などについて、デジタル革新部 サービス開発・運用部門 サービス開発担当部長 島田氏、センター運営部 東日本センター部門 東北センター 青森センター マネージャー 白鳥氏にお話を伺いました。

※上記写真:(左から)NTTネクシア 島田氏、白鳥氏、モビルス 湯浅

事業内容コンタクトセンター事業、BPO事業
用途電話案内代行サービス「ハローダイヤル」の応対品質向上の実証実験にて、電話応対後の運用
実施時期2023年11月

■実証実験での導入製品

※記事中の肩書や内容はインタビュー当時(2024年3月6日)のものであり、本ページは2024年4月12日掲載のものです。

■背景

・デジタルチャネル拡大の中、応対品質のばらつきや応対コンテンツの管理に要する稼働が増加。
・電話応対内容を把握し、以後活用するにあたっての稼働が膨大。

■概要

生成AIを用いて
①応対履歴の自動投入。
②応対コンテンツ(QA)の自動生成。
③質問傾向や優良オペレーターの傾向把握による教育等の活用。
※検証コール数1万件

■成果

・アフターコールワークの効率化。
・QAの自動生成による一次回答精度の向上。
・オペレーターの教育・スキル向上等への活用。

■目次

・デジタルチャネル拡大で業務が多岐に、生成AIで効率化と人の負担軽減へ
・応対要約の均一化で品質レベルを平準化、オペレーターの育成にも役立つ
・運用から考えることで生成AIの活かし方が見えてくる
・コンタクトセンターが目指す次の姿、完全自動応答も視野に

デジタルチャネル拡大で業務が多岐に、生成AIで効率化と人の負担軽減へ

ーはじめに担当されている業務内容について教えてください。

島田氏:
新しいビジネスを起こすミッションの下、デジタル・IT面での全社サポートをしている部署で、サービス開発全般を担当しています。

白鳥氏:
企業・自治体様主催の代行案内サービス「ハローダイヤル」業務を行う青森センターでマネージャー業務を行っています。

ー実証実験に取り組むことになった背景・課題を教えてください。

島田氏:
電話応対に加えチャット応対などデジタルチャネルの拡大に伴い、応対コンテンツの管理など業務が多岐にわたり、効率化だけでなく人へのスキル依存をいかに減らすかが課題に挙がっていました。

2023年に生成AIが着目され始め、効率化や新たな業務開拓のために生成AIをどのように活用できるか考えていた際に、モビルスさんから「MooA(オペレーション支援AI)」を提案いただき、一緒に何かできないか話をしたことが始まりです。ほかのAIベンダーさんも検討しましたが、モビルスさんとは「MooA」の製品紹介だけでなく、そこから広がる可能性の議論を一緒にさせていただいたことが実証実験に踏み出す上で非常に大きかったです。

白鳥氏:
今回実証実験を行った「ハローダイヤル」は、ご登録頂いた内容を、専門のオペレーターがご契約者様に代わって案内するサービスです。1回の電話応対時間が平均3分、多いと1日で1000コールを受け付けることもあります。案内している応対量が多く、すべてを管理者側が把握することが困難で、その点が課題でした。実証実験では「MooA」を活用し応対内容の要約を自動生成することで、課題解決につながるか検証してみたいと考えていました。

<実証実験の概要>

実証実験の概要。お客さまとオペレーターの電話応対後の運用にオペレーター支援AI「MooA」を活用。応対履歴のログにて「MooA」が音声認識と高度な文字起こしを実施。文字起こし後に、①応対内容の要約、②応対コンテンツ(QA)、③項目別に応対評価を自動生成(オペレーター教育へ活用)。

応対要約の均一化で品質レベルを平準化、オペレーターの育成にも役立つ

ー実証実験によって得られた成果を教えてください。

島田氏

島田氏:
応対履歴の自動入力と要約の自動生成を検証した結果、オペレーターのアフターワークの効率化が可能なことが確認できました。AIによる応対要約は、精度が高く均一化が図れるため、効率化だけでなく品質レベルの平準化につながると考えています。オペレーター採用難の中で非常に大きな成果です。

白鳥氏:
この実証実験から仮にどのくらいの事後処理が削減できるかを計算すると、電話応対後の応対履歴の入力業務を生成AIが自動生成することで、1件あたり約2分の削減になります。月間の受電応対数は平均18,000件なので、生成AIを活用することで月600時間、年間7,200時間、オペレーター約4人分の時間削減が想定できることが分かりました。

島田氏:
AIにより自動生成された応対コンテンツ(QA)は、人間が作成する内容と同等の精度があり、今後、AIを活用することで、常に最新の情報に差し替えることが可能になることを確認できました。QA作成・更新稼働の削減が図れるとともに、一次応対精度の向上が期待できます。一方で、効果が出ることは分かりましたが、自動生成したQAに網羅性を期待するのは、生成AIの特性上向かないことが分かり、特性に合った使い方を考える必要があると思っています。

白鳥氏

白鳥氏:
項目別の要約アウトプットができるので、私たちが得たい顧客の満足点・不満点、改善への対策といった項目ごとの要約ができることが分かりました。教える側のスキルや価値観によらない客観的な評価のフィードバックができるため、応対品質向上やオペレーターのスキル向上・育成にも役立てられ、想定以上に満足しています。

運用から考えることで生成AIの活かし方が見えてくる

ー実証実験において「MooA」をご活用いただいた感想を教えてください。

島田氏:
実証実験をしてもすぐに実用化は難しいと考えていたところからのスタートでしたが、実際やってみると、「活用する我々次第だ」と実感しました。頭を切り替えて今まで通りのやり方でAIを使うのではなく、業務の仕方・運用から考えることで生成AIの活かし方が見えてくると分かりました。

実証実験に弊社が慣れていないこともあり、途中不安なこともありましたが、モビルスさんは「MooA」で出来ることだけでなく出来ないことや目指す姿なども含め率直にお話いただけたので、理解を深めることによってAIを使ってどういう運用をするべきかというところまで考えることができました。

白鳥氏:
要約ができてアフターコールワークに反映して、応対後の後処理作業時間が少し削減できれば良いと思っていましたが、結果は期待以上でした。要約結果を初めて見せてもらったときは、感動しました。数年前にリアルタイムで書きおこしをするシステムを見た時も感動しましたが、今回要約を見たときに技術がここまで進んでいることに驚きました。

業務の効率化だけでなく、オペレーターの育成面での活用や、将来的には完全自動応答のセンターなど、今後のセンターの在り方も変わってくるのではと想像が膨らんでいます。採用難・人手不足の解消にもつながるのではと期待しています。

コンタクトセンターがめざす次の姿、完全自動応答も視野に

ー今後の展望を教えてください。

島田氏:
今回の実証実験を通してプロンプト※の使い方によっては、単純な要約だけでなく、応対品質向上やコンタクトセンターがめざす次の姿の手がかりが見えたことも大きかったです。応対前、応対中、応対後に範囲を広げた運用についても引き続き検討できればと思っております。

実運用に向かうためには、ROIのインパクトも必要です。ROIを算出する上で、どのように測定するのかを、今後社内でも手順を確立していきたいと考えています。リアルタイムで利用するのか、一定期間の間隔で利用するのかなどでROIは変わるので活用方法のパターンを分析し評価していきたいです。

また、「ハローダイヤル」はデジタルと電話でコンテンツを一元管理できることをコンセプトにしているので、生成AIの活用で自動的に一元化できるものにしていき、将来的には「電話オペレーターのためのコンテンツ提供」から「完全自動応答」もめざしていきたいと考えています。

※プロンプト:システムに対して何らかの指示や要求を行う際に用いられるテキストや文字列、記号

ー生成AIの活用に向けて引き続き伴走させていただきます。本日は貴重なお話をありがとうございました!