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横浜銀行はコンコルディア・フィナンシャルグループの銀行、地域の金融システムの担い手として、「地域に根ざし、ともに歩む存在として選ばれるソリューション・カンパニー」を目指しています。インターネットバンキングの利用者増や新型コロナウイルスによる生活様式の変化など、昨今の銀行を取り巻く環境は変化しています。そのような環境下で、より店頭運営の効率化を推進する中、お客さま利便性向上や店頭窓口業務の効率化のため、2023年2月より、これまで店頭窓口および電話受付で取り扱っていた「融資・外国送金のお問い合わせ」業務にAI電話自動応答「MOBI VOICE」を導入しました。現在、一部店舗にて運用を開始しています。

製品導入の背景や運用方法、導入効果、今後の展望などについて、株式会社横浜銀行 事務サービス部融資・外為グループ グループ長 玉井氏、同グループ ビジネスアシスタントリーダー福島氏にお話を伺いました。

(インタビューは2023年3月14日に実施しました。<聞き手>モビルス株式会社 執行役員 :柏原、営業担当:中野)

組織名    株式会社横浜銀行
事業内容  銀行業
導入製品「MOBI VOICE」
用途「融資・外国送金のお問い合わせ」業務における一次対応の自動化
導入時期2023年2月

業務標準化や事務コスト削減を目指し、まずは電話対応効率化に着手

―抱えていた課題や導入に至った経緯等を教えてください

福島氏:
当行で融資業務を取り扱う融資課がある店舗が約30店舗あり、業務標準化や事務コスト削減を目的に、「融資課を本部へ集約しよう」という計画があります。
融資課がある店舗にかかってくる電話が非常に多く、まずはそれをどうにかしよう
というところから始まりました。

玉井氏:
当行では、融資に関連するコールセンターはいくつか持っています。例えば住宅ローンやカードローン専用の窓口もあるのですが、従来より店舗の融資課で受けている受電は、それに当てはまらない本当に多岐に渡る相談がきています。そのため、一次受付で電話に出ても即座に対応できる事が少なく、大体は取引状況等を調べてから折り返しとなる事が多かったのです。

柏原:
融資課さんにはコールセンター自体はなくて、課にいらっしゃる方が全員で、対応出来る方が電話に出られるような体制だったのでしょうか?

玉井氏:
おっしゃる通り、大体融資課と言いますと課長がいて行員の役職者が一、二名、あと担当者やパートさんで構成されている、多くても十名もいないぐらいの課がほとんどです。そういった中で誰かが他の事務もやりながら電話に出る、というのが実情でした。

柏原:
ありがとうございます。そういった電話はもともとどのくらいかかってきていたのでしょうか?

玉井氏:
1店舗あたり1日10件から20件ぐらいは電話がかかってくる、という状況でした。

本部や店舗の異なるメンバーが全員使いやすい操作性

ー導入の際のポイントや、決め手となったことは何でしょうか

福島氏:
営業店の融資課を本部に集約することにともない、受電業務も本部集約することとしましたので、最初はコールセンターを作って、いわゆる大人数体制でやろうとしていたのですが、それではかなり費用がかかることに加え、同時に多くの電話がかかってきた場合、お客さまを長くお待たせしてしまう可能性があるなどの課題がありました。
そのような中で電話の問い合わせを1件も取り残さない、ボイスボットの「効率性」に魅力を感じました。

柏原:
コールセンターからボイスボットにしていこうという大枠の方針は、割と早めの段階から決まっていらっしゃったのでしょうか?

福島氏:
最初の方はコールセンターを設置するために何が必要かと色々調べている中で一ヶ月ぐらいが過ぎてしまいました。

そのような中でも冒頭でお伝えした「融資課を集約する」という施策が刻々と進んでいき、「どうしたらいいだろう」と悩んでいました。一方で、私自身が私生活でボイスボットに触れる事があり「ボイスボットのような仕組みを導入したら課題解決するかな?」と考えるようになりました。やはり銀行は性質上「硬い」ところもありますが、「将来のために、こういう新しい事もやっていかなければ」と思いながら、推進していきました。
選定にあたっては、操作が簡単に出来たり、メモ機能があったり、自分たちがやりたいことに対して融通がきくような製品を求めていて、複数社で比較していました。その中で、MOBI VOICEは費用と当行の求める機能が合致していました。

あと「システム改善や新機能開発が結構頻繁に行われている」という点も担当営業の中野さんから伺い、魅力に感じました。

柏原:
色々他社さんのボイスボットも見ながら比較検討された時は、どれぐらいのお時間をかけて調査・比較検討されていたのでしょうか?

福島氏:
そうですね。卓上でどのような会社があるかの調査を行い、そこから資料請求したり、直接話聞いたり等、全部を合わせると2週間ぐらいです。

柏原:
先ほどのコールセンターからボイスボットへ方向転換し、ボイスボットから具体的に決めるまで、かなりスピーディに動かれていたのですね。

福島氏:
昨年12月ぐらいにモビルスさんに伺い、本格的に導入の方向性を定め、それから導入まで2ヶ月もありませんでしたが余裕をもって導入できました。相談から半月ぐらいで本番環境を入れて頂き大変感謝しております。

福島氏:
ボイスボットを提供する会社が本当に多くある中で、「どこがよいのだろう?」とすごく悩んでいた時期がありました。私が決めていたのは価格と操作性です。「本部の者、現場担当、設定者の誰もが使いやすいのはどれか」というのを一番重要視していました。

柏原:
操作性という部分で他社のボイスボットと比べてMOBI VOICEではこの点が良いという所はございますか?

福島氏:
たとえば「メモ機能」が良いと思いました。他社製品はメモ機能など一切なくて、「文字化される」「録音音声が聞ける」という機能のみが多かったです。あとは「記録期間」の長さも良かった点です。他社製品は二日ぐらいで消えるというのが多かったです。「もっと長い期間残せないですか?」と相談したら「開発費が追加でかかります」と言われてしまいました。1週間ぐらいお客さまと連絡繋がらない時もあるので、当行の運用には合いませんでした。

柏原:
導入までで一番重要だと思ったポイントや印象に残っているポイントはどのあたりでしたか?

玉井氏:
まずは、やはり先ほども申し上げた通り、メモが残せないと「誰がどれを対応している」かをスムーズに認識できません。
組織として漏れや重複のない運営をしなければなりませんので、そのポイントが必須だと考えていました。
また、担当営業の中野さんはじめモビルスの皆さんが、非常にスピーディに動いて頂いたことが印象に残っています。

柏原:
少し話はそれますが、お客さまが発話する時に「お名前や電話番号などの個人情報がツール上に残る」点は、どのように整理されたのでしょうか。

福島氏:
個人情報の取り扱いについては一定のルールがあり、そのルールの中で検討した結果、使用しているサーバー、パスワードやIDの管理方法なども含めたセキュリティチェックシートや当行のITコンプライアンス部門の審査を受けることで、整理を行いました。 

柏原:
なるほど。そこは他の銀行様でもセキュリティ上の問題解決のヒントとなりそうですね。

現場と一緒に構築したMOBI VOICEシナリオ

―シナリオ作成や運用体制について教えてください。

玉井氏:
現場で実際に問い合わせをうけるメンバー(これまでに営業店で受電をうけた実績がある者)による「こんな言い回しならどうか」等の意見を取り入れながら、一つ一つシナリオを作っていきました。

柏原:
なるほど、その過程で何か大変だった事はございますか?

福島氏:
各メンバーの「感覚」によって意見がさまざまなことです。例えば丁寧に文章を作ると、私よりもっと上の役職者からは「表現がくど過ぎないか?」と言われたり・・・。「親切だな」と感じるか「長い」と感じるのか色々あると思います。そのような中で、皆がある程度納得してものを作っていくっていうのが結構難しかったなと思います。
また、自動音声の「速さ」もポイントでした。もともと店舗にかかってくる電話の自動音声と「速さ」「女性の声のキー」が、MOBI VOICEの音声案内と比べた時に違和感がないか、というのは難しかった所です。
このあたりの調整も、実際に受ける人に「どれが一番いいか」を確認したり、コールセンターを管轄している部署に相談しながら進めていきました。

柏原:
運用開始後のシナリオ調整はいかがでしょうか。

福島氏:
運用開始してから、まだ大きなシナリオ調整はしていません。「営業時間外には折り返しのご連絡ができません」ということをすこし追加したぐらいです。
このような追加や修正については、現場から意見があったら私の方ですぐ玉井に協議を回しまして、玉井が決裁をする権限をもっているので、MOBI VOICEの管理画面ですぐに2、3時間でシナリオを調整できるようにしています。

柏原:
MOBI VOICEでの一次対応後の折り返し連絡は、入電のどのくらい後にされていらっしゃいますか?

福島:
折返しまでの時間は本当に内容によります。問い合わせは多岐に渡っていて、「これはAですか?」というご質問に対して「Aです」とすぐに回答できるものもあれば、「これはAからZの中でどれですか?」という問い合わせも頂くので、5分で返せるものもあれば30分ぐらいかかるものもあります。また人の少ない日や立て込んでいるタイミングなどは、午前中に頂いたお問い合わせに対し、午後の回答になることも稀にあります。

柏原:
お問い合わせ頂いた電話には、すべて折り返しているのでしょうか?

玉井氏:
電話番号が録音されていれば折り返しのご連絡をしています。電話番号が入っていない場合でも、お客さまを特定できた場合は折り返しています。対応する担当者については、電話受電のみをおこなう部署ではないため、その日の状況にあわせ、折り返しを行う担当者を決めています。そして、例えば複雑で難しいお問い合わせは上司が引き取ったりしています。

お客さま利便性向上と業務効率化を両立

ー導入後の効果について教えてください。

福島氏:
現在4店舗を対象に導入をしており、4店舗合計で、無言も合わせて1日に40件~60件の受電があります。

玉井氏:
導入前と受電件数は変わっていません。なにも吹き込まないで切ってしまうお客さまも一定数いらっしゃいますが、クレームにはなっていない状況です。
やはりお客さまに声を吹き込んでいただくという部分は、クレームにならないか心配でした。というのも、お客さまのなかには、リアルタイムでのやり取りを希望される方も多くいらっしゃるため、電話をいただいたタイミングでダイレクトに行員と会話ができないことについては、懸念がありまいた。
しかし、ふたを開けてみると、意外と皆さまが普通にメッセージを吹き込んで下さっていて、これは本当に良かったなと思っています。

中野:
高齢のお客さまからの「使いにくい」というお声や「年齢による使いにくさ」という点はございませんか?

玉井氏:
高齢のお客さまからはまだ意見をいただいたことはございません。

柏原:
なるほど。吹き込む事自体はかなり受け入れて頂いている印象でしょうか。

玉井氏:
そうだと思います。「名前をお伝えください」という部分に「名前から電話番号から用件から全部お話されている」というお客さまも中にはいらっしゃいますが、ただ自動メッセージや吹き込む事自体はそんなに嫌じゃないだろうな、という印象を持っています。

福島氏:
また導入効果としては、もともと「融資課のすべて業務を本部に集約しよう」という計画で行っていたので、店舗に融資の電話がかかってこないことが目標でした。ですので、融資に関する電話が4店舗合計でほぼ0となった事は、すごく効果を感じています。
さらに導入前に行っていた「内容をお電話でうかがってから、また折り返しのご連絡をする」という工程が一つなくなったので、非常に良かったです。

玉井氏:
1日40件、多いと60件ぐらいお電話がある中で、いつ鳴るか分からない、同時に鳴るかもしれない、こういう状況ですと多くのスタッフを配置する必要があります。現に店舗に融資課があった頃は、パートさんだけでも毎日4店合計で10名以上が対応していたのですが、本部集約後は2,3人で乗り切れています。
また、先ほど申し上げた通り、MOBI VOICEを導入せず、コールセンターとした場合一度お調べして折り返しとなるので、電話対応が2回となりますが、MOBI VOICEを導入したことにより、電話対応を1回に出来るという点が非常に大きな効率化だと思います。

柏原:
現場で実際に対応されている方からの反応はいかがでしょうか?改善点等もあれば教えてください。

福島氏:
「MOBI VOICEの管理画面で内容が分かってとても楽」「何回も聞かなくていい」というポジティブな反応はありました。

玉井氏:
改善点としては、対応済の案件と未対応の案件との判別や、無言のまま切電されたもの(=対応不要)が一覧で確認できず、個別に案件を開くまで分からないという点です。個別に開いて戻ってとやっていると、非常に時間が掛かかります。今は紙で一覧を打ち出して一定時間ごとに更新して打ち出すアナログな運用になってしまっています。
これ以上対応件数が増え、対応人数も増えた時に、このままでは厳しいと思っています。

柏原:
受電リストの一連があり、そこの画面でチェックボックスと対応された方のお名前を入力できるなど、それだけでも操作性があがりますか?

玉井氏:
そうですね。且つ、「チェックが付いているもの」「付いてないもの」をソート出来るなどそのような機能があるとよいです。

柏原:
分かりました、当社のプロダクト開発担当部門にしっかりとフィードバックをさせて頂きたいと思います。

お客さまにとって「より分かりやすいサポート」を目指して

ー今後の展開について教えてください。

玉井氏:
あと30店舗融資課がある店舗が残っていますので、この2、3年でそちらへの導入を予定しています。

福島氏:
また、今回培った経験を融資課のみでではなく他の部にも活かしたり、ホームページや店舗からの導線なども検討してみたりしていきたいと考えています。

玉井氏:
当行で目指すべきお客さまサポ―トの姿として、「より分かりやすくしていく」という必要があると思っています。ホームページ一つ取っても、なにをどこに聞けばいいのか分からないという声がまだまだお客さまからありますし、分からないからこそ「とりあえず全部の問合せが融資課にかかってきてしまっていた」というのがこれまでの状況です。そのため、たとえばホームページからのIVRなどでより分かりやすい導線を作っていくという事も重要だと考えています。