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株式会社横浜銀行|AIエージェント型ボイスボット導入で住宅ローン年末残高証明書の再発行などの受付のうち約9割について折り返し電話が不要に

生成AIの補正能力で曖昧な発話表現にも柔軟に対応。業務平準化と顧客満足度の向上を両立

株式会社横浜銀行は、2025年10月よりローンに関する5つの証明書の発行申請を電話で自動受付するサービスを新設し、その受付業務にモビルスの生成AIを活用した「AIエージェント型ボイスボット」を導入しました。同年11月に対象の証明書を1つ追加し、6つの証明書で運用を行っています。

2023年2月から融資・外国送金の問い合わせ窓口にボイスボット「MOBI VOICE(モビボイス®)」を導入していましたが、新たなサービスにおいては、より人に近い自然な応対と顧客状況に応じた正確なヒアリングを実現するため、3カ月の実証実験(PoC)を経て「MOBI VOICE」の新機能である「AIエージェント型ボイスボット」の正式導入に至っています。

導入の背景、運用方法や導入効果、今後の展望などについて、事務サービス部 担当部長 山崎 彰氏、事務サービス部 融資・外為グループリーダー 福島 周平氏、事務サービス部 融資業務センター グループリーダー 古田 敬介氏にお話を伺いました。

※上部写真:(左から)横浜銀行 古田氏、福島氏、山崎氏
※記事中の肩書や内容はインタビュー当時(2026年3月25日)のものです。

企業プロフィール

事業内容
銀行業
用途
ローンに関する6つの証明書の発行申請の受付業務
導入時期
2025年10月

導入サービス

課題

  • 年末に向けて住宅ローン年末残高証明書の再発行の電話問い合わせが集中するなど、特定時期の入電集中で「あふれ呼」の発生や応対の負荷が高くなっていた。
  • 従来のボイスボットでは途中離脱や入力不備が多く、全ての入電に対して行員が目視で顧客データと照合し、折り返し連絡を行う必要があった。
  • 一部の証明書では発行依頼書のやり取りを郵送で行っていたため、発行までに数日を要し、顧客・銀行双方の負担となっていた。

施策

  • ローンに関する証明書の発行申請を対象とした電話自動応答サービスを新設し、生成AIを活用した「AIエージェント型ボイスボット」を導入。
  • より人に近い自然な応対、および顧客状況に応じた正確なヒアリングや顧客の曖昧な発話表現の補正を行うことで、自動で受付を完結させる体制を構築。
  • 金融機関特有の厳しい要件をクリアするため、業務外の回答を防ぐ設定やセキュアな環境を整備。
  • 3カ月間の実証実験(PoC)を通じて、支店名や住所の補正精度を現場レベルで検証し、正式導入に至った。

効果

  • 受付精度の向上により「住宅ローンの年末残高証明書」など一部の証明書発行手続きのうち約9割が折り返し電話不要で完結、自動応答での受付完了率を大幅に向上。
  • 繁忙期における担当者の電話応対時間を短縮し、本来注力すべき専門業務に集中できる環境を整備。
  • 郵送で行っていた「発行依頼書のやり取り」をボイスボット上での承諾取得に置き換えたことで、最短で受電当日の発行が可能になり、サービス品質が向上。
  • AIが一定のルールで受付を行うことで業務の平準化が可能になり、郵送業務が削減され、行員の負荷も軽減。

年末の繁忙期に問い合わせが集中。手動での照合作業が大きな負担に

―はじめに、担当されている業務内容について教えてください。

山崎氏:私は事務サービス部において、融資・外為の事務の企画・集中化・合理化を担っています。実務を行う部署と連携し、銀行全体の事務効率を高めることがミッションです。


福島氏:私が所属する融資・外為グループでは、手作業で行っていた業務や問い合わせ対応などのシステム化を推進しています。今回のAIエージェント型ボイスボット導入もその一環です。

古田氏:実務を担うローン業務グループのリーダーとして、住宅ローン関連の証明書発行や金利引き下げの審査など、営業店から集約された専門業務を担当しています。

事務サービス部 融資・外為グループ リーダー 福島 周平氏

―AIエージェント型ボイスボットを導入する前に、直面していた課題を教えてください。

福島氏:銀行全体の融資や為替に関する事務作業は膨大で、特に住宅ローン関連の業務は多岐にわたり、証明書発行・再発行や、金利引下げの相談、団体信用生命保険の手続きなど、営業店が従来行っていた専門性の高い業務の一部を本部で集約して行っています。しかし、電話による問い合わせが特定の時期に集中する傾向があり、限られた人員でいかに丁寧かつ効率的に応対するかが課題となっていました。


古田氏:年末調整や確定申告の申請に使用される住宅ローン年末残高証明書は、年末に向けて再発行の問い合わせが集中し、月間で最大約1,600件(1日最大約150件受付)の電話等問い合わせが発生しています。

以前から他の業務でボイスボット「MOBI VOICE」を導入し一次受付を自動化していましたが、記録された支店名や口座番号の間違いがみられ、ボイスボットで受付した内容をすべて確認し、折り返し電話をする必要がありました。


福島氏:また、これまでは電話受付後に一部の証明書※1について発行依頼書を郵送し、返送後に発行するという手順を踏んでいました。この郵送コストと発行までのタイムラグを解消し、よりスピーディーにお客さまへ書類を届けたいと考えていました。


※1:対象の証明書は、残高証明書、借入金利息証明書、返済予定表、融資取引明細表(住宅ローン年末残高証明書、完済証明書は無料であるため、口頭にて発行依頼を受け付けていた)

〈AIエージェント型ボイスボットでの各種証明書の発行受付の流れ〉

①顧客が横浜銀行の問い合わせ窓口へ電話し、ガイダンスに従って証明書の発行を選択

②AIエージェント型ボイスボットが自動で受付を開始

③顧客が取引店舗名や発行を希望する証明書など必要情報を回答

④顧客が曖昧な発話表現をしても、AIエージェントが登録された店舗情報や既存情報から自動で参照・推測し、高い精度で候補となる回答を提示

⑤それでも顧客の発話表現が曖昧な場合は、さらに自然な問い返しを行い、正確な情報を取得し発行申請の受付を完了

(そのうえで追加質問が必要な場合は、オペレーターが折り返し電話で確認)

⑥本部担当者が問い合わせ内容を確認し、証明書を発行


生成AIによる曖昧な発話表現の補正と、銀行基準のセキュリティを両立

―AIエージェント型ボイスボットの導入に至った理由を教えてください。

福島氏:最大の理由は、生成AIによる対話の柔軟性と曖昧な発話表現の補正が可能な点です。お客さまが発言した支店名を登録情報や既存データの一覧と照合したり、住所の誤入力や回答が不完全な場合は自然に問い返しを行ったりして、必要な情報を聞き取って申込を完了まで導くため、後続の事務作業をスムーズに開始できると考えました。


2025年6月から3カ月間にわたる実証実験(PoC)を実施し、申込の開始から申込完了までの工程を自動化できることを確認し、ローンに関する証明書の発行・再発行受付の電話自動応答サービスにAIエージェント型ボイスボットを導入するに至りました。


AIエージェント型ボイスボットの聞き取りイメージ

山崎氏:対話の柔軟性に加え、銀行特有のセキュリティ要件をクリアできたことも決め手です。また、スモールスタートで効果を検証しながら進められるモビルスのサポート体制があったので、安心して導入できました。

―金融機関として、生成AIの導入に不安はありませんでしたか?

福島氏:生成AIが意図しない回答をする「ハルシネーション」や、悪意ある入力(プロンプトインジェクション)への懸念は当然ありました。しかし、モビルス側で導入前に適切な「ガードレール※2」を構築し、業務外のことを行わないセキュアな環境を用意してくれたことで、お客さま向けサービスとしての導入が可能と判断しました。


※2 ガードレール:ハルシネーション(嘘)、情報漏洩、有害コンテンツの生成を防ぐため、AIの入出力を監視・制御する安全対策の仕組み


一部の証明書で約9割の受付が折り返し電話不要で完結。業務の平準化とスピード発行を実現

―導入後の定量的な効果はいかがでしょうか。

福島氏:「住宅ローンの年末残高証明書」といった一部の証明書発行手続きでは、問い合わせの約9割が折り返し電話不要で完結しています。証明書6つ全体で見ると折り返しにかかる時間を、4カ月間で約65時間削減しました。年間で約175時間削減できる見込みです。

以前のボイスボットに比べ、支店名や住所の修正能力が非常に高く、入力精度の向上を実感しています。存在しない支店名が出た際に生成AIが候補を提示するサポート機能も有効に働いていますね。


注意点の説明などを含めると応対時間は10~30分にも及びます。AIエージェント型ボイスボットが証明書発行手続きを受け付けるため、行員の応対業務も軽減できています。


承諾を取るための郵送によるやり取りをなくしたことで、最短で受電したその日に発行手続きを完了できるようになりました。急ぎの書類を求めるお客さまへのサービス品質は飛躍的に向上したと言えます。行員が郵送作業に充てる時間も4カ月で約90時間削減できています。年間では約270時間削減できる計算です。


また、現在は全受電に対して導入していませんが、全受電に対して導入すれば上記の数倍の効果があると予測しています。

事務サービス部 融資業務センター グループリーダー 古田 敬介氏

―現場の皆さまの反応や、定性的な変化についても教えてください。

古田氏:業務の「平準化」ができたことが大きいです。有人対応では「至急で」というリクエストに追われがちですが、AI受付でヒアリング項目が固定されたことで、無理な残業をせず翌日に回すといった時間的な区切りが可能になりました。


山崎氏:お客さまにとっては、一度の電話で問い合わせの目的である「手続きの受付完了」が達成できるため、利便性や満足度向上につながっています。

電話が鳴り続ける状態は、待たされるお客さまはもちろん、オペレーターにとっても心理的負荷が高いものです。AIが「ダム」のように一旦せき止めてくれることで、現場に安心感が生まれていると感じています。

事務サービス部 担当部長 山崎 彰氏

福島氏:また、文字起こし機能が「えっと」「あの」といった不要な言葉を自動で省いてくれるため、内容確認の効率も上がっています。

―弊社のセールスやカスタマーサクセスのサポート体制はいかがでしたか?

福島氏:単なるシステムの提供に留まらない「生成AIの専門家としての伴走」は大変心強いです。運用開始後のプロンプト修正依頼に対しても迅速に対応してくれて、現場のニーズに即した微調整を行ってくれました。導入して終わりではないサポート体制が有難かったです。


また、他社の導入事例や工夫されているノウハウを惜しみなく共有してくれるため、自社だけでは気づけなかった「高齢者に寄り添う応対」などの新しい視点を得ることができました。電話番号を分割してヒアリングしたり、「ちょっと待ってね」「どこかしら」と言った際に「ゆっくりで大丈夫ですよ」など生成AIが返答するといった高齢者に寄り添う応対ができる機能も将来的には使っていきたいと考えています。

―今後の展望を教えてください。

福島氏:今後はWebサイトのよくある質問(FAQ)知識をAIエージェントに組み込み、電話でのFAQ検索や折り返し予約機能(リダイヤル予約)の導入を計画しています。また、生成AIを活用した「用件分類」にも期待しています。問い合わせ段階でお客さま自身が何を求めているのか正確に把握できていない場合も多く、オペレーターが対話を通じてニーズを導き出していたプロセスが、生成AIを導入したことでわかったことです。お客さまの曖昧なニーズ表現をAIがヒアリングし、適切な担当へ振り分ける仕組み(横浜銀行電話一本化)を作りたいですね。


古田氏:お客さまが話した情報の一致・不一致を自動で照合し、融資番号を調べるところまで自動化できると、後続処理が大幅に短縮されます。口座番号を自動ヒアリングして融資番号まで紐づけできるようにしていきたいと考えています。


福島氏:銀行内のデータベースとAIエージェント型ボイスボットを直接連携させ、顧客が話した内容を自動で照合し、後続処理までを全自動で行う仕組みの構築を目指します。

当事例のサービス紹介

ご導入いただいたサービスの資料はこちらからご覧いただけます。

MOBI VOICE(モビボイス®)は、電話の問い合わせ対応をAIで自動化するシステム連携に優れたボイスボットシステムです。AI連携による高度な自動応答と、PBXやCRM、個別DB連携など、拡張性に富んだ運用によって、CX向上が実現できます。

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