SBIいきいき少額短期保険株式会社は、SBIホールディングス株式会社のグループ会社です。通院・治療頻度が高くなることがあるペット医療において、「SBIいきいき少短のペット保険」では、従来の都度郵送で行う保険金請求にかかる手間の軽減、効率化の要望がお客さまより多く寄せられていました。そこで、「MOBI BOT」、「MOBI AGENT」と顧客管理システム「Salesforce」を連携することにより「LINE公式アカウント上での保険金請求手続き」および「本人確認・契約内容確認の自動化」を実現、2022年5月より運用を開始しています。
運用開始から2年が経ち、運用面や導入効果の変化、今後の展望などについて、経営企画部長 鈴木 邦広氏、業務部 部長 荻野 英雄氏にお話を伺いました。
※上部写真:(左から)モビルス 石川、SBIいきいき少額短期保険 鈴木氏、荻野氏
SBIいきいき少額短期保険さまの事例紹介をまとめた導入事例PDFは
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事業内容 | 少額短期保険業 |
用途 | LINE公式アカウント上での保険金請求手続き 本人確認・契約内容確認の自動化 |
導入時期 | 2022年5月 |
■導入製品
※記事中の肩書や内容はインタビュー当時(2024年4月5日)のものです。
■課題
- ペット医療は通院・治療頻度が高くなることがあるため、毎回、保険金請求のやり取りを郵送で行うことに顧客から改善要望が寄せられていた。
■施策
- LINEを入口にし、ペット保険金請求時の本人確認、契約および口座情報を「Salesforce」と連携し、請求手続きの完全自動化を実現。
■効果
- 一週間ほどかかっていた請求手続きが約15分で完了し、支払いまでの期間も15営業日から9営業日に大幅短縮。
- 導入から2年でLINEでの請求比率が約50%へ。
■目次
・保険金支払いまでの所要日数を大幅に短縮し、CXを向上
・AIで診療明細の読み込みから査定まで自動化し、さらなる工数削減へ
・導入から2年、LINEでの請求比率は約50%ヘ
・請求件数は約2.3倍に増加も入電数は横這い、業務効率化にも大きく貢献
・「保険に入ってよかった」と思える顧客の成功体験を後押ししていきたい
保険金支払いまでの所要日数を大幅に短縮し、CXを向上
―はじめに、担当されている業務内容について教えてください。
鈴木氏:
経営企画部で会社の組織体運営や事業計画策定とその進捗管理などを行っています。
荻野氏:
業務部は、契約後のアフターフォロー、契約の維持・メンテナンス、保険金支払い時の判断といった、保険契約に関する営業以外の3つのフェーズを担当している部門です。当社の保険商品におけるバックオフィス機能全般を担い、制度の企画・設計、会社における保険引受や保険金支払の決定等を行っております。
ーLINEを入口にした保険金請求サービスを開始してから約2年ほど経過しました。現在において解決できたこと、まだ解決できていないことをお教えください。
荻野氏:
CX(顧客体験)という観点では、導入前からの課題であった保険金請求から支払までの、お客さまの体感所要日数を大きく改善できました。導入前は、紙の保険金請求以外に手段がなく、お客さまが保険金請求をする際にお電話をいただいて請求書類をお送りし、お客さまから当社に返ってくるまでに一週間ほど時間がかかっていました。書類を郵送しても不備等があると、さらに時間が延び、請求したいと思ってから保険金が支払われるまでとても長く感じてしまう状況でした。
LINEを入口にした保険金請求は約15分で完了でき、支払いまでの期間も15営業日から9営業日に短縮できています。
その結果、多くのお客さまより「LINEで請求できるので便利」「保険金の支払いがスムーズだった」「手続きが簡単」というお声をいただいているので、当初の課題は解決できていると考えています。
一方で、請求手続きをもっと簡単に便利にできるのではという課題もあります。複数の通院をまとめて請求される場合に、「2回目の通院内容の入力が少し煩雑だった」という感想もいただいており、2回目以降の通院の入力を簡単にできないか検討中です。
他にも、診療明細の画像をアップロードいただき、我々が目視で確認し不備が在れば返信する流れになっていますが、人の目視チェックが入る分、反応が遅れます。アップロードいただいてから翌日や翌々日に「不備があるので受け付けられません」と返信することもあります。申請後のタイムラグを短縮できるようにしたいです。
まだシームレスな不備解消の仕組み化はできていませんが、AI-OCR※を用いた非定型帳票(診療明細項目)の読み取りのシステムを、専門のベンダーと協業で当社用にカスタマイズし、非常に高い精度で読み取ることを実現しています。どのようにLINE公式アカウント上に反映し、判定していくか、今後詰めていく段階です。
AIで診療明細の読み込みから査定まで自動化し、さらなる工数削減へ
荻野氏:
LINEでの請求対象範囲はこれまで「1回の通院の費用が2万円以下、かつ、契約後1年超の契約」でしたが、2023年4月から1回の通院の費用を5万円未満に拡大しました。
LINEでの請求は、我々の「人は人が見ないといけないものだけを見る」というコンセプトで導入した仕組みの一つであり、上記条件を満たさないものは「人が見るべきもの」と考えています。
例えば、ご加入後早期にご請求される場合、ご加入前からワンちゃんや猫ちゃんが病気だったりすることもあり、告知義務違反で契約を解除しないといけなかったり、お支払いできない対象の場合もあります。
LINE経由の請求はこういった保険金をお支払いできないリスクが低く、早くお支払いが可能な請求に限定しています。
鈴木氏:
LINEでの請求対象範囲を限定することで、AI OCRで診療明細を自動で読み込んだ後、AIによる自動査定も実現可能だと考えています。LINEで入ってきた請求は不備の解消から査定まで自動化できると、明確な工数削減になり、保険金支払いまでを数分で完結し「LINE上で保険金を指定口座にお支払いしました」とそのままお知らせできると考えています。
そうなればペット保険業界として先行他社さまが導入されている、窓口精算という仕組みに加え、ペット保険ユーザーにとっては廉価なコストでありながら、同程度の早さで保険金を受け取ることが可能となる、新しい請求方法の選択肢を提供することができると思っています。
「管理コストがかかり、やや割高な保険料だが、手続き全てを代行してくれて実質的な支払いも早い窓口精算」と、「自身で入力する手間はあるが、割安な保険料で同程度に支払いが早いAIによる自動支払」。当社はSBIらしく新たなテクノロジーを使って、後者のような新しい価値や選択肢をユーザーに提供することによって、ペット保険業界全体がより便利になることを目指していきたいと考えています。
導入から2年でLINEでの請求比率、約50%ヘ
ー運用における変化点を教えてください。
荻野氏:
LINEでの保険金請求の利用比率は、後続事務の負担を考え段階的に拡大すべく案内等を行ってまいりましたが、右肩上がりで増えていっている状況です。今では、保険金請求の約50%がLINEでの請求になっています。
今後は60%くらいまで伸びると予測しています。一方で、どこまで紙からLINEへ移っていくか、コスト面等を勘案するとLINEでの請求の方が優位なのですが、その割合もどこかで頭打ちとなると思っており、今はそこを見極めている状況です。
LINEの友だち数は、2024年3月末時点で18,553人です。サービスの告知は、これまで通り契約者さま向けの広報誌でのご案内と、紙請求された方へ郵便請求完了の通知内にLINEのQRコードを印字して誘導を図る施策のみで、自然体で増加している状況です。ペット保険特有の事象ですが、比較的飼い主さま間のコミュニティや口コミ等を介して評判が広まる流れがあるようで、LINEで保険金請求を経験した方から広まっている可能性も十分に考えられるものと思います。
鈴木氏:
当社の保険サービスは価格が強みだと考えていましたが、値上げしても新契約数が落ちることはありませんでした。安いというイメージが浸透していているのかもしれませんが、口コミの影響が大きいようです。お客さまへのインタビューでも、5人中5人が「友だちから評判が良いと聞いたことがきっかけ」と答えていました。
荻野氏:
当社の契約者層は50代以上の女性が多く、どちらかというとSNSより散歩仲間などリアルなコミュニティでの口コミの影響が大きいと感じており、この点は侮れないと実感しています。
請求件数は約2.3倍に増加も入電数は横這い、業務効率化にも大きく貢献
ー弊社サービスの導入後、カスタマーサポートの業務効率や生産性の向上に変化はありましたか?
鈴木氏:
LINEによる保険金請求を導入した当時の保険金請求の件数は約2,800件/月でした。現在は、約6,500件/月の保険金請求をいただいており、当時の約2.3倍となっています。一方で、当社コールセンターに対する保険金請求希望の入電数は、導入当時は約1,200件/月ですが、請求件数から推定すると、およそ2,500件/月になるところ1,200件/月と現時点でもほぼ変わっていない状況であり、1,300件程度の入電削減効果があったものと想定できます。LINEによる保険金請求を導入したことで、CXを向上させただけではなく、コールセンターのオペレーターの業務効率化にも大きく貢献しています。
ーカスタマーサポートにおける当社サービスは、どのぐらい顧客満足度の向上に影響を与えましたか?
荻野氏 :
顧客満足度等の定量的な指標との明確な相関までは分かりませんが、ペット保険金をお支払いしたお客さまから、「LINEによる請求ができるようになり、本当に便利になった」というお言葉は多くいただいている状況です。
鈴木氏:
お客さまにとっての保険の価値は保険金支払いです。それをすぐにLINEで行えることは大きな価値になっていると思います。
モビルスさんには、改善のための調査やそれに向けたユーザー目線での提案等をいただけることや、LINEアカウント運用でお客さまがどのようなことでお困りなのかを他社事例等も交えながら提案形式でソリューションを複数掲示いただけることを、非常に心強く思っています。
「保険に入ってよかった」と思える顧客の成功体験を後押ししていきたい
ー今後の計画や、カスタマーサポートの方針についてお聞かせください。
荻野氏:
保険という商品における一番の顧客の成功体験の場は、保険金受取の場面です。困っている方にどれだけ正確に早くお支払いできるか。支払い日数10日以内をキープすることが直近の目標です。もちろんそれ以外のカスタマーサポートもありますが、目に見えない金融商品である以上、「保険に入っていてよかった」と思える場面こそ我々が追及する顧客価値だと考えています。いかに迅速・正確・丁寧に保険金をお支払いするかということで、保険金請求から支払までにかかった日数をKPIに掲げて運用しています。
我々が2年半くらい前から描いてきた次期事務体制の構想を実現することにより、これまで増加してきた事務コストやそれに係る人件費を大幅に圧縮することができます。モビルスさんにご尽力いただいたLINEを使った保険金請求については、今後、LINEで請求後、即支払いのような仕組みが実現できれば良いと思っています。
鈴木氏:
LINEのこれからの活用では、保険料収納の手続きや口座変更など様々な保全機能を設けることによって、お客さまの利便性や成功体験を後押しできると考えています。また、AI OCRなどを活用した画像不備を無くすことで、さらなるコスト削減ができ、お客さまへ還元できるような流れを作っていきたいです。
※ AI OCR:OCR(Optical Character Recognition)とAIを融合させた光学文字認識機能技術のことで、画像中の文字を認識してテキストデータへと変換します。AI技術との組み合わせにより、従来のOCRに比べ文字認識精度などが向上しています。
ーさらなる展開へ向け、引き続き尽力して参ります。本日は貴重なお話をありがとうございました!
いかがだったでしょうか?今回はSBIいきいき少額短期保険さまの導入から2年経過後の状況をご紹介させて頂きました。導入以降改善を繰り返していきながらDX化を加速させている好事例と言えます。導入時の事例紹介はこちらをご確認ください。
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