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数千に及ぶ製品を保有する株式会社バッファローは、入電数削減と顧客利便性向上のため、2017年より「LINE」のチャットサポートを開始し、オペレータによるチャットの問い合せ対応を行っています。

LINEの有人チャット問い合わせが50%に迫る株式会社バッファローの、お客さまサポートの現在地とこれまでの取り組み・これからについて、品質保証部 CS課長 嶋田氏、CS課CS係長 平塚氏、CS課 中塚氏、CS課 八釼氏に伺いました。また、協同で取り組む業務委託先である株式会社NTTマーケティングアクトProCX CXソリューション部 鵜森氏、藤原氏に同席いただいております。(中塚氏にはオンラインでご参加いただきました。)

※上部画像:左より、バッファロー株式会社 八剱氏、平塚氏、嶋田氏、
株式会社NTTマーケティングアクトProCX 鵜森氏、モビルス株式会社 柏原、小林

組織名株式会社バッファロー
事業内容デジタル家電及びパソコン周辺機器の開発・製造・販売及びデータ復旧サービス
導入製品MOBI AGENT, MOBI BOT
用途LINEでの有人チャット対応
導入時期2017年

インタビュー実施日:2023年9月20日

■課題

・ノンボイスシフトのためのLINE利用率向上
・顧客満足度向上

■施策

・電話、Web、メール、X(旧Twitter)での案内による認知度向上
・土日サポート受付開始
・LINE・チャット窓口の営業時間延長
・LINE・チャット窓口のサポート製品の拡充
・お客様タイプ別応対
・画像や1分動画でのご案内

■効果

・LINE利用率 48%
・入電数8割減
・顧客満足度1.4倍(65%→91%)

ノンボイス移行推進のため、4つのチャネルで全体をカバー

ーカスタマーサポートの役割は、単なる課題解決からCXの向上や顧客満足度の向上、経営への貢献という面にも広がりつつあると思います。
そのような中で、バッファロー様で掲げている方針や戦略について教えてください。

嶋田氏:
今までは電話対応が主となっていましたが、可能な限りチャットに誘導する「ノンボイスシフト」を継続しています。 チャネルは、基本は電話・チャット・メールがあります。それ以外で推進しているのがXです。

Xでお客さまがつぶやいていることに対して、こちらからアクティブにサポートする活動を始めています。
10月からは新たにInstagramにもサポート窓口を開設する予定です。これは他社でもまだ行われていないので、いち早く始めます。

これにより、全体的なオムニチャネルが出来上がります。そのうえで、主力を電話からチャットに移行させたいと考えています。

柏原:
ありがとうございます。少し本題から外れますが、Xについてお伺いさせてください。

バッファローさんのアカウントがあり、そこで情報発信もされていると思います。その投稿内容を見たユーザーのコメントに対して、それは問い合わせではないかもしれませんが、バッファローさんが回答をして付加価値、付加情報を提供していくイメージですか?

バッファローのX公式アカウントイメージ

嶋田氏:
キーワード検索からお客さまが弊社の製品でお困りのことをたどり、サポートが必要かどうかという連絡をアクティブに行います。そこでサポートしてほしいという返信があれば、その場でサポートするという流れです。

X上にはサイレントカスタマー、つまり弊社に問い合わせをしないお客さまが多くいると考えています。

弊社のお客さまは90%が40代以上の男性で、その方々はWebを見て電話をする場合がほとんどです。一方のXは30代以下の女性が多く、ほぼ問い合わせをしてこないお客さまが、そこに眠っている状態なのです。

そのようなお客さまのお困りごとを解決できるように、X上でサポート情報を発信して、何かあればXのDM機能で直接サポートする取り組みを行っています。

現在、連絡した後のDM返信率は上がっています。ただ、実際にお客さまの製品に不具合が起きた場合、ご家族などが代わりに連絡していることが多いようです。なので、この対応も考える必要があると思っています。

柏原:
なるほど。ありがとうございます。Instagramはどのように活用しようとしているのですか?

バッファローさまインタビュー

嶋田氏:
Z世代の方はInstagramが主流で、検索も連絡のやり取りもInstagram上で行うそうです。ですので、そこで上手く展開できれば、いち早くサポート対応ができると考えています。

ただし、どうすれば上手く展開できるのかという点は、これから試行錯誤していくことになります。

柏原:
InstagramはZ世代ということですが、こちらは比較的女性の方が多いのですか?

嶋田氏:
統計的には女性の方が多いと聞いています。一方、Webは40代以上の男性が多く、LINEは中間で、幅広いイメージです。LINE利用は50代~30代までというところです。

ですので、この4つのチャネル(Web、LINE、X、Instagram)で全体を上手くカバーできるのではないかと考えています。

後処理の工夫で問い合わせ切り替え時の負担を軽減

ー各チャネルの問い合わせ件数や、チャットの運用状況について教えてください。

平塚氏:
2023年8月は、LINEチャットが約2万件、メールが約2,000件、電話が約2万件でした。LINEチャットが全体の半数を占めつつあります。問い合わせ数でいえば、8月は平常期です。

現在コンタクトセンターは3箇所あり、LINEチャットの席数は15~20席程度で、時間帯など繁忙のタイミングに応じて最適な人数で対応できるようにセンターにコントロールしてもらっている状況です。

一人のお客様に対して一人が付きっきりで対応するわけではありません。特に熟練の方は6人同時対応を行っています。それぞれのお客さまにルームを立ち上げ、回答をしながら各履歴を残し、終了すれば次のお客さまの対応を行うという形が、現在の稼働状況です。

鵜森氏:
ルームに入ってから対話を開始するまでの待ち時間もほぼありません。モビエージェントで、現在の対応人数と現在の空席数が確認できるダッシュボードがあります。

それを管理者にチェックしてもらい、例えば対応人数が減ってくれば別のチャネルの空いている人材を移動させるなど、放棄を出すことなくしっかりと対応できている状況です。

柏原:
前回インタビューさせていただいた時もLINEチャットの同時対応人数は6人とのことでしたが、6人とされている理由を教えてください。

鵜森氏:
見るべき点は、顧客満足度を維持できるかどうかです。その上で、7人の対応をした場合お客さまを待たせ過ぎてしまうことがあるのです。
現在の我々の運用であれば最大6人が最適解だと考え、そのように運用しています。

嶋田氏:
何人まで対応可能かを検証したこともありました。最大10人までは可能という確証は得られています。ただそうした場合、品質部分での不安は残ります。

柏原:
品質もそうですし、事故を起こしてしまうかもしれないということで、少し余裕のある6人の対応を行っているのですね。

嶋田氏:
その通りです。

柏原:
ありがとうございます。最近、チャットの同時対応運用を行う別の導入企業様からのフィードバックで、チャットのルームが複数個同じ画面で立ち上がるので、情報の取り違えが起きてしまうという話が来ています。「本来はAさんに送るべき情報をBさんに誤って送ってしまった」などのケースです。

このようなことがあるので、バッファローさんのように6人まで対応している会社は少ないのです。2人から3人、あるいは1対1にしているところもあります。1対1では効率の観点から電話との差異が生まれないため、当社も苦心しています。情報の取り違えに関するインシデントやリスクはどのように防いでいるのですか?

鵜森氏:
モビエージェントの他に、後処理を残すために内製した支援ツールを使っています。例えばモビエージェントにはルーム番号が記載されていると思います。内製ツールでもそのルーム番号を表示させて、しっかりと一致させて対応するというフローを作っているのです。

同時対応でそれぞれ問い合わせ内容も異なる時に、例えばお客さまAに対応しているものを後処理ツールのAの場所に残す、お客さまBに対応しているものを後処理ツールのBの場所に残すという形にしていくと、お客さま対応をAからBに切り替える時も、それを確認することで要約情報もわかります。

それによりお問い合わせ切り替え時の負担も減らせるので「しっかりとルーム番号を見る」という運用ができています。

入電数8割減とお客様満足度向上の両立

ーKPI指標とされている項目について教えてください。

バッファローさまインタビュー

平塚氏:
KPI指標としては、LINE利用率・応答率・CPHを主に見ています。

LINE利用率は、2017年当時は20%目標でしたが、今期は50%を目標にしています。現状だと約48%で、目標に近づいています。応答率は90%が目標です。

CPHは5.0を目指し、日によっては近い数値も出せています。CPHの定義は様々ですが、弊社ではLINEチャットのブースで稼働しているオペレータがいれば、その稼働時間から対応完了件数割った数値で生産性を示すものとして定義しています。

先程の話の通り、より短時間でお客さまに対応することや、LINEチャットの問い合わせが少ない時に席数コントロールを行い、オペレータ負荷のバランスをみてCPHを維持することを目標に、3つの指標で対応しています。

柏原:
LINE利用率約50%、応答率90%は非常に素晴らしい数字だと思います。ここまでたどりつくために取り組んできた施策などは、どのようなものがありますか?

嶋田氏:
LINEチャットを始めた当初、電話問い合わせをされたお客さまにアンケートを行ったところ、そもそもLINEチャットサポートを知らない方がほとんどでした。当時、弊社が他社に先がけてLINEチャット問い合わせを開始しており、お客さまに中々使ってもらえませんでした。

また、始めたばかりで利用も少なかったので、土日対応も行っていませんでした。しかし土日対応へのご要望が出始めたので、まずその点の対策を行いました。

やがて、LINEチャットを使った方から「対応に時間がかかった」「回答がわかりにくかった」というお声がありました。せっかく利用頂いても不満があるとまた電話に戻ってしまうので、その点も対策することにしました。

LINEチャットの認知向上のため、まず1番目にウェブでの案内、2番目にメールとXでの案内を行いました。また電話でも、時間のかかったお客さまにはオペレータから「LINEの方が空いているので早く対応できます」という案内を行いました。

3番目は、Call to LINEを導入し、電話待ちの時間に「チャットやLINEは空いているのでそちらを使うように」という案内を流したことです。
これらの施策によって、利用率は6%から10%(2018年7月)まで上がりました。この後、次の4~6番目の施策を行い、利用率は10%から15%に増加しました。

4番目はサポート対象製品の拡大です。
最初は一部の製品から始めていました。やがてお客さまの数が増えてきたので、全製品に広げることにしました。また、土日対応も開始しました。

5番目はLINEチャットの営業時間です。
電話窓口は9時半~19時まで対応していたのですが、それよりもLINEチャットの営業時間を長くすることで、電話窓口は終了しているのでLINEを使おうと思ってもらうことが可能です。

6番目は、Call to LINE導入後にIVRの改修を行い「チャット」という言葉をお客さまの頭に刷り込むという施策を展開しました。そして利用率は15%まで増加しました。
直近は、お客様がFAQを探している時に「チャットで相談」を各所に表示するという施策も展開しています。

LINE・チャット利用率推移
LINE・チャット利用推進のため6つの主な施策

LINEは、画像を送信できる点が弊社にとっては非常に大きなメリットです。
今までは「ケーブルがどこに挿さっているのか」「LEDがどういう状態になっているのか」などを言葉で説明して頂き、回答も言葉で伝えていたので、恐らく「よくわからない」と感じるお客さまもいらっしゃったと思います。そこで写真を撮ってもらうと、こちらも早く認知し回答できます。

また動画も、弊社サポートでは有効です。
「設定はこうするように」という説明を文字で言われてもわかりづらいと思うので、FAQ動画を送っているのです。弊社では通常は5~6分の動画を制作しますが、LINEチャットで長時間の動画は見てもらえないので、1分動画を制作し、それをご覧いただくようにしています。

そうすることでお客さまも早く理解できますし、もしわからない場合は更に長い動画のご案内をし、自己解決いただけるようにしています。

柏原:
御社の場合は製品の数が非常に多いと思います。1分にまとめたとしても、動画の本数は大変な数になると思うのですが、その辺りはいかがですか?

また動画は写真よりも伝わりやすいと思います。その点について、お客さまからの反応はいかがでしょうか。

嶋田氏:
実際に動画の本数は非常に多くなっています。全製品は難しいので、問い合わせの多い主要商品の1分動画を制作しています。

作成した動画は、YouTubeに無料で公開していました。これにより、2013年に1か月に約10万件の電話問い合わせがあったところ、2015年には7万件の30%減にすることができました。FAQに動画を貼り付けることは、今となっては弊社で当たり前となっていますが、それを始めたことにより、約2年で30%減を達成できたのです。

またお客さま応対の方法について、立ち上げ当時にお客さまを4種類の「タイプ」に分け、タイプごとに回答する対応をしてもらいました。
これによりお客さまアンケートの結果として、満足度が65%から91%まで増加しました。

入電対応数の推移

このように現在まで様々な施策を行い、2023年8月にはLINE利用率約48%、入電数も約50%でほぼ同値です。

柏原:
素晴らしいですね!先程のお話だと、電話は約2万件、チャットも約2万件で、合計約4万件ということでした。つまり、2013年は元の約10万件から約4万件になったということですか?

嶋田氏:
そうです。ただ当初の10万件は入電数のみで、入電数のみだと2万件まで下がっているので、10年前(2013年)から8割減となります。

柏原:
顧客満足度は、トレンドとしてはいかがですか?

嶋田氏:
やはり今はお客さまにとってもチャットが主流になってきているので、全体満足度は上昇傾向です。基本的にはNPSで、定期的にアンケートを行っています。トータルの問い合わせ数もチャットを始めた時には全体の問い合わせ数が増えるのではないかと懸念しましたが、結果的には変わっていません。

柏原:
ありがとうございます。この推移の中にチャットボットは含まれていないのですか?

嶋田氏:
チャットボットは除いて、有人対応のみの指標です。チャットボットを含めると48%からおよそ倍になり、比率は大きく変わると思います。

柏原:
ノンボイスの比率は、潜在的にはより高いということですね。わかりました。ありがとうございます。

全体問い合わせ数削減のうえで、LINE利用促進を目指す

ー今後の戦略や展望について教えてください。

嶋田氏:
方針としては、LINE利用率100%近くを目指したいですが、各統計からチャットに不満を持っているお客さまや電話をかけられない事に不満を持つお客さまは、比較的多いようです。

そのため、これ以上施策を進めていったとしても、どこかで満足度の下がるタイミングがあるだろうと思っています。そこを見極めることが一つの課題です。

今期は50%を目標としていますが、私としては70%も可能ではないかと思っています。他社で分析したデータによると、絶対に電話がいい方は約30%だと言われています。それ以外の70%のお客さまには、上手くいけばご利用頂けるのではないかと考えるためです。

柏原:
ありがとうございます。今期の目標は50%で、先程8月時点では約48%とおっしゃっていたと思います。残りの2%のために、施策を追加する予定はありますか?

平塚氏:
「数字としてどこを増やせば良いか」という検討をしています。LINE利用者を増やすことも考えられますし、トータルの問い合わせ数を減らして自己解決率を上げることでも、割合は変化すると思います。
我々としては問い合わせの多い内容を分析して、お客さまが早く解決できるように、情報をわかりやすく掲載することが必要だと思っています。
「自分で調べたがわからない方」を減らすことも価値のあることだと感じます。

どうしても電話を必要とする方はいらっしゃるので、電話の窓口は完全に閉鎖するわけではありません。ただ、広い時間帯で受付を行うLINEをより活用してもらうために、電話の営業時間も考慮しながら、LINE問い合わせのお客さまを増やす活動をしていきたいと考えています。

柏原:
ありがとうございます。最後に、弊社モビルスの製品や対応について、何か要望したいことや評価などがあれば教えてください。

鵜森氏:
普段お客さま対応を行っているなかで感じている、対応サイクルの効率化や情報取り違え防止策などについて、改めてご相談したく考えています。

平塚氏:
弊社としても、分析方法・応対履歴確認などについて「こういうことはできないか?」と考えていることがあります。必要によっては直接イメージを説明させて頂くことも含め、今後もコミュニケーションをとらせて頂ければと思います。

柏原:
ありがとうございます。製品をご利用頂く中で「もっとこうしたい」と感じられる事は多くあると思います。弊社としても、そのようなことはぜひ積極的にお伺いさせてください。現在考えられているご要望については、またNTTマーケティングアクトProCX様とも調整させていただきながら進められればと思います。

本日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。