監視カメラなどの画像センシング事業を手掛けるi-PRO株式会社は、コロナ禍の行動制限を機に、カスタマーコンタクトセンターのBCP(Business Continuity Planning、災害などの緊急事態における企業の事業継続計画)の見直しと強化を図り、その一環として、2020年10月に有人チャットの「MOBI AGENT」を導入しました。

従来は問い合わせ件数のうち約8割を電話が占めていましたが、チャットへの移行を推進し、2023年7月に電話での受け付けを終了。チャットの特性を生かした対応で高い顧客満足度を実現しており、同社の海外拠点からもその運用が注目されています。

有人チャットの活用事例や、今後のお客様サービス施策について、エンジニアリング所属の河内氏と山内氏に伺いました。

※上部写真:左より、モビルス株式会社 小川、i-PRO株式会社 山内氏、i-PRO株式会社 河内氏、モビルス株式会社 石川

i-PROさまの事例紹介をまとめた導入事例PDFは
こちらからもダウンロードいただけます。

組織名i-PRO株式会社
事業内容セキュリティ・医療・産業分野向け機器・モジュールの開発、製造、販売
導入製品MOBI AGENT, Visual IVR
用途有人チャット対応
導入時期2020年10月

※インタビュー実施日:2024年1月17日

■課題

  • コロナ禍中に相談センターを一時閉鎖した経験から、BCPを見直し
  • 限られたオペレーター人数で応答率の水準を維持
  • デジタルシフトの推進(問い合わせ件数のうち、電話が約8割)

■施策

  • チャットの同時対応顧客数は最大6件まで可能に
  • 「MOBI AGENT」に返信用の定型文を作成し、入力時間を効率化
  • 満足度評価の点数やコメントの振り返りと運用改善

■効果

  • 有人チャット導入から2年9カ月後、電話の相談窓口を終了
  • 電話対応は1日平均117件から15件程度に軽減(現在は折り返し電話のみ)
  • 満足度を入力したチャット利用者のうち、約8割が高評価
  • オペレーターの働き方改革(12~13時まで窓口を休みに)

不測の事態でもセンターを止めないために。コロナ禍が転機となりチャットを導入

―はじめに、河内様と山内様の業務内容について教えてください。

ジャパンリージョン エンジニアリング
ディレクター
河内 ゆりや氏

河内氏:
私はi-PRO商品のジャパンリージョンにおけるエンジニアリングのディレクターを務めており、アフターサポート分野の全責任を担っています。カスタマーコンタクトでの問い合わせ対応に加え、納入後の修理・返品対応など、顧客満足度を最大化するためのテクニカルサポート戦略の策定と実行が私のミッションです。

ジャパンリージョン
エンジニアリング
カスタマーコンタクト
バックオフィススーパーバイザー
山内 俊明氏

山内氏:
私の場合は、よりカスタマーコンタクト分野に特化した業務にあたっており、これまで実際に相談員やスーパーバイザーとして、電話でのお客様のアフターフォローを手掛けてきました。このほか、サポートウェブサイトの運営やチャットなど、お客様対応施策の企画・実務も担当しています。

柏原:
ありがとうございます。2020年10月に「MOBI AGENT」を導入いただき、有人チャットによるお客様対応を開始されましたが、どういった課題があって導入に至ったのか、背景をお聞かせいただけますか?


河内氏:
コロナ禍が非常に大きなターニングポイントになりました。以前の当社の相談センターは約8割が電話対応で、全員が出社して業務にあたっていたのですが、コロナ禍中に感染者が出たために、電話対応を約1カ月半も閉鎖、ウェブやメールのみ稼働して、十分にお客様対応ができない期間が生じてしまったのです。世の中全体としても活動ができない時期だったので、影響度は比較的少なかったとは思いますが、やはりチャットであればこうした不測の事態でも在宅で対応しやすいだろうと思いました。

そうした困難がBCPを見直す機会となり、事業を継続できるような体制をしっかり構築していこうと考え、「MOBI AGENT」の導入を決めました。時代の流れに伴い、どこかのタイミングでチャットを導入したいとは前々から思っていながらも、なかなか踏み切れずにいたのですが、コロナ禍はチャット対応を始める大きなきっかけになりましたね。

柏原:
コロナ禍中はオペレーターの皆様も、リモートワークをされていたのですか?

河内氏:
一時期はやむを得ず、リモートワークにしていました。ですが、今は基本的にほぼ全員が出社する形に戻っています。当社の商品はネットワーク機器という特性上、お問い合わせ中のお客様に合わせて実際に現物を触りながら回答していくことが多く、ナレッジベースがあって一問一答で回答できるようなケースは少ないです。出社して検証機を触りながら回答した方が効率はいいです。ほかのスタッフがいない在宅で対応するよりも、出社した方が一人一人の負担も減らせます。

柏原:
商品ラインアップ数が多い上、ネットワーク機器となると、問い合わせの内容も多岐にわたりそうですね。

河内氏:
そうなんです。お客様のもとで使う時は、監視カメラとレコーダー、PC、ネットワーク、それからPCにインストールするソフトウェアまでもがそれぞれ自由に組み合わせられるようになっているので、お客様ごとに組み合わせ方が無数にある状態です。それに応じて動作も変わってくるので、利用状況を加味しながら回答しなければいけません。

山内氏:
オペレーターが問い合わせにある程度対応できるようになるまでは、約半年を要します。それに、お客様対応しながら知識やスキルを習得するOJTが一番身に付くということもあって、出社する率が高いです。会社であればここにいる仲間にすぐ聞ける安心感もあります。

チャットは対応効率がよく、お客様の“つながらない”ストレスが軽減できる

―約8割を電話対応が占めていた以前の状況から、チャットの導入でドラスティックにデジタルシフトをしてきたのでしょうか?お客様のチャット利用を進めてきた過程や、大変だったことなどをお教えいただきたく思います。

山内氏:
最終的には2023年7月26日から電話の相談窓口を停止するに至り、そこに向けてチャットの利用を推進するよう取り組んできました。ただ、一般的にはチャットを導入してすぐに電話をやめるという相談センターはないと思いますし、特に当社の場合は電話やメールによるお問い合わせが多かったので、3年弱は電話とチャットを並行して対応しましたね。なにしろ、17年間ずっと電話対応を続けてきたわけですから、急に電話窓口がなくなってしまえば、お客様もなかなか納得されないのではないかと。

「チャットはできない!電話がよい」と、今もそういったお声を寄せられることがありますが、引き続き丁寧にチャットの利便性を訴求していきたいと思っています。

柏原:
「どうしてもチャットは無理だ。テキストは打てない」とおっしゃるお客様には、どう対応されているのですか?

山内氏:
「まずは一度、チャットでお問い合わせください。その際にこういう内容を書いてください」と、ご提案しています。電話の受け付けは終了していますが、どうしても電話でないと対応が難しい内容の場合は、こちらから電話で折り返すようにしています。

河内氏:
お客様は、特に現場でお困りの際、複雑な不具合事象を簡潔に文字にするのは難しいケースが、どうしてもあると思いますので、チャットで「電話が欲しい」とのメッセージにはできる限りお応えするようにしております。「電話」は、必ずしもトラブル解決の最短手段にはなりませんが、お客様の不安や不満など様々な気持ちを受け留め、寄り添うことのしやすいツールです。現場の映像やデータを即座に共有できるデジタルコミュニケーションの良さとお客様の感情に寄り添えるサポートの両立をどう実現するかは、まだまだ模索中です。

一方で、スマホには音声をテキスト化する機能がございます。この機能をもっとアピールすると、まだまだチャットになじみのないお客様にもその便利さをご理解いただけるのではないかと思っています。

柏原:
今は折り返しのみ電話も対応されているとのことですが、電話窓口を終了する前と比較すると、電話の件数はどの程度まで抑えられていますか?

河内氏:
2023年7月以前は1日平均117件ほどあった電話対応が、今では15件程度です。

柏原:
電話にかかっていた時間や業務負担は、かなり削減できたのですね。一方で、電話の受け付けをやめるとなると、社内の調整も大変そうに思いますが、その辺りはいかがでしたか?

河内氏:
市場に対してはもちろん、社内でもインパクトは大きかったです。限られたリソースで、より多くのお客様のお困りごとを、より早く解決するためにどのような手段が最適なのか、とことん考えた結果、「電話受付の廃止」が、今の私たちの最適解だと判断しました。社内・社外共に同じロジックでご説明し、皆さんに、まずはやってみようと一定のご理解を頂きスタートしました。

山内氏:
電話での受け付けを完全に終了する前から「MOBI AGENT」によるチャットは開始していたので、その間に社内向けにもチャットの良さを訴求し続けていました。どういった点が良いかというと、大きく2つあります。まず一つ、「MOBI AGENT」にはお客様にチャット対応の満足度評価を入れていただける機能がありますが、チャットを利用したお客様の満足度評価が高いこと。そしてもう一つが、チャットはお客様にとっても“つながらない”ストレスが電話に比べると軽減できることです。

電話だとオペレーターとお客様が一対一でしか対応できませんが、当社のチャット運用では、一人のオペレーターが同時にお客様6人まで対応可能としています。平均しても2人に同時対応している状況ですので、チャットは効率がよいと考えています。

柏原:
お客様満足度評価や一対多数の対応に関しては、ぜひまた後ほど詳しくお伺いしたいのですが、そういった応答率の課題やチャットの効率性、満足度評価などが、社内的にも電話受け付け終了に十分納得できる材料となったのですね。

河内氏:
そうですね。それに、当社はネットワーク機器を取り扱っているので、基本的には電話からチャットへの移行が受け入れられる土壌はあるでしょうし、時代としてもそういう方向に行かなければいけない、と社内の意向が一致しました。

当社は2019年にパナソニックからカーブアウトした企業ですので、「まず、やってみようよ」と、経営側も理解を示してくださいました。

※i-PRO様ご提供データよりモビルスにて作成

お客様満足度評価の振り返りが、運用改善とモチベーションアップにつながる

―先ほど、チャットを利用したお客様の満足度評価が高いとお教えいただきましたが、具体的にどのような声が寄せられているのでしょうか?

山内氏:
チャットのオペレーターも、技術系社員で構成されており、商品についてとても詳しく、電話と同等のサポートが提供できています。そのため、「対応が非常に良い」といったお声が多く寄せられています。

また、チャットは写真やデータを送れることも、お客様と当社の双方にとってメリットになっていますね。電話だと口頭の説明だけなので、お客様の状況説明がなかなか伝わらないこともありますが、チャットは写真を用いて説明いただけるので、スピーディーに解決策がご提案でき、その点も高い満足度につながっているのだと思います。

柏原:
手厚い対応をするほど、メッセージが長文になることもあると思いますが、どういった効率化やルール化をしていらっしゃいますか?

山内氏:
「MOBI AGENT」にたくさんの返信用の定型文を入れて、オペレーターの入力時間の効率化を図るようにしています。

柏原:
お客様一人当たりのチャットの対応時間は、今どのくらいかかっていますか?

山内氏:
今は40分弱くらいです。ただ、40分間ずっと絶え間なくやり取りをしているのではなく、返信の待ち時間も含まれています。返信が来るまでに時間がかかることがよくあるのですが、お客様側のPCとスマホの割合では、8:2でPC経由が多いので、おそらく常にPCのチャット画面を見ているというよりは、何かほかの作業をしたり、オペレーターが教えた通りにカメラをセッティングしたりしながら、時々チャットをのぞかれているのだと思います。

柏原:
電話と比べて、チャットの対応時間は長いのでしょうか?

河内氏:
電話は1回あたり10分程度で、一見するとチャットが長いように思えますが、電話は1回のコールで全ての課題が解決しないこともしばしばあります。例えば、「まずはここまでやってみてください」とお伝えして一度電話を切り、そこまでできたらまた電話をかけていただき、次のステップの案内をするといった具合に、一つの課題につき何度か電話のやり取りが発生することは珍しくありません。解決までのやり取りを足していくと、もしかすると40分を超えているかもしれないです。

柏原:
では、チャットは平均対応時間が40分弱であっても、基本的には一度のやり取りで課題が解決して終えられているということなのですね。

河内氏:
ほとんどのケースがそうです。だからこそ、5段階の満足度評価も5の満点を付けてくださるお客様が非常に多いのだと思います。

山内氏:
満足度評価の点数やお客様のご意見を毎日分析しているのですが、1~2点の低評価についてお伝えすると、やはり多いのが「(チャットに)つながらなかった」というお声でした。チャットであっても、混雑状況によってはどうしてもすぐに対応できないことがあり、その場合はシステムを切断するようになっているからです。

しかし、グラフをご覧いただくとおり、想定よりも低評価の割合は少なく、4~5点の高評価を付けてくださるお客様が非常に多くいらっしゃいます。

河内氏:
今、チャットを利用したお客様の約4割が満足度評価の星を付けてくださっており、そのうちの約8割が4~5点を付けていただいている状況ですね。

当社では、コメントまで入れていただいたお客様のお声も毎日振り返っており、コメント中のネガティブな意見とポジティブな意見を分析しているほか、月次でも整理して改善に役立てています。ポジティブな意見では「しっかり解決できた」「レスポンスが早かった」「対応が親切丁寧だった」「最高!」などが寄せられています。こうしたお声はオペレーターも読んでいるので、良い評価コメントはモチベーションアップにもつながっているようです。

ちなみに、2023年7月に電話での受け付けを終了したタイミングから低評価の割合が増加していますが、コメントには「つい先日まで電話で対応してもらっていたから」など、チャット対応への不満というよりも、電話を使いたいような内容が多く寄せられていました。電話の受け付けを終了した直後は低評価の割合が約25%まで増加しましたが、現在は7%ほどにまで減少し、逆に高評価の割合が増えているので、満足度は着実に向上していると捉えています。

柏原:
素晴らしいですね。電話での受け付けを終了したことで、チャットに流れ込む問い合わせ数も増加したと思いますが、満足度評価が向上している様子を見ると、チャット運用のオペレーション自体もかなり改善してこられたのではないでしょうか?

河内氏:
お客様を待たせる時間を減らしたり、回転率を向上させたりするために、運用周りの仕組みをいろいろと改善してきました。2023年8月には、チャットの初回応答まで平均9分かかっていたのですが、すぐに運用を見直し、今は2分程度にまで改善しています。また、現在は40分弱の平均対応時間も、8月のピーク時に比べると半分以下にまで短縮できた結果ですので、オペレーション全体として改善しているかと思います。

※i-PRO様ご提供データよりモビルスにて作成

柏原:
教育や研修など、オペレーターさんのスキルの面でも何か取り組まれていることはありますか?

河内氏:
先ほど少し話に出た、満足度評価の振り返りがとても効果的に働いていると思いますね。

低評価のコメント内容や、そのときのチャットのやり取りはどんな内容だったのかを分析し、問題のあったところを振り返って、改善すべき箇所は改善する。そのための取り組みを実行したか否かで、印を付けていく――という作業を日々繰り返しています。また、低評価だったやり取りの中で、追ってフォローが必要と思われる案件には、担当者から再度そのお客様にアプローチして対応するようにしています。

オペレーター自身がお客様の評価やコメントを見ることで、自身の対応の評価だけでなく全体の流れも把握できますし、低評価を高評価にしていくために皆で学び合う習慣もできたと思っています。

柏原:
電話がメインだった頃に、電話の満足度調査を行ったことはありましたか?

河内氏:
実施したことはあるのですが、電話対応後にお客様に感想を伺ったり、その振り返りでも私たち管理職が音声を聞いて面談をしたりと、かなりの労力とリソースがかかってしまっていました。

それが「MOBI AGENT」のチャットだと、リアルタイムで評価が分かり、「今の対応はここが問題だっただろう」とすぐに気付けるので、オペレーター本人としても一番の改善につながるポイントになっていると思います。お客様満足度評価をどう高めるべきか、オペレーター自身もすごく関心を持つようになっていますね。

柏原:
お客様からの評価が、オペレーターさんのモチベーションに良い影響を与えているのですね。オペレーターさん自身も、お互いに対応スキルを高めようとされている様子がよく伝わってきます。

河内氏:
チャットの同時対応は平均2件ですが、上限の6件を難なく対応できるオペレーターもいます。その人は、電話対応をしていた頃は1日10件ほどだったのですが、チャットに切り替えた途端、40件も対応する日があるほどチャットでスキルを発揮しているんです。人によって得意とする分野が異なることや、強みを活かせる場所はいろんなところにあることが、改めてよく分かりましたね。

十分な知識があっても、口頭でのコミュニケーションが苦手な人や、製品の仕様上できないことを、言葉ではっきりと言いきれない性格の人も当然いると思います。ですが、文章であれば冷静に卒なく対応できるのだと思いますし、一方ではその逆で、テキストより電話の方が得意な人もいます。それぞれのオペレーターが持つ得意分野を活かせる配置を意識しています。

柏原:
得意分野を生かせられる担当分けも、モチベーションに大きく影響してきますよね。ほかに、チャットの導入が従業員満足や働き方の変化につながった面はありますか?

山内氏:
以前は9~17時半の間、電話窓口をずっと開いたままにしていましたので、適切な休憩時間が取れなかったり、シフトが崩れて安定稼働できなかったりしていました。チャットへの切り替えを機に、12~13時までを休みとするようにしました。やり取りが途中の場合も、「MOBI AGENT」には保留機能があるので、昼休憩中は必要に応じてチャットをつないだまま保留にしておけます。

デジタルシフトのタイミングに合わせて、お客様の状況に配慮しながらも決まった休憩時間を確保しやすくなったことは、労務管理上はもちろん、脳のストレッチにもすごく良いと思います。

海外拠点も日本のチャット運用実績に注目。グローバルに展開する可能性も

―現在はお客様満足度の高評価が約8割を占めているほか、初期対応時間も約2分にまで改善し、平均対応時間も約40分に短縮していますが、今後もこういったチャットに関する数値を改善していく目標はお持ちでしょうか?

河内氏:
満足度評価などの指標は、現状の水準を維持できればと思っています。まずはとにかく問い合わせ対応できる母数を増やしていくことが大事なので、一番に目指していることは、オペレーター一人当たりの対応量をより向上させることですね。

柏原:
その点ですと、チャットボットの導入についても考えていらっしゃいますか?

河内氏:
はい。導入に向けてどう進めていくかはこれからの検討になりますが、来期以降に導入してみたいと考えているところです。

柏原:
貴社に寄せられる問い合わせは、かなり細かな質問内容が多いように思いますが、「チャットボットでこういう問い合わせを解決したい」など、どういった活用を想定していらっしゃるのでしょうか?

山内氏:
チャットボットが全ての問い合わせを解決することは難しいと思います。チャットボットで営業時間外対応や、営業時間内では有人チャットにつなぐまでのサポートとして考えています。

河内氏:
チャットボットの導入の鍵は、今の有人チャット対応実績データベースです。デジタルシフトして以降、当社には相当な量のデータが蓄積されてきています。

電話がメインだった頃は、音声データは残っているものの、どうしても全てをテキスト化することができておらず、オペレーターがフィルタをかけながら自身で要約し、そのデータをもとにFAQを作成するといった作業をせざるを得ませんでした。ですが、チャットを始めてからはよりリアルで詳細なデータが貯まってきたので、生成AIなどを使って、どんな問い合わせが多く、どう回答しているのかといった整理が、今までよりもしやすくなるのではないかと思っています。

「MOBI AGENT」のチャットデータを活用して、その先のチャットボットにどうつなげていけるかは、また改めてご相談したいと思っています。

柏原:
ありがとうございます。ぜひご相談ください。チャットボットのほかに、何か新しく検討されている取り組みなどはありますか?

山内氏:
今はFAQシステムを使って作成したFAQをサイトに掲載しているのですが、来期からは自前でFAQを作っていく計画です。当社のホームページは、2023年にグローバルサイトへと完全リニューアルし、それに合うようなFAQを作ろうと考えました。

河内氏:
サイト内検索でFAQも含めてヒットするようにすれば、お客様はもっと自己解決がしやすくなるでしょうし、FAQが充実化すれば、チャットやVisual IVRでもお客様をFAQに誘導しやすくなると思っています。

柏原:
お客様の利便性の観点から、「MOBI AGENT」への要望がありましたらお聞かせいただけますか?

山内氏:
MOBI AGENT外部連携APIオプションを追加しAtlassian社 「Jira Service Management」と接続、お客様とのチャットのやり取りを終えた後に、自動で文面、時間、評価などが全て保存できるようにしているのですが、その文面をお客様にも提供できる機能があれば嬉しいですね。

販売店のお客様からは、チャットでやり取りした内容を後で見返したいニーズもあるようで、「文面をダウンロードしたり、メールで受け取ったりできないか?」といった声が、よく寄せられています。末端のお客様がまず販売店に問い合わせ、その内容を販売店の方々が当社にチャットで聞いてくださっているので、やり取りの文面が手に入れば、末端のお客様により回答しやすくなるのだそうです。

河内氏:
今は画面キャプチャをしていただくようお伝えしていますが、文面で受け取れる機能があれば、さらなるお客様サービスにつながるだろうと期待しています。

柏原:
貴重なご意見をありがとうございます。貴社のようなコンタクトセンターの場合は、お客様にも文面を共有したいニーズが高いのですね。そういった機能を以前も考えたことがありますが、これを機に再度検討してみたいと思います。

最後に、チャットの活用において、今後試みたいことなどがありましたらお聞かせいただければと思います。

河内氏:
当社は日本以外に、北米、EMEA(欧州、中東及びアフリカ)、APAC(アジア太平洋)にも拠点があり、ホームページをグローバルサイトにリニューアルしただけでなく、インフラも基本的にはグローバルで統一しています。現在のところ、チャット対応を導入しているのは日本だけで、海外では主にウェブや電話でお客様対応を行っているのですが、日本のチャット対応にはとても興味を持っているそうなのです。

日本でチャット運用の良い実績を作り出していけば、グローバルでも展開していけるのではないかと思っています。

柏原:
海外の方がいち早くチャットを導入しそうなイメージでしたが、意外ですね。

「MOBI AGENT」のUIは、ブラウザ上で日本語と英語を切り替えられる2か国語対応になっているので、グローバルにチャット運用を展開される際にも、比較的ハードルが低くなるのではないかと思っています。

あるグローバルメーカーでは、ベトナムの拠点で「MOBI AGENT」を導入いただいているのですが、UIは英語、チャットで飛び交う言葉はベトナム語といった具合に、現地でも問題なくご利用いただけているようです。

河内氏:
そうなんですね。日本の事例をグローバルに展開していく上では、やはり使っているツールの言語がネックになってしまうので、英語対応のUIはすごくありがたいです。

柏原:
海外拠点でチャット運用を展開する際の後押しになれば嬉しいです。本日は貴重なお話をたくさんお聞かせいただき、誠にありがとうございました。

いかがだったでしょうか?今回はi-PROさまの相談センター(コールセンター)のデジタルシフトを目的としたMOBI AGENTの導入事例をご紹介させていただきました。コロナ禍でデジタルシフトの重要性を認識された企業様も多いのではないでしょうか。突然電話をやめる、ということは当然難しいことです。電話対応とデジタル対応を並走させていきながらデジタルでできることを増やしていく、ということは大事なポイントになってくるのかもしれません。より詳しい課題背景や解決の具体策などに興味があるお客様は、お気軽にこちらよりお問い合わせください。デモ画面を実際にお見せしながらご紹介いたします。

当事例のサービス紹介資料

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有人チャット「MOBI AGENT」

ビジュアルIVR「Visual IVR」