明治安田生命保険相互会社(以下、明治安田生命)は、FAQやチャットボット、有人チャット、お手続きフォームなどデジタルチャネルの拡充・改善を行う一方、2023年10月より「Visual IVR」(ビジュアルIVR)を導入し、お客さまが「やりたいこと・困りごと」を選択し、問い合わせ内容に応じて最適な窓口にたどり着ける導線設計を行っています。

今回は、「Visual IVR」について導入の背景、運用方法や導入効果、今後の展望などについて、お客さまサービス相談部 コミュニケーションセンター コール業務開発グループ 主席スタッフ 安間氏、お客さまサービス相談部 コミュニケーションセンター コール業務開発グループ スタッフ 長澤氏、お客さまサービス相談部 コミュニケーションセンター コール業務開発グループ スタッフ 村山氏にお話を伺いました。

※上部写真:(左から)モビルス 柏原、石川、明治安田生命 安間氏、長澤氏、村山氏、モビルス 平野

事業内容

生命保険業

用途

Webサイトのお客さまサポートページ上にVisual IVRを設置し、「やりたいこと・困りごと」から最適な窓口への導線を設計(https://vivr.meijiyasuda.co.jp/1/index

導入時期

2023年10月

■導入製品

※記事中の肩書や内容はインタビュー当時(2024年7月5日)のものです。

■課題

  • 音声のIVRは、音声案内を聞かずにプッシュボタンを押す人や、自分の用件がどのIVRに該当するかがわからずに「その他」を選択する人もいた。これによってオペレーターをうまく配置できないことや、お客さまの用件を事前に把握できない課題があった。
  • コールリーズン(問い合わせ用件)違いの入電により、オペレーターのかけ直し依頼や転送作業などが頻出していた。

■施策

  • 「Visual IVR」を導入し、Webサイトのお問い合わせページ上に設置、お客さまが自らのやりたいこと・困りごとから最適な窓口へたどり着ける導線を設計。

■効果

  • コールリーズン違いの入電が減少し、呼量削減・転送数削減につながった。
  • 応対前にコールリーズンを把握できるようになり、一通話あたり約35秒の応対時間の短縮、オペレーターの負荷軽減を実現。
  • FAQやチャットボット、有人チャットなどデジタルチャネルの利用増加に貢献。

■目次

・最適な問い合わせ窓口へたどり着く導線を設計、自由度の高い操作性が導入の決め手
・1件あたり約35秒応対時間を短縮、オペレーターの負荷軽減
・デジタルツールの導入によりお客さまの自己解決手段を拡充し、コミュニケーションセンターに対する満足度はトップボックス「満足」70%超という高い水準を維持
・DX、EX、CXを3本柱に、「人に一番やさしいコミュニケーションセンター」へ


最適な問い合わせ窓口へたどり着く導線を設計、自由度の高い操作性が導入の決め手

ーはじめに、担当されている業務内容について教えてください。

安間氏:入電量や発信件数の計画に応じた要員計画・運用、デジタルツールを導入した効率化やお客さま応対品質向上を図るための企画立案など、コミュニケーションセンター全体の計画・運営を行っています。

村山氏:日々の入電状況などのデータ取得のほか、デジタルツールに関するデータを基に、今後新しく導入するツールへの活用方法の検討など、データ・システム関連を担当しています。

長澤氏:コミュニケーションセンターで使用しているデジタルツール全般の企画立案・推進などを中心に、コミュニケーター(オペレーター)の皆さんが使っているCTI(Computer Telephony Integration)システムに関する業務も担っています。

ー弊社サービスを導入する前に、直面していた主要な課題は何でしたか?それらの課題に対して検討した、または実施した解決策を教えてください。また、弊社の製品を選定いただいた理由もお聞かせいただけますか。

安間氏

安間氏:音声のIVRを導入していましたが、最後まで聞かずにプッシュボタンを押したり、該当するIVRがわからず「その他」を選んだりする方も多く、問い合わせ内容に応じたコミュニケーターを上手く配置できずお待たせしてしまうことや、お客さまのご用件を事前に把握できないという課題感をもっていました。

問い合わせ内容に応じた電話窓口を複数用意していますが、用件違いの入電も多く、おかけ直しのお願いや、転送作業が頻発していることも課題でした。

音声のIVRと比べてビジュアルIVRならお客さまは画面を見ながら操作ができ、5〜10の設問は違和感なく簡単に進んでいけるので、お客さまが自らやりたいこと・お困りごとから最適な窓口へたどり着くことができると考えたことが導入の目的です。

モビルスさんの「Visual IVR」を選定した理由は、他社だと分岐や階層に制限がある場合も多かったのですが、モビルスさんの製品は制限がなく、設定の自由度が高いなど製品の優位性があったことです。

選択肢を自由に設けられることはもちろん、ボタンの形や配置、色合い、分岐の数などの機能が豊富で、スマホ画面でもパソコン画面でも同じような使い勝手で設計でき、作りやすさを感じました。

長澤氏:「Visual IVR」の管理画面は大変使いやすいです。別の部署から「Visual IVRのフォームに項目を追加してもらえないか」といった相談もありますが、すぐにイメージを作成して共有できます。自分たちで編集が容易なので利便性が高く、外注費用もかからないので費用対効果も高いと考えています。

Visual IVR導線のイメージ。お客さま自ら「やりたいこと・困りごと」から選択肢していくと、最適な解決方法にたどり着ける。専門用語の難しい保険案内を、ビジュアルメニューでわかりやすく導線設計を行っている。

安間氏:「Visual IVR」のシナリオ構築では、多岐に渡るお客さまの問い合わせに対応できるよう、網羅性の高いつくりを実現しています。

お客さま目線で分かりやすく、選択しやすいようなシナリオを構築しました。実際に使ってみて使いやすさを確認し、何度も改修を重ねシナリオの階層は若干複雑になりましたが、使ってみると特段違和感なく使えているので良かったです。

「Visual IVR」導入により、お客さまが自らお困りごとから最適な窓口へたどり着けるようになっています。一方で、階層の途中で離脱される方もいるため、今後対策をとる必要があると考えています。


1件あたり約35秒応対時間を短縮、オペレーターの負荷も軽減

ー弊社サービスを導入してから、カスタマーサポートの業務効率が向上しましたか?

長澤氏:「Visual IVR」経由の入電はその他の入電と比較して、1件あたり約35秒の応対時間を短縮することができています。

保険という商品は難解な用語もあるため、お客さまも問い合わせされる際に何をどう質問すると良いか迷いながらお話されることも多いです。コミュニケーターが、会話の中でご用件を把握するのに一定の時間がかかります。「VIsual IVR」経由だとお客さま自身が困っていることを選択した上で会話が始まるため、用件を把握するための事前ヒアリングにかかる時間を短縮できており、その実績が1件あたり35秒です

お客さまのお困りごとを把握した上で電話応対を開始できるため、コミュニケーターにとって心理的にも負担が軽減できていると思います。

ーVIsual IVR設置前後で、コールリーズン違いの呼量削減や他窓口への転送数の減少、ワークフローへのポジティブな変化はありましたか?

長澤氏

長澤氏:定量的には集計しておりませんが、呼量削減、転送数減少につながっていると感じています。

転送する場合は、まず会話の中でお客さまの契約状況を確認して、窓口が違うことを特定するまでに一定の時間がかかります。時間帯によっては、お客さまに30秒から1分ほどお待ちいただくことや、転送先が混みあっており、お客さまにおかけ直しを依頼することもあるため、お客さまが適切な窓口に電話をかけることができるだけでも、呼量削減、転送数削減、コミュニケーターの負担軽減につながっていると考えています。

電話がつながりづらい時期にも、FAQやチャットボットによる自己解決や、有人チャットによる応対などでも解決できることがもっと認知されると、お客さまにとっても負担軽減・利便性向上になるため、「Visua IVR」の活用を通して最適な窓口への案内を広めていきたいです。


デジタルツールの導入によりお客さまの自己解決手段を拡充し、コミュニケーションセンターに対する満足度はトップボックス「満足」70%超という高い水準を維持

ー「Visual IVR」でのWeb導線整備によって、導線の変化はございましたか?

長澤氏:デジタルアクセス率(デジタルアクセス利用数/全体のお客さま申出数)は一定数増加しています。お手続きフォームやチャットボット、有人チャットを見ると、2024年に向けて少しずつ利用数が増えており、チャットボットは2024年4・5月に10,000件を超える利用数です。2022年と2023年を比較すると、デジタルツールの利用件数は増加し、デジタルアクセス率は、2022年から2023年にかけて14.6%から16.1%に上がっています。これは、「Visua IVR」による導線整備の効果もあると考えています。

安間氏:入電数は微減ですが、デジタルツールを導入していなければもっと入電が増えていたところを抑制でき、質の高い応対ができていると評価しています。デジタルアクセス率向上に向けて様々な施策を実施してきた中で、「Visual IVR」の導入も一役買っているのは間違いないです。

ーカスタマーサポートにおける当社サービスはどのぐらいコミュニケーションセンターに対する満足度の向上に影響を与えましたか?

村山氏

村山氏:関連する項目を評価に取り入れておりませんが、コミュニケーションセンターに対する満足度については、応対後にSMSでアンケートをお送りし測定しており、5段階評価トップボックス「満足」と回答いただいた割合が70%を超える高い水準を維持しております。

安間氏:一番良かった「満足」の評価が、本当に満足してくれている証拠です。満足度評価の基準を「満足」とすることで、本当のお客さま満足をみんなで目指そうという意気込みで運営しています。


DX、EX、CXを3本柱に、「人に一番やさしいコミュニケーションセンター」へ

ー弊社のセールスやカスタマーサクセスのサポートがどのように役立ちましたか?満足している点、不満足な点を教えてください。

安間氏:こちらからの無理な要望にも答えていただき、導入にあたり大変丁寧にご対応いただきました。画面設計のご相談から始まり、Excelに作成した膨大な要件を基に画面を作り上げていただくまで、数ヵ月に渡りサポートいただき本当に感謝しています。

ー今後のKPI目標や計画、カスタマーサポートの方針について教えてください。

安間氏:デジタルアクセス率20%を目指しています。現状は17%ほどです。お電話や有人対応を求めるお客さまの対応を大切にしていく一方で、デジタルネイティブな若い方もこれから中核層になっていき、スマホを使う高齢の方も益々増えていくことは間違いないので、今後3年間ほどで全問い合わせのうち20%は、デジタルで解決できる形にもっていきたいと考えています。

長澤氏:カスタマーサポート方針については、DX、EX、CXを3本柱に、「人に一番やさしいコミュニケーション センター」を目指しています。DXは、デジタルアクセス率の向上を目標にデジタルツールの拡充、利便性向上を図り、本来ならば自己解決したいお客さまに向けて自己解決を促すことです。EXは、コミュニケーションセンターで働くすべての仲間であるパートナー企業の派遣委託のコミュニケーターの皆さんと明治安田の職員の働きやすい環境作りや能力の向上を図っています。

CXについては、DXでまずデジタルツールの利用を促して、EXで受電効率・稼働率の向上を図り、そこで生まれた余力を基に、コミュニケーションセンターでずっと対応してきた、人による応対の質をさらに向上できないかという取り組みをしています。具体的には、効率化を図る一方で特に難易度が高い時間がかかる案内には、じっくり丁寧に時間をかけてご案内したり、何かあったときにお客さまのためにすぐ動ける態勢を整えるといったことです。

ー「Visual IVR」のさらなるご活用へ向け引き続きサポートさせていただきます。本日は貴重なお話をありがとうございました!

当事例のサービス紹介資料

ご導入いただいたサービスの資料はこちらからご覧いただけます。

ビジュアルIVR「Visual IVR」

モビルスの、Visual IVR(ビジュアルIVR)は、電話、Webチャット、LINE、チャットボット、ボイスボット(電話自動応答)など、複数ある問い合わせチャネルを一覧で表示、お客さまの目的や受電状況に応じて最適な窓口へ誘導できるシステムです。

下記より、ダウンロードいただけます。ぜひご覧ください。