東日本電信電話株式会社の「リモートサポートサービス」では、電話と遠隔サポートに加えて、WebとLINEでのAIチャットボット、有人チャットや音声自動応答などを導入し、コンタクトセンターのDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めています。
リモートサポートサービスの開発・運用主幹である、東日本電信電話株式会社 ビジネス開発本部 第三部門 サポートサービス担当の担当課長 篠田 諭 氏、主査 横塚 浩章 氏に、導入の目的や運用方法、導入後の効果や今後の展望などについてお話を伺いました。
業種 | 通信業 |
導入ツール | チャットシステム「MOBI AGENT」、チャットボット「MOBI BOT」、AIデータコンソール「MOBI BOTコンソール」、AI電話自動応答システム「MOBI VOICE」 |
期間 | 2020年4月30日~ |
チャネル | Webサイト、LINE、電話 |
用途 | テクニカルサポート(フレッツ光のリモートサポートサービス) |
目的 | ・コンタクトセンターのDX推進 ・顧客のインターネット利用環境やコミュニケーション手段の変化に応じた、最適なサポートを提供するため |
効果 | ・チャット対応、電話自動応答などDXチャネルで、全体呼量の10%を担う ・チャネルの拡大で、より幅広い問い合わせに対応が可能に |
<リモートサポートサービスとは?>
フレッツ光をご利用のお客さまでご希望の方に、インターネットやパソコン、プリンタ、ソフトウェアの使い方や、スマートフォン、タブレット端末のWi-Fi接続設定など、お客さまのインターネット環境をトータルでサポートするサービスです。https://flets.com/osa/remote/
インターネットの使い方が多様化する中、顧客の課題に合うサポートを提供する
ーチャットボットや有人チャットを導入した経緯や目的を教えてください。
横塚氏
お客さまのインターネットを使う環境はスマホやタブレットなどに広がり、LINEの普及でチャットでのコミュニケーションにも慣れ親しんでいます。こうした変化を受け、お客さまのお困りごとへの対応をより即時にできるよう、問い合わせ手段を増やす必要性を感じていました。そこで、これまでの電話と遠隔サポートに加えて、AIチャットボット、有人チャット、音声自動応答、FAQや動画など解決支援サイトの検討を始めました。
NTTグループ全体としてDXを推進しています。お客さま自身のDX推進を支援するサービス提供と、業務の効率化を進めるDX。二つの方向性があります。今回の取り組みは、コンタクトセンターのDXを推進し、お客さまへのサービス価値を高めることが最大の目的です。次に、センター運営の効率化を進めることも視野に入れています。
チャットボットは導入して終わりじゃない。効果を最大化できる運用性の高さが決め手
―導入検討時に重視されていた点は何でしたか?
篠田氏
チャットボットは、さまざまな製品が出ていますが、FAQの管理がしやすく、AIチャットボットのメンテナンスをしていけること。運用メンバーの作業量を含め、トータルで業務効率化できることが重視した点です。
また、コールセンターで運用するので、一対一の対応ではなく、複数のオペレーターで運用でき、SVもフォローや管理しやすい仕組みかどうかも検討ポイントでした。
―モビシリーズの導入に至った決め手はどのような点でしたか?
横塚氏
決め手は、有人チャット、チャットボット、AIチャットボットのメンテナンスを共通の管理画面で行えて、シナリオ作成やメンテナンスのしやすさといった運用性の高さです。
システムを導入して終わりではなく、運用開始後どうやって価値を高めるか、効果を最大化するかが重要ですので、運用性や管理のしやすさが優れていたモビルスの製品に決めました。
全体呼量の10%をチャット・音声自動対応などDXチャネルが担う
―2021年3月より導入いただいております、AI電話自動応答システム「MOBI VOICE」について、導入の目的や狙いを教えてください。
横塚氏
「MOBI AGENT」などチャットシステムを導入したとき、並行して他社の音声自動応答システムも導入したのです。本格的に展開しようと検討した際、チャットボットとシナリオ管理を共通化ができる点やAIの性能面で、「MOBI VOICE」の方がさらにスムーズな運用ができると考え導入しました。
ーコンタクトセンターの運用体制やチャネルごとの利用比率を教えてください。
横塚氏
センターの総数は200席程度です。年間30~40万コールに対応しています。チャットボット、有人チャット、電話自動応答、それに解決支援サイトを含めたDXチャネルの対応は、問い合わせ全体の約10%に昇っています。
ノンボイス・自動化を100%めざすのではなく、多様な解決手段でDXを進めたい
篠田氏
我々のユーザー層は、年齢が高い方が多いです。そのため、全員がチャットでの問い合わせを望むわけではありません。音声自動応答システムを導入したのも、電話が繋がらないときも電話で確認したいという方を想定しています。
すべてのお客さまをノンボイス移行させたいとは考えていません。お客さまに合わせた解決手段を用意する形でDXを進めています。
チャネル全体での利便性や解決手段の向上を目標に置く
―チャットサポートのKPI、目標はどのように設定されていますか?
篠田氏
チャットで解決するときにも、チャットの文言だけで解決させるのではなく、解決支援サイトのリンクを貼って動画やFAQを見ていただくこともあります。どうしてもチャットで回答できないときは、電話への誘導もしていています。
チャット何%、音声自動応答何%など数値目標を置くことはできますが、その数値を上げることが目的になり、お客さまの利便性を損うわけにはいけません。
お客さまが一番解決しやすい手段で案内し、トータルでお客さまの利便性や解決手段を高めることを目標にしています。個別のチャネルごとの目標数値はあえて置いていないのです。ただ、チャネルごとの内訳は把握し、チャットボットの解決率や、有人チャットの応答速度やアンケートの満足度などを見ながら、日々改善活動を行っています。
チャットやLINEでちょっとした質問がしやすくなった
―チャットと電話で質問内容に違いはありますか?
篠田氏
チャットの方が、比較的簡易な質問が多い印象です。電話で応対している内容全てがチャットに置き換わったわけではありません。
問い合わせ総数は、電話だけのときと比べて減ってはいません。「電話をかけるほどではないけど、LINEやチャットだったら聞いてみよう」という問い合わせも増えたからです。お客さまのお困りごとや知りたいことに、より幅広く素早く回答できるようになっていると考えています。
横塚氏
サービスの性質上、幅広いテクニカルサポートをするので全てをチャットやWebに置き換えることはできません。既存のサービスを補完する位置づけだと思っています。
膨大なトラブルシュートのフローも試行錯誤してチャットボットに
―ここからは、リモートサポートサービスのコンタクトセンターでSV(スーパーバイザー)を担当されている方に、実際の運用についてお話を伺います。運用開始・運用後、特に大変だったことはありますか?
運用開始前に大変だったのは、チャットボットのシナリオ構築です。FAQの一問一答形式のほか、お客さまの環境に合わせたトラブルシュートを行いたいと思い、それをシナリオ化することが大変でした。
フローを構築するとき、我々が普段使っている流れをそのまま使うと膨大になりすぎて、このままチャットボットにしてもお客さまは使いにくいだろうなと…。モビルスのカスタマーサクセスの方に相談しながら、コンパクトにする編集を加えるなど、いろいろ試行錯誤しながら進めました。
会員制サービスのため幅広い告知ができず、導入当初は利用者を増やすことに非常に苦労しました。電話でお問い合わせをくださった方に、使い方含めてチャットの紹介をするなど、徐々に利用を増やしていきました。
有人チャットは文面の背景情報も汲み取って対応する
―運用される上で工夫されている点がございましたら、教えてください。
ビギナーのユーザーが非常に多いので、みなさんテキスト入力が苦手だったり、用語が分からないことも多いです。そのため、有人チャット対応の際は、お問い合わせ内容をお客さま自身で上手く表現できていないことも想定して、文面の背景含めて汲み取るようにしています。
―チャットサポートを導入して良かったと思うことはどんな点ですか?
これまで電話が混みあっていてお待たせすることも多々あったのですが、チャットで聞けるなら聞いてみようと、お待たせすることなく別の手段で受け付けできるようになった点が良かったです。
またご自身の状況を上手くご説明できない場合にも、チャットやLINEだと簡単に写真を撮って送れるので、状況がわかりスムーズな対応ができています。
―「MOBI AGENT」などモビシリーズの便利な機能があれば教えてください
全体的に簡単に使えるのがありがたいです。専門知識があるスタッフがいなかった中でも、導入して運用できています。全体的にシンプルで分かりやすく、困ったときにもすぐサポートしてもらえるので非常に運用しやすいです。
運用面でのDXもノウハウ化し、より多くの顧客に最適なサポートを提供したい
―今後の展望を教えてください。
横塚氏
会社全体としてDXの推進を進めていきます。リモートサポートのセンターでのDXチャネルの割合を、今の10%から今年度末には15%、来年度はさらにその上を目指しています。
篠田氏
いろんなセンターでそれぞれチャットやAIシステムの導入など、DX推進にチャレンジしています。各センターで模索しながらベストを探している段階です。我々は、お客さまにどう提供するか、運用面も含めてDXを推進し効果を出し、ノウハウ化できるようになりたいです。他のセンターにも運用ノウハウを提供できるようになれば、より多くのお客さまに最適なサポートをできるようになると考えています。
モビルスでは、有人チャット、チャットボット、ボイスボットなど、顧客サポート対応を支援するソリューションを開発しています。また、チャネルの導線設計やチャットボットの構築など、初期診断サービスや運用サポートも行っています。
それぞれのチャネルの特性や運用方法をわかりやすくまとめた Eブック【総合資料】(無料)をお読み頂くこともお勧めします。 ご不明点はお気軽にモビルスまでご相談ください。