Pocket

保険契約数が約130万件にものぼるセゾン自動車火災保険株式会社は、顧客体験の向上を目指してデジタルコミュニケーションを推し進めており、中でも、個々のお客様と密につながることができるLINEには、特に力を入れて施策を講じています。

2023年5月に通知メッセージの配信を開始し、友だち登録者数が急増。その大半を契約者が占め、満期後の継続契約やクロスセルなどの収益面に大きく貢献しています。さらに、導入したLINEセグメント配信「MOBI CAST」と、チャットボット「MOBI BOT」がLINEにかかる作業の内製化も後押しし、運用費は約4割も削減できました。

同社のLINE活用術や今後の目標について、事業推進部デジタルコミュニケーションの小松氏と奈良氏に伺いました。

※上部写真:左より、モビルス株式会社 柏原、セゾン自動車火災保険株式会社 奈良氏、小松氏、モビルス株式会社 清水

組織名セゾン自動車火災保険株式会社
事業内容ダイレクト保険商品の販売(自動車・火災)
導入製品MOBI CAST, MOBI BOT, アンケート機能
用途LINE通知メッセージの配信、リッチメニューの管理、友だち登録者へのアンケート実施
導入時期2022年

※インタビュー実施日:2023年10月30日

■課題

・問い合わせや顧客コミュニケーションにおけるデジタル活用の推進
・スピーディーに改善・施策実行するための内製化

■施策

・LINEのリッチメニューを視覚的に分かりやすいデザインと導線に改善
・保険の契約完了後・継続完了後・満期の案内でLINE通知メッセージを配信
・通知メッセージの配信をRPA化
・友だち登録者へのアンケートを実施し、クロスセルに役立つ情報を取得

■効果

・内製化が進み、運用費が3~4割削減
・1日あたりのLINE友だち登録数1.5倍
・ブロック率10%未満を維持
・LINE満足度2.8pt向上(90.0%→92.8%)

「お客様にとって心地良いコミュニケーション」を追求する一環で、LINEに尽力

―はじめに、小松様、奈良様の所属する事業推進部デジタルコミュニケーションの業務内容について教えてください。

セゾン自動車火災保険インタビュー


小松氏:
私たちの部門は、お客様に利便性を届け、その利便性を軸にした顧客体験を一気通貫でデザインし、最適なコミュニケーションとサービスを提供していくことをミッションとしています。お客様に末永く当社を選んでいただくため、各種ウェブサイトや、メール、LINEといったお客様接点となるサービスを日々改善するよう取り組んでいます。

メールはこれまでもマーケティングオートメーションを導入するなど、長きにわたってさまざまな施策を講じてきましたが、「メールだけでは届かなかったお客様にも、LINEも活用すればしっかりと当社の思いを伝えられるだろう」というリテンションの観点から、現在はLINEにも力を入れるようになっています。

セゾン自動車火災保険インタビュー


奈良氏:
当社は経営基本方針の一つに“デジタル・リーディングカンパニー”を掲げている通り、「デジタルで保険を体験することが当たり前の世界を作り、お客様の豊かな人生の実現をサポートし続ける存在」を目指しています。ウェブサイトやメールに限らず、お客様にとって心地良いコミュニケーションのあり方を追求していくことが、デジタルコミュニケーションラインの一番の使命です。

お客様接点として大事なLINEでも、お客様がつまずきや不安を感じることなく手続きや保険に対する理解ができ、長くお付き合いを続けていただけるような世界観を作りたいと考え、LINEは特に力を入れて担当している分野となっています。

柏原:
現在、ご活用いただいている当社製品・サービスについてお教えいただけますか?

小松氏:
「MOBI BOT」と「MOBI CAST」、そしてアンケート機能の3つを導入し、当社のLINE公式アカウントで活用しています。「MOBI BOT」ではリッチメニューの管理を行っており、「MOBI CAST」では主に通知メッセージで役立てている状況です。

セゾン自動車火災保険、LINE公式アカウントの活用方法

柏原:
ありがとうございます。「MOBI BOT」や「MOBI CAST」を導入いただく前は、どのような課題を持たれていたのでしょうか?

小松氏:
以前は他社のツールを使っていたのですが、お客様から「LINEのここを改善してほしい」といったご意見が寄せられても、なかなかそのお声を生かして機動力高く動けていないことが課題となっていました。

そこで、当社側でも簡単な操作で改善できるツールを探し、「MOBI BOT」と「MOBI CAST」の導入に至りました。今では、友だち登録数を増やすための通知メッセージや、リッチメニューの改修、さらには新たな保険商材の提案に役立てるためのアンケート活用など、お客様のお声に基づいて改善したかったことや当社が挑戦したかったことが、クイックにできるようになっています。

奈良氏:
モビルス製品はユーザビリティーがとても良いですね。以前使っていたツールは、不明な点があった際は代理店を介して都度問い合わせをしたり、改修作業自体もお任せせざるを得なかったりする状態でした。業者に聞かないとわからないようでは、やはり都度コストがかかってしまいますし、自分でできないフラストレーションもありました。

ですが、モビルス製品にリプレースしてからは、一度レクチャーを受ければやりたい作業や改修がほぼ自らの手でできるようになったため、順調に内製化が進んでいます。画面上にわかりやすくナビゲーションがありますし、感覚的に使える操作性が備わっているので、「こう改善すれば、やりたい施策が叶えられる」と、すぐに実行に移せられます。ツールをちゃんと使いこなせるようになったことは、大きな変革だったと実感しています。

小松氏:
そうですね、今までは何かを改善するとなった時に、外部業者に依頼しなければいけなかったのですが、モビルス製品で内製化が進んだことにより、自社で課題の発掘から施策の実行までできるようになりました。各担当者の「自分から動いてみよう」という自発性や、従業員エンゲージメントの向上に少なからずつながっているだろうと考えています。

柏原:
ありがとうございます。ツールの導入後、リッチメニューの改修やアンケート活用などの実際の運用において、当社からのサポートはしっかりとスピーディーにできているでしょうか?

小松氏:
はい、私たちの課題や実現したいことに対して、最適な提案やフォローをいただけています。
正直なところ、導入前はどうサポートいただけるのかという心配がありました。なぜなら、SaaS業界はフィールドセールスとカスタマーサクセスで、担当の棲み分けが大きい印象があったからです。ですが、モビルスにはそれが全くなく、導入後も双方の担当の皆さんに伴走いただけているので、大変ありがたく思っています。

LINEへの満足度が向上。通知メッセージを起点に契約者による友だち登録も増加

―モビルス製品の活用についてお伺いします。まず、「MOBI BOT」によるリッチメニューの管理について、改修頻度や工夫しているポイントなどを教えてください。

小松氏:
「MOBI BOT」の導入前は、お客様から「メニューアイコンが多くてわかりづらい」といったお声が寄せられていました。「MOBI BOT」へのリプレースのタイミングで可能な限り見た目の情報量を削ぎ取り、視覚的に分かりやすいデザインと導線を作り上げました。

改修の頻度については、定期的に回数を重ねるよりも、お客様のLTV(Lifetime Value)を高めるという大きな目的に対して講じる施策ベースで行うようにしています。

柏原:
「MOBI BOT」によって、どのような効果が表れましたか?

小松氏:
LINE公式アカウントに対するお客様満足度をアンケート形式で調査しているのですが、2022年は満足度90.0%だったのが、「MOBI BOT」の運用開始以降の2023年は2.8pt増の92.8%まで向上しました。諸々のメニュー改善だけでなく、モビルスがシナリオを組んでくださった問い合わせの導線なども、満足度アップに寄与していると思います。

モビルスのツールは、各メニューアイコンのクリック数をそれぞれ把握できるところが特に嬉しいですね。その機能のおかげで、当社としても改善点や次の施策を考える切り口が見出せています。
例えば最近で言うと、リッチメニューの右下に置いているアイコンを、当社のアプリのダウンロードを促す内容から、ID連携を促す内容に変更し、それによりクリック数がどう変化するのかを見ています。このように「MOBI BOT」は、PDCAを回していく上でとても助かるツールとなっています。

柏原:
ありがとうございます。次に、「MOBI CAST」についてもお伺いしたいのですが、貴社では具体的にLINE通知メッセージをどのように使われているのでしょうか?

奈良氏:
保険の契約完了後と継続完了後、また、満期のご案内で通知メッセージを配信しています。契約完了翌日のお客様や、満期前のお客様のリストをCSV出力するシステムを当社側で用意しており、そのリストを「MOBI CAST」で拾って配信する仕組みです。

柏原:
1日の配信数や到達率をお教えいただけますか?また、配信作業で工夫されていることがありましたらお聞かせください。

奈良氏:
トータルの配信数は1日2,000~3,000件で、到達率は5~6割なので、実質1,000件超が届いているものと考えられます。内容は継続完了のご案内が最も多いですね。
工夫していることと言えば、どうしても毎日の配信になるので、以前の手動配信から業務改善を行い、2023年8月にRPA化しました。

柏原:
通知メッセージの配信対象となるお客様リストを抽出し、「MOBI CAST」で配信するまでの一連の作業にかかっていた時間は、RPA化してからどのくらい削減できましたか?

奈良氏:
やはり人の手で行うと、二次チェックや承認チェックなども必要だったので、1日1時間程度を要していました。それがRPAで完全自動化してからは、ほぼクリックするだけになったので、時間で言うと約5分の1まで削減できたと思います。

柏原:
月換算で20時間ほども削減できたということですね。ちなみに、LINE通知メッセージにより表れた効果や、受け取ったお客様の反応はいかがでしょうか?

奈良氏:
満期のご案内などの通知メッセージから継続契約に至るケースは十分把握できているので、着実に実績が上げられています。

また、お客様からの反応については、継続完了後や契約完了後のタイミングで取っているアンケートにおいて、「LINEで通知が来て便利」といったポジティブなご意見をいただいています。
LINE通知メッセージに利便性を感じて評価いただいているお客様のお声は多く、実際の効果も表れているので、電話やメール以外にも、然るべき接点できちんとご提案ができていることはとても良かったと思っています。

柏原:
「MOBI CAST」を活用して通知メッセージの取り組みを続けていく中で、友だち登録数はどう推移していますか?

奈良氏:
2022年2月にLINE公式アカウントを開設してから、2年弱で30万人を突破しました。2023年以降は特に増えており、そのきっかけのほとんどが通知メッセージからです。1日あたりの友だち登録数が前年の1.5倍に拡大している様子を見ても、確実に「MOBI CAST」が友だちの獲得に寄与していると言えます。

セゾン自動車火災保険、LINE公式アカウントの友だち数推移

契約完了後のメール等にもLINEアカウントのご案内を差し込んでいますが、コンスタントにここまで増加したのは、やはり通知メッセージが起点になって友だち追加してくださるお客様の動きが多いのだろうと捉えています。

柏原:
増加の勢いが目に見えてわかりますね。友だち登録を促すための広告やキャンペーンなどは打っていますか?

小松氏:
打っていないです。昨年度はそういったインセンティブのあるような施策も試してみたのですが、思うほど効果が高くなかったので、今年度からは通知メッセージに重点を置くようになりました。

奈良氏:
“契約者純度”とも言うべきでしょうか。今は契約者様による友だち登録が増えてきていて、質の良いお客様が多い状態が担保できています。そのため、ブロック率は10%未満と非常に低く、当社からのご案内にもかなり高い反応をいただけています。

例えば、「(車の)2台目の保険はいかがですか?」といった、契約者様にしかメリットがないご案内にも、LINE通知メッセージの配信から数十件以上の契約獲得に至っています。なので、契約者様の割合が多い状態を維持しながら、通知メッセージからの流入を主軸に友だちを増やしていく方針が良いだろうと考えています。

ツール導入後は内製化が進み、投資対効果は大。クロスセルにも成果

―モビルスが提供するアンケート機能については、どのように活用されているのでしょうか?

奈良氏:
お客様の状態に合ったご案内をすることに役立てています。
モビルス製品は「どの設問に回答いただけたのか、回答内容はどうだった」などで自由にセグメントでき、その先のLINEメッセージの配信までつなげられることに大きなメリットを感じているので、今後はそれぞれのお客様の意向に最適化したLINEメッセージの配信も実現できればと思っています。

柏原:
友だち全体に送った初回のアンケートの回答状況はいかがでしたか?

奈良氏:
約8,000件もの回答をいただけました。中でも、約2,000件は具体的に細かく答えていただけており、お客さまへの最適な配信につなげていきたいと考えています。

柏原:
ところで、ここまで当社ツールの導入後に表れたさまざまな効果をお教えいただきましたが、投資対効果についてはどう評価されているでしょうか?

小松氏:
導入前の課題とも少し重複しますが、やはり当社としては内製化を推し進めたい意向が強かったので、運用費削減の面で投資対効果は大きかったと捉えています。具体的には、以前の3~4割程度は削減できたのではないでしょうか。

奈良氏:
先ほどお伝えした通り、通知メッセージの配信やコミュニケーションがより自由にできるようになったことで、友だちの数は右肩上がりに増加していますし、ブロック率10%未満の品質を維持できているところも、非常に良い状況だと思っています。また、LINEからのアンケートによるリード獲得や、クロスセルにも成果が出ているので、収益への貢献も果たしていると考えています。

セゾン自動車火災保険、LINE公式アカウントの効果

柏原:
ありがとうございます。当社の製品やサービスに対するご要望や期待などがあれば、ぜひお教えください。

小松氏:
「MOBI CAST」や「MOBI BOT」などの各ツールが、より横断的に使えるようになると嬉しいです。具体的な例を挙げると、操作画面上で「MOBI BOT」と「MOBI AGENT」は双方向に行き来できるけど、「MOBI BOT」と「MOBI CAST」だと一方から行ったままになる――といったところです。クロスに横断できれば、さらに利便性が高まると期待しています。

あとは、ほかの導入社様でもいろいろな成功事例が出ていると思いますので、これからも当社に適宜ご提案をいただけると嬉しく思います。

柏原:
有益なご意見をいただき、ありがとうございます。よりいっそう利便性が高められるよう、引き続き製品・サービスの改良に努めてまいります。

個々のお客様に寄り添い、顧客体験の向上とデジタルで完結できる世界観を目指す

―事業推進部デジタルコミュニケーションで新たに取り組んでいきたいことや、今後の目標などをお聞かせください。

奈良氏:
LINEについては、2024年3月期中に契約者様の約半数の友だち数を目標に掲げています。当社には約130万件の契約がありますので、そのうちの多くのお客様がLINEを使ってくださるといいなと思っています。

また、お客様ごとにご案内の受け取り方法はメールがいいのか、LINEがいいのかといった意向を把握したいと考えています。そのために、一人のお客様を一気通貫で見られるよう、IDやデータの連携を進めていく方針です。メールでもLINEでも密にコミュニケーションができ、デジタルで完結できる世界観を目指していきたいです。

柏原:
ありがとうございます。最後に、今後の目標やチャレンジに向けて、お二人から一言ずついただけますか?

奈良氏:
お客様に心地良くコミュニケーションしていただくには、個々のお客様の属性、嗜好性、ライフステージの段階などをデータでしっかり把握し、最適なご案内をすることが一番だと考えています。それが実現できるように、LINEを十分に活用してお客様の情報を取得し、分析をした上で、情報発信をしていきたいです。

自動車保険は1年更新という短期的なご契約ですが、お客様の人生に寄り添った存在であれるよう、LINEや各種ツールを駆使していければと思っています。

小松氏:
奈良さんが言う通り、お客様がストレスなくコミュニケーションができる状況が一番大切です。よりデジタルなコミュニケーションを好むお客様には、LINEやアプリを通じて顧客体験を向上させていきたいですし、そうやって課題を解決していくことが私たちの目指す姿でもあります。

130万件のご契約の中には、LINEが生活の軸になっている方やLINEに利便性を感じている方もいれば、ネイティブアプリを好む方もいらっしゃいます。一辺倒に「LINEだけ」ということではなく、それぞれのお客様に最適な形でご提案・ご案内ができるよう、引き続き努めていきたいと思います。

柏原:
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。