神奈川県横浜市は、2020年4月に「横浜市LINE公式アカウント」を開設。粗大ごみ受付と新型コロナを中心とした情報配信からスタートしました。2021年5月から「セグメント情報配信機能」「道路の損傷通報ボット」をご活用いただいています。

横浜市 市民局 広報相談サービス部 広報課 担当係長 永森 丈晴 氏、尾林 明浩 氏(※肩書は2022年2月当時)に、セグメント情報配信機能を中心に導入の目的や運用方法、導入後の効果や今後の展開などについてお話を伺いました。

人口規模3,768,902人(2022年2月1日時点)
導入製品MOBI CAST、セグメント情報配信機能、Mail to LINE、道路等の通報ボット ⇒2021年5月から利用開始
横浜市LINE公式アカウントの基本情報
横浜市役所インタビュー
(左から)尾林氏、永森氏
※撮影のときのみマスクを外しています

新たな情報配信の仕組みと、電話・Web以外での粗大ごみ受付手段を探していた

―LINE公式アカウントを開設した目的を教えてください。

尾林氏

一番の目的は住民サービスの拡充です。当時、インターネットでの広報活動は、Webサイトのほか、Twitterで頻繁に情報発信していましたが、もっと市民の方に情報が届くような、次の情報配信の仕組みがないか考えていました。

また、粗大ごみ受付の担当課でも、電話での申し込みが非常に多く、集中する時期にはコールセンターが対応しきれず、お待たせしてしまうという課題があったのです。

情報配信と粗大ごみ受付の新たな方法を検討していた中、2019年にLINE社が地方公共団体プランを発表したことが後押しとなり、LINE公式アカウントの開設を決めました。

尾林氏は、LINE公式アカウント開設当初から担当している
尾林氏は、LINE公式アカウント開設当初から担当している

地方公共団体プランは、基本料金が無料でメッセージ配信費用もかかりません。広報課としては、直接市民に情報を届けたいという想いがあったので、プッシュでメッセージを届けられるLINEは非常に良いと思いました。

LINEは年齢にかかわらず多くの人が日常的に使っているので、粗大ごみ受付の電話・Web以外の方法としても適していると考え、2020年4月から情報配信と粗大ごみ受付の機能からスタートしました。

LINE公式アカウント料金と、地方公共団体プラン適用後の比較
2019年7月よりLINE公式アカウント利用料を、地方公共団体向けに無償提供するプランが開始された。以前は、月額固定費15,000円、メッセージ送信従量課金3円/通がかかっていたが、地方公共団体プラン適用後は、月額固定費用・プレミアムID利用費用が無料のほか、無料メッセージ通数も制限なく利用できる。

必要な情報のみ受け取れるよう、セグメント情報配信の導入を決めた

―LINE公式アカウント開設一年後に、セグメント情報配信機能を導入された経緯を教えてください。

尾林氏

LINE公式アカウントを開設した2020年4月は、ちょうど新型コロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が発令されたタイミングでした。そのため、最初は新型コロナ関連の情報配信に限定してスタートしました。

その後、少しずつ感染拡大の波が落ち着いてきたので、そのほかの市政情報も発信していきたいと考え始めました。新型コロナ関連の情報を受け取る目的で友だち登録した方が多かったと思われるので、受け取りたい情報を利用者側で選択できるような、セグメント情報配信機能の必要性を感じていたことが導入の決め手です。

横浜市LINE公式アカウントのセグメント情報配信のカテゴリー一覧
横浜市LINE公式アカウントのセグメント情報配信のカテゴリー一覧。LINE公式アカウントを開き、「基本メニュー」⇒「受信設定」を選択すると、カテゴリー一覧を表示。

メール配信内容を活用するなど、職員の業務省力化も心掛けた

―現在セグメント情報配信のカテゴリーは4つですが、どのように配信内容を決めていますか?

尾林氏

情報配信は、カテゴリーに設定したからには定期的に発信できないといけません。ですので、まず「新型コロナ、防犯、観光・イベント、お知らせ」の4つのカテゴリーで始めています。

カテゴリーや配信内容を決める際には、職員側の作業が省力化・効率化できるかも意識しました。例えば、防犯情報は、神奈川県警察がメール配信をしている「ピーガルくん子ども安全メール」(https://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesd5010.htm)を活用しています。

モビルスさんの「Mail to LINE」機能により、メールで配信したメッセージから、ユーザーが選択した配信対象地域にあわせたメッセージのみ、LINEで自動転送する仕組みです。

市民にとってはこれまでメールのみだったのを、身近なLINEでも届けることで情報を受け取りやすくなり、職員にとっても自動転送で活用できるので省力化に繋がっています。

「Mail to LINE」の構成イメージ図。即時性が求められる防災・防犯セグメント配信に対応。
メールで送信していた内容をLINEにも自動転送できる「MOBI CAST」のオプション機能「Mail to LINE」を活用。犯罪が発生した区域を管轄する警察署が送信したメッセージ「ピーガルくん子ども安全メール」を「配信対象地域」にあわせてLINEで自動配信できます。

―LINE公式アカウントの運営体制を教えてください。

永森氏

インターネット関連の広報担当、課長以下5名が中心となり、情報配信の運用のほか、各課との調整などアカウント全体の取りまとめをしています。ワクチン接種予約や道路の損傷通報の運用は、それぞれの担当課で行っています。

1つのアカウントで3つのシステムを統合することも、スムーズに進められた

―運用開始までに大変だったことはありますか?

尾林氏

大変だと感じたことはあまりないです。まずスモールスタートを徹底し、情報配信も広報課でさばける範囲で小さくスタートしているので、そこまで大きな負荷なく始められました。

セグメント情報配信機能と道路の損傷通報機能を新たに導入する際も、スムーズに導入できたと思います。粗大ごみ受付はほかのベンダーさんの仕組みを導入しており、その前提でセグメント情報配信と不具合通報を新たに追加し、3つのシステムを1つの公式アカウントで実現する必要がありました。

モビルスさんから的確なアドバイスをいただけたこともあり、トラブル無く公式アカウントのサービス拡充が実現できました。

3つのシステムを1つのLINE公式アカウントに統合した際の、導入前・導入後のイメージ。
通常一つのLINEアカウントにつき、Webhookを使って接続できるシステムは一つまで。セグメント情報配信はWebhookを用いずに実現し、その後、Switcher APIを用いて、不具合通報サービスを接続。さらに粗大ごみ申込もSwitcher APIを使うことで、既存のシステムをそのまま継続できた。

稼働の負荷をなるべく少なく、有益な情報を配信できる仕組みをつくる

―運用で工夫している点はありますか?

永森氏

ほかの自治体さんもやっていることだと思いますが、配信頻度や時間帯も気を付けています。LINEはプッシュ通知にしている方が多いと思いますので、メッセージを送りすぎると「うるさい」と感じられ、ブロックや友だち解除につながってしまいます。

このため、1日あたりの配信メッセージ数を調節し、配信する時間帯も早すぎず、遅すぎず、ほかのメッセージに埋もれないような、見てもらいやすい時間帯を選ぶなどです。

また、リッチメニューは新型コロナ関連とそれ以外のメニューで切り替え表示できるデザインにしています。利用する人のニーズが異なると思ったので、新型コロナ関連とほかのメニューを混ぜないようにしました。今後も、状況に応じてメニューデザインも変えていく予定です。

工夫されたリッチメニューの表示例
限られたメッセージ領域を潰さずに、タブ形式で切り替えられるように、リッチメニューを配置しコンテンツの拡充を実施。リッチメニューのデザイン・作成もモビルスのカスタマーサクセスチームがサポート。

必要な情報を届けることで友だち数が47万人を超える。他部署からもLINE活用の相談が増加

―セグメント情報配信機能導入後の効果や良かった点があれば教えてください。

尾林氏

導入時に課題だった新型コロナ以外の市政情報を発信し、利用者が受け取りたい情報だけを届けられるようにしたい、という目的は実現できていると思います。この一年で、友だち数も倍以上になり、476,991人(2022年2月1日時点)とかなり増えているので、多くの人に市政情報を届けられるようになりました。

新型コロナのワクチン接種情報も逐一配信したことで、LINEに友だち登録すれば、ワクチン接種の最新情報が受け取れると市民の皆さんに感じていただけたことも、友だち数が増えた大きな要因だと思います。LINEでのワクチン接種予約も使い勝手が良いという声をいただくことがあります。

永森氏

以前、新型コロナのワクチン関連のお問い合わせがあった際に、新型コロナ関連の情報をLINEで配信していることを市民の方に伝えたところ「それは良いですね!登録します」とお言葉をいただいたこともありました。

セグメント情報配信は、任意のタイミングで配信登録・変更・解除を実現できる
カテゴリーごとに、受信したい内容を選択して配信登録が完了。利用者は、好きなタイミング配信登録・変更・解除できる。

尾林氏

職員の中でもLINEの良さは浸透しています。各部署も情報をいかに届けるか日々悩んでいるので、LINE公式アカウントの友だち数が多くなっていること・プッシュ配信できることに期待している声も増え、活用したいと相談が来ています。

区役所からの配信など用途を拡充し、より多くの方にセグメント情報配信を利用してもらいたい

―今後の展望について教えてください。

尾林氏

今後は、セグメント情報配信の質を高め、カテゴリーごとの登録者を増やすことが課題です。新型コロナ関連情報の登録者が最も多く、防犯とお知らせが続きます。本市の運用として、重要な情報はセグメント情報配信ではなく、全員へ配信するようにしているため、それで必要な情報は十分と感じている方もまだまだ多いと思われます。

セグメント情報配信をもっと活用してもらえるよう、情報配信の拡充を検討しています。現在は市の広報課からの発信のみなので、運用プロセスを整理し、より身近な情報を発信できるよう各区役所から直接情報配信できるようにする予定です。

横浜市もいまDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。DXを進め、LINEのサービスをさらに増やし、市民と市役所が相互に繋がる場にしていきたいと考えています。

セグメント情報配信機能は重要性を話す永森氏
セグメント情報配信機能は重要性を話す永森氏

永森氏

セグメント情報配信機能は、重要だと考えています。人によって必要な情報は異なるので、要・不要を選択できないと友だち解除にも繋がりやすいです。上手くセグメント情報配信を活用していくことが今後の課題です。

カテゴリー登録できることをまだ知らない方も多いかもしれません。別件でお問い合わせがあった際に、LINEの機能について説明すると「そんな便利な機能もあるのですね!」と初めて知ったという声も聞きます。

尾林氏

公式アカウント自体を使ったことがない方もまだまだ多いと思います。友だち登録している人でも、リッチメニューに触ったことが無い方も多いかもしれません。便利な機能もたくさんあるので、使い方の周知はもっと必要ですね。

新型コロナ関連の情報配信がスタートなので、「新型コロナの情報が役所から来るなら、登録してみよう」という方が多く、登録者は年齢層が高めな印象です。広報紙への掲載や問い合わせの際にお伝えするなど、地道な周知を続けていきます。

横浜市とは月に一度、営業担当とカスタマーサクセス担当による定例会を実施しています。使っていただく中で出てくる課題やご要望に応えられるよう、製品を導入して終わりではなく、運用開始後のサポートにも力を入れています!
モビルスの自治体向けソリューションは、「LINEを活用した学校連絡網」や「有人チャット」などさまざまなサービスをご用意しているので、お気軽にご相談ください。