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株式会社ファンケル|チャットボット解決率30%向上、「接点」から「体験価値」を提供する場へ

ハルシネーションリスクを回避する高い検索精度が決め手。更新時の運用工数を最大1週間から1時間へ大幅削減し、CXとEXの好循環を生み出す

Two women posing in a bright reception area with a FANCL sign on the wall and a MOBILIS logo in the corner behind them.

株式会社ファンケルは、AIチャットエージェント「MOBI BOT GenAI(モビボット ジェンエーアイ)」のVector Search機能(導入時名称:MOBI BOT AI Vector Search)を導入し、「ファンケルオンライン」FAQサイトのチャットサポートおよびLINE公式アカウント「ファンケル カスタマーサポート」にて運用を開始しました。

導入の背景、運用方法や導入効果、今後の展望などを、カスタマーサービス本部 CXデザイン部 デジタルデザイングループ 原園 早由里氏、川崎 純子氏にお話を伺いました。

※ベクトル検索:テキストや画像などの様々なデータを数値のベクトルに変換し、そのベクトル間の距離や角度を計算して、意味的に類似した情報を効率的に見つけ出すAI技術のこと

※上部写真:(左から)ファンケル 原園氏、川崎氏
※インタビュー実施日:2026年6月17日

企業プロフィール

事業内容
化粧品・健康食品の研究開発、製造および販売
用途
「ファンケルオンライン」FAQ(よくある質問)サイトのチャットサポート・LINE公式アカウント「ファンケル カスタマーサポート」での問い合わせ対応
導入時期
2026年1月

導入サービス

課題

  • 従来型チャットボットでは、利用者が最適解を得られず、途中離脱が発生。
  • 複雑化するシナリオの設計や更新・検証作業の負荷が限界に。
  • コミュニケーション手段のデジタル化を背景とした、チャットサポート体制の拡充。

施策

  • PoCを経て自然文での質問にも対応し、検索に既存FAQデータを利用できる「MOBI BOT GenAI」を導入。
  • シナリオ型運用を原則廃止。約630件の既存FAQのCSVを利用し、運用を簡素化。

効果

  • 意図理解で的確な候補を提示し、チャットボットの解決率が約30%向上。
  • 最大1週間のメンテナンス作業を約1時間に短縮し、管理業務の生産性を改善。
  • チャットボットでのお客さまの自己解決を促進。事前質問把握によりチャットでの対応を円滑化。

コンタクトセンターを「接点」から「体験価値」を提供する場へ

ーはじめに、担当されている業務内容について教えてください。

原園氏:ファンケルのカスタマーサービス本部は、3つの部署で構成されています。お客さま対応を主軸とする「CX推進部」、カスタマーサービス全体のデジタル設計やシステム構築、VOC(顧客の声)活動を統括する「CXデザイン部」、そして返品や支払いなどのバックオフィス業務を担う「フルフィルメント改革部」です。

私たち二人はCXデザイン部に所属しており、ITやデジタルの力を活用したカスタマーサービス本部全体の仕組みの改革・企画立案、およびCX(顧客体験)の推進を担当しています。具体的にはPBX(構内交換機)※の更改やチャットシステムの入れ替えなど、デジタル接点の企画立案から管理運用までを幅広く担っています。


さらに、現在はコンタクトセンターをお客さまの困りごとを解消する「接点」に留めず、「豊かな体験価値」をご提供する場へと進化させることを目指しております。そのために、EX(従業員体験)向上の取り組みも積極的に推進しているところです。


※PBX(構内交換機):企業やオフィス内の複数の電話機(内線)を管理し、外線との接続や内線同士の通信を制御する電話システム

 

カスタマーサービス本部 CXデザイン部 デジタルデザイングループ 原園 早由里氏


川崎氏:私はその中で、主にノンボイス化の推進やナレッジシステムの改善、ツールの選定などを担当しています。今回の「MOBI BOT GenAI」についても、メインで運用管理を担っています。


ハルシネーションリスクを回避、確実な回答提示と検索精度の高さが選定の決め手

ー弊社サービスを導入する前に、直面していた主要な課題は何でしたか?それらの課題に対して検討した、または実施した解決策を教えてください。

原園氏:ファンケルは、2035年に向けた長期経営構想「ファンケル・ビジョン2035(FV2035)」を策定し、「お客さまから最も信頼され、選ばれ続けるブランド」を目指しています。その中でカスタマーサービス本部は「お客様のより良い理解者として、それぞれのお客様に寄り添い生涯の美と健康のサポート役として最も信頼される存在になる。」というパーパスを掲げました。一つひとつの応対を通してブランドの価値を感じていただき、信頼を生む瞬間にするため、必要な仕組みや組織改革を実行しています。


具体的には、正しい回答を提示することはもちろん、お客さまが質問に至る背景や心情といったエモーショナルな面まで汲み取れるオペレーターの育成です。そして、幅広い年代のお客さまが、場所や時間を問わずスムーズに問題を解決できる環境としてチャットなどノンボイス領域の拡充を進めています。


ファンケルのお客さまも、お問い合わせ手段は電話からチャットなどのノンボイスへと移行しつつあります。今後、電話を利用しないデジタルネイティブ世代がシニア層へと移り変わっていくことを見据えると、今のうちからテキストチャネルを拡充し、幅広いお客さまが気軽にお声を寄せやすい窓口を整えておくことが必要不可欠だと考えています。


デジタルな接点は一方通行になりがちでお客さまの気持ちを汲み取りにくい面もありますが、「思わずアクセスしたくなる場所」「困ったときも、そうでないときも思い出してもらえる場所」にしていきたいと考えています。


川崎氏:そうした「体験価値」の提供は、オペレーターの有人対応だけでなく、セルフ解決の場面でも実現していきたいと考えています。これまでのチャットボットは、選択式の「シナリオ型」と、入力された文章と一致した回答を提示する「キーワード検索型」を併用していました。


しかし、お客さまが自由な文章で質問されたり、キーワードが完全一致しなかったりした場合に回答を出せず、途中で離脱してしまうケースが発生していました。また、膨大な商品数や頻繁なキャンペーンに対して、全ての問い合わせパターンを事前に網羅してシナリオを設計することや、その更新・動作検証といったメンテナンス作業には多くの負荷と時間がかかり、限界を感じていました。


カスタマーサービス本部 CXデザイン部 デジタルデザイングループ 川崎 純子氏


原園氏:運用開始後も、問い合わせの傾向をもとに質問の追加や修正を常に行う必要があり、メンテナンスに追われていました。追加したい項目が増えるたびに、シナリオがどんどん複雑化していくことも課題でしたね。


川崎氏:こうした課題を抱えていた際、モビルスさんから、自然な文章での質問に対応し、FAQを横断的に検索できる「MOBI BOT GenAI」をご提案いただいたことがきっかけです。チャット利用者は単語ではなく文章で質問される傾向が強いため、その入力形式に合致し、的確にヒットするツールとして検討を始めました。


導入に向けて2025年12月に「ファンケルオンライン」FAQサイトのチャットサポートとLINE公式アカウント「ファンケル カスタマーサポート」のチャットサポートで、実証実験(PoC)を実施しました。その結果、従来のチャットボットと比較して問い合わせ完了数が約20%向上し、自己解決促進や有人オペレーターの対応数減少など、業務効率化において明確な成果が得られたため、正式導入を決定しました。


そして2026年1月より本導入を開始し、一部を除いて従来のシナリオ型チャットボットを廃止し、「MOBI BOT GenAI」へ移行しました。既存のFAQサイトにある約630件のデータをCSVファイルとして加工し、システムにインポートして学習させるだけという、シンプルな運用フローを構築できました。現在では、お客さまがどのような表現で質問されても、文脈を理解してFAQから適切な回答を探し出し、提示できるようになっています。

ファンケルオンラインのチャットボットを使った問い合わせ画面を示すノートPCとスマホのデモ表示

画像は2026年7月時点のお問い合わせ画面です。

ー弊社の製品を選定いただいた理由をお聞かせいただけますか。

川崎氏:お客さまが自然な文章で入力しても、的確に回答を引き出せる検索精度の高さが最大の決め手です。生成AIやAIエージェントの活用も検討しましたが、私たちの領域はお客さまの肌や健康相談に関わるため、カスタマーサービスとしての回答に間違いは許されません。現段階では、生成AI特有の「もっともらしい不正解」を出してしまうハルシネーションのリスクが高いと判断し、見送りました。その点、「MOBI BOT GenAI」は確かなFAQの中から回答を導き出す仕組みであるため、誤った回答を提示する心配がなく、安心して使えると確信し導入を決めました。


チャットボットでの解決率30%向上、メンテナンス時間は1週間から1時間へ大幅削減

―導入後の定量的な効果はいかがでしょうか。

川崎氏:一番の成果は、解決率の大幅な向上です。チャットボットの解決率が約30%向上しました。お客さまの入力意図を汲み取った的確な候補が表示されるようになったことで、従来は回答が少なかった終了時アンケートにおいて、「役に立った」というポジティブな評価が目に見えて増加しています。


また、チャットボットの更新作業にかかる負荷も大幅に削減されました。以前のシナリオ型チャットボットでは、毎月のキャンペーン更新やメンテナンスに伴うシナリオ作成・テスト作業に最大1週間ほど費やしていましたが、導入後はデータ加工を含めても約1時間、AIの学習自体は数分で完了するようになり、手軽かつ迅速な運用が可能となりました。


さらに、キャンペーン開始日の深夜0時など、コンタクトセンターの営業時間外でもすぐにお客さまが質問できる点でチャットボットが大変役立っています。ノベルティ獲得条件など特有の質問が急増する繁忙期でも、24時間対応のチャットボットがお客さまの商品選びをサポートするため、スムーズな自己解決と体験向上に貢献しています。

画像は2026年7月時点のお問い合わせ画面です。



創出した時間を「ブランド体験」へ。CXとEXがもたらす好循環

ー導入後、業務効率や生産性、さらには顧客満足度や従業員満足度にはどのような変化がありましたか?

原園氏:チャットボットの運用時間を大幅に削減できたことで、管理業務の生産性は飛躍的に向上しました。しかし、私たちの部署内では「業務・工数の削減がゴールではない」という認識を一致させています。IT活用によって創出した時間・削減した工数を単なるコストカットで終わらせず、オペレーターの自己研鑽や教育に充て、お客さまへの価値創造(ブランド体験)につなげることこそが真のゴールです。そこへ向けて、この共通認識を持てたこと自体が最大の成果だと考えています。

川崎氏:的確な回答提示によって自己解決率が高まり、お客さまの満足度は大きく向上しました。ただ、チャットボットによる対応だけでは満足はしていただいても、感動までは生まれにくいものです。そこに有人対応の本当の価値があります。


チャット終了時のアンケートには、現在たくさんのうれしいコメントが寄せられています。たとえば「初めて有人チャットを使ったけれど、すごく良かった」「いつもオペレーターさんが親切にしていただいて感謝しています」「お話しができてすごく楽しかった」「人間味のある応対に好感が持てました」といったお声です。ファンケルのコンタクトセンターでは、電話応対でお客さまと商品相談などを通じて「楽しかった」と言っていただけることが多いのですが、電話だけでなくチャットでも同様の温かいコミュニケーションをご提供できるようになってきたと感じています。


また、従業員満足度の観点でも好影響が出ています。オペレーターからは、「お客さまがチャットボットに入力した質問内容を事前に把握できるため、素早く適切な回答準備ができるようになり、心理的負担が減ってスムーズに対応をしやすくなった」と非常に好評です。

―弊社のセールスやカスタマーサクセスのサポート体制はいかがでしたか?

川崎氏:ファンケルでのPoCの成果を踏まえ、系列ブランドである「アテニア」へ「 MOBI BOT GenAI」を展開した際、モビルスさんがシナリオ作成や初期チューニングを主導してくださいました。私たちの運用負担を大幅に軽減していただき、大変助かりました。

―今後の展望を教えてください。

原園氏:コンタクトセンターを「接点」から「体験価値」を提供する場へ進化させるべく、まずはそのビジョンを組織内に浸透させている段階です。メンバー一人ひとりが目指す姿を理解して自分事化し、主体的に行動できるよう、困りごとの解消に留まらず、お客さまの気持ちに寄り添い、共感できるオペレーターの育成に注力しています。それを正しく評価できるスーパーバイザーの教育体制や人事評価制度の構築、そして新システムやAIといったデジタル活用を組み合わせたブランディング計画を実行していきます。


その一環として、VOC分析の強化やオペレーターの育成への活用を目的とした音声認識システムの導入も計画しています。人の強みとデジタルの強みをしっかりと見極め、それぞれを最大限に活かせる仕組み作りに取り組んでいきます。


川崎氏:「MOBI BOT GenAI」によって、お客さまからの問い合わせ理由を精度の高いデータとして収集・蓄積できるようになりました。今後はこれを分析し、VOCとしての全社活用を進めていくフェーズです。


ファンケルには、創業当初からVOCを全社経営に活かす企業文化として根付いています。経営層をはじめ、広告部門、研究所、製造ライン、マーケティング部など、さまざまな部門から「こういったお声を集めてほしい」という相談が活発に寄せられます。今後は、生成AIを活用し、お問い合わせ理由、応対ログやFAQといった日々蓄積されるナレッジの収集・成形・分析を自動化することで、さらなるナレッジ活用の促進と全社への迅速なフィードバックを実現し、会社全体でのVOC活用に貢献していきたいと考えています。

 

 

当事例のサービス紹介

ご導入いただいたサービスの資料はこちらからご覧いただけます。

有人チャットシステム「MOBI AGENT(モビエージェント®)」は、回答支援機能や生成AIによる後処理業務(ACW)の短縮、個人情報への配慮、ダッシュボード機能など、オペレーターに優しい支援機能が充実したチャットサポートシステムです。

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チャットボット「MOBI BOT(モビボット®)」は、7年連続国内売上シェアNo.1のチャットボットシステムです。AI、CRMやRPAなど外部システムと柔軟に連携でき、問い合わせ対応から手続き処理まで自動化できます。
※出典:株式会社アイ・ティ・アール 「ITR Market View:対話型AI・機械学習プラットフォーム市場 2024」

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