SBIいきいき少額短期保険株式会社は、SBIホールディングス株式会社のグループ会社です。「シンプルでわかりやすく」「保険料は手ごろに」という、お客さまの要望に応える保険商品を開発・提供しています。死亡保険、医療保険はシニア層を中心に、ペット保険は犬・猫の高齢化や病気・ケガが気になる飼い主さまに、幅広く支持されています。
通院・治療頻度が高くなることがあるペット医療において、「SBIいきいき少短のペット保険」では 従来の都度郵送で行う保険金請求にかかる手間の軽減、効率化の要望がお客さまより多く寄せられていました。そこで、お客さまの利便性向上のため、「MOBI BOT」、「MOBI AGENT」と顧客管理システム「Salesforce」を連携することにより「LINE公式アカウント上での保険金請求手続き」および「本人確認・契約内容確認の自動化」を実現、2022年5月より運用を開始していました。
製品導入の背景や運用方法、導入効果、今後の展望などについて、SBIいきいき少額短期保険株式会社の業務部 次長 鈴木 邦広氏、業務部 課長 荻野 英雄氏にお話を伺いました。
(インタビューは2022年11月9日に実施)
SBIいきいき少額短期保険さまの事例紹介をまとめた導入事例PDFは
こちらからもダウンロードいただけます。
<最新版の事例記事はこちら>
組織名 | SBIいきいき少額短期保険株式会社 |
事業内容 | 少額短期保険業 |
導入製品 | 「MOBI BOT」、「MOBI AGENT」、およびCRM連携 |
用途 | LINE公式アカウント上での保険金請求手続き 本人確認・契約内容確認の自動化 |
導入時期 | 2022年5月 |
お客さまの利便性向上と後続事務の両立
―抱えていた課題や導入に至った経緯等を教えてください
荻野氏:
お客さまの声として「請求をもっと簡単にしてほしい」というご要望をたくさん頂いていたのが大きな背景です。ただ、会社としてはペット保険を発売し始めてからまだ4年という短い歴史しかなく、多くのご契約をいただく中で、web請求を導入するための事務体制が未熟な状況でした。
そのような状況下で請求方法だけを便利にしても、結局、受付後の支払査定工程に時間がかかり、「webで簡単に請求できるけど、お支払いまでは長い」という状況になりかねない。そのような理由から、なかなか一歩を踏み出せないところがありました。
しかし、お客さまから「繰り返し通院している状況下で、もっと簡単に請求できる仕組みを導入してほしい」というご要望が多かったのも事実であり、なんとかしたいという思いは持っていました。
鈴木氏:
プロジェクトとしてスタートしたのは2021年の秋頃ですが、モビルスさんとはその前年にも一度打合せをしています。ただその時は、もしこれをやったら大変なことだと思っていました。とにかく後続事務をしっかり確立しないと、web請求には耐えられないと感じたからです。
“システムに後続事務を合わせる”のではなく“後続事務にシステムを合わせることができるか”
ー導入の際のポイントや、決め手となったことは何でしょうか
荻野氏:
まず、最も気をつけなければいけない点が、保険金請求をweb化することで、今まで複数回分の通院をまとめてご請求いただいていたものが、通院の都度、ご請求いただくことになる、ということでした。つまりご請求いただく回数が増えるであろうという点です。
この点を十分に勘案しながら、実際にweb請求を導入する場合、どのような経路がお客様、当社双方で一番良いのかを考えていました。候補として挙がっていたのは、「LINE」、「ペット専用のアプリ」、「オフィシャルwebサイト」の3つの経路です。
まず、「ペット専用アプリ」については、既製品アプリの枠組みに対し、当社が事務を合わせていかないといけないという懸念点がありました。具体的には当社では、複数の通院を一度にご請求いただいた場合、1請求としてデータ管理を行いますが、それを既製品アプリでは1通院ごとに分けて管理しないといけない。これに対応するためには、既存の事務を大きく変える必要性があり、非常に大きな労力が必要になります。また、懸念していた請求回数についても1通院単位での管理となるため、増えることが明白であり、後続の事務逼迫にダイレクトに繋がってしまう。そう考えると「専用アプリでの導入は難しい」という結論になりました。
次に「オフィシャルwebサイト」ですが、こちらはお客さまのアクセス性の問題が大きいと感じていました。多くのユーザーの方は、ご自身のスマホの電源を入れた際、そのトップ画面にはLINEのアイコンがあると思います。正直、これに敵うアクセシビリティはないだろうと考えました。
また、当社はペット保険だけでなく、人の医療保険、死亡保険、地震補償保険等も取り扱っていますので、長い目で見た時にそのあたりへの機能拡張性や汎用性、開発ベンダーとの関係性など様々な視点から検討した結果、LINE上でモビルスさんと自分たちのやりやすい形で開発していくことが一番良いであろうと考えました。
鈴木氏:
導入の際のポイントとして、共同で進められるというところも良いと思いました。ナレッジが一方にたまるのではなく、お互いにwin-winの関係として、モビルスさんとは共同で開発を進められる体制を一番築きやすいと感じました。その点も含めてモビルスさんの製品が最も適していました。
古屋:
やはりベンダーの中でも、開発は一切せずに開発が必要なら他を使ってくれというタイプの会社とそうでないかは分かれますよね。モビルスは比較的柔軟に開発対応しています。
請求完了までの所要時間と後続事務の両立、そのために
―KPIの設定方法や運用で工夫されている点を教えてください。
荻野氏:
やはりお客さまの利便性向上を目的に仕組みを導入したわけですから、お客さまが「保険金請求したい」と思い、端末を操作し始めてから保険金請求が完了するまで、どれぐらいの時間がかかっているかは常にモニタリングをしています。
現在は約15分です。導入前は、紙での請求だけでしたから、お電話いただいて、請求書類をお送りし、お客さまから当社に返ってくるまで、最短でも6営業日程度かかっていました。それが15分で完了するようになったのは、1つの大きな成果だと思っています。
また先ほど申し上げた通り、保険金請求が手軽にできるようになると、通院の都度、保険金請求が発生することが想定されるため、請求件数の増加に繋がります。急激に請求件数が多くなりすぎてしまうと、後続事務がパンクしてしまう懸念がありますので、その点については、どのくらいのペースで請求件数が増えているのかという部分を運用開始以降、常に注視しているところです。
古屋:
導入後の請求件数の増加ペースはいかがですか?
荻野氏:
導入後、ペット保険金請求全体のうち毎月4%ほどLINEによる保険金請求が増えており、現在(2022年10月末時点)で約20%です。
LINEから保険金請求ができることについては、ご契約の更新月を迎えられた方に対し、段階的にご案内しています。
これはご契約者さまに一斉にお知らせしたい気持ちもあるのですが、急激な請求件数の増加と、それによる後続事務のパンク、結果としてお客さまにご迷惑をおかけすることを防止するために、あえて段階的にご案内させていただいている状況です。
古屋:
そのように工夫されている中で、さきほど仰っていた毎月4%増加というのは、イメージ通りというところでしょうか?それとも、意外と多いというご印象でしょうか?
荻野氏:
これはイメージ通りです。請求から保険金お支払いまで何日かかったかの日数をKPIとしているのですが、LINEによる保険金請求を導入して以降もなお短縮できています。
鈴木氏:
15営業日ぐらいから9営業日に下がり、三分の二くらいになりました。
荻野氏
この仕組みを導入する以上、「LINEを入れたから請求件数が増え、お支払までの日数が延びてしまった」ということは絶対に阻止しなくてはいけないと思っていましたので、「スムーズに導入でき、お支払日数を短縮」という姿が実現できていることは、非常に良かったと思います。
古屋:
15営業日から9営業日に短くなったというのは、保険金請求がLINEか紙かは関係なく、請求があってからの日数ということでしょうか。
荻野氏:
はい、その通りです。現在はLINE経由の保険金請求の場合、「1回の通院の費用が2万円以下、かつ契約後1年超の契約」に限定させていただいていますので、責任開始前発病等、保険金をお支払いできない傷病である可能性が低い請求になります。LINE経由の請求はこういった保険金をお支払いできないリスクが低く、早くお支払いが可能な請求に限られます。
ですから、我々、保険金請求を受ける側としては、確認に時間をかける必要がある請求と、そうではなく早くお支払できるものを、うまく仕分けられるようになりました。限られた事務体力を、時間がかかる案件に絞って注力していくことができるようになったことが、このような結果に表れているのかもしれません。
古屋:
なるほど、ではそれもLINEによる保険金請求を始めた効果としてもいえるということでしょうか?
荻野氏:
そうですね、保険金請求の受け付け段階で、ある程度そういった仕分けができているということの効果は大きいと思います。
鈴木氏:
LINEによる保険金請求開始を決めた際、事務方の不安がすごく大きかったです。荻野が言った通り「請求件数が増加し、後続事務が逼迫するのではないか」と。そこで「LINEによる保険金請求を始めるから、社内の事務体制の足腰をしっかり構築しなければいけない」ということになり、しっかりと組み立てることができました。それがお支払いまでの日数短縮に繋がりました。
今回の取り組みは、LINEに対して「請求がたくさん来るかもしれない」という不安を「そうであれば、事務体制をしっかり組み立てないといけないね」と、前向きなベクトルに変え、事務を変えていく、新しく構築していく良いきっかけになったなと思います。
荻野氏:
実務担当者の意識は、すごく変わったなと思います。正直、去年までは1日の処理件数について、1日どれくらい処理をしなければならないかという意識があまりなかったように感じていました。
それが今は毎日、目標件数を決めて、「15時時点の進捗は、目標件数の何パーセントです。残り時間も頑張りましょう」というような運用を、実務担当者全員にいきわたるよう、現場主体で行ってくれています。LINEによる保険金請求が始まるということに対して、みんなで考え、しっかり準備をした結果として、意識そのものが変わったということだと思います。
古屋:
社内で前向きに捉え、準備ができたということですね。
また開発段階の要件をすり合わせさせていただく中で、非常に不備の対応についてはこだわられて検討されていたと記憶しておりますが、導入後、不備の状況はいかがですか?
荻野氏:
LINEによる保険金請求を導入したことで、不備は確実に減りました。現在、不備の対応についてはBPOで対応をお願いしていますが、想定される不備のパターンを洗い出し、「この不備のパターンには、このメッセージを返す」というMOBI BOTを使った事務を構築しました。この結果、以前と比べ、不備の対応で実務担当者が時間を取られるということは非常に少なくなりました。不備率としては1.5%くらいです。
鈴木氏:
紙請求のみの時の不備はもっと多く、4%くらいでした。
荻野氏:
不備としてよくあるのが、請求書類に記載いただく保険金振込口座の桁数の間違い等ですが、LINEによる保険金請求では、お客さまに入力いただいた内容をその場でAPIを用いてCRMに問い合わせているため、桁数の相違や、口座名義人が事前に登録いただいた名義と異なっている場合は、すぐにエラーメッセージを出せます。また、これまで保険金請求をいただいたことのあるお客さまの場合は、過去に指定した保険金振込口座をポップアップで表示させるようにしており、そのような不備が減ったことが大きいです。
<SBIいきいき少額短期保険様導入のプレスリリースはこちら>