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家具・インテリアブランド「LOWYA」を展開する株式会社ベガコーポレーションの稲垣氏にお話を伺い、問い合わせ対応を効率化しながら、顧客満足度を高めていくデジタルファーストな取り組みについて紹介します。

チャットボットと有人チャットのハイブリッド運用で対応を効率化

導入製品

<目次>

  • 応答率確保へ、増員ではなく根本的解決を模索
  • チャットボットで問い合わせの60~80%を吸収
  • 最適チャネルへ導くシナリオ設計
  • チャネル単体ではなく導線設計とセットで考える
  • 最短で解決に至る方法を探ると、結果として効率化が進む
  • CX向上と効率化を同時達成しながら、従業員満足度の向上も実現

ベガコーポレーションとは?

株式会社ベガコーポレーションは、家具・インテリアブランド「LOWYA」の運営や、越境ECプラットフォーム「DOKODEMO(ドコデモ)」の運営を行う会社です。LOWYAでは、自社で企画から製造、販売までを一貫して手掛けており、2022年9月より新たに卸売販売を開始、2023年4月にはブランド初となる実店舗を開業しました。会員数139万人、アプリ89万ダウンロード(累計)、Instagram 84万フォロワーという人気の家具・インテリアブランドです。

https://www.low-ya.com/

設立以来、売上は成長基調を継続。2021年、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるネット特需により売上が急増した際も、お客さま目線でよく作り込まれたチャットボットとチャットオペレータの連携などデジタル化を進めていたことで、人員増を行うことなく効率的な顧客サポートを実現しています。

応答率確保へ、増員ではなく根本的解決を模索

ベガコーポレーションでは、「LOWYA」の問い合わせ対応として、2017年10月にチャットボットと有人チャットを導入開始。チャットボットで一次受付を自動対応し、解決しない問い合わせや相談は、有人チャットへエスカレーションしています。

チャットボットと有人チャット、導入前と導入後の変化の図。
チャットボットと有人チャット、導入前と導入後の変化。

導入前は、納期や再入荷時期の確認、変更・キャンセルなど、すぐ答えが求められる問い合わせが多い中、メールと電話での対応をおこなっていました。50人ほどのオペレータで対応していましたが、売上増加に伴い問い合わせも増え、応答率の課題を抱えていました。

インタビューの様子
株式会社ベガコーポレーション サービス統括部
受注カスタマー部 部長 稲垣大輔氏

稲垣氏はチャットサポートに取り組んだ背景について、こう説明しています。

増え続ける問い合わせに対して、人員を増やし続けるだけでは根本的な解決にはなりません。効率を上げる方法はないか模索する中で、有人チャット対応で一人のオペレータが同時対応できる数を増やせて、チャットボットの自動応答で問い合わせ数を減らせるならばとチャットサポートの導入を決めました」。


チャットボットで問い合わせの60~80%を吸収

もちろん、導入当初からすぐに成果が出たわけではありません。「当初は、よくあるFAQ的な、クレームに対してリスクヘッジをするような、基本的な受け答えのみの設計でした。それでは使ってもらえない」と稲垣氏は語ります。

チャットボットのシナリオの見直しを重ね、お客さまが求める回答にたどり着けるように改善のPDCAを回しつづけたところ、自動応答で解決に至る数が増え、売上成長を続ける中、2021年には年間の問い合わせ対応が10万件削減。チャットボットで問い合わせ対応全体の60~80%を吸収し、チャット・メール・電話での有人による総対応数を31%削減することに成功しています。

(左)LOWYAのチャットお問い合わせ画面。(右)問い合わせ数の推移。
(左)LOWYAのチャットお問い合わせ画面。(右)問い合わせ数の推移。

さらに、自動で解決できない商品の個別の問い合わせなどは、有人チャットで行うことで、顧客満足度の向上にも繋がっているとのことです。

最適チャネルへ導くシナリオ設計

よくある質問と回答を表示するFAQ的な設計から、「最短で解決できるチャネルにたどり着くためのシナリオ」として運用改善を重ねた「LOWYA」のチャットボット。チャットボットだけで解決することを目的とせず、有人チャット、独自の問い合わせフォーム、電話など問い合わせ内容に応じて最適なチャネルへ導くことを目的として、問い合わせを区分するためのシナリオ設計をしています。結果的にチャットボットの有効性が増加し、売上増加の中でも問い合わせ数の減少を実現できているのです。

チャネル単体ではなく導線設計とセットで考える

問い合わせをする前の事前行動を調査した結果では、9割以上の人が自己解決を試みるという結果が出ています(下記グラフ参照)。

商品やサービスについて確認したい点やわからないことがあるとき、企業へ問い合わせをする前にどんな行動をとりますか?調査結果
引用:「お客さま窓口の利用実態調査2023」(モビルス株式会社)https://mobilus.co.jp/lab/trend/customer-support-report2023/

多くの人が自己解決を試みる中で問い合わせ数が減らないのは、自己解決を試みたけれど解決していないということです。サイトのFAQページを見ても解決できていない、必要な情報にたどり着けていないということが言えるのではないでしょうか。

単にFAQページを作りこんだり、チャットボットなど様々なチャネルを設置するなど、チャネル単体で考えても効果は出ません。各チャネルへの導線設計とセットで考えることが必要です。

最初の段階で問い合わせ導線をコントロールすることで、「電話が繋がらず待たされたがチャットボットで解決できる内容だった」「チャットで質問したけれど結局電話が必要だった」、といった余計なやり取りが必要なくなり、問題解決までの時間を短くできます。

最短で問題解決に至る方法を探ると、結果として効率化が進む

ベガコーポレーションでは、「お客さまにとって最短で問題解決に至る方法を探ると、結果として問い合わせ対応の効率化が進む」という考え方の元、問い合わせ導線の再設計を行いました。

新たな問い合わせ導線では、最初に注文前と注文後に分けて導線を設計しています。問い合わせの割合は、注文前が約30%、注文後が約70%です。

LOWYAの再設計後の問い合わせ導線の図
LOWYAの再設計後の問い合わせ導線

問い合わせの内容ごとに、適切なチャネルを設計しました。

・注文前の納期問い合わせ⇒有人チャット(注文につなげる)

・注文前の商品問い合わせ⇒電話(効率的かつニーズにあった回答ができる)

・注文後の納期確認、変更・キャンセル⇒自動受付処理

・商品クレーム⇒従来は電話が良いと思っていたが、特殊ケースを除いて現在は独自の問い合わせフォームで対応(変更・キャンセル以外のもの、問い合わせフォームに必要情報ヒアリング項目が設定されており、メールでのラリー数を削減)

チャネル毎の工数を見ると、一件の問い合わせにかかる工数はメールが少ないですが、ラリーメールの発生まで加味するとメールの工数が一番多くなります。導線の再設計を行ったことで、電話・チャットと比べてメールの問い合わせ比率を低くすることが出来ています。

これまで電話やメールで対応していた注文後の納期確認、変更・キャンセルや商品クレームの窓口として新たに設計した自動受付処理フォームは、メール一件を対応する時間で4件対応できるのです。実施後一か月ですでに24%の工数削減という結果が出ています。

チャネル毎の問い合わせ比率と一件あたりの対応工数の図
チャネル毎の問い合わせ比率と一件あたりの対応工数

CX向上と効率化を同時達成させながら、
従業員満足度の向上も実現

導線の再設計により、LOWYAの問い合わせ対応では、工数の削減、効率化に成功しましたが、稲垣氏は「生産性向上が第一目的になってはいけない」と強調します。

「目的はCX(Customer Experience)の向上です。9割以上の人が自己解決を試みるという結果からも、自己解決向上はお客さまが求めていることです。ただし、自己解決のためにあてられる時間は数秒程度です。

また、ご利用ガイドや運用に沿った回答がお客さまの求める回答とは限りません。根本的に解決できる最短の導線を整えることで、自己解決並びにお客さまの抱える課題解決のスピードが上がり、最短での問題解決に至るので顧客満足度向上に繋がります。副次効果として出てくるのが効率化なのです

効率化を図ると、対応メンバーの工数削減で生産性から解放できます。空いた時間を活かし、さらなる本質的な提供サービスレベルの課題解決、問い合わせ内容を商品企画へフィードバックするなど付加価値の提供や、マーケティング施策にも携わることができるようになっています。

インタビューの様子
(左)モビルス 柏原、(右)稲垣氏

工数削減とCX向上を同時達成しながら、部署の仕事の範囲を問い合わせ対応から広げ、部署としての付加価値を高めていくことが実現可能になりました。問い合わせ対応の専門家として問い合わせ対応業務のみやっていくのではなく幅広く活躍できる体制を作りたいと考えています。

例えば、お客さまの声を元に商品開発をしたり、新サービスを企画実装する、社内オペレーションを改善して全社のオペレーションを見直す、といったことに取り組んでいます。デジタル化は、CX向上、効率化だけでなく、従業員満足度(ES)向上にも繋がっています

 

問い合わせ内容に応じたチャネルの選定と、導線設計を考えてみませんか

今回の記事では、「LOWYA」の先進的な取り組みを元に、業務の効率化と高い顧客満足度の両方を実現できるデジタルファーストなカスタマーサポートの取り組み方について紹介しました。

デジタル化を進める上で、チャットボットやFAQシステムなどチャネル単体で考えるのではなく、問い合わせ内容ごとに最適なチャネルを考え、お客さまにとって最短で問題解決に至るチャネルへ導く導線設計を行うことが重要です。

モビルスでは、チャットサポート導入で実現する顧客満足度の向上と業務効率化についての「EBook」を公開しています。下記より無料でダウンロードできますので、ご興味いただけましたら、ぜひご覧ください。