Pocket

株式会社ベガコーポレーションは、家具・インテリアブランド「LOWYA」の運営や、越境ECプラットフォーム「DOKODEMO(ドコデモ)」の運営を行う会社です。LOWYAでは、自社で企画から製造、販売までを一貫して手掛けています。2023年4月の初の実店舗開業を皮切りに、2023年12月にはLOWYAなんばパークス店、2024年2月にはLOWYA名古屋みなと店をオープンさせています。会員数は154万人、アプリは累計104万ダウンロード(2023年12月末現在)、Instagram 100万フォロワー、TikTok20万人フォロワー、Youtubeチャンネル登録者数10万人という人気の家具・インテリアブランドです(2024年3月15現在)。

家具・インテリアブランド「LOWYA」を展開する株式会社ベガコーポレーション サービス統括部 受注カスタマー部 稲垣氏、永留氏のお2人へ、問い合わせ対応の効率化やタイムマネジメントの取り組みについてお話を伺いました。

※上記写真:(左から)ベガコーポレーション 稲垣氏、永留氏

事業内容家具・インテリア等のインターネット通信販売事業
越境ECプラットフォームの運営等
用途納期確認、変更・キャンセル、問い合わせ等の対応
導入時期2017年9月

■導入製品

※記事中の肩書や内容はインタビュー当時(2024年3月15日)のものです。

■課題

  • Web・ECサイトからの問い合わせ数が多く、対応効率の向上が課題であった。

■施策

  • Web・ECサイトでの問い合わせをチャットボットで分類し、適切なチャネルへ誘導し自動解決を図った。

■効果

  • 導入後のMOBI BOT(チャットボット)の見直しおよびお客さま専用ページ(VPA)への誘導により、全体の問い合わせ数半減に成功。
  • チャットボットのシナリオ見直しで、最終シナリオへの到達率70%を記録。問い合わせフォームからのメールリターン数も短縮。
  • 早期段階で自動化プロセスからの問い合わせを可能にし、顧客満足度の向上・維持に貢献。
  • お客さまの注文を即時確認できるVPAを用意。必要なヒアリング項目(3-4項目と簡単な選択肢)を整え、問い合わせラリー数を削減。
  • 工数削減で生み出された時間を活用し、年間36,000件のレビュー全件返信の実現や商品開発、プロモーションに充当し、高評価を獲得する顧客体験(CX)を創出。

■目次

・進化する企業の新たな課題とは
・チャットボットの見直しで7割以上が最終シナリオへ到達
・最適化されたWFMとマーケティングミックスで伸ばす売上
・迅速・丁寧な対応で上質なの顧客体験(CX)を生み出す
・生成AIで改善ポイントを発見しCX向上へ


進化する企業の新たな課題とは

ーはじめに担当されている業務内容について教えてください。

サービス統括部 受注カスタマー部 部長 
稲垣 大輔氏

稲垣氏:
受発注チームにて部長を務めております。受注内容の精査、受注管理と受注前後のお客さまからの問い合わせ等に関する対応までのコンタクトセンターの2つが主な担当です。

サービス統括部 受注カスタマー部
CS2 グループ グループ長
永留 孝明氏

永留氏:
稲垣と同じカスタマーグループにてグループ長を務めています。カスタマーサポートの対応の中でお客さまの問い合わせや受発注内部の工数を削減しながら、お客さまのサポート満足度を最大化することに主に取り組んでいます。

ーお客さまの課題解決を最優先に考え、改善に取り組んだ背景・課題を教えてください。

永留氏:
以前からお客さまから寄せられる問い合わせは、発送日、故障、部品追加等など定型化したものが多く、連絡の簡易化や期間の短縮化を行うことで、お客さまご自身がスムーズに自己解決できるVPA※1フローが必要と考え、チャットボットのシナリオ改修も含めて、見直しに踏み切ることにしました。

また、働き方の面でも改革が必要でした。弊社では業務担当制を導入していましたが、この制度では職種によって忙しい時期や時間が異なり、余剰人員のタイムマネジメントに課題を抱えていました。

問い合わせに対する人員の確保と余剰人員の解消といった相反する問題を解決するため、ワークフォース・マネジメント(以下、WFM)※2の観点から従業員が効率良く働ける仕組みづくりに着手しました。


チャットボットの見直しで7割以上が最終シナリオへ到達

ー取り組みの成果を教えてください。

永留氏:
シナリオを辿った先がVPAだったという導線も多々ありました。多数のシナリオ分岐を使わずにもっと早い段階でVPAに誘動できれば、お客さまの「早く解決したい」というニーズに応えられると考え、チャットボットシナリオの見直しとVPAの改修を行いました。注文後のお客さまからの問い合わせは定型化できることが多く、問い合わせをVPAへ集約することで、全体の問い合わせ数の半減に成功しています。

ベガコーポレーションさまの資料をもとにモビルスにて作成

ーチャットボットのシナリオの見直しによる成果を詳しく教えてください。

永留氏:
シナリオを246個から149個へと集約させ、約100個を削除しました。またシナリオ導線を4-5タップから2-3タップに削減しシンプルにしたところ、最終シナリオへの到達率は70%を超え、48%から73%と約25%も上昇したのです。

タップ数を減らしたことで懸念された「お客さまが求めている回答にたどり着けない」といったこともなく、弊社のユーザー層を考慮すると新シナリオに順応されているのだと思います。

ベガコーポレーションさまの資料をもとにモビルスにて作成

注文後のVPAでの問い合わせでは、1回のメールでお客さまへ質問を3〜4個お伺いすることでメール回数を削減し、メールラリー数1.8回を達成しています。

メールラリー数を増やしていた要因は、お客さまからの問い合わせに対してのヒアリングが十分でなかったために無駄な質問を繰り返していたことでした。

そこで対応に必要な複数の内容を一度に収集するフォーマットへ改修しました。具体的には、部品の不足であれば「商品名」「不足部品の型番」「希望する対応」「希望返品日の指定」「梱包の要否」など問い合わせ内容も弊社から指定したのです。その結果、これまでヒアリングで「もう1回、もう2回」と続いていたメールラリー数を減らすことができ、早く解決したいと考えているお客さまに対してスピーディーに対応できるシステムとなりました。

導線のシンプル化で、有人対応が必要もしくは希望される方にも、早い段階で自動化プロセスからも問い合わせできる設計とすることで顧客満足度の向上・維持を図れています。

ベガコーポレーションさまの資料をもとにモビルスにて作成
ベガコーポレーションさま資料をもとにモビルスにて作成


最適化されたWFMとマーケティングミックスで伸ばす売上

ーもうひとつの課題のWFMの改善とその成果について教えてください。

永留氏:
以前は、メールやチャット、受発注の各担当が電話対応をすることはありませんでしたが、各担当が複数の業務を兼任する「フルスキル化」にしたことで、稼働率は95%に到達しています。一般的に大手コンタクトセンターでのオペレーター稼働率は恐らく80-85%程度ではないかと推測していますので、それに比較して高い水準を維持できています。オペレーターのフルスキル化により余剰時間を持たないことで効率的な働き方ができるようになりました。

稲垣氏:
シナリオおよびVPAの改修による工数削減とWFMの改善で得た時間を、新商品開発やサービス展開に充てられるようになりました。例えば2023年10月30日に推し活をテーマにした推し活専用収納棚「オシテル」を発売しています。プロモーションも好調で、各SNSの投稿も話題を呼んでいます

他の部署との連携が進めば、お客さま満足度をもっと高められる会社になると思っており、引き続き業務効率化とお客さま満足度の向上の2つの課題解決に取り組んでいきます。

永留氏:
プロモーションに関して言えば、Instagram、YouTubeなど多様なSNSを運用している反面、以前はInstagramで紹介した商品のプロモーションにあまり注力できていなかったのですが、今では「どうやって売り上げに結びつけるか」といった話を密にできるようになりました。特に新商品の発売時には、実店舗とメディア(SNS、商品ページ、特集)とを駆使したマーケティングミックスを組めています。Instagramのフォロワーはお陰さまで100 万人を突破し、そこで商品を紹介するとその商品が売れるという好循環を生み出しています。


LOWYA Instagram より 家具の組み立て動画を投稿し、お客さまが簡単に作業できるようサポートしている。

SNSでの家具組み立て動画投稿はマーケティングミックスの好例です。私たちの商品ページではお客さまの「カワイイ」のニーズに対して全面に押し出した紹介をしていますが、一方で「組み立て方を知りたい」といった異なるニーズ対応も求められており、そのギャップ解消にSNSを活用しています。直営店従業員が組み立ての動画をSNSへ投稿するなど、ネットと実店舗を活用したマーケティングでニーズのギャップがますます埋まってきているのを感じています。


迅速・丁寧な対応で上質な顧客体験(CX)を生み出す

ー人気ブランドを維持するCXにつながる取り組みについて教えてください。

永留氏:
楽天市場、Yahoo、Amazon、自社通販サイトなどのレビュー閲覧数は非常に多く、大手通販サイトでのお客さま満足度も具体的な数値を開示することはできませんが、大手家具チェーンさまと比べて高く、弊社がお客さまより高評価を得ていることが伺えます(2024年3月15日時点)。

それでも、ネガティブなレビューや低評価がつくこともあります。レビューコメントはお客さまが商品を検討されるときに多大な影響を与えます。実際にヒートマップ分析では、レビューの閲覧数はかなり高いことが分かっており、ここにネガティブ要素があると購買機会の損失となるため、ポジティブ要素に変える対応が必要です。

稲垣氏:
先のチャットボットシナリオの改善やVPA誘導による工数削減で生み出された時間を有効活用して、お褒めの言葉などのポジティブなレビューコメントから指摘や悩みなどネガティブなものまで全件(80-100件/日、3,000件/月、36,000件/年)へ返信をしています。

丁寧な対応をすることで、お客さまからのネガティブなレビューコメントをポジティブなものへと変えていただいたり、低評価を高評価に変えていただけることもあります。こうしたポジティブな変化は、商品を検討されているお客さまの購買機会の損失防止にもつながります。

また「対応が早い」「満足」というコメントも多く、従業員の迅速かつ丁寧な対応がブランドのCXを向上させ、より高い支持を獲得していると考えます。

決まりきったテンプレートにならないよう、レビュー対応では自社のキャラクター(ペルソナ)を4つ設定する工夫も行っています。


生成AIで改善ポイントを発見しCX向上へ

ー今後の展望を教えてください。

永留氏:
レビュー返信対応に関するお客さま満足度向上の改善を定量的に測れる指標を定めることを今後の課題としています。ChatGPTを活用して、レビュー投稿の内容を商品やカテゴリー毎に自動分類化させて、社内へフィードバックができないか検討しています。

また、私たちはお客さまへ最短で最適な解決ルートを提供してご希望に沿った対応を行うために、今後も工数削減に取り組みます。

その一つに「無人化」を考えています。有人対応以上に無人対応のニーズが高いこと分かっており、弊社の平均購買層から考えても着手すべきことです。

既にChatGPTによるレビューコメントのポジティブ・ネガディブ分析ができていることや、VPAでの問い合わせ内容の低減ができていることから、次はそのノウハウを活かしてChatGPTによるメール文章自動生成と自動返信に着手できたらと思っています。

そこが改善できれば、問い合わせ対応の大部分を占めるメール対応業務も減らせますし、お客さまの「早く解決したい」という思いに応えられると考えています。

稲垣氏:
人による分析では主要なキーワードにどうしても目が行きがちですが、ChatGPTではそれ以外のキーワードにも注目できるのでより細かい分類が可能です。弊社ではChatGPTを活用した分析で、「配送、組み立て、デザイン、サービス」などの項目で分類し、どの項目に関して言及があったか、またポジティブなコメントとネガティブなコメントを分けて表示しています。商品ごとにレビュー投稿の内容と細かく設定した項目を表示できるため、反応が多かった項目がどこか一目で分かるようにしています。そのため、問題点を洗い出しやすいのです。

ChatGPTによる分析の結果、ネガティブレビューは商品では非常に少ない一方で、組み立てに関するものが多いことが分かりました。これはChatGPTを活用したからこそ見えてきたことです。

先ほどご紹介したSNSでの組み立て動画の配信例は、このChatGPTによる分析の成果でもあります。

私たちは「改善ポイントが分かればCX向上につなげられる」と考えており、引き続きChatGPTによる自動分析の本格運用に取り組んでいきます。

※1 VPA:ベガコーポレーションさま独自の受注後の問い合わせフォーム
※2 ワークフォース・マネジメントマネジメント(Workforce Management):従業員の稼動状況に応じて必要最低限の人員を適切に配置することで、サービスの質と人件費抑制の両立させる手法のこと。

ー貴社の事業成長を今後も応援させていただきます。本日は貴重なお話をありがとうございました!

当事例のサービス紹介資料

ご導入いただいたサービスの資料はこちらからご覧いただけます。

有人チャット「MOBI AGENT」

https://mobilus.co.jp/solution/agent

チャットボット「MOBI BOT」