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銀行や損保などの金融業界での生成AIの活用状況は?導入事例、メリットや課題と対策も解説

投稿日:2025年2月19日 | 更新日:2025年2月20日

昨今、銀行・損保・証券といった金融業界では、インターネットバンキングの利用拡大や窓口の縮小によるビジネスモデルの変化や、人手不足やコスト削減、業務効率化と顧客満足度向上の両立などを背景に、多くの企業でAIをはじめチャットボットやボイスボットの導入などDXの取り組みが進められてきました。2023年以降は、さらなる業務効率化や顧客満足度向上へ期待が寄せられる「生成AI」に注目が集まり、導入を検討・実施する企業も増えています。

当記事では、銀行や損保などの金融業界における生成AIの導入事例をはじめ、生成AIを導入する上でのメリット、課題と対策について解説します。

目次


金融業界に生成AIを導入するメリットと活用方法

生成AIとは?

生成AIとは、さまざまなコンテンツを新たに生み出す人口知能(AI)のことです。生成系AI、ジェネレーティブAIとも呼ばれています。従来のAIは人間が与えたデータを学習し、あらかじめ決められた行いを自動化するのに対し、生成AIはディープラーニング(深層学習)によりAI自ら学習したパターンや関係性を活用し、テキスト、画像、動画、音声など多岐にわたるコンテンツを新たに生成できる点が違いです。

金融業界で生成AIを活用するメリット

生成AIを金融業界で活用する主なメリットは以下です。

・業務効率化と人手不足の解消

・顧客満足度の向上

・一貫した高品質な応対

・システム開発・保守の効率化・品質向上

業務効率化と人手不足の解消

生成AIを既存業務の補助・代替えとして活用することで、生産性を向上し、大幅な業務効率化が見込めます。定型的な業務を効率化することで、対人での営業や新規事業創出など、より重要な業務に人的リソースを費やすことができるようになります。

さらに、顧客とのやり取りなどの煩雑で負荷が高い業務を生成AIで自動化することで、従業員の負荷軽減も可能です。業務効率化や負荷軽減によりバランスの取れた働き方ができるようになり、仕事へのモビベーション向上にもつながることで、離職率の低下による人手不足の解消も期待できます。

顧客満足度の向上

問い合わせ窓口対応に生成AIを導入することで、24時間365日対応が可能になり、顧客はいつでも問い合わせができるようになります。従来のAIでは回答できる範囲が限られていましたが、生成AIは想定外の質問への対応などより幅広い問い合わせに対応できます。

また、生成AIが顧客の行動や嗜好を分析し、パーソナライズされた金融サービスを顧客ニーズに応じた形で提案することが可能です。

一貫した高品質な応対

生成AIは学習した知識ベースに基づいて回答するため、オペレーターの経験やスキルに左右されず、一定水準以上の品質で応対することができます。最新の規制や商品情報も正確に反映できるため、オペレーターの回答支援としても期待されています。

また、生成AIを活用し応対履歴を自動で書き起こし・要約し、オペレーター向けのFAQシステムやマニュアル等のドラフト作成や顧客管理システムとの連携などができる製品もあるため、ナレッジの蓄積や社内共有を図る取り組みに活用することも可能です。

システム開発・保守の効率化・品質向上

システム開発・保守に生成AIを活用することで、プログラムの作成、テストデータの作成、プログラム内のバグ検出などの業務の効率化・品質向上につながります。これにより、システムの安定確保と保守コストの削減が期待できます。

生成AIの活用シーン

金融業界における生成AIの活用方法は、主に下記のようなものがあります。

①融資稟議資料の作成

②ファイナンシャルプランナー(FP)の支援

③コールセンター(コンタクトセンター)入電業務のオペレーター支援

それぞれ具体的な活用方法と、そこから得られる効果について紹介します。

①融資稟議資料の作成:生産性向上・ノウハウの標準化

一つ目は、金融機関が融資審査を行う際に必要となる稟議作成の際に、生成AIが顧客の企業情報や過去の事例などを元に稟議資料のドラフト作成をする活用です。稟議作成の負荷を軽減し、生産性向上に加え、属人化したノウハウの標準化などの効果も期待できます。

②ファイナンシャルプランナー(FP)の支援

二つ目は、FPの業務における「顧客のニーズ把握」と「提案内容の最適化」の領域での活用です。生成AIが会話形式で顧客の情報を収集し、会話データから情報を分析、FPが顧客に提案する内容を支援します。FPの生産性向上だけでなく、顧客に対してもより適切なアドバイスを提供できるようになります。

③コールセンター(コンタクトセンター)入電業務のオペレーター支援

三つ目は、コールセンターのオペレーターの入電応対内容の要約への活用です。顧客との応対内容の要約を生成AIで自動化することで、オペレーターの業務を大幅に削減し、業務効率化と平均後処理時間(AWC)の削減につながります。ほかにも、回答サジェストの作成やFAQの自動生成などへの活用も期待されています。


銀行・損保・証券における生成AIの導入事例

次に、金融業界への生成AIの導入事例を紹介します。

みずほ銀行:生成AIを活用した次世代コンタクトセンターシステムを提供

株式会社みずほ銀行(以下、みずほ銀行)では、2023年6月から社内向けテキスト生成AI「Wiz Chat」を導入し、2023年12月には「事務手続照会」と「与信稟議作成」の業務でもPoCを実施するなど、生成AIを活用した業務効率化を進めてきました。

2024年8月に、生成AIを活用した次世代コンタクトセンターシステムをリリースし、顧客サービスへの活用を進めています。次世代コンタクトセンターシステムは、「最先端のAI活用による顧客対応力の向上」と「チャネル統合とCRM連携によるシームレスなお客さま体験」を実現するものです。

具体的には、最先端の日本語生成AIを導入し、顧客との会話の分析やニーズの把握、迅速な回答と顧客に合った提案の支援や、FAQやチャットボットの回答精度を継続的に向上させることができます。

また、電話・チャット・LINEなど複数のチャネルからの相談内容をコンタクトセンター内で統合して引き継ぐことができるほか、コンタクトセンター内での応対内容を生成AIが自動でテキスト化・要約し、営業部や店舗とセキュアな環境で共有が可能となるそうです。

参照元:
株式会社みずほ銀行 プレスリリース
〈みずほ〉が見据える、10年後の金融。生成AIを活用して、業務効率化と新たなイノベーションの実現へ。

静岡銀行:営業活動の高度化・効率化をめざす「生成AIチャットボット」の開発に着手

株式会社静岡銀行(以下、静岡銀行)は、2024年10月より営業活動の高度化・効率化をめざし、新たな「生成AIチャットボット」の開発に着手しています。静岡銀行では、高度化・複雑化する顧客ニーズに的確かつ迅速に応えるため知識やスキルが求められ、経験の乏しい若手担当者などは事前準備に多くの時間を割くため生産性向上が課題となっていました。

過去の営業活動情報などを学習した「生成AIチャットボット」を通じて顧客の経営環境などの変化に柔軟に対応しながら最適な商品やサービスの提案につなげることで、業務の高度化・効率化を図るとのことです。

参照元:株式会社静岡銀行 プレスリリース

損保ジャパン:保険の情報照会に生成AIを導入、業務負担を軽減へ

損害保険ジャパン株式会社(以下、損保ジャパン)では、2024年10月より営業社員向けに生成AIを使った照会回答業務システム「おしそんLLM(仮称)」のトライアル運用を開始しました。損保ジャパンでは、代理店・営業店・本社間における保険の引受・規定に関わる照会内容の効率化と利便性の向上が課題となっていました。

課題解決のため、2017年には、散在するQ&Aなどを自然文で横断検索し、解決できない場合はそのまま検索できるナレッジ検索システムの使用を開始しました。課題解決力は向上した一方、コンテンツ作成とメンテナンスの負荷軽減も課題として挙がり、生成AIを活用した「おしそんLLM」の開発・トライアル運用に至りました。

「おしそんLLM」は、損保ジャパンが保有する膨大な規定が記載されたマニュアルやQ&Aデータなどを学習し、照会内容に最適な回答案を自動生成するシステムです。生成AIが作成した回答案と参照先文書をもとに、回答者が最終的な回答内容を作成できるため、回答者は一から文章を作成する作業が不要になり、照会対応における業務時間が削減されます。

損保ジャパンでは、トライアルを通じて社員からのフィードバックを収集し、システムの精度向上や機能拡充を図るとともに、業務効率化効果を検証し、将来的には、トライアルの結果を踏まえ全店への導入を検討するとのことです。

参照元:損害保険ジャパン株式会社 プレスリリース

大和証券:AIオペレーターによる問い合わせサービス提供を開始

大和証券株式会社(以下、大和証券)は、2024年10月、生成AIを活用し、株価や市況ニュースなどのマーケット情報や、ログイン手続きやNISA関連などの一般的な内容に関する問い合わせに対応する「AIオペレーターサービス」の提供を開始しました。

新NISAの開始など、貯蓄から資産形成への大きな流れが生まれている中、今後さらなる投資家層の拡大に伴い、顧客からの問い合わせも大きく増えることが想定されます。こうした背景から、大和証券では生成AIをはじめとするデジタル技術を用いた金融サービスの提供により、顧客の利便性を向上し、顧客体験(CX)の変革を行うべく、「AIオペレーターサービス」の提供に至りました。

音声による会話形式の応答で、マーケット情報から事務手続きに関する内容まで広範に対応可能なAIオペレーターサービスの提供は、国内大手金融機関初の試みとのことです。

参照元:
大和証券株式会社 プレスリリース


生成AIを金融業界に導入する際の課題と対策

有効活用することで様々なメリットを得られる生成AIですが、一方で気を付けなければいけない点もあります。銀行・金融業界で生成AIを導入する際の主な課題は下記です。

・正確性と信頼性リスク

・説明責任と透明性

・情報漏洩とデータ保護

・セキュリティリスク

それぞれ対策とともに紹介します。

正確性と信頼性リスク

金融商品の説明が誤っていたり、情報が古かったりする場合や、金融商品に関する顧客からの問い合わせで想定外の返答をしてしまう恐れがあります。生成AIは、学習したデータを参考に予測した答えを返す従来のAIとは異なり、自ら学習し続けて新たなアプトプットを生成します。そのため、生成AIが誤った情報をもっともらしく答える「ハルシネーション」と呼ばれる現象が起こるのです。

顧客に対して誤った情報を提供してしまった場合、信頼性を行うリスクがあります。

【対策】

自社の最新データやWebサイト・法令と連携させるなど、不正確・想定外の情報を返答しないよう制御する仕組みを設ける。

説明責任と透明性

保険料の見積や提案など、生成AIが提供する情報の根拠が不明な場合、顧客に対する説明責任を果たせていない恐れがあります。

【対策】

回答の根拠となるリンクや情報ソースを明示する仕組みを設ける。

情報漏洩とデータ保護

機密情報の漏洩や、安全対策基準で求められるデータ保管への適合リスクも考えることが必要です。生成AIは多くの使用者の入力するデータを学習データとして利用するため、意図せず社内の機密情報を入力してしまうと、生成AI内に蓄積されてしまいます。例えば、情報整理のために顧客データを入力した場合、顧客情報の漏洩リスクの恐れがあります。こうした情報漏洩への対策を行うことも重要です。また、金融業界は厳格な規制があるため安全対策基準で求められるデータ保管への適合リスクへの配慮も欠かせません。

【対策】

使用者の限定や暗号化など漏洩対策を行う。

データの保護や消費者権利・金融商品取引など各法規制への準拠確認に配慮する。

セキュリティリスク

生成AIでは、プロンプトと呼ばれる指示文を入力して使用しますが、プロンプトの入力内容を操作し、サービス提供者が抑止している情報を引き出そうとする攻撃手法があります。AIが顧客になりすまして口座情報やクレジットカード番号を詐取するリスクも考えられるため、サイバーセキュリティへの対策が必要です。

【対策】

AIの悪用を想定した新たな検知の仕組みを導入。

まとめ

生成AIの活用は、生産性の向上や業務効率化など企業へのメリットだけでなく、顧客の利便性向上など顧客満足度の向上にも寄与するため、多くの企業で検討・導入が行われています。銀行・損保・証券といった金融業界も例外ではなく、生成AIを活用した社内業務の効率化にはじまり、顧客対応でも活用されるなど、さまざまな事例が出てきました。生成AIは効果的に活用することで、金融業界が抱える課題の解決に役立つ一方、気を付けないといけない課題もあります。

当記事では、銀行・金融業界における生成AIの活用方法と導入事例、導入メリットや課題と対策について紹介しました。生成AIの導入を検討する際の参考にしていただけたら、幸いです。

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