AIエージェントがCX改善に有効な理由とは?有効活用事例4選付き
投稿日:2025年6月30日 | 更新日:2025年6月30日

顧客の行動や期待が多様化・複雑化する中で、顧客体験(CX)の質は、企業の競争力を左右する重要な指標となっています。こうした背景から、今あらためて注目されているのが「AIエージェント」の活用です。
「AIエージェントとはそもそも何か?」「従来のチャットボットとどう違うのか?」「本当にCX改善につながるのか?」──そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
当記事では、AIエージェントの基本的な仕組みや特長をわかりやすく解説するとともに、CXの課題に対してどのような効果を発揮できるのかを具体的にご紹介します。
さらに、実際に成果を上げている活用事例を四つの業界別にピックアップし、導入のヒントとしてご活用いただける内容にまとめました。
AIエージェントの導入を検討している方、これから社内に提案しようと考えている方におすすめです。
<目次>
AIエージェントとは?

AIエージェントとは、人工知能を活用して人間と自然に対話しながら、業務の遂行や意思決定を支援する自律的なプログラムです。従来の「質問に答えるだけのチャットボット」とは異なり、AIエージェントは過去の対話履歴や発話の文脈を理解し、相手の意図をくみ取った柔軟な対応が可能です。いわば、人間の対話相手として機能する“仮想のエージェント”といえる存在です。
このAIエージェントは、自然言語処理(NLP)や機械学習、生成AIといった先端技術を活用して、次のような特徴を備えています。
- 顧客の感情や意図を文脈から推測し、自然な対話を成立させる
- 固定のシナリオやルールに縛られず、その場の状況に応じた最適な応答・提案・行動が可能
- 業務システムと連携し、対話の中で申請手続きや処理の自動化まで実現
- 利用ごとに個々のユーザー特性を学習し、対話精度や自然さを継続的に向上
こうした特徴により、AIエージェントは「自動応答ツール」を超え、顧客体験を抜本的に変革する戦略的パートナーとして、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)やCX(顧客体験)向上に大きく貢献します。
CX改善にAIエージェントが有効な理由とは?
企業がCX(顧客体験)向上に取り組む背景には、顧客ニーズの多様化と高度化があります。今や「答えが返ってくる」だけでは不十分で、一人ひとりの状況や期待に応じた柔軟な対応が求められています。
そうした期待に応える存在として、AIエージェントが注目されています。即時対応、品質の平準化、パーソナライズ対応、文脈に応じた対話設計といった観点から、その有効性を具体的に見ていきましょう。

問い合わせ対応の即時性とストレスフリーなUXの実現
AIエージェントは、問い合わせに即時対応するだけでなく、会話の文脈や過去のやりとりから顧客の「今求めていること」を読み取り、先回りして最適な対応を導き出すことができます。
たとえば「在庫ありますか?」という質問に対しても、閲覧中の商品情報や過去の購入履歴などを考慮して、「その色はあと三点在庫があります。以前購入されたサイズと同じですね」といった一歩先の提案や、さらに補足説明まで自然に実施することが可能です。これにより、顧客は待たされることなく、意図を正確に汲み取ってもらえる体験を得ることができます。
一貫した応対品質による顧客満足度の安定化
対応の品質にムラがあると、顧客は「この前と言っていることが違う」「対応が不安定」と感じ、信頼を失いやすくなります。その点、AIエージェントは、常に一定以上の応対品質を維持できるよう設計されており、対応者ごとのばらつきが出ないという強みがあります。どのチャネルを通じても、いつ・誰が対応しても同じ水準の対応を受けられることで、顧客に安心感を与え、信頼を得るうえで大きな効果を発揮します。
さらに、AIエージェントは過去の対話履歴や顧客からのフィードバックをもとに、自動で改善を繰り返しながら対応精度を高めていきます。こうした継続的な進化により、CSAT(Customer Satisfaction Score:顧客満足度)やNPS(Net Promoter Score:顧客ロイヤリティを測るための指標)といった指標の向上にもつながっていきます。
パーソナライズされた提案によるLTV向上
AIエージェントは、顧客の過去の購買履歴やWebの閲覧履歴、問い合わせ内容、さらには会話のトーンまで、多角的なデータをリアルタイムで分析し、その場で最適な提案を行います。たとえば、「どの商品を選べばいいかわからない」と迷っているお客さまに対しては、利用目的や予算感を会話から的確に読み取り、本人も気づいていなかった選択肢や比較ポイントを示すことが可能です。
こうしたきめ細やかな提案により、顧客との信頼関係が深まり、リピート購入やクロスセルの成功率が高まります。その結果、顧客一人ひとりの生涯価値(LTV)の向上につながり、コールセンター全体の成果向上にも寄与します。
顧客ごとの文脈に応じた柔軟な対話設計
AIエージェントは、単一のスクリプト※1やルールなど、決められたスクリプトに頼らず、顧客の発言に応じて対話のフローをその場で動的に変化させます。
たとえば同じ「住所を変更したい」という一言でも、現在の契約状況や登録情報によって必要な手続きや確認項目は異なります。AIエージェントは状況に応じて不要な確認などのやりとりを省き、必要な案内と手続きだけを的確に行うことで、最短ルートでの誘導を可能にし、ストレスのない対話体験を提供します。
※1 特定のタスクを自動化するために記述された、実行可能な命令の集まりのこと。
AIエージェントの活用事例 ― CX改善につながる具体シーン
AIエージェントの力が発揮されるのは、単なるFAQ(よくある質問)対応にとどまらない場面です。ここでは、実際にCX向上に貢献している代表的な業界別シーンをご紹介します。

金融・保険業界:「なんとなくの不安」を言語化し、正しい手続きまで導く案内役
金融・保険に関する問い合わせでは、ユーザー自身が自分の目的をうまく言葉にできていないケースが少なくありません。たとえば、「住所変更したい」「契約内容を確認したい」といった表現の裏には、制度や手続きに対する漠然とした不安や迷いが隠れています。
従来のチャットボットはキーワードベースのため、こうした曖昧なニーズには対応しきれず、誤った案内や途中で行き詰まりが生じやすい領域でした。
AIエージェントであれば、曖昧な発言の意図を読み解き、「それは○○保険の住所変更ですね」と的確に文脈を判断することが可能です。必要な情報を対話の中で自然に引き出しながら、その場で手続きを完了させることができます。
「本人も気づいていない目的を引き出し、案内・処理する」といったAIエージェントの対応力が、金融領域におけるCX向上に大きく貢献します。
EC・小売業界:ユーザーの「迷い」を検知し、購買完了まで伴走するアシスタント
ECサイトでは、商品の選択肢が多いがゆえに、ユーザーが購入をためらう場面が少なくありません。「この商品のAとBの違いは?」「在庫のある色だけ教えて」といったニーズに対し、従来のチャットボットではFAQや商品一覧などへの誘導が限界でした。こうした場面でも、AIエージェントは会話の文脈から「どこで迷っているのか」を読み取り、個別に適したスペック比較やレビューの提示が可能です。
さらに、ユーザーの閲覧履歴や購入傾向をもとに最適な商品を推薦し、チャット上での購入までスムーズに誘導することで、購入フローまで完了することができます。選択をサポートするだけでなく、選択そのものを支援したうえで完了させるアシスタントとして、ECのCXを革新します。
通信・IT業界:対話の中でトラブルの原因を推定し「自動復旧」まで支援
日常的によく見られる「Wi-Fiがつながらない」「メールが届かない」といった、一見シンプルに思える問い合わせも、実際には複数の原因が絡み合っていることが多く、対応が煩雑で手間がかかるケースが少なくありません。
こうした状況において、AIエージェントは対話の中からトラブルの背景を推測します。ユーザーの発言に加えて契約内容や使用環境の情報を参照しながら、「この状態であれば、まずはルーターの電源確認から」「その点灯パターンだとこの設定の問題かも」といったように、最適な案内をリアルタイムで提示します。
さらに、再設定の手順案内やチャット内での設定変更の実行まで自動化することができ、サポート対応を人の手を借りずに完結できるのが特長です。
単なるFAQへの案内を超えて、「情報提供」から「問題解決」へ、サポートの在り方を一段階進化させる存在として、AIエージェントが力を発揮しています。
公共・行政領域:制度を「人に合わせて選ぶ」自律的サービス窓口
多くの市民が行政窓口で直面するのが、「どの制度が自分に該当するのか分からない」「何を申請すればいいか迷う」といった漠然とした疑問です。これまでは、FAQページや申請書類のダウンロードリンクを案内するだけの対応にとどまることが一般的でした。
しかし、AIエージェントであれば、年齢、家族構成、住所、目的などの入力情報をもとに該当する制度や申請条件を自動かつリアルタイムに判定し、「あなたの場合、この制度とこの書類が必要です」と具体的に提示できます。
さらに、必要な窓口の案内や書類準備、申請予約のサポートまでをチャット上で完結させることが可能です。
まるで人の代わりに制度を調べ、条件に合わせて選んでくれる“自律型のサービス窓口”として、行政におけるCXの向上に寄与しています。
まとめ
AIエージェントは、単なる自動応答ツールを超えて、顧客一人ひとりに寄り添い、最適な体験を提供する“デジタル接客の担い手”です。即時性や柔軟性に加え、継続的な学習により対応の質を高めていける点でも、CX改善に向けた投資価値の高いソリューションといえるでしょう。
今後、さらなる技術の進化と業務連携の深化により、AIエージェントはますます多くの業界・業務で存在感を発揮していくことが期待されます。
貴社にとっての最適な活用シーンを見極めながら、顧客との関係性をアップデートしていくヒントとして、当記事が参考になれば幸いです。
当記事を執筆するモビルスでは、生成 AI や独自の AI 技術を取り入れたオペレーション支援生成AIサービス「MooA」をはじめ、コールセンター(コンタクトセンター)のCX向上を通じて企業の競争力を高め、収益を最大化するための総合的な支援を提供しております。
AIボイスボットやAIチャットボット、自己解決を促すビジュアルIVRなど、顧客満足度につながる幅広いニーズに対応できるソリューションを開発提供しています。
また、2025年3月には、AIエージェントプラットフォームを提供するvottia株式会社をトランスコスモス株式会社と合弁で設立しました。AIによる顧客体験の革新に取り組み、チャットを含む消費者と企業のコミュニケーション接点の変革を実現していきます。ぜひご相談ください。
モビルス、AIエージェントプラットフォームを提供するvottia株式会社をトランスコスモスと合弁で設立
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MooA®(ムーア)は生成AIや独自のAI技術を取り入れた、オペレーターの応対業務の負担を軽減し、応対業務全体の短縮化とVOCの活用を促進するオペレーション支援AIです。チャットボットやボイスボットと連携しながら、応対中のオペレーターの回答業務を支援します。機能、解決できることなどを紹介資料にて掲載しています。
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