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<2022年7月20日⇒2023年11月28日更新>

前回はチャット活用における「ステップごとの改善ポイント」に関して、「チャット設置のあるページセッション数」「チャットの起動数」「チャット開始数」について主に解説しました。

今回は「初期離脱数」「解決率」「正答率」「有人チャット開始数・完了数」などのポイント(指標)ついて触れていきたいと思います。

ステップを分解して課題と打ち手を考えてみる

チャット「初期離脱率」が下がらない原因と対策

「初期離脱率」は起動したチャットをすぐ閉じる、ページから離れるなど、 チャット小窓を起動したものの利用が開始されなかった割合です。

前編で説明した「開始数」と表裏一体の指標で、 起動したチャット内でメニュー選択やメッセージ送信など実際に利用を開始した割合を増やすことで初期離脱率は改善できます。初期離脱率の改善に際しては、絶対値を重視するのではなく、推移を継続的に観察し改善していくことが重要です。

チャットを利用するつもりがなくても興味本位で開くユーザー、有人チャットの場合にチャットを起動してから「今はチャット対応の営業時間外だったのか」と認識して離脱するユーザー等、一定数の初期離脱はある程度発生します。

初期離脱率を改善する(=開始数を伸ばす)には、前編でご紹介したファーストビュー、スマートフォンからの動作確認、コールリーズンにあった選択肢が用意できているかどうかを確認しながら、継続的な改善に取り組んでください。

初期離脱数、初期離脱率

「解決率」が伸びない原因と対策

「解決率」とは、チャット対応後の満足度アンケートにおいて①「解決した、と回答された数」②「アンケートの回答総数」(※「解決した」+「解決しなかった」の合計)で割った値です。

「解決率」が改善しない場合は「未解決の回答」の一覧データをチェックしてみましょう。回答された内容が適切だったのか、カスタマーサポートチーム内で再検討して見る必要があるかもしれません。選択肢がユーザーニーズにマッチしていない可能性もあるため、回答の選択肢の見直しの余地もありえるでしょう。

解決率が低い質問、どうしてもチャットボットではご案内が難しい質問に対しては、有人チャットや他の窓口に誘導する方法も効果的です。

チャットボットが得意な問い合わせはチャットボットに任せ、複雑な問い合わせは人が寄り添いながらサポートする。コールリーズンにあわせた適切なチャネル設計で、お客様のサポート体験をより良いものにしていきましょう。

チャットボットにはシナリオ型とAI型がありますが、必要なQAを追加してチャットボット自体を育てることで「解決率」の向上につなげることも必要です。(※シナリオ型チャットボットのQA数は、応答シナリオメニュー階層の最終分岐数を意味し、AI型チャットボットのQA数はAIに学習されている最終的な回答数を意味します)

チャットボット利用数、解決率

「正答率」が伸びない原因と対策

「正答率」は、「チャットの質問に対する回答後に満足度アンケートで『はい(回答に満足)』と答えた数と『いいえ(回答に不満足)』と答えた件数のうち『回答内容が正答だった件数』の合計」「その回答に対する満足度アンケートに答えた件数」で割った割合です。

「正答率」は『回答精度』とも言い換え可能ですが、厳密な計測は難しいため、もし必要な場合はサンプリングデータで参考値を確認すると良いでしょう。質問に対する回答がノーヒットだった質問ログから、適切な新規QAやQパターンを追加学習させることで「正答率」の向上が期待できます。

または『チャットボットのタイプにあわせた対応』によって「正答率」の向上を図ることも大切です。シナリオ型チャットボットでは離脱ポイントの分析、AI型チャットボットでは出現数多/正答率低のチューニング、両者のハイブリッド型では出現数多い設問をシナリオ型に移行するなどの対策での改善実例があります。

ちなみに、AI型の場合は、公開当初3か月のユーザー質問から、急速に学習・改善が見られます。公開前に用意する事前学習で、想定質問に答えられるようにしておき、公開後には一時的に正答率が落ちることもあるものの、追加学習を行って80~90%の正答率を維持することが大切です。

(※「正答率」についての詳細は こちらの過去記事 でもご紹介していますので、よろしければあわせてご参照ください)

正答率の改善例

「有人チャット(対応)開始率/完了数」が伸びない原因と対策

「有人チャット(対応)開始数」は、チャット小窓からオペレータが呼び出され、実際に対応が開始された数です。オペレータが呼び出されても、対応できる上限を超えていたり、営業時間外の場合は開始されません。運用の工夫によって同時に対応できる上限数を上げたり、窓口の営業時間を伸ばすことで向上はできますが、一朝一夕では改善が難しく当然コストもかかります。営業時間内のお問い合わせに対応ができていないのか、あるいは営業時間外のお問い合わせが多いのか、接続ができなかったお問い合わせの内訳を確認してください。

「有人チャット完了数」は、対応(開始)数に対し、オペレータが『ユーザー対応を最後まで完了させた数』で有人チャット開始数から途中離脱されてしまった数を除いた値 です。

有人チャット対応開始数、完了率

「有人チャット(対応)開始数」を伸ばすために対応上限を上げることは難しいと書きましたが、そのためには「平均同時対応数(AHT)」を指標にして改善していく事が必要です。「平均同時対応数(AHT)」とはオペレーターが複数のユーザーを同時並行的に対応した平均値のことです。

1対1の対応となる電話では、「平均同時対応数(AHT)」が必ず1になります。ただ、有人チャットでは(どのようなお問い合わせに対するサポートなのかにもよりますが)一般的に2~3の同時対応も可能です。有人チャット窓口をスタートした際は1対1を上限とした場合でも、オペレーターの習熟度にあわせて同時対応数を2件、3件と増やすことを検討してみてください。

有人チャット 平均同時対応数

いかがでしたでしょうか? 

チャットでの問い合わせのフェーズにおける改善ポイント、どこにボトルネックがあるかを「ステップを分割して」考えていくことが必要という点を整理してみました。これまでにご紹介した方法を使って、ぜひお使いのチャットボット改善に取り組んでみてください。

また『チャットボットを導入しているのに受電数が減らない』という場合には「チャットボットの状況」を確認してみましょう。

たとえば、『利用数が多く正答率も高い』ならば、コールリーズンの差異が原因かもしれませんし、『利用数が多く正答率が低い』ならば、チャットボットの設計に改善の余地があるかもしれません。そして、そもそもチャットボットの『利用数が伸びない』ならば、前編で整理したように『導線設計』の改善が求められます。

モビルスでは事前に設定したKPI、期待ROIに沿って、実際の導入効果を検証しながらサポート現場の運用改善のPDCAをお手伝いしています。以下にてチャット運用の改善に役立つ各種資料も公開していますので、是非ご覧になってみてください。

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