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チャットボットの回答精度を上げ、成果の出る運用をする上で欠かせない、「トラフィック(件数)の確保」。

今回の記事では、「トラフィックの確保」が重要な理由、確保するための導線とUI(ユーザーインターフェース)の設計について解説します。

トラフィックの確保が重要な2つの理由

失敗しないチャットボット運用において、チャットボットの品質向上に欠かせない「回答精度の向上」と同じくらい重要なのが「トラフィックの確保」です。

回答精度向上の肝、継続的なPDCAプロセスに不可欠

回答精度向上の肝である、継続的なPDCAプロセス。PDCAを継続的に回すために必要なのがトラフィックです。

ノーヒット回答や誤答の件数が少ないと、PDCAを回すことはできません。回答精度を上げるためには、ある程度のトラフィックにさらされる必要があります。

チャットボットは失敗から学んでいくのです。

目的を果たすために、利用されなくては意味がない

チャットボット導入の主な目的は、オペレーターの負荷軽減や、ユーザーの利便性向上です。

チャットボットが利用されないと、目的を果たすことはできません。

チャットボット導入当初、「回答精度が低いから、なるべく目につかないところでひっそりと始める」
……という場面も見かけますが、回答精度を向上させ、導入目的を果たすためにも、まずはたくさん使ってもらいトラフィックを確保することが必要です。

チャットボットの主なユーザー導線

トラフィックを考えるうえで重要になるのが、ユーザーがチャットボットにたどり着く導線です。

どのような導線から、どのくらい問い合わせが入ってくるかを設計していきます。

ユーザーが入ってくる導線にインターフェース(入り口)を設置していきます。インターフェースは大きく分けると、①Webサイト、②LINEアカウント、③ボイス(音声/電話)の3種類です。

最も一般的なWebサイト上への設置

チャットボットを設置するインターフェースは、Webサイトのトップページやサポートページが一般的です。

Webサイト上での設置方法は、バナーをクリックするとポップアップが出てくる「小窓タイプ」と、据え置き型で表示面積の広い「埋め込みタイプ」があります。

小窓タイプ

面積の占有は小さくて済みますが、キャプチャー率(チャットボットが表示される割合)は低いです。

小窓タイプのチャットボット
小窓タイプのチャットボットイメージ

埋め込みタイプ

キャプチャー率は高いですが、大きな面積を必要とします。

埋め込みタイプのチャットボット
埋め込みタイプのチャットボットイメージ

トップページへの設置

Webサイトのトップページは、訪れる人の目的が様々なので、すべての人がチャットボットによるサポートを求めているわけではありません。

ページの情報量も多いため、邪魔にならない小窓タイプが適しています。

小窓タイプのチャットボット利用のキャプチャ率は、1~5%と高くはありませんが、トップページは訪れる人の数も多いので、効果は十分にあると言えます。

サポートページへの設置

サポートページは、そもそもサポートを必要としている人がたどり着くページなので、チャットボットの表示面積が広くても問題ありません。

そのため、キャプチャ率が15~20%と高い、埋め込みタイプがおすすめです。

Webサイト上でチャットボットを設置する場所としては、キャンペーンなどの特設ページも考えられます。この場合は、内容によって小窓・埋め込みタイプを使い分けるとよいです。

継続的なコミュニケーションをが可能な、LINEの活用

LINEは、継続的なコミュニケーションを構築するのに最適なインターフェースです。

コミュニティを構築し、問い合わせを事前に防ぐ情報配信と、問い合わせ対応を行います。

Webサイトへのチャットボット設置と異なり、継続的な対話が可能となるので、問い合わせに限らず手続きの自動対応などにも活用することが可能です。

LINEアカウント上に導線を設置するイメージ

また、LINEでの問い合わせは、終了後のアンケート回答率も20%と高く、PDCAを回し続けるための良好なデータとなります。

※Webサイト上のチャットボットの場合、アンケート回答率は15%です。

電話→IVRでSMSからチャットへ誘導

意外と有効なのが、電話から問い合わせが入った際にIVR( Interactive Voice Response )で誘導し、発信元の番号へSMSを送信し、チャットへ誘導する方法です。

電話が込み合っている場合や、そもそも電話よりチャット対応を好むユーザーのトラフィックを取り込んでいきたい場合に有効です。

特にテクニカルサポートなどにおいては、画像や動画を合わせて回答できるので、チャットの方が便利なことも多いです。

このようなユーザーにとっての利点を訴求することで、上手にチャットへ誘導している例もあります。

新たな打ち手!ビジュアルIVRの活用

従来は、電話がかかってきたあとに音声ガイダンスのIVRでSMSを送信し、チャットへ誘導する流れが一般的でした。

しかし、これまでの音声IVRでは、

「長いアナウンスを聞きたくない」

「何回も選ばされたあげくに待たされる」

など、ユーザーの利便性に課題がありました。

また、一度電話をかけているのに、いまさらチャットへ戻ることへ違和感を覚えるユーザーもいます。

これを変えるのが、「電話をかけさせる前にWebの世界でチャットへ誘導する」という非常にシンプルな考え方です。

ビジュアルIVRから、チャットボットへの導線

ビジュアルIVRを利用して、電話番号の告知の代わりにWebサイト上に「お問い合わせはこちら」ボタンを設置します。

ボタンを押すと、「FAQ」「チャットボット」「LINEチャット」「電話」など問い合わせ窓口を優先順位に従って一覧で表示します。

そのとき一番多い問い合わせを一番上の選択肢でFAQへ。

呼量の多い手続きがあれば、専用のシナリオ型チャットボットへ。

チャット対応を望む方はLINEチャットへ。

……など、必要なメニューを集約し、複数ある問い合わせメニューを一覧表示することで、目的や状況に応じて最適な窓口へ誘導できる、というものです。

ポイントは、その時々の呼量変動に応じて、IVRメニューを簡単に変更できるかどうかです。

一度作ったら変更にお金も時間もかかるようなビジュアルIVRではなく、現場の担当者がその時々で臨機応変に変更できるものを強くお勧めします。

まとめ

トラフィックを確保することは、回答精度向上のために必要な、PDCAの学習データを蓄積し、導入による費用対効果:ROIを達成するために非常に重要です。

トラフィックを確保するには、導線設計が大切です。Web、LINE、そしてボイスなど、それぞれのインターフェースをうまく組み合わせていきましょう。

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