皆さんこんにちは。
ソフトバンクの宮内と申します。
たまたまYahoo!共同創業者のジェリー・ヤンさんの後でお話をさせていただくという、大変光栄な状況ですが、実はYahoo!ができてから、まだ25年ほどしか経っていません。この間に、コミュニケーションのデジタルトランスフォーメーションを起こしたのは、まさにジェリー・ヤンさんではないかと僕は思っています。
Yahoo!ができて、ネットがみんなにとって当たり前のものになりました。アルビン・トフラー(アメリカの未来学者であり、1980年に出版された『第三の波』の著者)流にいえば、デジタルトランスフォーメーションの第一波はジェリー・ヤンさんだったと思うわけです。その次にアップルが iPhone を出し、そして3G から4G になって、モバイルインターネットの時代がドーンと爆発しました。まさに、デジタルトランスフォーメーションが起こってきました。
今日は、今から始まろうとしている5Gのネットワークによって、デジタルトランスフォーメーションの第三波が本格的に起こり出すのではないかというお話をしたいと思っています。
かつて日本を決定的に変えたのは、その他にも色々あるでしょうけれども、黒船来航です。この時のコミュニケーション手段は瓦版。瓦版は、日本では1680年ぐらいから始まったと聞いています。そこへ黒船が来て横須賀あたりで大騒ぎになり、そして瓦版が出ました。当時のコミュニケーション手段は、手紙あるいは瓦版だった。非常にわずかなデータで、非常にのろい情報の伝播だったと思います。
それが今どうなっているかというと、PCの時代からスマホの時代になり、すべての情報を、ポケットに入っているこのスマホの上で一瞬にして見ることが出来るという世界になりました。このことも大きな変革ですが、実はこれからもっと大きな変革が目の前で起ころうとしています。
コミュニケーションテックということなので、コミュニケーションをテーマに話しますが、人々の伝達手段は、手紙から電話やファックスになり、インターネットに変わり、そして今スマホがメインになっています。要するに、テクノロジーと共に進化してきました。そして、現在はちょうど5Gの前夜です。
中国では、11月1日に5Gが一斉に主要都市で開始されました。中国では国家戦略として基地局を一気に作るということです。日本は若干遅れています。お隣りの韓国では、今年の4月にスタートして、最初のうちは5Gの端末を買ったものの、大してつながらないとの声もありましたが、もう都市部ではほとんど5Gネットワークにつながっているようです。この5Gと同時にAIのテクノロジーもどんどん進化してきて、IoTが爆発的に動き出します。そうすると膨大なデータをAIが推論し、答えを出すようになります。こんな時代がこれからこの5年で一気に進み出すと思います。
人と人のコミュニケーションというのは、先ほど見せた瓦版であったり、手紙であったりしましたが、現在はこのスマホのコミュニケーションがないと生きていけないという状況です。面白い話ですが、最近では自衛隊でも、スマホを使う時間を1時間与えないと若い隊員が入ってこないそうです。それぐらい、人と人とのコミュニケーションが非常に重要なのが今の世界です。
そして、現代はヒトとモノという世界になりました。僕もアップルウォッチを使っていますが、これがないとちょっと生きられないというぐらいに、日々いろんな情報を得ています。そして次に、モノとモノがつながり出します。先ほどデジタルトランスフォーメーションの一波・二波・三波と言ったその三波目が実は、このモノとモノがつながるということじゃないかと僕は思っています。
フィジカルなものに通信機能が入る、もっと極端にいうとフィジカルなものに目がつくと何が起こるかというと、単にコミュニケーションで情報を伝達するだけではなく、そのもの自体が自動化します。自動運転カーなどは、まさにそうですね。完全に機械が目を持って、全てのデータを集め、そして安全に運行する。
そういう意味では、5Gのネットワークがこれから世界で動き出すと、モノとモノ、モノとロボット、モノとヒト、まさにフィジカルとデジタルが融合して新しい爆発が起こるんじゃないか。これが、5Gが大きなビジネスを生むと言われている一番の理由です。
これから5Gが生み出すマーケットについては、アクセンチュアさんのデータはちょっと大きすぎるかなと思いますが、14トリリオンダラー、1400~1500兆円くらいと言われています。AIなどすべてを含めての数値だとは思います。KPMGさんが言っているのは主要産業、たとえば、医療の産業とか、交通、運輸、物流。そういった世界でも、法人においては、少なくとも4.3トリリオンダラー、450兆円ぐらいのビジネスが生まれるだろうと。日本の調査でも、国内だけで約50兆円のビジネスが生まれると言われています。
要するに、5Gが作り出す新たなマーケットは、膨大なものになる。まさに日本においても、皆さんのビジネスでは、現在あるような情報システム部門の改革のようなイメージから、会社のビジネスモデルそのものを変えていくような世界になっていく。それが僕は5Gのパワーだという風に思っています。
5Gは、ここにいらっしゃる方には釈迦に説法ですが、超高速であること、たった1km四方で100万台のデバイスがつながる多接続であること、それから超低遅延、1ms以下であること、この3つの特長があります。日本中津々浦々、このようなネットワークが行き渡るということは、完全にフィジカルとデジタルが融合する世界がやってくるでしょう。
こうなると、医療分野でも十分に使えます。例えば、中国の平安グッドドクター(Ping An Good Doctor)というサービス。すでに登録ユーザーが3億人近くもいます。こちらには毎日60万件以上の「ちょっとここが悪いんだけど」といった相談がきますが、登録されている専属ドクターはたった千数百人なんです。大半の回答には、AIファミリードクターが回答している。まさにAIの世界です。
こんなサービスが中国ではスタートしているわけです。5Gの世界になると、8K映像を使って、このAI診断がもっと高度にできるようになると思います。そういう意味でも、非常に大きな可能性があります。
9月にアリババクラウドのカンファレンスに参加しましたが、浙江省の省長は、5Gで全てのものを見える化するとおっしゃっていました。例えば、交通渋滞を検知し、混雑状況によって信号機をコントロールするとか。一番印象に残ったのは、行政サービスの統合プラットフォームを作り、あらゆる行政サービスをスマホのアプリにするという話です。戸籍謄本の取得でも何でも、すべてスマホアプリからできるようにする。
そのためには、行政で管理している住宅や橋などの情報をすべてデジタル化しなくてはいけません。デジタルデータ化できれば、AI処理も含めて住民サービスとして提供できる世界がやってくるのではないかと語られていました。それは、まさに5Gで実現できます。
4Gのネットワークでは、完全自動運転カーが情報を認識するのに遅延があります。この遅延というのは非常に重要です。全く遅延がなくなると、様々な分野で遠隔処理ができるようになります。医療の世界でいえば、遠隔の手術もできます。我々は力を入れて5Gに投資をし、これから3年以内に全国の人口カバー率90%ぐらいまでもって行こうと思っています。その一つとしては、まず新たな価値創出として、このコンシューマーの世界、それからその次にはインダストリーの世界で社会課題の解決をやっていこうと考えています。
例えば、新たな価値創出には、スポーツ、音楽、いろんな世界があります。これもガラッと変わります。バーチャルリアリティの分野では、数年前からfacebookさん、Microsoftさん、Googleさんもいろいろと取り組まれてきました。これが5Gのネットワークになると一気に来ます。
僕もLG韓国の5Gネットワーク上で野球やタレントのダンスを見ましたが、びっくりしました。没入感を楽しめる体験が一気にできるようになるんです。
さらには、この9月に幕張メッセでバーチャルキャラクターによるライブを、協賛というかたちで、エイベックスさんと開催しました。バーチャルキャラクターと観客がリアルタイムにコミュニケーションを楽しめて、大いに盛り上がったようです。5Gを使って、こういった新たなライブ体験も提供していきます。
次にクラウドゲーミングですが、今NVIDIAさんと一緒にやっています。実際に僕も見ましたが、本当にNVIDIAのGPUをもったサーバーが横にあるかのような感じですね。5Gのネットワークによって普通のPCでも、あるいはタブレットでもスマホでも、本格的なゲームコンソール並みのことができるような状況になってきます。こちらは動画を見ていただければと思います。
さらに5Gによって、例えば、建設現場も変わります。建設現場というのは、人材確保が難しいらしいです。それから職場の死亡事故の中で建設現場が1/3を占めるっていうぐらい大変なんですね。建設現場に行かなくても完全に遠隔で重機を操作できるようにするためには、やはり遅延がほぼないということが重要なわけです。これも、5Gのネットワークによって実現できます。
物流業界も全然人が足りません。働いている人の数は増えていないのに、Eコマースによってここ10年間で2倍以上の物量になっています。そんな中で、例えば我々が今実験をやっているのは、車車間通信によるトラックの隊列走行です。 5Gによって遅延が限りなくゼロになります。むしろ、人が運転するよりも安全な世界がやってくるかもしれません。こういったことも、これから起こり出します。
それから先日発表した工場の完全スマート化です。スマート工場を作るとなると、機器を変えなければならないと思われがちですが、実は我々が今目指している方法は違います。工場の中の機器をすべてネットワークにつなげるとなると、大きな設備投資がかかります。これに対して、5Gで8K映像を使って、機器に取り付けたメーターをカメラで見るんですね。
カメラで見た映像をデジタルデータ化して、それをAIがチェックするというやり方ですから、工場の中はカメラだらけになると思ってください。このやり方では、今の機器を生かしながらも工場の中を完全にネットワーク化、その数値データを蓄積してAIで分析し、工場の生産性や安全性を高めることができます。これも5Gならではのパワーなんです。
世界の基盤となる5Gは、これから本格的に浸透していき、皆さんのビジネスモデルを変えていくものです。皆さんは今まではどちらかと言うと、プラットフォーマーに自分たちの仕事を取られたように思われているかもしれません。しかし、このネットワークをうまく使うことによって、実は皆さん自身がまたプラットフォーマーになれるチャンスも出てきます。
我々は、後発でボーダフォンジャパンを買って、エリアナンバーワンを目指し基地局を整備し、人口カバー率を99%以上にして、今は大容量プランを展開するようになりました。そして今後、5Gのネットワーク戦略を進めています。これによって、いろんな活用シーンが飛躍的に拡大していきます。低遅延・多接続・超高速のネットワークを使うことによって、医療も、物流も、サプライチェーンも、工場も、いろんなところが一気に改善できるという風に思っています。
それをベースに、我々としてはあらゆるサービスを5Gでアップデートしていこうと考えています。皆さんも、この新しいデジタルトランスフォーメーションを企業に取り入れて蓄積したデータをAIで処理し、素早い意思決定を行い、新しいビジネスモデルを創出できれば素晴らしいと思っています。5Gの話はこれぐらいにして、最後の5分間で、我々が新しく取り組んでいることを少し皆さんにお話したいと思います。
それは、私たちの生活において、ネットワークという絶対的なインフラがない場所があってはならない、ということです。我々のビジョンは「情報革命で人々を幸せに」です。日本では、我々はドコモさんやKDDIさんと一生懸命競争しながら、 4Gのネットワーク、 LTEのネットワークのカバー率を高めてきました。そうは言っても、まだ電波の届かない地域があります。また災害時に、遮断されてしまうことがあります。そこで宇宙、上空からのネットワークをずっと計画していました。そしてようやく、本格的に動ける時が近づいてきました。
その1つが、HAPSモバイルです。成層圏15kmから20kmの高度を、ずっと巡回して飛ぶ空の基地局で直接このスマホで電波をキャッチできます。とりわけアフリカやインドなどのアジア圏、特にアフリカでこれができるといいなと思っています。
これからインフラを一生懸命構築し、空からも陸からも、どこでもネットワークにつながる世界をつくります。同時に、この新しい5Gのネットワークによって、個人の生活あるいは産業界全体の社会インフラの改革、そういったことをやっていけたらいいなという風にいつも考えています。
今日、僕が申し上げた中で、一番大事なポイントは、やっぱりデジタルトランスフォーメーションです。5Gによって、フィジカルなものとデータがリンクすることによって、いろんな大きな可能性が生まれます。典型的な例が自動運転カーのトライですよね。それからX as a Service。まさに、MaaS、Mobility as a Serviceがどんどん生まれてきています。新たな情報プラットフォームが皆さんの産業化にもどんどん広がり、新しいプラットフォーマーが生まれてくると思います。
皆さんがプラットフォーマーになるのか、その中のエコシステムの一員になるのか、その両方があると思います。今までのように一社がプラットフォーマーで全部そのもとにつながるのではなくて、プラットフォーマーであったり、そのエコシステムの構成員だったり、非常にオープンな世界になっていくんじゃないかなと僕は思っています。そういう意味でも、コミュニケーションテック、まさに新しいコミュニケーションが生まれるということです。是非、皆さんと一緒に我々もお仕事ができたらいいなと思っています。
どうもご清聴ありがとうございました。
Communication Tech Conference2021開催決定
2021年2月26日(金)13時~『Communication Tech Conference 2021』を開催します。
下記バナーより特設サイトをご覧いただきます!
「テクノロジーは、人々のコミュニケーションをどう変えていくか」をテーマに、今回で3回目の開催となるカンファレンスです。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、初のオンライン形式で実施予定です。
新型コロナにより暮らしや働き方、それに伴うコミュニケーションが一変した中、テクノロジーはどのような進化を遂げているか。
特別ゲストに、Zoom創業者のエリック・ユアン氏、基調講演にソフトバンク社長 宮内謙氏の登壇が決定しました。また、ソフトバンク社によるテクノロジーデモセッションや、LINE社などによるトークセッションを行います。
さらに、「Work Style(働き方)」、「Customer Support(顧客サポート)」、「Entertainment(エンターテインメント)」をキーワードに、各分野を牽引する企業が登壇予定です。
この機会をぜひご活用ください。