生成AIでここまで進化する!コールセンター(コンタクトセンター)におけるボイスボット活用の未来とは
投稿日:2025年4月28日 | 更新日:2025年5月25日

生成AIの登場は、コールセンター(コンタクトセンター)へも大きな影響を与えています。2023年に起きた生成AIに対する「魔法の杖」のような期待は、実際の実証実験(POC)を経て現実的な活用段階へと移行中です。当記事では、コールセンターでも導入が進む「ボイスボット(AI電話自動応答システム)」に焦点を置き、生成AIによってボイスボットの活用はどう変化しているか、今後どのような進化が期待できるかまで解説します。
<目次>
ボイスボットとは?
ボイスボットとは、音声認識や自然言語処理、対話型AIなどの技術を組み合わせ、顧客の音声を解析して自動で返答をするAI電話自動応答システムです。
コールセンターに顧客から入電があると、設定したガイダンスが流れます。ガイダンスに応じて顧客が用件を話すと、AIが内容を認識し自動音声で返答する、というのが基本的な流れです。手続きなどを全て自動で完結させるのみならず、ボイスボットが用件をヒアリングし、後から有人オペレーターが折り返しで連絡をする一次受付の自動化としての使い方もあります。また、緊急を要する対応が必要なケースは、その場で有人オペレーターへ転送することもできます。
つまり使い方次第で、負荷の重い手続き対応の自動化からオペレーター対応の負荷軽減のための支援まで幅広い利用が可能であり、人手不足の解消や顧客満足度の向上に寄与します。
▽詳しくは下記の記事をご覧ください
生成AI登場で変わるボイスボットの活用方法
コールセンターにおけるボイスボットの活用について、一般的に浸透している活用方法、最近増えている活用方法、生成AIとの連携によって期待されている活用方法についてそれぞれ解説します。
【一般的な活用】一次受付の自動化、簡単な質問や定型的な手続きの自動応対
コールセンターで実運用が進んでいるボイスボットの活用方法は、「一次受付の自動化」や「簡単な質問や定型的な手続きの自動応対」です。一次受付の自動化では、夜間や混雑時など有人オペレーターにつながる前に、問い合わせ内容や氏名など基本情報の事前ヒアリングを行い、ヒアリング内容を基にオペレーターが二次対応を行います。電話がつながらない・長時間待たされる状況を解消し、お客さまの利便性を向上するほか、ボイスボットが事前ヒアリングを行いオペレーターに接続することで、ATT(平均通話時間)の削減にも効果的です。
簡単な質問や定型的な手続きの自動応対では、ボイスボットが回答や必要事項のヒアリングを自動で行い、ボイスボットで対応を完結することも可能です。また、申し込み予約のリマインドや支払いの督促など、ボイスボットが自動で発信し用件を伝えるといった活用方法もあります。

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【直近の活用】システム連携で本人確認が必要な手続きの自動対応も可能に
簡単な問い合わせや定型的な手続きの自動応答や、一次受付での活用が広がる一方、自動化できる範囲が限られるため、呼量削減や業務効率化など問い合わせ対応全体への効果が小さいといった課題もありました。
こうした課題解消のため、ボイスボットとCRM(顧客管理システム)や基幹システムなど外部システムとAPI連携し、リアルタイムで受付や予約処理を行うことや、顧客へ本人確認をとる手続きや現状の在庫状況の確認などを自動化できる製品も登場しています。リアルタイムでの連携ができるようになったことで、本人確認が必要な手続きの自動対応も可能になり、ボイスボットで自動化できる範囲が広がっています。

【生成AI登場後の活用①】生成AI機能の搭載により、人に近い対応が可能になり、自動応答の対応範囲が広がる
では、生成AIの登場によってボイスボットの活用はどのように広がっているでしょうか。生成AIとの連携により、音声認識や回答生成の精度の向上や、意図や文脈の理解ができるようになっています。これにより、より人に近い対応が可能になり、自動応答の対応範囲が広がることが期待できます。
①生成AIとの連携で音声認識や回答生成の精度が向上
生成AIとの連携で、音声認識や回答生成の精度が著しく向上しました。具体的には、今まで音声認識で困難だった「Q」と「9」の聞き分けや、「車のナンバープレート」の聞き取りなどです。また、オペレーターの応対方法の模倣や、学習したデータから回答を探すのではなく情報ソースを基に回答を生成できることから、より高度な回答も可能になります。
②自然な対話形式での会話が可能に
「やはり先ほどの〇〇商品の個数を変更してほしい」といった要望に対して、発言意図と文脈を理解した応対ができるようになっています。以前は組み込まれたシナリオの順番に沿ってのみ会話が可能でした。

【生成AI登場後の活用②】問い合わせの自動分類・ヒアリング時の不足点の聞き返しが可能に、離脱率の削減・完了率向上へ
ボイスボットを導入したが、途中離脱の多さや最後まで完了できずオペレーターへの電話が減らないといったケースがあります。これは特に多くの項目をヒヤリングしなくてはならない、イレギュラーなケースが多い手続きなどで発生していました。新しく搭載された生成AI機能との連携で、問い合わせの自動分類やヒアリング時の不足点の聞き返しの自動化が可能になり、離脱率の削減や完了率の向上を期待できます。
①用件分類が簡単に
生成AIと連携する以前のボイスボットは、基本的にシナリオで選択肢を設定してユーザーに選んでもらうケースが多くありました。機械学習型の用件分類もありましたが、学習作業に時間がかかり、かつ精度もそこまで高くありませんでした。ユーザーは多くの場合、どの選択肢を選べば良いのか分からず、適当な選択肢を選んでしまうケースや、選ぶことが出来ずに離脱してしまうケースが多くありました。生成AIと連携したボイスボットであれば、発話内容の意図を理解した上で用件分類できるため、「本日のご用件を、『保険金請求、住所の変更』のようにお話しください」といったように複数の項目をまとめて質問することが可能です。ヒアリングするステップが簡単になり、お客さまの負荷を軽減できます。
②ヒアリングでの不足項目を自動で聞き返し
いくつもの項目をヒヤリングしなければならない場合、以前のボイスボットであればシナリオを元に順番にヒヤリングを行っていました。ユーザーにとって冗長な印象を与えてしまい離脱の原因となっていたことと、一旦ヒヤリングステップを踏んでしまうとその前にヒヤリングされた内容の修正は難しく、最初からやり直しなどユーザービリティも低い状況でした。生成AI機能を搭載することで、複数の項目をまとめて質問することが可能になり、不足部分に関しては聞き返しを行うことができるようになりました。
また、ユーザーからの回答が曖昧な場合や、さらに深掘りが必要な場合に追加質問により明確化が可能となります。例えば以下は、修理業務受付における利用イメージです。
【修理受付時のヒアリング不足項目の追加聞き返し】
・症状の具体的な内容(例:「電源が入らない」「異音がする」)
・発生時期・頻度(例:「1週間前から毎日発生」「たまに起こる」)
・発生するタイミング(例:「運転開始直後」「特定の操作をしたとき」)
・エラーメッセージの有無 (表示される場合は内容を確認
・自己対処の試みとその結果(例:「コンセントを抜き差ししたが改善しない」)
生成AIでさらなる進化が期待できるボイスボットの未来とは?
生成AIとの連携で活用範囲が広がっているボイスボットですが、今後さらなる進化が期待できます。これから紹介するボイスボットの未来像は、実運用はこれからですが、技術的には実現可能な話です。今後起こりうる、コールセンターでのボイスボットの活用について紹介します。
お客さまの依頼を即時判断し、実行すべき業務タスクを組み上げるマルチモーダルな【AIエージェント型の生成AI連携ボイスボット】の登場
お客さまの話す内容から意図を理解し、あらかじめ準備された必要な業務タスクを自動で組み上げ・実行するマルチモーダルな「AIエージェント型の生成AI連携ボイスボット」の登場です。AIエージェントとは、人を介さず目標達成のために最適な手段を自律的に選択してタスクを遂行するAIの技術です。オペレーターを介さず、リアルタイムで問題解決へ導くことができ、単なる応対ではなく、「判断」「意思決定」を兼ね備えたボイスボットとして、コールセンターのサポート業務の一部を完全自動化することが可能になるでしょう。
【具体例(サポートの一部完全自動化)】
・「スマホの調子が悪いんだけど…」
⇒不具合の原因を分析 + システムマニュアルを参照 +適切なトラブルシューティングを指示 +必要なら修理予約まで完了
・「来週、東京で泊まれるホテルある?」
⇒日程・希望エリア・予算をヒアリング +予約状況に応じて「◯◯ホテルが1泊△△円で空いています。予約しますか?」と最適なプランを提案 +承諾の取得 + 予約を完了 + 確認メール・SMSの送信
・「届いた商品が壊れてたんだけど」
⇒画像をアップロードを依頼 + 破損状況の確認 + 修理・返品のガイドラインに基づき「無料で交換できます。新しい商品を発送し、今の商品は返送不要です」と提案 + 自動で返品処理し、新品を発送

人かAIかわからないほどの自然なUIの実現、3〜5年後にはコールセンターのオペレーターは生成AIになる?
現在、多くのボイスボットは、以下の流れで対応しています。
①音声をテキストに変換
②テキストを解析し、回答を作成
③作成した回答を音声に変換して返す
この方法では、話すスピードや感情などは考慮されず、機械的な応答になりがちです。
しかし、最新の生成AIを活用した音声認識技術では、テキストに変換せずに音声のまま解析し、回答を作成・返答できるようになっています。これにより、よりスムーズで自然な会話が可能になります。
また、生成AIは話し手の感情や話し方を読み取り、声のトーンやスピードを調整でき、うなずきや息遣いなどの要素を加えた自然な音声を実現します。そのため、より人間らしい会話ができるようになり、ボイスボットと話していることを意識せずに利用できるUI(ユーザーインターフェース)になるでしょう。
人と生成AIがタッグを組んだ形で入れ替わりながらの対応に
こうした進化により、問い合わせ対応の役割は大きく変わると考えられます。基本的な一次対応はすべてAIが行い、イレギュラーケース時や、必要な承認ステップの際にオペレーターへエスカレーションされるといった、人とAIがタッグを組んだ対応が進んでいくと考えられます。
人が担う役割は大きく変わり、問い合わせ対応や手続き対応はAIに任せる。人はAIによる対応が終わった後に、ユーザーの問い合わせが発生した背景や、サービス利用におけるユーザーの声をヒヤリングしVOCの収集を行う。これまでの対応中心であったコンタクトセンターは、今後VOCを集積するVOCセンターへとその役割を大きく変えていくと考えます。
生成AIによって活用が広がるボイスボットで、コールセンターの運用効率を高めよう
これまでボイスボットは、幅広いコールセンターの問い合わせ業務の中で、一次受付や定型的なな手続き対応の自動化など限られた範囲での活用でしたが、技術の進化や運用方法の工夫により活用範囲は広がっています。生成AIの登場により、今後さらなる進化が期待されるボイスボットの活用について紹介しました。
簡単・すぐに導入できる点はボイスボットの魅力の一つではありますが、外部システムとの連携や生成AIを活用したボイスボットを導入することで、コールセンター運営においてROI(費用対効果)のインパクトを高めることにつながります。当記事が、コールセンターの運用効率を高める上で、ボイスボットの導入を検討されている方の参考になれば幸いです。
当記事を執筆するモビルスでは、CRMシステムや有人チャット・生成AIとの連携が可能なAIボイスボットや、コールセンター運用の肝ともなる、ナレッジベースの構築による回答サジェストやマニュアル検索を可能にするオペレーション支援AI「MooA」をはじめ、コールセンター(コンタクトセンター)のCX(顧客体験)向上を通じて企業の競争力を高め、収益を最大化するための総合的な支援を提供しております。
AIボイスボットやAIチャットボット、自己解決を促すビジュアルIVRなど、顧客満足度につながる幅広いニーズに対応できるソリューションを開発提供しています。ぜひご相談ください。
AI電話自動応答システム(ボイスボット)「MOBI VOICE」紹介資料
モビルスの「MOBI VOICE(モビボイス®)」は、企業などの電話自動応答に必要なすべての機能をカバーしたボイスボットソリューションです。注文や手続きの一次受付、自由自在に追加・分岐できるシナリオ作成、IVRでの自動音声対応、アウトバウンドコールなど必要な電話業務をもれなく実現できます。機能、解決できることや導入事例などを紹介資料にて掲載しています。
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