企業の経営戦略を考える上で重要視されているカスタマーエクスペリエンス(CX)と関連が深い、顧客ロイヤリティ。顧客ロイヤリティとは、顧客が特定のブランドや企業の製品やサービスに愛着や信頼を感じることを示すもので、リピート購入の増加やポジティブな口コミの促進により、コスト削減や売上向上につながる重要な指標です。

日々顧客からの問い合わせ対応を行うコールセンター(コンタクトセンター)の対応は、顧客の企業への信頼や愛着に影響を与え顧客ロイヤリティに直結する重要な役割を担います。当記事では、顧客ロイヤリティの定義を始め、高めるための方法とメリット、測定方法や指標、向上する上での課題と解決策まで詳しく紹介します。

目次


顧客ロイヤリティとは?

概念

顧客ロイヤリティとは、顧客が特定のブランドや企業に対して継続的に選択し、支持し続ける意欲や行動を指します。単なるリピート購入に留まらず、ブランドに対する信頼感、愛着、推奨意向など、さまざまな要素が含まれます。

顧客ロイヤリティの種類

顧客ロイヤリティには、「行動的ロイヤリティ」と「心理的ロイヤリティ」の2種類があります。

行動的ロイヤリティ

行動的ロイヤリティとは、顧客が実際に商品やサービスを繰り返し購入する行動のことです。具体例として、特定のコーヒーチェーンの常連客や、同じブランドのスマートフォンを継続的に購入する消費者が挙げられます。

心理的ロイヤリティ

心理的ロイヤリティとは、顧客がブランドに対して抱く感情的なつながりや信頼感を指します。例えば、ブランドの理念や価値観に共感し、そのブランドを他者に積極的に推薦する姿勢などです。


顧客ロイヤリティがもたらすメリットとは?

顧客ロイヤリティがもたらすメリットには、以下が挙げられます。

・リピート購入の増加

・ポジティブな口コミと紹介

・コスト削減と収益向上

一つずつ見ていきましょう。

リピート購入の増加

顧客ロイヤリティが高い顧客は、商品やサービスを繰り返し購入する傾向が強いです。リピート購入は企業にとって安定した収益源となり、販売コストの削減にもつながります。

新規顧客の獲得にはマーケティングコストがかかる一方、既存顧客の維持は比較的低コストで行えるため、ROI(投資対効果)も高くなると言えます。

【具体例】

 カフェチェーンがポイント制度を導入した結果、リピーターが20%増加し、年間売上が15%向上した。

ポジティブな口コミと紹介

ロイヤリティの高い顧客は満足度が高いため、自然とポジティブな口コミや紹介を行う傾向があります。これにより、新規顧客の獲得が促進され、マーケティングコストを抑えながら効果的なプロモーションが可能となります。

【具体例】

 美容院が満足度の高い顧客に紹介プログラムを提供したところ、紹介による新規顧客が30%増加し、売上が20%向上した。

コスト削減と収益向上

顧客ロイヤリティの向上は、顧客維持コストの削減と売上の増加を同時に実現します。既存顧客は新規顧客よりも購買頻度が高く、一度の購入額も大きいことが多いため、総合的な収益向上に寄与することが期待できます。

【具体例】

 オンラインショップがロイヤリティプログラムを導入し、既存顧客の購買頻度を増加させた結果、年間売上が25%向上した。


顧客ロイヤリティを高めるための方法・戦略とは?

顧客ロイヤリティを高めるためには、「優れた顧客サービスの提供」「パーソナライズされた体験の提供」「品質の一貫性と信頼の構築」が欠かせません。一つずつ詳しく紹介します。

優れた顧客サービスの提供

顧客サービスの質は、顧客ロイヤリティに直接的な影響を与えます。そのため、迅速かつ丁寧な対応、問題解決能力の向上、顧客の期待を超えるサービスの提供が求められます。下記は具体的な方法です。

24時間対応のカスタマーサポート

顧客がいつでも問い合わせやサポートを受けられる体制を整えることです。チャットボットやボイスボットなどを活用し問い合わせ対応を自動化することで、24時間対応のカスタマーサポートを実現できます。

スタッフのトレーニング

顧客対応に必要なスキルや知識を定期的に研修し、顧客サービス品質を向上させます。定期的な研修のほか、ナレッジベースの構築や回答候補をサジェストするツールの活用などで顧客サービス品質の均一化を測ることも効果的です。

フィードバックの収集と活用

顧客からのフィードバックを積極的に収集し、顧客サービス改善に反映させます。これには、フィードバックを得やすいような応対フローの構築やシステムの導入、収集したフィードバックを活用する仕組み作りも必要です。

パーソナライズされた体験の提供

顧客一人ひとりのニーズや嗜好に合わせたパーソナライズされた体験を提供することで、顧客ロイヤリティを高めることができます。そのためには、データの活用が鍵となります。次に具体的な方法例を紹介します。

購買履歴の分析

顧客の購買履歴を分析し、個別に最適な商品やサービスを提案します。例えば、Webサイトの商品ページに長時間滞在している際やチャットで商品に関する質問があった際に、購買履歴を元におすすめ商品の紹介やお得な割引を表示するといったことです。

パーソナライズされたメールマーケティング

顧客の興味や行動に基づいたメールキャンペーンを実施することです。問い合わせ内容や閲覧・購買履歴を元に、顧客の関心が高そうな商品のお得な情報や、購入した商品の活用方法など、顧客ごとに内容を変更し、最適なタイミングでメール配信を行います。

カスタマイズ可能な商品やサービス

顧客が自分の好みに合わせて、商品やサービスをカスタマイズできるオプションを提供します。顧客の嗜好やニーズは多様化しており、カスタマイズ可能にすることで細やかなニーズに対応できます。

ロイヤリティプログラムの導入

ロイヤリティプログラムとは、顧客に特典や報酬を提供することで、再購入やブランドへの忠誠心を促進する取り組みです。効果的なプログラムの設計と運用が欠かせません。具体的な方法として「ポイント制度」「ランク制度」「限定イベントや特典の提供」が挙げられます。

【ポイント制度】

購入金額に応じてポイントを付与し、次回の購入時に割引や特典と交換できる仕組み。

【ランク制度】

顧客の購入頻度や金額に応じてランクを設定し、ランクに応じた特典を提供する。

【限定イベントや特典の提供】

ロイヤリティプログラム会員限定のイベントや特典を提供し、特別感を演出する。

品質の一貫性と信頼の構築

製品やサービスの品質を一貫して維持・向上させることで、顧客の信頼を獲得し、ロイヤリティを高めることができます。次に具体的な方法例を紹介します。

品質管理の徹底

製品やサービスの品質を維持するための、厳格な管理体制を整えます。商品が気に入り再購入した際に以前より品質が落ちているなど、品質に一貫性がないことは顧客の期待を裏切り信頼を損なう恐れがあります。

ブランドの信頼性の向上

透明性のあるコミュニケーションや誠実な対応を通じて、ブランドの信頼性を高めます。特に顧客と直接やり取りをするカスタマーサポートの対応は、ブランドイメージや購買意欲にも直結する重要な役割です。

継続的な改善

顧客のフィードバックを基に、製品やサービスの改善を継続的に行います。顧客のフィードバックを反映することや継続的に改善を重ねることは、顧客に対するコミットメントが伝わり、企業への愛着や信頼が高まることを期待できます。


顧客ロイヤリティを測定する方法とは?

顧客ロイヤリティの効果を正確に測定することは、施策の改善と最適化に欠かせません。顧客ロイヤリティは目に見えにくい指標のため、定量評価できる指標を用いて見える化することが重要です。以下に、主要なKPIや測定方法を紹介します。

主要なKPIと指標

リピート購入率

特定の期間内に再度購入した顧客の割合を示す指標です。高いリピート購入率は、顧客満足度の高さや顧客ロイヤリティの強さを意味します。

【計算方法】

リピート購入率=(一定期間のリピート購入者数÷総購入数)×100

例えば、1,000人の購入者のうち200人がリピート購入者だった場合、リピート購入率は20%となります。

顧客生涯価値(CLV)

顧客生涯価値(Customer Lifetime Value)は、一人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす総利益を指します。初回購入から将来のすべてのリピート購入を含めた、顧客一人あたりの生涯収益を表す重要な経営指標です。似た言葉にLTV(Life Time Value)がありますが、LTVは平均的な顧客生涯価値を表すのに対し、CLVは個々の顧客に着目した分析が可能な点が大きな違いです。

離脱率

一定期間内にサービスを解約または利用を停止した顧客の割合を指す指標です。離脱率を把握することは、自社サービスが継続して利用されているかどうかを測り、顧客生涯価値を高められているかを確認できるということです。

顧客満足度スコア(CSAT)

顧客が製品やサービスにどれだけ満足しているかを示す指標です。CSATを分析することで、高確率で不満を抱いている顧客が浮かび上がり、顧客離れが現実化する前に対策を打てるようになります。

顧客満足度調査の実施

顧客満足度調査は、顧客の満足度や不満点を把握するための重要な手段です。定期的に調査を実施し、顧客の声を基にサービスの改善を行うことが求められます。顧客満足度の調査方法は「オンラインアンケート」「インタビュー」「フォーカスグループ」などがあります。調査を行う際には、「誰にアンケートを実施するか」対象を明確にしてから始めます。

オンラインアンケート

メールやウェブサイト上でアンケートを実施し、顧客のフィードバックを収集する方法です。長期的に顧客満足度調査を行いたい場合は、顧客が高い確率で確認する「購入完了の通知メール」や「予約完了のメール」などにウェブアンケートのURLを貼り付け、自動で回答が集まる仕組みを作るといった方法もあります。

インタビュー

特定の顧客を対象に深掘りしたインタビューを行い、詳細な意見を収集する方法です。アンケートではつかみきれない内容の調査ができるため、アンケートで高評価または低評価を出した人に個別にインタビューを行うといった使い方も効果的です。

フォーカスグループ

少人数の顧客グループを対象にディスカッションを行い、製品やサービスに対する意見を集約する方法です。インタビューと同じく、量的データではなく詳細な意見を集めたい場合に適した調査方法と言えます。

ネットプロモータースコア(NPS)の活用

NPSは、顧客がどれだけそのブランドや企業を他者に推薦する意向があるかを測る指標です。シンプルかつ効果的な測定方法として広く活用されています。計算方法は以下の通りです。

(1)顧客に「この商品(サービス)を友人や同僚に推薦する可能性はどれくらいありますか?」と尋ね、0〜10のスコアで評価してもらう

(2)スコアを基に顧客を以下の3つに分類する

   プロモーター(9-10点):積極的に推薦する顧客。

   パッシブ(7-8点):中立的な顧客。

   デトラクター(0-6点):推薦しない顧客

(3)「プロモーターの割合」から「デトラクターの割合」を引くことで算出する


顧客ロイヤリティ向上における、よくある課題とその解決策とは?

顧客ロイヤリティ向上に取り組む際に課題となるのが「ロイヤリティプログラムの効果が出ない」「顧客データの管理と活用への課題」「競合他社との差別化」です。解決策と共に一つずつ詳しく見ていきましょう。

課題①:ロイヤリティプログラムの効果が出ない

ロイヤリティプログラムを導入しても、期待した効果が得られないことがあります。プログラムが顧客のニーズに合致していない場合や、特典が魅力的でない場合に発生します。次に解決策例を紹介します。

顧客をセグメント化する

全ての顧客に同一のプログラムを提供するのではなく、顧客をセグメント化し、各セグメントに適した特典やインセンティブを提供します。例えば、頻繁に購入する顧客には高価値な特典を、初回購入者には試しやすい特典を提供するなど、顧客のライフサイクルに応じたアプローチを取ることです。

【具体例】

 高頻度購入者向けに専用のイベント招待や限定商品の提供、低頻度購入者向けに割引クーポンや初回購入特典を設定する。

プログラムのシンプル化

プログラムのルールや特典の獲得・利用方法を分かりやすくし、顧客が簡単に理解し利用できるようにします。複雑なポイントシステムや利用条件は避け、直感的に理解できる設計にすることが重要です。

【具体例】

 ポイント獲得の方法や利用方法を視覚的に示す動画などを提供し、顧客が迷わずにプログラムを利用できるようにする。

魅力的な特典の提供

顧客が本当に価値を感じる特典を提供することが重要です。特典は単なる割引だけでなく、体験価値や限定性を持つものが効果的です。

【具体例】

 限定イベントへの招待、特別なカスタマイズサービス、バースデー特典など、顧客にとって特別感を感じられる特典を設定する。

課題②:顧客データの管理と活用への課題

大量の顧客データを効果的に管理・活用することは難しく、データの断片化やプライバシーの問題が発生する恐れがあります。また、データ分析のスキルやツールが不足している場合、収集したデータを有効に活用できないことも課題となります。次に解決策を紹介します。

統合データプラットフォームの導入

すべての顧客データを一元管理できる統合プラットフォームを導入し、データの断片化を防ぎます。これにより、データの一貫性と可用性が向上し、効果的な分析が可能となる。

【具体例】

 CRM(顧客関係管理)システムやCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を導入し、各部門からのデータを統合する。

データ分析スキルの強化とツールの活用

 データ分析の専門知識を持つチームを育成し、最新の分析ツールを活用することで、データから有益なインサイトを抽出します。これにより、顧客の行動やニーズをより深く理解し、効果的な施策を展開できるようになります。

【具体例】

 データサイエンティストの採用や既存スタッフへのデータ分析研修を実施し、BI(ビジネスインテリジェンス)ツール(例:Tableau、Power BI)を導入してデータ可視化を行う。

データセキュリティとプライバシーの強化

顧客データの保護を徹底し、プライバシー規制(GDPR:EU一般データ保護規制やCCPA:カリフォルニア州消費者プライバシー法など)に準拠することが重要です。データの適切な管理とセキュリティ対策を講じることで、顧客の信頼を維持できます。

【具体例】

 データ暗号化、アクセス制限、定期的なセキュリティ監査を実施し、顧客データの安全性を確保する。

課題③:競合他社との差別化

多くの競合他社が存在する市場では、顧客ロイヤリティを高めるための差別化が難しいです。特に、同質化が進んでいる業界では、独自の価値提案を見つけることが課題となります。次に解決策を紹介します。

独自の価値の明確化と強化

他社にはない独自の価値や強みを明確にし、それを顧客に訴求します。独自性を明確にすることで、顧客に選ばれる理由を提供できます。

【具体例】

 製品の独自機能、卓越したカスタマーサービス、特別なブランドストーリーなどを強調する。

ブランドストーリーテリングの活用

ブランドの歴史や理念、価値観をストーリーとして伝えることで、顧客との感情的なつながりを築きます。これにより、ブランドへの愛着を深め、ロイヤリティを高めることができます。

【具体例】

 ブランドの創業ストーリーや社会貢献活動をドキュメンタリー動画やブログ記事として発信する。

カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上

顧客がブランドと接触するすべてのタッチポイントにおいて、一貫して高品質な体験を提供します。優れたCXは顧客ロイヤリティを強化する重要な要素です。

【具体例】

 ウェブサイトのユーザビリティ向上、迅速な配送サービス、アフターサービスの充実など、全体的な顧客体験を向上させる施策を実施する。

まとめ

顧客ロイヤリティは、リピート購入の増加やポジティブな口コミと紹介を促し、顧客維持コストの削減と売上増加を同時に実現し、総合的な収益向上をもたらす重要な指標です。顧客ロイヤリティを高めるためには、24時間体制のカスタマーサポートや均一化された対応など「優れた顧客サービスの提供」、購買履歴などデータを活用して顧客一人ひとりに適した「パーソナライズされた体験の提供」、製品やサービスの品質を均一に保ち継続的な改善を行うことによる「品質の一貫性と信頼の構築」が欠かせません。顧客ロイヤリティを高める効果的な取り組みをする上で、当記事がお役に立てると幸いです。

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