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「これからのコンタクトセンターにおけるCXの在り方とは?」をテーマに、コンタクトセンターをはじめとするさまざまな顧客接点で培ったノウハウと、最新技術を活用したデジタルソリューションで顧客体験(CX)をデザインする 株式会社NTTマーケティングアクトProCX CXソリューション部 西日本営業部長 新谷 宜彦 氏と、顧客サポート業務のソリューションの開発・提供を行う モビルス株式会社 代表取締役社長 石井 智宏が対談を行いました。

顧客サポート、顧客体験を取り巻く市場の動向、コンタクトセンターが直面する課題や解決策、ノンボイスシフトに取り組む成功事例、今後の展望などについて対談した模様を前編・後編に分けてお届けします。

目次

4,000人の合意を得て誕生した「CXのプロ集団」

「ホールプロダクト」でサポートを越えたCX向上へ

コロナ禍で雇用難が解消?デジタルシフトも追い風?

在宅化は本当に進んだのか?雇用難解決の救世主

在宅化を進める鍵になる、ノンボイスシフトとは

対談メンバー

NTTマーケティングアクトProCXとモビルスの対談
(左から)モビルス 石井、NTTマーケティングアクトProCX 新谷氏。写真撮影の際だけマスクを外しています。

株式会社NTTマーケティングアクトProCX CXソリューション部 西日本営業部長 新谷 宜彦 氏

1989年 日本電信電話株式会社入社。入社以来長年にわたり通信システムの営業および開発業務に携わる。営業戦略部門において西日本エリア全域におけるマーケティング戦略策定業務に従事。現在は、NTTマーケティングアクトProCXにおいて、コンタクトセンタービジネス等BPO業務に関する西日本エリアの営業統括責任者として従事。また、デジタルプラットフォーム開発プロジェクト責任者として、全社におけるAI・DX化を推進している。

モビルス株式会社 代表取締役社長 石井 智宏

1998年 早稲田大学卒、2009年 ペンシルベニア大学ウォートンMBA取得。ソニー株式会社にて11年ラテンアメリカ市場におけるセールスマーケティングに従事。MBA取得後、国内投資ファンドにて執行役員。その後ソニー会長率いるクオンタムリープ株式会社のエグゼクティブパートナーとして多数の日本企業の海外進出を実行支援。

2014年モビルスに参画。受託開発中心のビジネスから業態チェンジをし、主力製品「MOBI AGENT」や「MOBI BOT」「MOBI VOICE」などをリリース。企業のコンタクトセンターや自治体向けに製品の提供、導入支援を行っている。

モデレーター

モビルス株式会社 セールスマーケティングディビジョン パートナーセールスユニット  アカウントマネージャー 瀧澤 朋未

NTTマーケティングアクトProCXとモビルスの対談
対談の様子。対談はNTT西日本グループの沖縄拠点にて行いました。

4,000人の合意を得て誕生した「CXのプロ集団」

はじめに、それぞれの事業概要をご紹介ください。

新谷氏

顧客接点ソリューションを全方位カバーするCXのプロ集団として、2022年4月から「NTTマーケティングアクトProCX」として新たに出発しました。コンタクトセンターの運営、フィールドサポート、バックオフィス、デジタルマーケティング、ネットワーク基盤といった顧客接点に関する総合的な提案をしています。

以前は、業務ごとに切り分けて複数の企業へ発注するスタイルが主流でしたが、業務ごとの切れ目がなくなってきているため、クライアント企業からは一括発注を望む声が増えています。総合的なご要望に応えるべく「3D戦略」として、顧客接点領域をコンタクトセンター+フィールドセールスから、バックオフィスやメンテナンスへ拡大し、事業領域の拡大・付加価値サービスの展開を図っていきます。

NTTマーケティングアクトProCXの3D戦略
NTTマーケティングアクトProCXの3D戦略

「3D戦略」を実現するためには、柔軟な服務体系に変えていく必要がありました。既存の社員を新しい雇用形態に変えていくのは並大抵のことではありません。全社員の合意をとるべく4カ月ほどかけて説明会を開催し、疑問を持つ方には個別相談を行いました。結果として、ほぼ100%の社員の合意を得られ、新会社に移行できました。

CXのプロとしての意識を持ち、クライアント、そしてクライアントのエンドユーザーに対して、感動体験を提供できる会社にしていきたいという想いでやっています。

「ホールプロダクト」でサポートを越えたCX向上へ

石井

モビルスは、「The SupportTech Company」として、技術の力でサポート領域に変革を起こすことにチャレンジしている会社です。

主に「ノンボイス」と呼ばれる、チャットを使ったコミュニケーションツールを開発・提供しています。メインのお客さまは、企業のコンタクトセンターや自治体の行政サービス窓口などです。

2021年2月に「つなぐ、こたえる、を越えていけ。」というタグラインを新たに打ち出しました。企業と消費者をつなぎ、問合わせに答えるだけでなく顧客体験(CX)向上を実現するサポートをしていきたいと考えています。そのためには製品の開発提供だけにとどまらず、顧客接点全体を考えた「ホールプロダクト」の提供が必要です。製品、構築支援、コンサルテーション、カスタマイズ開発、外部システムとの連携を含めて提供しています。

つなぐ、こたえる、を超えていけ(モビルスのタグライン)
モビルスが掲げるタグライン

コロナ禍で雇用難が解消?デジタルシフトも追い風?

―2021年を振り返って、コンタクトセンター(顧客サポート)を取り巻く環境はどのような変化があったでしょうか?また、2022年以降はどうなっていくとお考えでしょうか?

新谷氏

2021年は良くも悪くもコロナに振り回された年で、コンタクトセンター業界としてはバブルでした。コロナ関連の助成金もあり、自治体からの需要が急増しました。雇用に関しても、他業界から人材流入があり採用難が一時的に解消されましたが、今後は再び人材不足に陥ると予測しています。コロナ禍で顧客接点全般の広がりが続き、デジタル化の追い風にもなっていると考えます。今年がデジタル化の大きな勝負の年になるのではないでしょうか。

NTTマーケティングアクトProCXとモビルスの対談

石井

特に企業側はコロナ禍で「人海戦術ではやっていけない」と、デジタル化へのマインドセットが進んだと感じています。「問い合わせの増加」と「出勤率の低下」の中、顧客対応を維持するため、ノンボイスシフト・自動化による業務効率化を進める動きが加速しました。特にチャットボットの導入は堅調で、市場が広がりマジョリティ市場に入っています。その分、「安く・簡単に使いたい」という声が増えてきました。使いやすさはもちろん大事ですが、単に導入しただけでは期待する効果がでないので、コンタクトセンター全体を俯瞰してデジタルツールを活用する必要性を訴求していきたいです。

新谷氏

コロナ禍で密を避けるためコールセンターが運用できなくなり、問合わせ対応ができなくなるよりは人でなくチャットボットでも対応できた方が良いと考える企業も増えましたよね。消費者側も、問合わせできないよりは、チャットボットでも答えてくれたほうが良いと受け入れ態勢も整ってきたと思います。

在宅化は本当に進んだのか?雇用難解決の救世主

新谷氏

もう一つ大きな変化はコンタクトセンターの在宅化です。これまで日本は欧米と比べて在宅比率が少なかったのですが、コロナ禍ではBCP観点からセンター運営を維持するために在宅対応をするしかありませんでした。そのため一時的に在宅対応が増えました。

石井

センターの在宅化は、今後どうなると考えていますか?

新谷氏

今後は元に戻ると予測しています。コロナ禍での在宅化は、労務・服務・マネジメント含めセンターでの運用形態のまま家に持っていった形です。このやり方は、企業も働く人もストレスや負担が多いのです。そのため、コロナが落ち着いてセンターでの運用ができるようになったら元に戻した方が良いとなる。

現状コンタクトセンターが抱える雇用難などの諸問題を解決できたかと考えると、抜本的な解決は進んでいません。雇用難解決のためにも、在宅化は必須です。コンタクトセンターの求人に対して、在宅対応可の条件を入れると応募率は大幅に上がります。コンタクトセンターを運用する側も、働く側も在宅化を進めないと未来はないと考えています。

石井

実態はマネジメントレイヤーや正社員のみだったり、席数は限られていたりと、そこまで在宅化が進んでいない印象です。なぜうまくいかなかったのでしょうか?企業側、運営側、どちらの要因なのでしょうか。

NTTマーケティングアクトProCXとモビルスの対談

新谷氏

両方です。企業側の理由は情報セキュリティ。運用側としては、元々在宅で勤務する業務を前提としていない方を採用していることが、想像以上に大きな壁になりました。在宅化する際の働き手の不安としては2つあり、一つはユーザー対応上で何かあった際に同じ空間ですぐに助けを呼べないことへの不安。もう一つは複数のシステムを使うのでシステム不具合になった際に対処できない不安です。在宅勤務を前提とした採用をすることと、在宅化できるシステム体制をつくることで、働き手の不安を解消し、在宅化の後押しとなると考えています。

弊社のクライアントで在宅化がスムーズにいった事例があります。上手くいった理由の一つが、元々シンクライアント化していたため、システム面での不具合へ対処する一定のリテラシーがあったことです。

※シンクライアント:「薄い、少ない」という意味の「シン(Thin)」と、「クライアント(Client)」を組み合わせた用語。クライアント端末の機能を最小限にし、アプリケーションやデータをサーバー側で実行し、管理する仕組みのこと。

在宅化を進める鍵になる、ノンボイスシフトとは

新谷氏

在宅化を進めていく上で必要なことは、在宅対応を希望する人・在宅に向いた人を採用し、その方たちが望む服務形態・給与形態を実現することです。いかにうまくマネジメントしていくか、やりがいのあるテーマだと思っています。そして、在宅での問い合わせ対応には、ノンボイスシフトが必須です。有人チャットは在宅勤務に向いていると思います。

石井

在宅化は我々もチャレンジしたい領域です。在宅対応のボトルネックの一つに音漏れの心配があるので、割り切ってノンボイス専門でもいいのでは。個人情報をマスキングし、オペレータは個人情報を見ずに対応に必要な契約情報だけ見られるようにすると、在宅対応で懸念される情報漏洩の心配もなく本人確認を伴う対応もできるのではと考えています。こうしたソリューションの開発を進めていきたいです。

新谷氏

いいですね!ニーズが高いと思います。

★後編に続きます★<6月中旬公開予定>