人間と対話するAIで日本発のイノベーションを

さまざまな時代を経て第三次ブームに至ったAI(人工知能)。まず開会の挨拶として、ソニー株式会社の代表取締役社長を務められた後、現在は日本とアジアのイノベーションを促進するクオンタムリープ株式会社の代表取締役、出井伸之氏が登壇した。今回のカンファレンスの趣旨は「AIと人間の対話」にテーマを絞って展開することを述べた。

出井氏は、日本から米国や中国のようなプラットフォームビジネスが生まれていないことを憂慮してこう述べた。

いまビジネスモデルが大きく変わりつつあります。米国ではGoogleやAmazonなど、プラットフォーマーが成長しています。中国も百度やアリババがめざましい発展を遂げました。ところが、日本では90年代からプラットフォーマーが登場していません。米国と中国の触媒の役割しか果たしていない。いわば両国から技術の隕石に打撃を受けている状態です。

「日本は古い既成概念にとらわれている」と出井氏は指摘した。しかし、ブロックチェーンの技術ひとつにしても多様な変化の可能性を秘めている。今後はインフラとして整備されたり、企業の働き方改革に貢献したり、インターネットが登場したときと同じような変化が起こるかもしれないとの可能性も示唆した。

次世代のパラダイムの変化を考え、米国と中国の間に日本がどうすれば参入できるか。それは日本の社会、政治、企業の問題です。私はビジネスマンですから、今日は人工知能の専門家のみなさんを困らせる役割としてお話できればと考えています。

松尾豊氏や榮藤稔氏のようなアカデミックな人工知能の研究者の方を向いて、やや挑戦的に自身のスタンスを語った後、カンファレンスの参加者それぞれが具体的な問題意識を持ち、技術だけではなく世界全体や教育の変化を考えていただきたいという主催者の願いを告げた。