現在、世の中の多くの製品・サービス市場は激化しており、製品の機能や品質、価格だけでは差別化が難しくなっています。差別化が困難な中、「買ってよかった」「便利で安心」といった心理的価値の高い顧客体験(CX)が、お客さまに選ばれる重要なポイントとなります。そのため、CXの向上は企業の差別化戦略において極めて重要です。

このコラムでは、CX向上を実現するための3つのステップをご紹介します。まずは現状のCXを把握し、次にCX向上戦略のゴールを設定し、最後に改善活動を進めます。これらのステップを順に理解し実践することで、価値ある顧客体験を提供し、企業の競争力を高めることができます。

<執筆者紹介>
大松 祐子(おおまつ ゆうこ)
COCOコンサルティング 代表

大手BPOで14年間、運営および立ち上げ/改善支援に従事。オペレーターからSV/品質管理者・センター長・PMまで数多くの現場経験を積む。2012年からはコールセンターの世界標準規格である「COPC」の監査員・研修講師として、のべ50社以上、2,000人以上の監査および研修に携わる。2022年にコールセンター専門のコンサルティング会社としてCOCOコンサルティングを設立。運営マネジメントコンサルティングのほか、ソリューション導入に伴うコールセンターの最適デザイン設計支援を行っている。

目次


はじめに

CXの向上に欠かせないカスタマーサクセス。CXの向上とカスタマーサクセスは密接に関連していますが、両者は具体的にどのような関係性にあるのでしょうか。ポジティブなCXの積み重ねは、企業やサービス・商品に対する信頼や愛着心(ロイヤルティ)を生み出します。CX向上の目指すところは、お客さまとの中長期的なロイヤルティを築き、生涯価値と企業のブランド価値を高めることで、企業の収益に直接的に貢献することです。CX向上による効果や指標には、新規顧客獲得、既存顧客のLTV(ライフタイムバリュー)向上、解約抑止、収益改善などが挙げられます。これらを実現するために必要な機能や組織として、カスタマーサクセスが存在するのです。

本編では、コラムにてCX向上を「1.現状のCXを知る」、「2.CX向上戦略のゴールを設計する」、「3.改善活動」と3つのステップに分類し(図1)、各ステップの目標とその対処方法について解説すると共に、そのステップに適切なカスタマーサクセス支援についてもご紹介してまいります。

※図1 モビルス社作成


Step1 : 現状のCXを知る

ステップ1では、現状のCXを知る方法を解説します。

Q1 : CX向上のために、具体的には何をすればよいのか?

CXを向上させるためには、お客さまが商品やサービスを利用するすべての場面で、満足度の高い体験を提供することが不可欠です。同時に、お客さまがつまずくような要因や不快に感じるポイントを取り除くことも重要です。では、具体的に何をすればよいのでしょうか。

まずは、お客さまの行動や目的を深く理解することから始めるべきです。コンタクトセンターへの問い合わせ履歴やチャットログなどのデータを活用して、お客さまがどのような状況でつまずきやすいのか、その背景にある心理を読み取ります。

では、膨大なデータからどうやって必要な情報を読み解けばいいのでしょうか?現在、スマートフォンの普及に伴い、Webサイト、アプリ、SNSなど、お客さまが利用するチャネルは多岐にわたっています。このため、お客さまの行動は一見複雑に感じられるかもしれません。しかし、実際にお客さまが求めていることは、「ログインしたい」「住所を変更したい」といった、非常にシンプルな要求が多いのです。この場合、すべてのデータを詳細に分析する必要はありません。頻繁に発生するお客さまの行動から改善に取り組むことが効果的です。なぜなら、CX改善で本当に必要なのは、お客さまの行動全体を把握することではなく、優先的に改善すべき不快な体験を見つけ出すことだからです。

お客さまの行動から真の要求が明らかになったら、次にその要求を実現するプロセスでつまずきやすいポイントや不快な箇所がないかを確認します。お客さまの行動を丁寧に辿り、CXを下げる問題点とその要因をリストアップし、改善箇所を特定しましょう。そして、次の3つの要素(図2)を踏まえた改善を検討します。

※図2 モビルス社作成

お客さまは、基本的に問い合わせを避けたがるものです。問題が発生する前に有益な情報が提供され、自己解決できる手段が整っていることが求められます。また、複雑な問題には人との対話が必要になる場合もあります。そのため、人の温かさを感じられるコミュニケーションと、効率的なデジタルサポートをバランスよく組み合わせることが重要です。

また、改善を進めるためには、組織内でどうそれを実行に移すかも考慮しなければなりません。社内の事情や部門間の障壁を理由に「改善できない」と改善箇所を除外するのは避けるべきです。お客さまの視点では、部門間の障壁は関係ありません。可能な限り部門をまたいだ横断的な体制を整え、全社的に取り組むことが成功の鍵となります。全社的なCX改善活動は、1つの部門で行う改善よりも、お客さま体験全体に与える影響が大きく、ROI(投資対効果)も高まるでしょう。



コールセンターデザインの支援サポートを活用する

モビルスではコールセンター(コンタクトセンター)デザインの支援を通じて、クライアントさまのCX向上のお手伝いをしています。様々な企業の課題に対応すべくコールリーズンやお客さまの導線などを分析し、現状のCXと理想的なCXとのギャップを明らかにして改善策をご提案します。

導入前に自社のCXを把握するためにおすすめのサービスは「伴走型導入前アセスメント」と「導入支援プラン」です。

「伴走型導入前アセスメント」とは

現状の問題をどのように改善すればよいのかお悩みの方に向けたプランです。運営状況や顧客導線、ソリューションの課題を可視化し、DXのグランドデザインを設計いたします。要件定義から業務・運用設計まで、最適な解決策の実現をご支援いたします。

例えば、初めて導入されるクライアントさまには、目的の明確化や現状の課題の特定、KGI/KPIの策定など多岐にわたってご支援します。また、すでに何らかの製品・サービスをご利用されている場合は、お問い合わせデータをご提供いただき、弊社でデータ分析から最適な導線のレコメンドや設計までをお手伝いさせていただきます。

お客さまとクライアントさま双方にとって最適なコンタクトセンターを設計するために、システムのみを機械的に選定・導入するのではなく、「運用が適切に行われるか」といった観点から業務設計をいたします(図3)。

※図3 モビルス社作成

「導入支援プラン」とは

効果的な製品運用を実現するために、構築作業を全面サポートするプランです。要件の擦り合わせから始まり、シナリオ設計、構築、(Visual IVRの場合)デザイン設定やモックを使った構築状況の共有、導入テストを支援し、導入の一連の流れをサポートします(図4)。

特にチャットボット構築時に重要な要素となるシナリオ設計については、弊社専任担当者がシナリオ設計書の書き起こしを実施し、完成後も変化するクライアントさまのビジネスを想定した情報保管をします。これにより、両社にて情報管理が可能な状態を構築し、今後のシナリオ変更による改修や機能追加などが発生した場合や弊社サポート側でお問い合わせ対応をお受けする際に内容把握が容易となり、両社にとって効率的な運用が可能となります。

※図4 モビルス社作成

モビルスでは、様々なニーズに合わせたサポート体制を用意しており、クライアントさまの用途に合わせたご提案をいたします。


いかがでしたでしょうか。Step1では、CX向上のためにはお客さまへ満足度の高い体験を提供するだけでなく、お客さまの行動を丁寧に辿り、CXを下げる問題点とその要因のリストアップ、改善箇所の特定、対策検討をすることの重要性を紹介しました。

次回【Step2:CX向上戦略のゴールを設計する】では、CX向上の成果を確実に引き出すための指標について紹介します(近日公開予定)。

モビルスではCX向上を支援するコンテンツを多数ご用意しています。
なぜ今CX(顧客体験価値)向上に注目すべきなのか】【CX向上に必要とされるカスタマーサクセス支援とは】もぜひご覧ください。

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