<2024年7月30日→2024年9月25日更新>
コールセンター(コンタクトセンター)で効率性と生産性を測る指標の1つに、CPHがあります。計算式がシンプルでわかりやすいデータのため、よく活用されていますが、CPHでコールセンターの改善を進めるにあたっては、注意すべき点もあります。
当記事では、CPHの意味や算出方法といった基礎知識から、改善するためのポイントまで、ご紹介します。
<目次>
CPHとは?
まずは、CPHがどういったものなのか、意味と計算方法、目安について、見ていきましょう。
CPHの意味
CPHとは、『Call Per Hour』の略称で、オペレーターが1時間当たりに対応したコールの件数を示す指標です。この指標は、コールセンターの効率性と生産性を評価する上で非常に重要です。
コール対応には、電話越しに顧客とやり取りを行うだけでなく、その内容をシステムに入力する事務作業も含まれます。これらの付随業務も含めて「1件」としてカウントされるため、オペレーターの電話能力だけでなく、システムへの慣れやタイピング能力もCPHに反映されます。
CPHの計算方法
CPHは「対応件数÷稼働時間」で算出できます。
例えば、オペレーターAが稼働時間7時間の間に30件のコール対応を行った場合、AさんのCPHは「30÷7 = 4.29」の計算式で求められます。つまり、1時間当たり4.29件のコール対応を実施したということになります。
また、CPHは個々のオペレーターだけでなく、コールセンター全体についても算出することが可能です。例えば、50名のオペレーターがそれぞれ6時間稼働し、合計1,200件のコール対応を行ったとします。この場合、コールセンター全体のCPHは、「1200÷50÷6 = 4」となり、コールセンター全体のCPHは4.0となります。
このように、コールセンター全体のCPHを算出し、その平均値を把握することで、稼働時間あたりの生産性を判断するための指標として活用することができます。ただし、注意したいのは、上記計算式は稼働時間あたりのCPHという点です。そもそも「稼働時間が短い」「待ち呼時間が長い」という場合、想定の対応件数との間にギャップが生じるため、合わせて稼働時間や待ち時間の管理も必要となります。
CPHの目安(平均)
CPHの目安は一概には言えません。業務の複雑さや対応の丁寧さによって適切なCPHは変わってきます。
例えば、複雑な業務や動作検証、調査を必要とする場合、CPHは1件前後が目安となることもあります。一方、簡易的なアナウンスだけを行う場合、CPHの目標を5~6件に設定することもあるでしょう。
コールセンター全体の業務体制や各オペレーターの能力に合わせて、基準となるCPHを設定することが重要です。適切なCPHの設定は、業務の効率化とオペレーターのパフォーマンス向上を目指す上で欠かせない要素となります。
CPHを改善指標として活用する際の注意点とは?
CPHはコールセンターの業務効率を測るための重要な指標です。ここでは、CPHの改善を進める際に注意すべき点をご紹介します。
CPHは、その他のコールセンターにおけるKPI(Key Performance Indicator)と同様に、高ければ良い、または低ければ良いというものではありません。「目標値に近づける」という発想が重要です。
CPHを上げようとすればするほど、エンドユーザー1人あたりにかける対応時間が減少し、結果として丁寧なサポートが行き届かず、かえって顧客満足度が低下する恐れがあります。一方で、CPHが高いと、オペレーターが電話に早く出て迅速に対応してくれる側面もあるため、顧客満足度が上がる場合もあります。
顧客満足度と効率性のどちらを重視するのか、それとも両立を目指すのか、業種や会社の経営方針によって目標とすべきCPHの数値は大きく変わります。また、コールセンター全体のCPHの目標値も、オペレーターの人数や業種によって異なるため、会社の事情や方針に合わせて理想的な数値を設定するようにしましょう。
CPHを改善するためのポイントとは?
では、CPHはどのように改善していけば良いのでしょうか。仕組みやシステムの整備、教育の観点で、4つのポイントを詳しく見ていきましょう。
トークスクリプトの充実
トークスクリプトとは、顧客対応時に使用する台本のことを指します。特に新人や不得意なオペレーターにとって、トークスクリプトがあるだけでも生産性を大幅に向上させることができます。
トークスクリプトは、できる限りベテランオペレーターの対応内容をもとに整備することが理想的です。対応内容ごとにトークスクリプトを分けることで、オペレーターが具体的な状況に応じて適切に対応できるようになります。
ただ、トークスクリプトを過剰に作りこみすぎることには注意が必要です。過度に詳細な台本は、オペレーターの成長を妨げる可能性があります。柔軟な対応力や問題解決能力の育成には、ある程度の自由度も必要です。そのため、バランスを取りながらトークスクリプトを活用することが重要となるでしょう。
効果的なトークスクリプトの活用により、コールセンター全体のパフォーマンスを向上させ、顧客満足度の向上につなげることができます。
FAQの充実
CPHの改善には、オペレーターが参照できるFAQ(よくある質問とその回答)の充実が非常に効果的です。
FAQを充実させることで、オペレーターはさまざまな場面で迅速に対応できるようになります。これにより、CPHの改善が見込めます。
独自のFAQを作成するには、実際の応対履歴やオペレーターへの聞き込みが有効です。過去の問い合わせ内容を分析し、頻繁に寄せられる質問や問題点を特定します。また、オペレーターから直接ヒアリングを行い、現場で感じる課題やよくある質問を収集することで、細かい内容まで網羅したFAQを作成することが可能です。
オペレーターの教育・研修
オペレーターの問い合わせ対応能力が不十分な場合、他のオペレーターと比較してCPHの低下傾向が見られることがあります。これにより、コールセンター全体のパフォーマンスにも悪影響が及びます。
オペレーターの電話対応がスムーズにいかない場合や、システム操作に慣れていない場合は、ロールプレイング研修やシステム操作の研修、タイピング研修など、改善のための研修が必要です。他にも、AHT(平均処理時間)の長いオペレーターと短いオペレーターを比較・分析し、改善に向けた研修を実施する方法や、長時間化する案件を特定してセンター全体でAHT(平均処理時間)を短縮する研修を行うことも効果的です。
オペレーターの能力が低いと判断される個人だけに研修を行うのではなく、コールセンターに所属する全オペレーターを対象に研修を行うことが重要です。全員で研修を行うことで、コールセンター全体の能力水準を上げ、全体のパフォーマンス向上を図ることができます。これにより、全員が一定水準以上のスキルを持つことになり、個々のオペレーターに頼ることなく、安定したサービス提供が可能となります。
システムや環境の改善
オペレーター個人の能力に問題がなくても、後処理のシステムが煩雑であると、CPHは低下する可能性があります。そのため、オペレーターの業務負担を軽減し、生産性を向上させるためのシステム整備が重要となります。
システム整備は、オペレーターの業務を効率化し、生産性の向上に大きく寄与します。以下は、その具体的なシステム例です。
1. CTIによる顧客の登録情報の事前把握
CTI(Computer Telephony Integration:コンピューターと電話・FAXを統合したシステム)を導入することで、オペレーターが電話応対の前に顧客の登録情報を把握できるようになります。応対時間の短縮や、より的確な対応が可能になります。
2. 音声認識/テキスト化ツールによる後処理作業の削減
音声テキスト化ツールを活用して通話内容をテキスト化し、その後、生成AIが通話履歴の作成を行うことで、後処理作業の負担を大幅に軽減できます。その結果、オペレーターはお客さま応対に専念できる時間が増え、生産性の向上に繋がります。
こうしたシステムを導入することで、オペレーターの業務負担が軽減され、より多くの問い合わせに迅速に対応できるようになります。結果として、CPHが向上し、コールセンター全体の業務効率が大幅に改善されます。
まとめ
CPHを改善することで、1時間あたりに対応できる件数が増え、コールセンター(コンタクトセンター)の生産性が向上します。
ただ、応答品質を維持しながらCPHを改善するのは、そう簡単ではありません。CPHのデータとその内容を分析し、他の指標と組み合わせて総合的に判断していきましょう。
また、CPHの改善にあたって、コールセンター(コンタクトセンター)向けのシステムを導入することも有効な手段です。
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