ビジュアルIVRとは?コールセンターに導入するメリットや活用事例・選び方、自動音声応答(IVR)との違いを紹介
投稿日:2020年12月14日 | 更新日:2025年6月2日

顧客の利便性向上や業務効率化を目的に、電話だけでなくチャットボットや有人チャット、ボイスボットなど問い合わせチャネルの拡充を図るコールセンター(コンタクトセンター)が増えています。
一方で、「Webからの問い合わせ導線がわかりづらく、答えが見つからないので解決をあきらめる」「ようやく探し出した電話番号にかけてもつながらない」といった顧客からの不満の声や、「Web問い合わせの導線をわかりやすくしたくても担当部門が別で簡単に変更できない」といった課題を抱えている企業も少なくないのではないでしょうか。こうした課題の解決に最適な導線改善のツールがビジュアルIVRです。
当記事では、ビジュアルIVRの概要を始め、コールセンターに導入するメリットとデメリット、ビジュアルIVRの活用事例から選び方まで詳しく紹介します。
<目次>
- ビジュアルIVRとは?自動音声応答システム(IVR)との違い
- ビジュアルIVRが必要とされる背景
- コールセンターにビジュアルIVRを導入するメリット
- コールセンターにビジュアルIVRを導入するデメリット
- ビジュアルIVRの活用事例
- ビジュアルIVRの選び方
ビジュアルIVRとは?自動音声応答システム(IVR)との違い
ビジュアルIVRとは、Webブラウザやアプリ上にIVR(Interactive Voice Response:自動音声応答システム)メニューを可視化し、問い合わせ内容に応じてチャットボットやFAQなど最適な窓口へ誘導できるシステムです。
一方、自動音声応答システム(IVR)は、顧客からの問い合わせに対しあらかじめ録音した音声によって自動的に応対するシステムです。「〇〇の方は1番、△△の方は2番、XXの方は3番・・・を押してください」といった音声ガイダンスに沿って、ボタンをプッシュ操作することで用件に応じた窓口へ取り次がれます。コールセンターで導入されているため、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
「長いガイダンスで待たされる」「何度もプッシュ操作が必要」「操作を誤った場合は一から全て聞き直す必要がある」といった、IVRへの顧客の不満を解消する手段として登場したのがビジュアルIVRです。
ビジュアルIVRは、FAQやチャットボットなどで自己解決を促すことで、繁忙期や急な障害などの呼量急増の変化に対応できる柔軟な案内やチャネル誘導が可能になり、顧客の満足度を高めると同時にコールセンターの呼量を減らすことができます。

ビジュアルIVRが必要とされる背景
コールセンターでは、労働環境の変化による業務効率化やCX(顧客体験)の重要性の高まりから、ビジュアルIVRの活用が注目されています。
人材不足による業務効率化の促進
日本全体で労働人口の減少による人材不足が叫ばれる中、コールセンター業界では、半数以上の企業がオペレーターの採用に課題を抱えており、人材不足が深刻な課題となっています。
「今後実施予定の採用難に向けた施策」について聞いた調査結果では、「WEBへの誘導、チャットボット導入など自己解決促進による呼量削減」(43.4%)や「生産性向上」(37.4%)が上位を占め、人材不足を背景に効率化への意識が高まっていることが伺えます。

「自己解決促進による呼量削減」「生産性向上」は、コールセンターの運用体制や問い合わせ内容に合わせた窓口への誘導で改善することが可能です。電話からチャットへのシフト、整備したFAQへの誘導、緊急度の低い問い合わせの自動対応など、問い合わせに至る導線をビジュアルIVRを活用して整理することで、呼量削減を実現し生産性向上につながります。
CX向上に欠かせない問い合わせしやすい環境
CX向上は企業の経営課題として重視されており、顧客接点を持つコールセンターは、企業のCX向上を担う重要な役割として見直されています。
コンタクトセンターが重視すべきCX向上は対応中だけではありません。「お客さま窓口への問い合わせの際に不満に思ったこと」を聞いた調査結果では、「担当者につながらない・待たされる」(40.9%)、「問い合わせ方法・問い合わせ先がわかりにくい」(31.8%)が上位を占めており、問い合わせの前段階でCXを損ねているケースも少なくないことが伺えます。

ビジュアルIVRを活用することで、待たずにつながるチャットへの誘導や、障害発生など急増する問い合わせへの柔軟な案内、緊急度に応じた電話やチャット、FAQへの適切な振り分けによって、問い合わせをする負担を軽減することができます。これにより、問い合わせの前段階でのCX向上が期待できます。
コールセンターにビジュアルIVRを導入するメリット
コールセンターにビジュアルIVRを導入するメリットは、主に以下の三つです。
・機会損失の防止
・オペレーターの負担軽減と業務効率化
・顧客の利便性・満足度の向上
機会損失の防止
電話以外にチャットボットやFAQなど複数の窓口を用意していても、すぐに解決できない場合や最適な窓口がわかりにくい場合などは、問い合わせが電話に集中し呼量が減らず、オペレーターにつながる前に電話が切断される放棄呼が発生し、企業にとっては機会損失になりかねません。
ビジュアルIVRを活用することで、内容に応じて適切な窓口へ誘導できるため、顧客は課題を自分で解決できオペレーターの対応を待つ必要がありません。顧客との接点を創出し、機会損失を防ぐことに役立ちます。
オペレーターの負担軽減と業務効率化
ビジュアルIVRを活用し自己解決率が向上することで入電数が削減され、オペレーターの電話対応の負担軽減を図れます。適切な窓口に誘導することで、窓口違いによる取り次ぎなどの対応やクレーム対応の必要がなくなり、オペレーターの業務工数の削減や精神的な負荷の軽減にも効果的です。
また、自己解決率の向上により、オペレーターは複雑な問い合わせへの対応や、重要な業務に注力できるようになり、業務リソースの最適化にもつながります。
顧客の利便性・満足度の向上
問い合わせ窓口がWebサイトの奥の階層に隠されていたり、複数の窓口があっても適切な窓口がわからずたらいまわしにされたり、といった課題の解決にもビジュアルIVRは有効です。ビジュアルIVRで複雑な問い合わせ窓口への導線を一元化することで、顧客は問い合わせ内容に応じて最適な窓口にたどりつくことができるようになります。適切な問い合わせ窓口に誘導されることで、解決までのスピードが速まり、顧客の利便性・満足度の向上を期待できます。
また、ビジュアルIVRは、従来の音声IVRのように長い音声ガイダンスで一方的に待たされることがなく、時間や場所を問わず必要なタイミングで、自分のペースでメニューを操作できるため、顧客のストレスの低減にも効果的です。

コールセンターにビジュアルIVRを導入するデメリット
ビジュアルIVRには業務効率化や顧客満足度の向上といった多くのメリットがある一方、以下のようなデメリットも存在します。
・回答までの所要時間が長い
・顧客が操作する手間が増える
回答までの所要時間が長い
コールセンターに電話をかけて音声ガイダンスに従って入力し、SMSでビジュアルIVRのURLを受け取り、URLを開いて表示されたWebサイトのビジュアルIVRのメニューを選択し、適切な回答へたどり着く、という流れが一般的ですが、回答までの時間が長かったり、電話からテキストへ誘導されることへの不満を感じる顧客も多いのではないでしょうか。
対策として、電話をかける前にビジュアルIVRにたどり着くような問い合わせ導線を作ることが考えられます。Webサイト上で、「電話はこちら」の表示をなくし、「お問合せこちら」のボタンを設置。クリックすると、ビジュアルIVRが立ち上がるイメージです。ビジュアルIVRを設計する際には、問い合わせが多い内容から順番に表示するなど、顧客が迷わない工夫をします。
顧客が操作する手間が増える
ビジュアルIVRは画面上のメニューを顧客が選択し、その内容に応じてチャットボットやFAQなどへ誘導するため、電話や音声IVRと比べて顧客が操作する手間が多くなります。
操作が手間だと感じないためには、簡単にわかりやすく操作できるメニュー表示や操作方法の解説、視覚的に伝わりやすいデザイン設計が欠かせません。顧客の使いやすさを考えた設計をすることで、顧客の手間を軽減し操作ミスや途中離脱を減らすことができます。
ビジュアルIVRの活用事例
ビジュアルIVRを効果的に活用している事例を紹介します。
明治安田生命保険相互会社|ビジュアルIVRで最適な窓口へ、呼量削減・応対時間短縮
明治安田生命保険相互会社では、音声のIVRを導入していましたが、音声案内を聞かずにプッシュボタンを押す人や、自分の用件がどのIVRに該当するかがわからずに「その他」を選択する人もおり、オペレーターをうまく配置できないことや、お客さまの用件を事前に把握できない課題を抱えていました。また、コールリーズン(問い合わせ用件)違いの入電により、オペレーターのかけ直し依頼や転送作業などが頻出していました。
FAQやチャットボット、有人チャット、お手続きフォームなどデジタルチャネルの拡充・改善を行う一方、2023年10月より「Visual IVR(ビジュアルIVR)」を導入し、お客さまが「やりたいこと・困りごと」を選択し、問い合わせ内容に応じて最適な窓口にたどり着ける導線設計を行っています。
これにより、「コールリーズン違いの入電が減少し、呼量削減・転送数削減につながった」「応対前にコールリーズンを把握できるようになり、一通話あたり約35秒の応対時間の短縮、オペレーターの負荷軽減を実現」「FAQやチャットボット、有人チャットなどデジタルチャネルの利用増加に貢献」といった効果が出ています。

SOMPOひまわり生命|Visual IVR導入で「お客さまにとって本当に使いやすい問い合わせ導線」の構築を目指す
SOMPOひまわり生命保険株式会社は、設立40周年を迎える生命保険会社で保有契約件数は400万件を超えます(2022年4月時点)。テレワークによる働き方の変化などから事務体制の見直しが必要となり、「いかに紙をなくすか」が検討ポイントになりました。保険会社ではさまざまな手続きが発生し、手続きは書類のほかマイページでも行えますが、書類を請求する方が多い状況でした。そのため「お客さまがマイページから手続きをしやすくなるような、Webでの問い合わせ案内を作るにはどうすればよいか」が課題でした。
契約者にとって分かりやすい問い合わせ導線の構築を目的に「Visual IVR」(ビジュアルIVR)を導入し、契約者への問い合わせ案内に活用しています。ビジュアルIVR経由での問い合わせは、「電話でのお手続き」ボタンを選択する方は18%、「インターネットでのお手続き」を選択される方は45%と、「インターネットでのお手続き」を選択される方が圧倒的に多く、入電数削減へも貢献しています。

ビジュアルIVRの選び方
ビジュアルIVRは、製品によって機能や特徴が異なります。最後に、ビジュアルIVRを導入する際の選び方のポイントを紹介します。
設計や編集、公開作業のしやすさ
ビジュアルIVRを効果的に活用するためには、顧客が使いやすい画面設計や適切でわかりやすいメニュー表示を始め、状況に応じた内容を変更するなど臨機応変な更新が欠かせません。
従来のIVRは、内容の一部を変更する際もベンダーへの依頼が必要ですぐ変えられないといった課題もありました。ビジュアルIVRは、基本的には導入企業内で設計から編集まで行うことが多い製品です。顧客目線に立った使いやすい画面の設計や編集が簡単に行えるか、ページのデザインをカスタマイズができるか、公開までの画面確認や修正がスムーズに行えるか、といった点を確認します。
ビジュアルIVRの利用方法でも顧客にとっての使いやすさに差が生まれます。ビジュアルIVRの利用方法は主に以下の二つです。
①電話→SMSでURLを送信またはアプリの案内→URLを開いてWebサイトを表示またはアプリを起動→ビジュアルIVRが表示される
②Webサイト上の「問い合わせ電話番号」をビジュアルIVRの起動ボタンに変更し、クリックするとビジュアルIVRが表示される
電話をかけたのにテキストへ誘導されることを手間と思う顧客も少なくないため、Webサイト上に簡単にビジュアルIVRの起動ボタンを設置できるかどうかも、顧客にとって使いやすい設計を行う上で考慮したい点です。
また、既存のWebページの構成を変えることなく、ポップアップや小窓形式でビジュアルIVRを表示できる製品だと、Web担当部門などとの社内調整も不要で、コールセンターの現場で設計や修正が行うことができます。

外部システムとの連携
ビジュアルIVRは、問い合わせ内容に応じて、FAQ、チャットボット、有人チャット、ボイスボット、有人電話、CRMデータベースなどの誘導先システムとの連携が必要です。電話窓口へ誘導する際に、CTIシステム(Computer Telephony Integration:コンピュータと電話機能を統合するシステム)と連携し、顧客の会員情報などをオペレーターに連携できることで、着信後のオペレーションを効率化する機能を搭載した製品もあります。このように、外部システムとの連携のしやすさも、導入製品を選ぶ際に抑えておきたいポイントです。
分析や統計機能の有無とサポート体制
ビジュアルIVRを効果的に活用するためには、導入後の運用改善が欠かせません。アクセス集計・流入元アクセス・ユーザー行動分析の統計機能があると、どのシナリオにいつどのくらいアクセスがあったか、どのページからアクセスされたか、メニューの分岐上でどのシナリオへどのくらいアクセスがあったか、といったことがわかります。利用状況の分析に基づいてシナリオを改善することで、ビジュアルIVRの効果を最大限高めることができます。
最初の設計も含め、運用開始後、利用状況からどのように改善が必要かを考える際に、運用サポートが手厚いかどうかサポート体制についても確認すると良いでしょう。


まとめ
コールセンターでは、人材不足やCXの重要性の高まりを背景に、業務効率化の促進やCX向上を実現する手段の一つとしてビジュアルIVRの活用が注目されています。
ビジュアルIVRは、適切な窓口への誘導で自己解決率を促進することで呼量削減や業務効率化、CXや顧客満足度の向上に効果的です。一方、回答までの所要時間の長さや顧客の操作する手間といったデメリットもあるため、適切な設計や運用改善が欠かせません。
当記事では、ビジュアルIVRの概要からメリット・デメリット、活用事例や導入時のポイントについて詳しく紹介しました。ビジュアルIVRを導入する際の参考にしていただけましたら幸いです。
当記事を執筆するモビルスでは、コールセンター(コンタクトセンター)の顧客体験(CX)向上を通じて企業の競争力を高め、収益を最大化するための総合的な支援を提供しております。AIボイスボットやAIチャットボット、自己解決を促すビジュアルIVRなど、顧客満足度につながる幅広いニーズに対応できるソリューションを開発提供しています。ぜひご相談ください。
ビジュアルIVR「Visual IVR」
モビルスの、Visual IVR(ビジュアルIVR)は、電話、Webチャット、LINE、チャットボット、ボイスボット(電話自動応答)など、複数ある問い合わせチャネルを一覧で表示、お客さまの目的や受電状況に応じて最適な窓口へ誘導できるシステムです。
下記より、ダウンロードいただけます。ぜひご覧ください。
https://mobilus.co.jp/lab/report/visual-ivr/
顧客体験を最大化するCX戦略支援 CX Consulting
モビルスでは、クライアントの顧客体験を最大化するため、カスタマージャーニーマップ作成や定量的調査を通じたCX戦略立案・策定を支援しています。解決するお悩みや、CXコンサルティングの流れ等の詳細は、以下からご覧ください。

CX向上に導くモビルスのカスタマーサクセスメニュー
モビルスでは、プロアクティブなサポートで企業を成功に導くため、CXを向上させる伴走型のサポート体制(カスタマーサクセスメニュー)を整えており、導入前から導入後までの全フェーズを支援するサービス提供をしています。
下記の記事で詳しく紹介しております。ぜひご覧ください。