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日米で実施したVoC利活用実態調査で判明!「成果を出す会社」がこっそりやっている共通点

投稿日:2026年5月29日 | 更新日:2026年5月29日

執筆者
株式会社ラーニングイット 執行役員 CMO 井上 雅博


本コラムでは、コンタクトセンターに集まる「顧客の声(VoC)」を、単なる苦情処理の材料から企業の未来を創る「経営資源」へと昇華させる道筋を、前編と後編の全2回で紐解きます。さまざまな企業の顧客接点を伴走支援する最前線で培った知見と、最新のVoC利活用実態調査から明らかになった「ハイパフォーマンス企業」の共通項をお届けできればと思います。

前編ではVoC活動において日本企業が直面する「目詰まり」を紐解いてきましたが、後編となる本記事では国内で実施した「VoC利活用実態調査2026」から、業績や満足度で高い成果を出す「ハイパフォーマンス企業」とそれ以外の企業の決定的な差を見ていくことで「目詰まり」からどうやって抜け出すのか、のヒントを紐解いていきたいと思います。

1. 国内ハイパフォーマンス企業が挑む「生成AI」との共創と役割分担

日本のコンタクトセンターにおいて、今、最もエキサイティングな変化が起きているのは「テクノロジーとの向き合い方」だな思いますし、みなさんの興味関心も高いと思いますので、まずはテクノロジーの側面から入りたいと思います。私たちが実施した国内の実態調査を見ると、「顧客の声(VoC)」活動で成果を実感している「ハイパフォーマンス(HP)企業」とそれ以外の企業では、生成AIの活用姿勢に顕著な差が出ています。

生成AIの導入状況について、大きく「収集、分析、改善活動」の3つのフェーズにおける導入状況を調査しました。
注目すべきは、分析フェーズにおける導入率です。その他企業の32%に対し、ハイパフォーマンス企業は60%が生成AIを導入していることが分かりました。約2倍ですね。しかし、ここで行われているのは単なる「自動化」ではありません。具体的な活用シーンを調査するとハイパフォーマンス企業では、問い合わせ内容から「なぜお客さまは連絡してきたのか」のコンタクトリーズンやトピック分類、感情の自動分析など、これまで「人間には難しかった・根性でこなしてきた領域」をAIに委ねることを積極的に実施していることが分かりました。「その先の改善アクションを考える時間の捻出」もしくは「タイムリーに声を繋いでいく仕組み」を積極的に作り出す、極めて高度なチャレンジを行っていることがうかがえます。

実際にハイパフォーマンス企業の中から複数の企業に直接インタビューも実施しましたが、AIに作業を任せ、人間は「この声が経営にどんなインパクトを与えるか」「どの部門と連携すれば顧客の不満を根本から断てるか」を考えるクリエイティブな仕事にシフトする。この、人とテクノロジーの役割分担を戦略的に再定義し、新しい価値を創造しようとする「姿勢」こそが、パフォーマンスを向上させる真の強みだと感じています。テクノロジーを単なる「効率化」で終わらせず、組織変革の「エンジン」として使い倒そうとする意志が、数字の差となって表れているのではないでしょうか。

2. 「痛み」を「金額」に翻訳し、組織を動かす技術

少し、別の確度から見ていきましょう。日本企業がVoC活用で苦労し、挫折する大きな要因の一つは、「他部門(製品開発やマーケティング)が動いてくれない」という壁にぶつかった時です。どれほど現場が「お客さまが困っています!」と熱弁しても、他部門には他部門の優先順位があり、自部門への影響も把握できないためになかなか腰を上げてくれません。

ここで、米国の最新調査(CCMC社((Customer Care Measurement & Consulting, LLC)))の知見が大きなヒントになるのでお伝えします。米国でも日本と同様にVoC活動に関する調査を実施しているのですが、最新調査(2026年1月実施)で見えてきたリーダー企業では、改善を促す際に感情論に頼ることはないことが明らかでした。彼らが成功の鍵としているのは、「特定の問題による財務的なインパクト(Financial impact)」を定量化することです。

「この製品の使いにくさによって、年間でどれだけの収益が失われているのか(Quantifying the pain)」。これを「金額」という共通言語で提示することで、VoCは現場の「切実なお願い」から、経営層が無視できない「投資判断の材料」へと格上げされます。「お客さまが悲しんでいる」という報告を、「この問題を放置すると来期にこれだけの損失が出る」というビジネスケース(経営課題)に翻訳する力。日本のハイパフォーマンス企業においても、AIで分析のスピードを上げつつ、そのアウトプットを「ビジネスの言葉」に磨き上げて他部門の会議に持ち込む、という「翻訳術」が成果に直結しているメーカー企業がいらっしゃいました。これはまさに「ITテクノロジーが実現すべき新たな価値」そのものだと感じます。

3. 「レポートして終わり」にしない。運用の追跡と泥臭いフォロー

「共有の壁」と「責任の壁」を乗り越えていくという観点から見えてくる決定的な違いは、データを届けた後の「執念」です。多くの企業が「レポートを送ったから、あとは他部門の責任だ」「ここから先は関与すべきではない」と考えがちですが、米国のリーダー企業は決してそこで足を止めていないことも明らかになりました。彼らは、「現場のマネージャーが実際にVoCをどう活用しているか」を継続的に追跡し、運用実態を確認しています。具体的には「月に5人のマネージャーにVoCの活用の状況を直接問う」といった、徹底した“現場”確認を行っているのです。日本のVoC活動の全体感を一言で言葉を選ばずに言うと、「やっている感」だと思います。実際に、効果的に活動していると答えた企業が7割近くだったのに対して、VoCからの改善活動をしっかり結果に繋げている(課題を3割以上対応・解決している)割合は2割程度と、認識と実態に潜在的なギャップがあることが分かりました。先ほどの米国事例のような「改善を追いかける活動」はまだあまり見かけないですよね。

とはいえ、国内でも成果を出しているハイパフォーマンス企業は、他部門との「泥臭い連携」を厭いません。AIという最先端の武器を手にしながら、その分析結果を持って担当者の席に足を運び、改善が定着するまで伴走する。「AIで分析をショートカットした分、浮いた時間を使って、人間が徹底的に汗をかく」という逆説的なアプローチが、実は組織を動かす最も確実な道なのです。この「デジタルのスピード」と「アナログの徹底したフォローアップ」の掛け合わせこそが、VoCを社内の形骸化した数字にさせず、実効性のある施策へと変えていく鍵となります。

4. おわりに:大切なのは「声を聴いた後」の動き方

日米の調査を比較して見えてくるのは、「分析の高度化はあくまでスタート地点であり、目的は組織を動かすアクション(行動)にある」という、極めてシンプルかつ本質的な事実です。

日本のハイパフォーマンス企業は、生成AIという新しいテクノロジーに果敢にチャレンジすることで、15年来の課題であった「分析の停滞」を打破し、そこで得た時間を「他部門との交渉」や「ビジネスケースの構築」といった、人間にしかできない泥臭くもクリエイティブな領域に注ぎ込んでいます。(まだ段階としては“チャレンジ”ですが)

「どんなツールが自社には合っているのか…」「データは揃った。ツールも入れた。次は、どう動くか?」「具体的にどのようなデータ設計を行えば、他部門の担当者が思わず動き出したくなるような、刺さるレポートが作れるのか」そんな具体的なポイントについてもこれからVoCエコシステムのメンバーで深堀りしていければと思います。

最後に前編(第1回)と後編(第2回)を合わせて簡単にまとめると、今私たちのVoC活動にある「目詰まり」を解消していくためには、VoC活動の目的と対象範囲を明確にし、投資対効果やリスクから優先度を定量評価し、各部門に展開しつつ改善を追う、この仕組みを構築することです。その中で、生成AIやAIエージェントなどの最新技術をどこでどう活用するか、を見極めて運用に組み込んでいくことがあらためて重要だと考えます。実は、CX3.0®が持つマネジメントシステムは、VoC活動を構造化するにはまさにぴったりなモデルだったりもします。このあたりは、また別の機会でお話できればと思います。

皆さまのVoC活動がより良きものになりますように。

※VoCエコシステムのご紹介

企業が組織や部署を超えたVoCの利活用によるCX向上を実現していくために、業種・業態を超えた企業が議論し、標準モデルの構築と運用で新たな価値を創造していく取組みです。不定期でディスカッション会やセミナーを実施しておりますので、その際は是非ご参加ください。

執筆者プロフィール

株式会社ラーニングイット 執行役員 CMO 井上 雅博

西南学院大学 経済学部 卒業。
2011年より大手BPO企業にて、コンタクトセンター事業の立上げからマネジメント、新規事業開発、デジタルマーケティング、ブランディングを推進。2023年より株式会社ラーニングイットへCMOとして参画。イベント運営や業界調査などの啓蒙・マーケティング活動に並行して通信、インフラ、SaaS、不動産等のCX活動を伴走支援。

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