顧客接点における「ノンボイス化」「自動化」「問い合わせ導線の改善」など、「問い合わせのエフォートレス化」プロジェクトに取り組む株式会社ベネッセコーポレーション、コンタクトセンターやバックオフィスの設計構築や運営などを行うセコムグループの株式会社TMJ、顧客サポート業務のソリューションの開発・提供を行うモビルス株式会社の対談企画、第二弾です。


今回は、ベネッセコーポレーションの「チャット対応の本人確認プロセスの取り組み」について、株式会社ベネッセコーポレーション 校外学習カンパニー メディア開発部 アプリサービス開発課 課長 萱場成樹氏と、チャット対応のオペレーションを担う株式会社TMJから事業統括本部 Benesse事業企画部 第1セクションCX企画G西原由美氏をゲストに迎え、取り組みの具体的な内容や、運用方法、導入後の効果や課題、今後の展開などについて、モビルス株式会社 代表取締役社長 石井 智宏がお話をうかがいました。

前編・後編に分けてお届けします。

後編では、2022年3月に実施した「チャット対応の本人確認プロセスの取り組み」プロジェクトの「フェーズ2.1」について、目的や施策内容、KPI設定や結果、運用の工夫や課題、今後の展開などについてお話頂いています。
(各フェーズ名称は対談実施当時のものとなります)


第二弾<前編>はこちら


対談メンバー

株式会社ベネッセコーポレーション
校外学習カンパニー メディア開発部 アプリサービス開発課長 萱場成樹氏

株式会社TMJ
事業統括本部 Benesse事業企画部 第1セクションCX企画G 西原由美氏

モデレーター
モビルス株式会社 代表取締役社長  石井 智宏
         カスタマーサクセス担当  稲葉 武久
         営業担当  瀧澤 朋未


目次

  • 「お客さまと対話していない時間」の圧縮
  • お客さまの不安や違和感を取り除く
  • 窓口の生産性変化
  • 対応領域を広めても「お客さまにとってスムーズに、違和感なく」
  • 「本当にお客さまのためになるか」と「効率化」の関係
  • 「効率化し、得たリソース」は何に使う?

<フェーズ2.1の施策内容について>

お客さまと対話していない時間」の圧縮

石井

2022年3月1日~3月31日まで実施した「チャット対応の本人確認プロセス」のプロジェクト「フェーズ2.1」では、「フェーズ1」で課題として挙がった「効率化」の改善を目的としています。施策内容の詳細について教えてください。

株式会社ベネッセコーポレーション 萱場氏

萱場氏

まずは既存のAHTの分解を行いました。 「お客さまと会話をしている時間」「その前段階の本人確認をしている時間」「アフターコールワークの時間」という分解をしていき、「本人確認の部分はシステム自動化することで生産性の改善ができるのではないか」という提案をモビルスから頂きました。
本人確認の方法は、「お客さまにお客さま情報を何点かお伺いして確認する方法」と、「進研ゼミがお客さまごとにユニークに発行している会員番号とパスワードを使った本人確認の方法」があります。どちらの確認方法が利便性が高いのかという点を社内で議論しつつ、「お客さまにとって一番入力負荷が少ない方法」という観点から「IDとパスワードを利用した自動認証」として始めました。


KPIの設定とその項目を選んだ意図

客さまの不安や違和感を取り除く

石井

フェーズ2.1の結果がこちらとなっていますが、その際の注目したKPIはありますか?

萱場氏

はい。お客さまが「本人確認をやり切って頂けるのか」と「本人確認手続きの際にご不安や、違和感がないか」という点は、なによりも大事にしていた指標です。

石井

そうすると、「セキュアパス選択率」「手続完了率」あたりがKPIとなりそうですね。解決数も飛躍的に伸びていますが、なにかエピソードがあれば教えてください。


図1  効率改善効果
自動化により複数同時対応を実現。 また電話対応と比較して約27%対応コストを削減。

萱場氏

ちょうど同時期に特定の商品のお問い合わせが多くあり、逆にお客さまにとっては、このときに「Secure Path」があったので、ワンストップで解決できたということもあります。

石井

個人的には、「会員番号とパスワードをつかった本人確認」は絶対に難しいと思っていました。ほかの企業様で同じような取り組みをしたとき、失敗した理由のほとんどがここにあったのですが、なぜベネッセ様の場合は大丈夫だったのでしょうか?

萱場氏

私たち自身も、会員番号とパスワードが必ずしも浸透率が高いとは思っていません。ただ、お子様の教材がデジタル化していく中でご利用いただく機会が増えている、というのはあると思います。

石井

お客さまが自身のID・パスワードに接する機会が多いということですね。たしかにそれはありそうです! もしID・パスワードの浸透率が低くなると、入ってくるお客さまも少なくなってしまうので、意外な結果でした。


<実施効果・課題とその改善方法>

窓口の生産性変化

石井

同時対応件数が1.7まで改善したのは、現場でどのような運用変化があったからなのでしょうか?

西原氏

フェーズ1のときは「お客さま動向や受容度」を慎重に見ていました。今回フェーズ2.1では「窓口の生産性向上」も併せて見ていきました。
3月度は教材の到着、次年度に向けた手続き・問い合わせが多い時期ですので、チャットでも多くのお問い合わせを頂きました。お客さま満足度を維持しながら、セキュリティも担保しつつ、対応ができたのもSecure Pathによる自動認証があったからと考えています

モビルス株式会社 石井

石井

この同時対応数があがることによって、お客さま対応の切り替えも発生するので、AHTはフェーズ1よりは伸びるということですね。

この中で、さきほど萱場様が仰っていたように、本人確認プロセスを自動化した結果、AHTは25%程度下がっていますが、これは狙い通りでしたか?

萱場氏

あらかじめ、フェーズ1のときも現場で細かくAHTの取得をして頂いて「本人確認の時間がこのくらい下がるのではないか?」と考えていました。お客さまにとっても違和感なくきちんとやり切れたというのは皆様にお力添え頂いた成果だと思っています。

石井

これはまさに「全会話時間の本人確認にかかる時間が削減された」ということなのでしょうか?

萱場氏

はい、そう考えています。

石井

なるほど。運用上、本人確認のプロセスが抜けたというのはどのようなインパクトだったのでしょうか?

西原氏

オペレータからは、本人確認が完了した状態で着信することで、お客さまに対して、「個別回答や手続きがスムーズにできる」という点が好評でした。

石井

本人確認部分の自動化という目的をふまえ、CPCはフェーズ1時点で電話とおおよそ同じとなっていましたが、フェーズ2.1ではどう変化しましたか?

萱場氏

AHTは25%下がったものの、規模がまだ小さいことから、電話と比較してCPCが大きく下がったということはございません。今後対応領域を広げて効果を出したいと考えています。

石井

そのような意味だと、現在はまだチャネルや対応領域といった間口を絞っている状態で、規模が拡大するとかかるシステム開発などの開発運用コストが薄まるので、より効果を生むのではないか?ということですね。

萱場氏

はい、その通りです。


<フェーズ2.1の振り返りと今後の取り組み①>

対応領域を広めても「お客さまにとってスムーズに、違和感なく」

石井

さらなる効率化という視点で考えたとき、フェーズ2を振り返って、他に運用面で課題だった点や次のフェーズ2.2にむけてこうあればいいのに、という点は何でしょうか?

西原氏

そうですね、まずフェーズ2.1の導入のタイミングで大変だったのは、ボット領域のあと人に着信しますので、「どのようにボット側のシナリオを作っていけばお客さまにとって分かりやすくなるのか」、またそのながれでオペレータに着信させた時に「お客さまにいかにスムーズに、違和感なくご利用頂けるか」に重きをおいてきました。
今後自動化の領域を広めていくうえでも、やはりそこが肝になるのかなと思っています。

石井

確かに、自動化領域が広まるとボットのプリヒアリングなどへの依存度が上がっていくので、そのシナリオは重要になってきますね。ベネッセさんでは、フェーズ2.1をふまえて利用シーンをより拡張していくということと、もっと効率化を目指すという視点で、フェーズ2.2への期待値はいかがでしょうか。

萱場氏

一番初めにお伝えした通り、小学講座、こどもちゃれんじの一部のお問い合わせにのみSecure Pathを導入しており、まだまだお客さまにはご不便をおかけしているな、というのが率直に思うところです。
ですので、今後対応領域を広げることでお客さまの利便性を図っていくことが、ベネッセとしてなによりも大事に思っているところになります。

当然対応件数が広がれば広がるほど、オペレータの方も習熟してきて、対応効率も上がってくると思いますし、システム効率としても1件あたりの効率化が図れると考えています。
加えてお客さまと応対していない時間の生産性を上げるという意味で、アフターコールワークの領域も含めて今後自動化を考えていくことになるでしょう。

今後の展望として、お客さまの利便性を考えた時に、テクニカルサポートの領域にも広げていきたいと考えています。
現在は進研ゼミもタブレット教材になってきていて、なかなかうまく使えないとか、デジタル上でうまく操作ができない、という方のサポートにも使えると思っています。

石井

ありがとうございます。フェーズ2.1で本人確認部分を自動化し、今度はいよいよ実際の手続きやアフターコールワークの領域ということですね。運用面にフォーカスすると、そもそもチャットのオペレーションをボイスに比べて比重高くやっている企業様はまだまだ少ないです。 ですので、「電話でやっていたことをチャットにしたらどうなるの?」という企業様が多い中、そこに本人確認業務が入ってきて、というのはまだまだイメージが湧きづらい世界なのかもと思っています。

本人確認業務をやっていない時の通常の運用体制と、今回新しくこのように本人確認業務まで行った時の運用体制、それぞれでメンバー構成などに、もし違いがあれば教えてください。

株式会社ベネッセコーポレーション 萱場氏(左)
株式会社TMJ 西原氏(右)

西原氏

個人情報を取り扱うようになったからと言ってといって、オペレータを替えるということは行っていません。

元々LINEチャットを始めた時に、お客さまのお問い合わせ動向やお問い合わせ内容の先読みをしてお返事をしていくことが必要だと考えていました。そのため、開始時から電話で本人確認を行った上でお客さまの課題解決の応対ができるオペレータをチャットに配置をしたという背景がありました。
そのため、今回人員を変更したということはありませんでした。

石井

対応自体の難易度は上がっているのでしょうか? 

西原氏

以前はお客さまに「学年や受講いただいている商品」をお伺いしながら応対を進めていましたが、本人確認ができている状態となったことで、お客さまへお伺いする内容が減ったので難易度は下がっています。一方対応できる範囲が広がったことでの難易度は上がったと思います。

石井

手続きを受けた時の対応は基本は音声(電話)だったのが、テキストで入ってきているのみの違いで、アフターコールワークについて他に違いはなかったのでしょうか?

西原氏

今はどちらも同様の対応をしています。

石井

例えば「聞き違いや変換違い」などについて、音声ではなくテキストであることのメリットは何でしょうか?

西原氏

そうですね、お客さまからは「あとで見返することができる。操作をする際に文字を見ながら対応ができて便利」というお声は多くいただいています。オペレータ側としても、基本的にコピー&ペーストで対応することができるので、よくあるお問い合わせは、テンプレートを作成しておくことで、すばやく変換間違いなく返信ができます。テキストで情報を頂くので、聞き違いによる登録ミスも少なくなることがメリットと感じています。

石井

なるほど。

ただ先ほどフェーズ1の時もそうですが、同時対応の取違いはまだリスクとして残っているのでしょうか?

西原氏

「端末を分けて対応すること」を最初に徹底させているので、そのリスクはほぼない状態で対応ができていると思います。そして端末を分ける運用にも現場は慣れてきていると思います。


<フェーズ2の振り返りと今後の取り組み②>

「本当にお客さまのためになるか」と「効率化」の関係

石井

改めて、フェーズ1とフェーズ2.1を通して、大変だった点や工夫して改善した点を教えてください。

株式会社TMJ 西原氏

西原氏

ベネッセ様からは「お客さまの課題を解決できるか」「いかにお客さまにお手間をかけさせていないか」をきちんと見てほしい、と最初に言われていました。その点を現場でも最初から徹底していたので、お客さまが離脱してしまったシーンの改善については、リリース後毎日のようにやり取りして確認しました。「どうやってお客さまの手間なく解決まで導いていけるのか」この点はベネッセ様にも多くのお時間を頂きました。日々お客さまの問い合わせ内容を全件確認し、モビルス社様にも適宜シナリオを変えていただきました。3社で密に対応を進めていけたので、改善は数値にも出ていると思います。

また構築段階でも様々なお客さまを想定しながら、「どこまでチャットですればいいのか」「本当にお客さまの手間がかからなくなっているか」ということをベネッセのご担当の方とも議論させて頂きました。導入前のテスト段階でも弊社内メンバーに実際に触ってもらい、様々な視点から時間をかけて構築をしていきました。

石井

モビルスのスタッフ側では印象に残っていることはありますか?

モビルス株式会社 稲葉(右) 瀧澤(左)

稲葉

ベネッセ様とTMJ様は効率化ということはもちろん重視されていましたが、それ以上にお客さまの利便性や、満足度をすごく意識されている、と感じています。
例えば、ボットで「Secure Path」が選択されたら、とあるシステム的事由で一度お客さまのアクションを挟まなければならない時がありました。その時に「それはお客さま目線では困る」ということをおっしゃっていて、最終的にはシステム改修をして対応しました。お客さま目線が第一にあって、その上での効率化というステップで考えられていたので、とても勉強になりました。 今後のフェーズに進めてく上でも、そのお客さま目線は絶対外せないなというのが、モビルス側の現場目線で感じている点です。

石井

なるほど。私がすごく印象に残っているのは、やはり情報のセキュリティレベルの高さは、金融機関以上だなと思いました。
たとえば「お客さまの会員番号が個人情報に該当する」ということが私たちにとっては新しい観点でした。会員番号をそのまま有人チャット側には戻せないことになります。「Secure Path」を使って戻すということは想像していなかったプロセスでしたが「そういうケースもあり得る」ということを踏まえて、我々の通常機能としても実装させられました。このことが強く印象に残っています。

瀧澤

今回適用していただいた範囲はLINEでの対応でした。今後WEBでも対応を検討されていると思うのですが、そのときにLINEとWEBで課題点の違いなどはあるのでしょうか?

萱場氏

実は、その点は整理しないといけないポイントで、「お客さまにとってLINEとWEBは何が違うのだろうか」ということを考えていかなければならないと思います。LINEだとスマートフォン利用者がほとんどで、チャットの履歴は残りますが、アプリのインストールや「友だち登録」などのお手間がかかります。WEBはお問い合わせしやすいものの、履歴としては残らない、という点があります。お客さまのコールリーズンやお問い合わせツールに応じて整理しないと、使い勝手が悪いと思います。そのためVisual IVRなどをいれて、その中で最適なチャネルを見せていく、という取り組みを始めています。

今回LINEで「Secure Path」を取り入れて本人確認まで可能な環境ができているので、WEBのほうでも作っていくことは今後考えていかなければいけないと思います。
品質を同基準に上げていく等、チャネルごとに対策を打たなければいけないと考えています。

瀧澤

LINEやアプリは「そこに入ってくださったお客さま」が対象となるので、ターゲットが絞れればメニューも絞りやすいということがありますね。その反面、WEBには誰でも来れてしまうから、ということもありますね。

萱場氏

はい。昨年度冬に進研ゼミ・こどもちゃれんじの入会ページにあるチャットボットをリニューアルしました。
やはりWEBのボットの一番いいところは誰でもアクセスできる点です。ですので、そういった方のご質問やご不安に応え、そして教材に興味を持っていただく、そのような体験を作れたらと思い、ご質問やご不安に応え変えていくことを致しました。

<おわりに>

「効率化し、得たリソース」は何に使う?

石井

もし何も制約がなければ、叶えてみたい野望やモビルスへの要望はありますか?

萱場氏

進研ゼミこどもちゃれんじでお客さまの問い合わせが多いのが「うまく商品を使いきれず、ご退会してしまう」という内容です。

このお客さまのお声に対して「ノンボイス領域を活用できないか」とずっと思っていました。

現在は「お子様は取り組めていますか?」などとベネッセからお電話する機会があるのですが、お客さまとしては電話以外でも、時間を拘束されずに通知が来てくれたらうれしいと思います。進研ゼミのデジタルデバイスの中で学習しているお子さまの状況を捉えて、プロアクティブに電話以外のチャネルでもご提案をできるようにしていきたいという想いがあります。

石井

我々モビルスも製品を色々な会社に提供している中で、明らかに使えていないなというシグナルが上がってくることがあります。そういうときにサポートをしないでいると、ご利用を止められてしまいますので、自分達からどれだけアプローチができるか、にはすごく可能性を感じています。

西原氏

ベネッセ様はもともと多くの問い合わせ・処理を電話で対応をされていました。現在電話以外の領域への問い合わせも増えてきています。しかし「本当に電話じゃないとできないことなのか」は考えていきたいと思います。

石井

今回の取り組みで「ノンボイスでチャットできることを広める」という側面に加え、現場の負荷は下がって余裕やできる稼働が増えた時に、「余裕を使ってどんなことができる」と思いますか?

西原氏

さきほど萱場様のお話にあったように「お客さまが教材の活用に困ったり退会を決められる前にどうやってこちらからアプローチしていくことができるか」を考えていかれると思いますので、チャットでできることを広げていくことで、余裕が出た部分を教材の活用や新しい施策など、人ならではのサービス提供に使えればと思います。

石井

この施策の最初のモチベーションに、春の繁忙期をどう平準化してサービスリリースするかということがあったと思います。それをこの施策で担保しつつ、加えて平準時においても追加稼働をプラスのサービスのほうにもっていくということですね。

素晴らしいと思います。ぜひ、これからもそのために弊社でも続けてサポートができればと思いました。

萱場様、西原様、本日は誠にありがとうございました。