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カスタマーサクセスとは「顧客の成功」という意味です。よく似た言葉のカスタマーサポートでの「顧客の支援」という意味と違う点として、顧客からの問い合わせに受け身ではなく先回りをしてアプローチをし、積極的に顧客を成功体験へ導いていくというポイントがあります。

では「顧客の成功」とは、何だと思いますか?
この記事を読んでいらっしゃる方にも関係者が多そうな『企業のコンタクトセンター部門における成功』を例にとってみると、

(例)
▶ 解約率の低下・顧客満足度の向上・アップセル・クロスセルでの売上の向上など『顧客の反応に関する成功』
▶ 同時対応数の向上、AHT(平均処理時間)の削減、平均対応率の向上など『顧客サポートの効率に関する成功』
などを意味することも多いかもしれません。ただ、企業ごとにクライアントや提供価値は異なるため「顧客の成功」の理想像は様々だと思います。

(※ モビルスは企業のコンタクトセンター部門をクライアントに活動をする事が多いので、上記ような事を顧客と一緒に実現に向けて活動しています)

前回記事「プロアクティブサポート」 でも触れた通り、最近では商品やサービスの「買い切り型」ではなく「サブスクリプション型」のビジネスが主流になるに伴いLTV(顧客生涯価値)最大化のため「カスタマーサクセス」の考え方が企業に求められることが増えてきました。

今回の記事ではカスタマーサクセスに求められる事や、カスタマーサポートとの細かな違い、カスタマーサクセスの各種KPI、顧客の成功に向けて具体的に実施することなど考え方について整理をしてみたいと思います。

カスタマーサクセス担当部門のミッションは?

カスタマーサクセスの目的は「顧客の成功」です。そのために、自社の顧客課題を把握し、課題解決のための提案と、その実現を行っていきます。例えば、顧客状況の初期診断、診断に基づくソリューションの活用方法やKPIの設計、ソリューションを実現する手段であるサービス利用状況や効果分析、運用改善に向けたKPI定期レポーティング、仮説検証や追加提案など、目的のために顧客とのリレーションを強化して、積極的かつ継続的に接点を持ちながらプロジェクトを進めていくことが求められるでしょう。時には顧客からの要望を吸い取って、商品やサービスの改善を開発部門にフィードバックして実装を狙ったりもします。カスタマーサクセスとカスタマーサポートとの違いを表にすると以下のようになります。

カスタマーサポートもカスタマーサクセスと同じく既存顧客を解決に導くという点では同じなのですが、少しだけ役割や目的が異なります。顧客からのお問い合わせに対応し、問題の解決方法を伝えて不満やクレームを取り除く役割がメインとなるため、カスタマーサポートは問い合わせの対応回数や対応時間などが数値目標となることが多い傾向があります。お問い合わせ発生がコミュニケーションのトリガーとなるため、カスタマーサクセスよりも受動的な対応が多くなるのも特徴と言えるでしょう。

ちなみに少しだけ話はそれますが、上記の説明ではカスタマーサクセスにおける伴走度合を考える際によく触れられる「タッチモデル」のうち、比較的に『ハイタッチ』『ロータッチ』の領域を軸に整理しています。顧客数や顧客への伴走度合次第で実施する内容は変わってきます。各フェーズでの実施内容は後半でも少し触れますが、「タッチモデル」を図で表すと以下のようになり、事業上で重要な顧客や複雑なサービス提供形式ほどハイタッチ傾向になるでしょう。

カスタマーサクセス担当部門にとっての指標(KPI)は?

自社の製品やサービスの解約(チャーン)の数や率を指標とした活動が基本です。

  • チャーン数 = 1月など一定期間内での解約数
  • チャーン率 = 1月など一定期間内での解約数 ÷ 一定期間内での全契約顧客数

チャーン数やチャーン率は顧客数についての指標ですが、会社によっては顧客1件あたりの売上が契約サービス種類や従量課金ごとにバラバラになることもあると思います。このため顧客数ではなく、売上でチャーン率を捉えた「レベニューチャーン」の考え方を指標とすることもあります。

  • レベニューチャーン = (一定期間でのサービス単価 × 解約数) ÷ 一定期間内での合計売上

あるいは、自社の製品やサービスの「おすすめ度」も指標として設定されることがあります。自社の顧客が「導入した会社/商品/サービスをどのくらい他者に推奨したいか」を数値化したものが NPS(Net Promoter Score=顧客推奨度)と呼ばれるもので、この算出方法はある程度決まっています。

  • NPS(顧客推奨度)= 他者への推奨度を0から10の11段階で評価してもらったうち「批判者(0〜6)」「中立者(7、8)」「推奨者(9、10)」の3つに分類して 回答者全体の中の「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた数値

顧客が成功を実感できない場合、あるいは他の選択肢でより成功できると思った場合は、解約を選択することになるため、チャーン数(率)やレベニューチャーンが上がらないようにカスタマーサクセス担当部門は上で挙げたような提案活動を進めていかなければなりません。NPSは上の定義だとマイナスの数値になることもありますが、プラスの数値になるように提案活動のみでなく製品やサービスの改善も必要になってきます。

上で書いた指標(KPI)の行きつく先としては当たり前かもしれませんが、LTV(=顧客生涯価値)自体がカスタマーサクセスの最終的指標となると言えます。顧客が契約開始をした後、サービス自体の必要がなくなったり競合へのリプレイスしたりといった理由で契約終了に至るまで、自社にもたらす契約料金の総額がLTV(=顧客生涯価値)となります。

  • LTV= 顧客の平均単価×平均購入回数、 (あるいは、 一定期間の売上額×収益率×継続期間 など)

マーケティングにおいては『新規顧客獲得にかかるコストが既存顧客維持のコストの約4-5倍はかかる』とも言われており、現在では自社の競合へのサービスの載せ替えも簡単に行えるので、既存顧客のロイヤリティ(愛着)を高めて、チャーンを抑止し、LTVを向上させることが、多くの企業のカスタマーサクセスには求めれているのです。

カスタマーサクセス部門は具体的には何を行っていけばいいのか?

まず製品やサービスの導入が決まったら、顧客側で導入後の運用が定着する状態に導くためオンボーディングレクチャーを行います。運用定着のためには、サービスの基本的な機能や使い方、サービス自体の価値がある程度のレベルまで理解されている必要があります。そのために、マニュアルや機能一覧、あるいは他の導入企業で成功したパターンを「型化」し、新規導入先にレクチャーがしやすく棚卸しておく必要があるでしょう。また、個社ごとに業界や商流、あるいは優先課題の違いによって使い方が異なる場合もあるはずなので、顧客の置かれた状況の「初期診断」を行ってレクチャーの内容自体も「カスタマイズ」する必要があるかもしれません。(※ 初期診断は先の営業フェーズである程度行われている場合もあります)

オンボーディングが完了し運用が定着した顧客は、その後も安定して継続利用してくれる可能性が高く、解約リスクが低い状態になるため、スムーズに実施していくことが大切です。長期間オンボーディングが完了していない顧客は、製品やサービスを上手く使いこなせず効果を実現しづらい状態のため、当然チャーン(解約)の可能性は高まります。

また、オンボーディングの前後で顧客側が目的の実現を測るために一緒に「最適な指標(KPI)を設定する」ことも重要です。指標の設定が間違っていると、どんなに頑張っても目的の実現には至らないため、顧客課題や現場の運用に即して「最適な指標を設定する」必要があります。そして指標は一度決めたらOKではなく、製品やサービスの活用によって指標改善ができているかどうか、改善のために何をしたら成功したか、逆に改善を阻害しているのは何か、などを月次ミーティングなどで定期的に数値結果と仮説を元に顧客と議論&アクション化していきましょう。

ここまでをまとめると以下の図のようになります。

(※ 例えば、上で例を挙げたモビルスのクライアントである「企業のコンタクトセンター部門」の場合、自社の顧客満足度向上のために問い合わせ応答率の向上、そのためのチャット活用に関わるKPIやノンボイス比率など指標化することがあります。詳細は、 過去の記事もご参考ください )

カスタマーサクセスは組織横断で動いてツールも活用していく

顧客の属性やカスタマーサクセスのフォロー状況を正確に把握し、自社内で共有しながら顧客の成功に至るためにCRM(顧客関係管理システム)を活用しながら、自社の開発や営業と情報連携することも大切です。また、ミーティングや個別問い合わせの手段以外でも顧客の疑問に答えるために、フォームなど問い合わせ管理システム、WEBのFAQシステムも有効な手段として整えておくと良いでしょう。

顧客数が多くなってきたら顧客専用のクローズドな顧客専用サポートサイトを作成し、場合によっては動画やお役立ち資料などのコンテンツを掲載することでカスタマーサクセスのアクションも効率化する場合もあるかもしれません。自社の製品やサービスあるいは顧客属性次第では、活用を高めるために顧客(ユーザー)コミュニティーを作って、定期的なユーザー会イベントで成功知見をシェアし合ったり、コミュニティサイトで顧客の相互協力の場を盛り上げたりすることも手段です。そして、1年に1回など定期的には、サーベイツールなどを使って上記のNPSを取得してみましょう。これらの活用度は、上で述べたハイタッチ ⇔ テックタッチの度合いよっても変わってくるでしょう。

※ カスタマーサクセスの具体的な活動については、後日に別記事でも詳しく掘り下げていきたいと思います。

自社のカスタマーサクセスとカスタマーサポートの考え方を整理してみよう

今回の記事では、企業のLTV向上と顧客の成功のため、カスタマーサクセスに求められるポイントやカスタマーサポートとの違い、各種KPI、実施する活動例など考え方について整理をしてきました。ためしに一度、自社における顧客活動をカスタマーサクセスとカスタマーサポートの領域に分けて整理してみましょう。同じ活動をしているようでも異なる部分と重なる部分が見つかるはずです。

カスタマーサクセスをどう設計すればいいか?自社で設計しCXを向上させながらLTVを向上させていきたいと考えても、一朝一夕での実現は困難を極めるかもしれません。将来的にはそこに至るためにも、現状運用の全体整理に必要なKPI分析やコミュニケーションの改善などと踏まえた「コンタクトセンターの全体設計」が第一ステップとしては必要となってきます。

モビルスでは、チャットサポート導入で実現する顧客満足度の向上と業務効率化についての「EBook」を公開しています。下記より無料でダウンロードできますので、ぜひご覧になってみてください。