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アウトバウンド業務を運営する方の中でも一度は「プレディクティブコール」という言葉を耳にされたことがあるかと思います。しかし、具体的にどのようなものなのか、そのメリットや活用事例はどういったものがあるのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

記事は前編・後編に分けてお伝えしています。前編では、プレディクティブコールの概要からそのメリットを中心に見ていきます。

プレディクティブコールを検討している方やアウトバウンド業務を効率化したい方はぜひご一読ください。

プレディクティブコールとは

プレディクティブコールとは、特定の架電リストに一斉に電話をかけるシステムや機能のことを指します。このシステムは「プレディクティブ発信」、「プレディクティブダイヤリング」、「プレディクティブダイヤラー」とも呼ばれます。単独で動作するものではなく、「オペレータと着信数が最適化されるよう自動予測して一斉自動発信する」CTIやボイスボットなどの機能の一部とみることもできます。

従来のアウトバウンド方法では、顧客が電話に出る保証がない中、1件1件を人力でダイヤルする必要があり、効率性の低さが大きな課題となっていました。プレディクティブコールは一斉に複数の連絡先へ架電を開始し、接続された電話だけをオペレータに繋ぐ仕組みで、オペレータの稼働人数に対して2〜3倍の架電が可能となります。これにより、従来のアウトバウンド方法の課題だった効率性の低さを解消することが可能です。特に、督促業務やアウトバウンドセールスなど、多くの架電を必要とする業務での活用が進んでいます。

オートコールとの違い

プレディクティブコールに似たツールで「オートコール」「プログレッシブコール」というツールがあります。全てアウトバウンド業務において、効率的な電話発信をサポートするためのツールである点は同じですが、それぞれの特徴や働き方には違いがあります。

プレディクティブコールは、リスト内の複数の顧客へ一斉に自動発信を行います。一方、オートコールは、リスト内の顧客に1件ずつ発信する機能を持ちます。オートコールでは、リストの電話番号をクリックするだけで、ダイヤリングをせずに直接顧客へ自動発信することが可能です。さらに、IVRと連携して、応答した顧客に予め録音された音声や合成音声を流すこともできます。

オートコールの利点として、待機中のオペレータの数を超えて電話が接続されるリスクがない点が挙げられます。しかし、このシステムでは、電話が接続されるまでの待ち時間が発生する可能性があります。

プログレッシブコールとの違い

プレディクティブコールがオペレータ数を超える架電を行うことが可能なのに対し、プログレッシブコールでは一斉に自動発信できる数は「オペレータ数」までとなっています。つまり、オペレータ数を上回る発信をすることはできません。そのため、応答した顧客は必ずオペレータとの会話が可能というメリットがあります。

しかしこの制約のため、応答状況によっては待機中のオペレータが出てしまう場合も考えられます。
効率性重視でプレディクティブコールにするのか、確実性重視でプログレッシブコールにするのかは業務性質を考慮した上で検討を進めるとよいでしょう。

ここまで、「プレディクティブコール」「オートコール」「プログレッシブコール」の違いを説明しましたが、まとめると以下の表になります。

プレディクティブコールのメリット

プレディクティブコールがもたらす主なメリットについて、具体的に見ていきます。架電数や成約数の向上、通話数の均一化、さらには詳細な発信情報のデータ化など、その効果は多岐にわたります。

架電数・成約数の向上

プレディクティブコールを導入することで、オペレータの待機時間を減少させつつ、架電先の応答率を予測し、効率的な通話を促進することができます。結果的に、架電数は従来の方法に比べて劇的に向上します。

一般的に、アウトバウンドの成果は架電数と成約率によって決まります。そのため、成果を高めるには成約率を上げるか、もしくは架電数を増やす必要があります。成約率はオペレータのスキルや経験に大きく左右されるため、容易に変動させることは難しい場合が多いので、架電数を増加させることが短期的に成果を高めるための鍵になります。プレディクティブコールはこの架電数を増加させるのに大きな役割を果たすのです。

加えて、ダイヤル操作が必要なくなったオペレータは、顧客とのトークに専念することができます。これにより、成約率の向上も期待でき、その結果、更なる業績の向上が可能となるでしょう。

通話数の均一化

人間による手動での電話発信には、多くの変数が存在します。ダイヤルのスピードの違い、番号の押し間違い、また心理的な負担による遅延など、多くの要因によりオペレータごとの時間当たりの架電数にばらつきが生じてしまいます。

しかし、プレディクティブコールを利用することで、このような問題を解消することができます。システムが自動で発信を行い、通話をオペレータへ均一に分配することができるため、特定のオペレータだけに通話が偏るという問題は発生しなくなります。その結果、業務負担が分散され、職場の公平性が向上します。

この公平性の確保は、オペレータ間の不平等感を軽減させ、職場環境の改善に繋がります。不満の蓄積はオペレータの離職率への影響が大きいため、均一な通話分配によって離職率の低下も期待できます。

発信情報のデータ化

近年、分析ツールやAI活用が進んでおり、データの重要性はより一層増しています。プレディクティブコールでは大量の録音データが蓄積されるため、これを分析することで業務の最適化が図れます。

例えば、応答がなかった不在記録データをCRMと組み合わせて分析することで、特定のセグメントで電話がつながりやすい時間帯、あるいはつながりにくい時間帯を特定することができます。これにより、架電するタイミングを最適化することが可能となり、効率的な業務運営を実現できます。

さらに、データを活用して成約する可能性が高いと予測されるセグメントを特定することもできます。絞り込み機能を活用することで、目的に合わせてピンポイントで架電を行えば、センターの効率的な運用が可能ですし、高い成約率がとれるリストの存在はオペレータのモチベーションにも直結します。

プレディクティブコールの注意点

プレディクティブコールはコールセンター業務の効率化に役立つツールですが、導入や運用時には注意が必要です。プレディクティブコールの運用時における主な注意点について、詳しく解説していきます。特に、オペレータの稼働状況や心理的負担について考慮することが欠かせません。

オペレータの稼働状況を把握する必要がある

プレディクティブコールはオペレータの数を超える架電が可能であるため、一斉に電話をかけると「放棄呼」という問題が発生する可能性があります。具体的には、顧客に電話が繋がったものの、オペレータが不足しているために自動的に電話が切断されてしまいます。

このような放棄呼が多く発生すると、企業の評価に大きなダメージを与えるリスクがあります。最近ではインターネットを利用して、電話番号から発信元を特定することが可能なためです。

放棄呼を防ぐためには、時間別の接続率とオペレータの稼働状況を的確に把握し、発信の倍率を適切に調整することが必要です。

オペレータの心理的負担へのケアが必要である

プレディクティブコールの導入により、オペレータの作業効率は向上する一方、待機時間の減少や連続した顧客対応が求められるため、オペレータの精神的な負担が増加する恐れがあります。

そもそも、コールセンターにおいて高い稼働率が必ずしも良いとは限りません。待機時間があることで、オペレータは気持ちを切り替えたり、先ほどのコール内容を反省する時間が得られます。

グラフ, ダイアグラム

中程度の精度で自動的に生成された説明

(出典:コミュペディア

プレディクティブコールの導入を考える際には、休憩時間を意図的に取り入れるなどの配慮が必要です

また、アウトバウンドのオペレータは、インバウンドと違い、自分のペースでの作業を好む人も少なくありません。プレディクティブコールを導入することで期待値の差が発生しないように、採用や研修の段階で説明を行い、期待値を合わせておくことも必要でしょう。

後編に続きます!