企業のお客さま相談窓口やコンタクトセンターを始めとした顧客サポートの現場で、AIやチャットボット、有人チャットなどの導入を検討する際、解決したい真の問題は何でしょうか?

モビルスでは、これまで300社以上のお客さまにチャットボットや有人チャットシステムを導入いただいています。ツール導入を検討されるお客さまに「解決されたいこと=お客さまの『ニーズ』」をヒアリングした結果を、「コストダウン」「顧客満足度アップ」「従業員満足度アップ」「セールスアップ」の4つに分類しました。

「コストダウン」に分類するお客さまの声

顧客の自己解決率を上げたい、電話応対の呼量、新しいチャネルを導入したい、負荷の高い特定業務の負荷軽減、導入済チャットボットの効果を上げたい、と続き
コストダウンに分類するお客さまの声(モビルス株式会社の独自ヒアリング結果を基に作成)

コストダウンに分類されるお客さまの声を見ていくと、「顧客の自己解決比率を上げたい」が78%と最も多く、続いて「電話応対の呼量削減(54%)」「新しいチャネルを導入したい(40%)」という結果です。

それぞれ「何が課題になっているか?」を分解して考えていくと、自ずと解決方法が見えてきます。

本記事では、顧客サポート現場の「コストダウン」にまつわるニーズを紐解き、AIやチャットボット、有人チャットなどツール導入を失敗しないためのポイントを紹介します。

課題は「何から始めたら良いか分からない」「自己解決できていない」「自動化できていない」「負荷の重い定型業務がある」

まず、三大ニーズ①「顧客の自己解決比率を上げたい」、②「電話応対の呼量を削減したい」、③「新しいチャネルを導入したい」を中心に、どんな課題があるのか考えていきます。

①顧客の自己解決比率が低い理由

 ①の「顧客の自己解決比率を上げたい」ニーズの奥には、どんな理由があるでしょうか。

顧客の自己解決比率が低い理由

「FAQを導入したけど使われない」

「FAQツール、チャットボット等の精度が悪く、自己解決に至らない」

「マイページなどを用意しているが、ID/パスワード忘れが多く使われない」

「自己解決は難しい、負荷の重い手続き業務が存在している」

・・・これらのように「自己解決する仕組みを導入しているが、上手く機能していない」場合が多いのではないでしょうか。

②電話応対の呼量削減ができない理由

 ②の「電話応答の呼量を削減したい」はどうでしょう。

電話応対の呼量削減ができない理由

「FAQを導入したけど使われない」

「FAQツール、チャットボット等の精度が悪く、自己解決に至らない」

「マイページで手続き可能だけど、ID・パスワード忘れで利用されず、電話対応がほとんどになっている」

「継続的に負荷の重い定型業務への対応により、全体のサービスレベルに影響が出ている」

「サービス案内などの紙に電話番号を告知案内しているので、直接電話がかかってくる」

「特定業務に波(繁閑差)や属人的な対応が多くなっている」

「チャットボットや手続き自動化を導入したいが、個人情報の取り扱いに関するポリシーに抵触して導入できない」

「自動化がされておらず、24時間365日対応が出来ず、顧客の利便性が低くなっている」

・・・これらのように「自己解決ができていない」「属人的な対応が多い」「自動化できない」などが、電話対応の呼量が減らない理由として考えられます。

③新しいチャネルを導入したいができない理由

 ③の「新しいチャネルを導入したい」が、できない理由は何でしょうか。

新しいチャネルを導入したいができない理由

「チャットボット、ボイスボットなど新しいAIを活用したテクノロジーを導入したいけど、何からどのように使っていいか分からない」

「LINEや新しいチャネルを導入したいが方法が分からない」

「チャットボットや手続き自動化を導入したいが、個人情報の取り扱いに関するポリシーに抵触して導入できない」

・・・これらのように「何から始めたら良いか分からない」「個人情報の取り扱いポリシーの問題」などが理由として考えられます。

以上、①②③の3大ニーズが実現できない理由をまとめると、「何から始めたら良いか分からない」「自己解決できていない」「自動化できていない」「負荷の重い定型業務がある」が主な課題であることが分かります。

解決策は、コールリーズン分析、導線の見直し、ノンボイス誘導、負荷の重い特定業務の自動化

では、これらの課題をどうやって解決していけば良いのでしょうか。

多くのお客さまと対峙することで、解決策にはいくつかの「成功パターン」があることが分かってきました。

解決策の一覧、コールリーズン分析、導線の見直し、ノンボイス誘導、負荷の重い特定業務の自動化

課題「何から始めたら良いか分からない」

解決策
⇒どのようなコールリーズンをチャットボット、オペレーターチャットに対応させるべきか、分析する

⇒導線が大事なので、コールリーズン毎に導線を設計する

課題「自己解決できていない」

解決策
⇒FAQツールを導入し、よくある質問の問い合わせ呼量を減らす

⇒チャットボットを活用し、FAQが使われる頻度を増やす

⇒FAQやチャットボットの精度を向上させる

⇒FAQやチャットボットへの導線を見直し、流量を増やす

課題「自動化できていない」「負荷の重い定型業務がある」

解決策
⇒ボイスの入口からノンボイスへ誘導する

⇒負荷の重い手続き業務を自動化する

⇒特定シーズンに増加する問い合わせを切り分けてボット化する。自動化された手続きに誘導する

⇒電話での手続き業務を、より効率的なノンボイス化をめざす。非同期コミュニケーションで電話折り返しなどの負荷を軽減

 

以上で挙げた解決策の成功パターンをまとめると、次の四つに整理できます。

「コールリーズンごとにチャネルや導線を設計する」

「自己解決率を向上させるためチャットボットの活用や精度向上・導線の見直しをする」

「電話からノンボイスへ誘導する」

「負荷の重い特定業務を自動化する」


課題と解決策が見えたところで、最後に具体的な打ち手をご紹介します。

コールリーズンごとにチャネルや導線を設計する

・・・そもそもコールリーズン分析や負荷の高い業務管理・整理ができていない

対応コールリーズンの範囲設定

まずコールリーズンを整理し、把握することが大切です。すべてのコールリーズンを電話からチャットなどノンボイスに変えれば良いわけではありません。コールリーズンを把握し、どのコールリーズンを見直すか考えていきます。

・目標ROIの設定

入電数など現状の数値を把握し、目標KPIを設定します。

・プロジェクト評価の軸を設定

対応するコールリーズンの範囲と時間軸で、プロジェクト設計を見直し、フェーズごとの評価軸を考えます。

【おすすめ記事】

自己解決率を向上させるためチャットボットの活用や精度向上・導線の見直しをする

・・・FAQや回答精度の高いチャットボットを十分に活用できてない

・FAQ利用率を上げる

FAQ利用率をあげるために、チャットボット形式の顧客接点を導入し、FAQの利用シーンを増やします。

また、適切な回答が出ないノーヒットや、アンケート結果を基に、FAQ内容のメンテナンスを継続的に行うことも効果的です。

・チャットの回答精度を上げる

チャットボットの回答精度を上げるためにデータのメンテナンスを実施します。過去の履歴を可視化し、AIを活用するなど効率の良いデータメンテナンスを行い、PDCAを回し続けることが重要です。

また、一問一答式のチャットボットだけでなく、よくある問い合わせは選択肢で提示する、シナリオ型チャットボットとの組み合わせもおすすめです。

【おすすめ記事】

電話からノンボイスへ誘導する

・・・ノンボイスで対応するべき内容も含め、特定のコールリーズンを誘導するための導線設計ができていない

・WEBサイトからの導線見直し

サポートページの構成やチャットボットの設置ページの階層が後ろに行きすぎて、見つかりにくくないかを見直します。チャット小窓の設置場所やデザインも見直し、分かりやすい導線を設計することが大事です。

・WEB以外の流入経路の構築

LINE公式アカウントやFacebook、オリジナルアプリなどWEB以外の流入経路を考えます。

【おすすめ記事】

負荷の重い特定業務を自動化する

・・・ボリュームが多い・対応負荷が高い、定型型手続きを自動化できていない

・チャットボットを活用した手続き自動化

シナリオ型チャットボットを活用し、資料請求などよくある定型的な手続きを自動化します。RPAやCRMなど外部システムと連携することで、注文の自動受付や住所変更などの自動応対の幅が広がります。また、オペレーターによるチャット対応の中で手続き対応に進んだ際に、チャットボットを呼び出し、手続き応対の時間を削減することもできます。

・ノンボイス以外にも「電話応対の自動化」で効率を上げる

ボリュームの多い定型受付業務を音声自動応答(ボイスボット)で一次受けの自動化をします。自動でヒアリングした内容を元に、必要なものだけ二次対応をするのでオペレーターの対応労力を下げることができます。また、ボイスボットで対応した際に電話番号を自動でヒアリングしたあと、SMSでLINEやチャットの案内を送り、ノンボイス対応へ誘導する使いかも効果的です。

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