コンタクトセンター(コールセンター)では応対効率アップや顧客体験(CX)向上のために、チャットボットや有人チャットなど電話以外の問い合わせチャネル用ツールの導入が進んでいます。

チャットなどの「ノンボイスチャネル」を増やすことで、オペレーターにとって問い合わせピーク時の同時対応で効率性が上がったり、「1:1ではなく同時に多数の問い合わせ対応」を「電話ではない非同期での対応」として実現できたりします。

一方でノンボイスチャネルの導入比率が電話に取って代わるレベルまで増えていないのはなぜなのでしょう?その一つの背景には「本人確認や個人情報チェックなどの複雑な手続きを伴う問い合わせ」だけは企業のセキュリティ課題のためチャットでは行えず『電話を使わざる得ない』ことがあります。 

目次


『本人確認が必要な問い合わせ』と『一般的な問い合わせ』はどのように異なる?

まず「お客さまの契約情報や登録情報の確認」や「登録情報の変更」などの問い合わせでは、最初にご本人確認のため「氏名/生年月日/住所」といった個人情報を取得するケースが多くあります。 チャットで問い合わせを受け付けている企業は多いものの、多くは「本人確認不要な問い合わせ種類に限定」しているか、または「チャットで受け付けて、本人確認が必要になったら電話番号をお伝えして誘導する」という流れになってしまっています(図1)。

このような状況では、お客さまがせっかくチャットで問い合わせをしても「登録情報の変更ができない」「結局は電話窓口に回されてしまう」「本当はチャットだけで解決したい」ということになり、CXが損なわれ、電話利用が変わらずにコンタクトセンターの応対効率も上げていくことができません。


本人確認や個人情報チェックを伴う問い合わせはどの業界に多い?

本人確認や個人情報チェックを伴う問い合わせはどの業界に多いのでしょうか。業種別に「本人確認を必要とする問い合わせ業務」の比率を見てみると全体平均で60%にも達することが分かりました。本人確認が必要なお合わせ比率が最も少ない業種は「メーカー」ですが、これは製品自体への問い合わせが多いためと考えられます(図2)。

図2 モビルス社作成

逆に最も多いのは「生保・損保」や「銀行」です。「生保・損保」では『保険金請求手続き全般』『契約の見直し相談』、「銀行」では『ID/Pass再発行や不具合』『住所や属性変更』など、本人確認を必要とする問い合わせが60~80%にも達しています(図3)。

ただし、ほとんどの企業が、本人確認や個人情報を伴う問い合わせに対しチャットでは対応していません。そのため問い合わせ総数全体で見たときにノンボイスで対応できる範囲が非常に限られてしまいます。これらの背景には何があるのでしょうか?

図3 モビルス社作成


企業のセキュリティ部門は、ノンボイス対応のどこにリスクを感じている?

企業が、本人確認や個人情報を伴う問い合わせにチャット対応をしないのは情報セキュリティリスクの観点からです。情報システム部など企業のセキュリティ部門では、主に「通信網」「アプリケーション」「対話データ格納場所」がリスクとみなされていることが多いようです。

「通信網」の「インターネット」はさまざまな場面で使われているので、リスクはそれほど高くないかもしれません。一方で「アプリケーション」の「SaaSシステム」、「対話データ格納場所」の「クラウドシステム」は特にリスクが高いと考えられています。

このため本人確認を伴う問い合わせでノンボイス対応は避けられ、これまではメインでは「マイページの導入」「電話へのエスカレーション」「書面で手続きを残す」などで対応が行われてきました。

しかし、これら3つの対応には、

「マイページのログイン時にID/PASSを覚えてもらえず利用率が低くなってしまう」
「認証の取れている電話対応だと問い合わせ数が多く呼量/対応コストが増えてしまう」
「書面(紙)だと業務の煩雑さや運用コストがネックになってしまう」
といった課題が残ってしまいます。

使われないマイページ/呼量増加/複雑な書面対応の結果、顧客と企業側両方の手間がかかってしまい、対応コストの増加、CXの低下につながってしまっていると言えるでしょう。


チャット上のセキュリティ課題を解決するためには何が必要?

特に「生保・損保」や「銀行」などの業界では、本人確認や個人情報の取り扱い可否はノンボイス業務の範囲に大きな影響を及ぼします。このような課題を解決するには情報セキュリティポリシーに適応した形で、チャットボットによる自動対応と有人チャットの対応をシームレスに行うことが必要です。

また、WEBやLINEなど複数チャネルでの対応にも、セキュリティ適応が求められます。

例えば、モビルスの場合、こうしたチャット上のセキュリティ課題を解決するために開発されたセキュリティー・コミュニケーション機能「Secure Path®(セキュアパス)」があります。「Secure Path」を利用すると、WEBやLINEでのチャットサポートでオペレーターが顧客の個人情報を安全に受け取り、本人確認や個人情報に基づいた個別対応を行うことができます。これはチャットボットによる自動応答でも可能です。

クレジットカード決済でも求められる「PCI DSS」準拠認定の仕組みで、暗号化・保護され、そのデータ管理についても厳しく制限をされているため、チャット上のセキュリティを担保できるのです(図4)。

図4 モビルス社作成


成功事例 日立健康保険組合さま、オリエントコーポレーションさま、では効率性よりも顧客満足度の向上につながった

成功事例として「Secure Path」を導入していただいた日立健康保険組合さまでは、組合員とその家族の健診受診推奨に取り組むも十分な周知ができず、受診推奨方法はDMや電話のみで、効果的なアプローチ方法がなく、受診率の向上が課題でした。

そこでLINEを通じて組合員とのコミュニケーションできる場所を提供、LINEからの本人特定を可能にし、健康診断予約をできるようにすることで受診率向上に成功しました。

またオリエントコーポレーションさまにおいては、セキュリティ認証の観点から、本人特定が不要な業務だけに絞ってチャット運用をしていました。そのため対応範囲が少ない為チャットの利用率が伸び悩んでいました。

同じく「Secure Path」を導入することで、チャット上での個人情報の取り扱いが可能になり、カード紛失・盗難に関する問い合わせが解決され、顧客満足度向上にもつながっています。

通常、企業側にとってチャットでのお客さま対応は、電話と比べ、複数のお客さまの対応を同時に行える「同時対応」数にメリットがあります。一方で、個人情報を扱うチャットでは、同時対応を行うことで『お客さまを取り違えてしまう』リスクもありましたが、上記2社では同時対応を行う効率性よりも「チャットで対応可能なことによるお客さま利便性向上」「PCI DSS認証下での安全な対応」を評価していただきました。サービスをご利用いただいた一般のお客さまからも非常に高い顧客満足度評価をいただいたのです。

オリエントコーポレーションさまの事例紹介をまとめた導入事例PDFは
こちらからもダウンロードいただけます。

2024年現在、金融機関やその他業種での「Secure Path」の導入企業が増えており、セキュリティの高いチャット環境によって、各社のコンタクトセンターにおける応対効率・CXの向上にもつながっています(図5)。ノンボイス比率の拡張を狙うコンタクトセンターでは、チャットでの個人情報取り扱いに取り組んでみることをお勧めします。

図5 モビルス社作成

チャットボットのセキュリティ対策や個人情報を取り扱う場合の対策はどうする?

チャットボットを導入する際に、どのようにセキュリティ対策を行うか、また、個人情報を取り扱う問い合わせをチャットボットで対応する場合の対策など、情報セキュリティの重要性・考え方・対策方法を解説したホワイトペーパーです。

下記より、ダウンロードいただけます。ぜひご覧ください。

チャットサポートに最高レベルのセキュリティを

モビルスのSecure Pathは、チャットサポートの運用におけるセキュリティリスクに対応したSecurity Suite®(セキュリティスイート)の一つです。Secure Pathの機能を利用すると、WebやLINEでのチャットサポートにおいて、オペレーターが顧客の個人情報を安全に受け取り、本人確認や個人情報に基づいた個別対応を行うことができます。

お客さまによる個人情報の入力の保護や二段階認証によるなりすまし防止など、Security Suiteの詳細は、以下でご覧ください。