今春から新たにカスタマーサポート担当ミッションや、カスタマーサポートチーム、部門を管掌する役職に就かれた方、あるいはオペレータやSVとして業務をスタートされた方も多い時期かと思います。今回の記事コラムでは2023年4月現在での「特徴的なコンタクトセンター業界のトレンド動向4点」を整理してみたいと思います。
※ なお、本記事のさらに詳細な内容に触れる当社主催セミナーを2023年5月に開催予定です。そちらもどうぞお楽しみに。
1. サポート人材の採用難と人手不足
2023年からコロナ禍が落ち着きを見せ始め、再びサポート人材の採用難が到来しています。2022年末段階での求人倍率は1.35倍、オフラインでの接客など他業種への人材流入も加速し、現状での人手不足は依然深刻化しています。そして、センターを運営する各社でもっとも深刻なセンター運営上の課題は “オペレータの採用・育成”で、スタッフのモチベーション維持と業務効率・生産性アップが重要なテーマになっているようです。
「コールセンター白書2022」などの統計データを元にすると、既存スタッフの退職防止のためのモチベーション管理、チャットボットなど自己解決チャネルへの誘導、スタッフの生産性向上のための施策、などへの課題意識が強まっていると言えるでしょう。スキルアップやキャリアステップの道筋、クレーム対応のストレスなどが原因で「恒常的に離職率が低いとは言えない」コンタクトセンター業界ですが、これらの状況をふまえて自社の就労現状を捉えてみる余地はありそうです。
2. 在宅オペレーションシフトの傾向
コンタクトセンターを運営する各社の61%以上が恒常的に一定の比率で在宅オペレーションを運用する予定で、半数以上が在宅運用、そして継続していく意向を見せているようです。労働者側のテレワークの活用意向も高く80%以上となっており、前段の採用難から在宅比率の向上による採用人材のスキル枠の「拡張」が求められるでしょう。
一方で、特定のコールリーズンに留めた対応や電話以外のチャネルだけでも、さらに在宅比率を高められないか、運営を模索される企業のCS担当の方とお話する機会がありますが、各人の対応スキルやセンター管理体制、既存ツールとの兼ね合いで在宅が十分に進んでいないとのお声も伺います。この点に労働者側のニーズとのギャップがあるようです。
以上の2点から、何が言えるでしょうか?例えば、在宅コンタクトセンターの導入・運用拡大にあたっては、CX・EX向上効果も考慮したあるべき運営体制の整理が重要であると言えそうです。
CXの向上とは「柔軟なシフト体系構築により 電話やチャットのつながりやすさを改善したり自己解決を促したり」することであり、EXの向上とは「優秀な人材を採用し、効果的な管理フレームワークの導入によって離職率・欠勤率を低減」することで、これらCX・EXの2点の両輪によってカスタマーサポートの効果も上昇すると言えるでしょう。
3. IT・ソリューションへの投資意欲が増加している
オペレータチャットやチャットボット、FAQなどクラウドソリューションが新たに続々と登場し、2022年からはオンプレミスを上回り今後も大きくシェアを伸ばす動向が予想されています。
特に音声プラットフォーム、顧客管理システムなどでは60%に近い層がすでに導入済み、あるいは今後のクラウド化への動向を見せています。
「コールセンター白書2022」などの調査データでは継続的な活用、活用度の向上が重要視されているなど「将来的な拡張性」を重視する層が多いことも特徴だと言えるでしょう。またFAQ/チャット・ボイスボットなど自己解決率を高めるソリューションの優先度が高いことも傾向として強く出ている点も、前段の2点を裏付ける結果となっているようです。
4. GPTのサポート応用可能性への注目
「質問への自動回答、創造性もあるオリジナルテキストを生成することができるAIツール」としてOpenAI社の提供するChatGPT、あるいは3月にリリースされた次世代大規模言語モデルGPT4の登場によって業界が揺れ動いています。対話型のインターフェースを通じて、質問への回答や創作を伴うテキスト生成(例えば、論文や感想文、小説やコードなど)はCSに限らずマーケティングやセールステック領域でも可能性が注目されています。
実際には『提供するチャットボットがGPT4と連動して回答可能』との誤解を与えるようなニュースも多く飛び交っており、「ChatGPTなどの登場はチャンスなのか?それとも既存の仕組みが置き換えられてしまうピンチなのか?」といった質問を社内外から頂くことがありますが、少しだけ冷静に状況を見据えてみましょう。
実際にChatGPTを触った経験がある方であれば、そのある意味では「間違っている」な回答内容から気付かれたかもしれませんが、2023年4月の現状では「回答範囲を限定」したテキスト生成が出来ないGPTにおいては対面に顧客がいるカスタマーサポート領域への応用はリスクを伴うと言えるでしょう。
例えば、自社の製品についての顧客からの問合せ回答に『自社以外の製品のデータ』『過去の古い情報やver.でのQ&A』も踏まえて回答がなされる事となります。このため現状でのGPTの応用においては、対面に顧客の介在しないサポート業務シーン、例えば「対話意図の要約」や「対話内容の抽出」といったシーンでの活用が直近のステータスなのかもしれません。
▶(例1:対話意図内容の要約)オペレータとユーザーの対話内容から要点を自動でまとめ文章化する
▶(例2:対話内容の抽出)ユーザーからの問い合わせおよびオペレータ回答ログから、FAQを自動生成する
一方で2023年2月~4月にわたるGPT関連での技術進歩やベンダー各社での動向は動きが早く、実際のサポート領域でどの程度の活用がなされていくのか、今後も注視していく必要がありそうです。
自社のコンタクトセンター業務の全体設計を模索してみよう
今回の記事では、2023年4月現在での「特徴的なコンタクトセンター業界のトレンド動向4点」 を整理してきました。人材不足、在宅オペレーション、新たなIT・ソリューションの導入・GPT、これらはすべて文中で触れたCX・EXの向上につながり、センター業務の全体設計や顧客・従業員とのコミュニケーションをどう形作っていくかの一要素であるでしょう。
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