CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?向上・改善方法と成功事例
投稿日:2024年11月29日 | 更新日:2025年9月30日

「CX(カスタマーエクスペリエンス)」という言葉をご存知でしょうか?これは、顧客が製品やサービスに触れるすべての接点で得られる総合的な体験価値を指します。価格や機能だけでは差別化が難しい現代において、顧客を惹きつけ、ファン化するための鍵となるのが、このCXです。
当記事では、CXの基本的な定義から、なぜ重要なのか、そして具体的な改善方法や成功事例まで、明日から使えるヒントを分かりやすく解説します。
目次
- CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?
- CX(カスタマーエクスペリエンス)の向上が重要な理由とは?
- CX(カスタマーエクスペリエンス)を生み出す要素とは?
- CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上・改善させる方法とは?
AIエージェント型ボイスボット事例 SBIいきいき少額短期保険株式会社さま - CX(カスタマーエクスペリエンス)の成功事例とは?
- CX(カスタマーエクスペリエンス)実践時の課題と解決策とは?
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?
はじめに、CXとは何か、定義から求められるようになった背景、意味が似ている言葉との違いについて紹介します。
定義
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは、顧客が企業やブランドと関わるすべての接点で得る総合的な体験価値を指します。
これは、単に商品やサービスの機能的な価値だけでなく、顧客が「このブランドと出会えてよかった」と感じるような、心理的な満足感や感情的なつながりも含まれます。
CXは、商品やサービスを認知した瞬間から、比較検討、購入、利用、さらにはアフターサポートに至るまでの一連のプロセス全体を網羅します。このすべての段階で、顧客が心地よく、スムーズな体験をできるようにすることが重要です。
求められるようになった背景
CXがこれほどまでに注目されるようになった背景には、いくつかの大きな時代の変化があります。
デジタル化の進展
ECサイトやSNS、モバイルアプリの普及により、顧客は企業と24時間いつでもつながることが可能になりました。
これにより、顧客接点が飛躍的に増え、オンラインとオフラインをまたいだ一貫したCX(カスタマーエクスペリエンス)の設計が不可欠になっています。どのチャネルでも同じように快適な体験を提供することが、顧客の心をつかむ鍵となっているのです。
競争環境の激化
市場には多くの競合他社が存在し、製品・サービスの機能や価格だけで差別化を図ることが難しくなっている状況です。そのため、CXを通じて他社との差別化を図る企業が増えています。
消費者の価値観の変化
現代の消費者は、単に「安さ」や「便利さ」だけで商品やサービスを選ぶわけではありません。
企業やブランドの社会的責任やサステナビリティへの姿勢、そしてそれに共感できるかどうかといった価値観が、購買の決定に大きな影響を与えるようになりました。顧客は、単なるモノの購入ではなく、ブランドが提供するストーリーや体験全体に価値を見出しているのです。
グローバル化と文化の多様性
多様性が重視される現代において、顧客はブランドに対してより高い配慮を求めています。文化的な背景への理解が不足したまま対応すると、ブランドの信頼を大きく損なうリスクがあります。
特にグローバル市場では、国や地域ごとに異なる文化的背景や価値観を深く理解し、それらに応じたCXを設計することが不可欠です。ローカライズされたきめ細やかな体験を提供することが、グローバルでの成功の鍵となります。
意味が似ている言葉との違い
CXは「CS」や「UX」と似ているため、混同されることがよくあります。これらの言葉との違いを明確にしておきましょう。
CS(カスタマーサティスファクション)
CS(カスタマーサティスファクション)は、顧客が商品やサービスに対して「満足しているかどうか」を測る概念です。たとえば、レストランで「料理が美味しかった」「接客が丁寧だった」と感じた時、それは顧客満足に直接つながります。
一方、CXは、単なる満足・不満足といった瞬間的な評価に留まらない、より包括的な概念です。レストランの例で言えば、来店前のオンライン予約体験、SNSでの口コミ検索、来店後のフォローアップメールに至るまで、顧客がそのブランドと関わる一連の流れすべてを含みます。
つまり、CSはCXの一部であり、特定の接点における満足度という「結果」の一側面を指します。それに対し、CXは「顧客がどう感じたか」という「ストーリー」全体を対象としています。優れたCXは、顧客を長期的なファンへと育てるための基盤となります。
UX(ユーザーエクスペリエンス)
UX(ユーザーエクスペリエンス)は、ユーザーが製品やサービスを実際に「使っている瞬間」の体験に焦点を当てた言葉です。たとえば、スマートフォンアプリで「画面が直感的に操作できる」「動作がサクサクして快適」と感じることは、UXが優れていることの証です。
一方、CXは、製品を使う前後も含めた「顧客と企業の関わり全体」の体験を指します。アプリの例で言えば、アプリをダウンロードする際の印象、問い合わせ対応のスムーズさ、SNSでのブランドとのやり取り、そして解約時の手続きに至るまで、顧客がそのブランドと関わるトータルの体験がCXにあたります。
つまり、UXはCXの一部であり、製品やサービスの使用体験という側面に特化した概念です。優れたCXを提供するには、まずUXを向上させることが不可欠ですが、それだけでなく、顧客の購買活動におけるあらゆる接点で一貫した心地よい体験を設計することが重要になります。
CX(カスタマーエクスペリエンス)の向上が重要な理由とは?
CXを向上させることは、企業の成長に直結する重要な経営戦略です。
1. 競争優位性の確立につながる
今日の市場では、価格や製品の機能だけでの差別化は非常に困難になっています。技術の進歩により、新しい機能やデザインはすぐに模倣され、結果として企業は値下げ競争に巻き込まれるリスクを常に抱えています。
こうした状況で、CXは、他社が簡単に模倣できない「独自の体験」を生み出す手段として非常に重要視されています。
顧客が商品やサービスを選ぶ際、その決め手となるのは、単なる機能ではなく、購買体験やブランドとの関わりから得られる心地よさや信頼感です。たとえば、同じ飲料を提供するカフェでも、落ち着ける空間やスタッフの丁寧な接客があれば、「この店だから行きたい」と顧客に感じてもらえます。
つまり、CXの向上は、他社との差別化を実現すると同時に、顧客の中に強固なブランドロイヤリティを形成し、継続的に選ばれる理由を作り出すのです。
2. 顧客ロイヤリティの向上につながる
CXを重視することで、顧客は単なる一度きりの購入者から、長期的にブランドと関わり続けるファンへと変わります。ポジティブな体験を積み重ねた顧客は、多少価格が高くてもそのブランドを選び続ける傾向が強くなります。
たとえば、快適な購入プロセスや気持ちの良いサポート体験は、「また利用したい」という動機を生み出し、リピート購入を促進します。
また、既存顧客を維持するコストは、新規顧客を獲得するコストよりも低いことが知られています。そのため、CXの向上は顧客のロイヤリティを高めると同時に、企業全体の効率性も向上させます。
3. 良質な口コミ・評判の拡散につながる
現代において、顧客体験はSNSやレビューサイトを通じて瞬時に多くの人々に共有されます。
質の高いCXは、「思わず誰かに教えたくなる」ような体験を生み出し、顧客を自然なブランドアンバサダーへと変えます。たとえば、ストレスなくスムーズに商品を受け取れたり、想像以上に丁寧なサポートを受けたりすると、それが顧客にとって誇らしい体験となり、積極的にSNSで発信されます。
逆に、対応の悪さや不便な仕組みはネガティブな体験として拡散され、ブランドを毀損する大きなリスクとなります。
CXを改善することは、ポジティブな口コミを増やすだけでなく、ネガティブな評判によるダメージを防ぐリスクマネジメントとしての役割も果たします。
4. 売上アップ・コスト削減につながる
CXの改善は、感覚的なテーマに見えるかもしれませんが、企業の財務指標に直結します。
第一に、CXの良さは売上の増加をもたらします。満足度の高い顧客は継続的に購入するだけでなく、新しい商品や関連サービスのクロスセル・アップセルにも前向きになります。
第二に、CX改善はコスト削減にも寄与します。例えば、チャットボットやFAQ(よくある質問)を充実させることで、顧客が自分で問題を解決できるようになれば、問い合わせ件数が減少し、サポート要員の負担を軽減できます。これは、顧客にとっては「待たされない体験」としてプラスに働き、企業にとっては運営コスト削減につながるのです。
このように、CXの向上は、売上向上とコスト効率化という両面から、企業に大きなメリットをもたらします。

CX(カスタマーエクスペリエンス)を生み出す要素とは?
良いCXは、以下の5つの要素を組み合わせることで生まれます。
1. 感情的なつながり
顧客がブランドとの関わりの中で「安心できる」「大切にされている」「共感できる」と感じる瞬間は、数字では測りにくいものの、CXの中で最も強力な要素です。心理学的にも、人は機能的な満足よりも感情的な満足の方が強く記憶に残ると言われています。
たとえば、ちょっとした気遣いや丁寧な言葉遣いから「ここは信頼できる」と感じた経験は、誰にでもあるはずです。こうした感情的な体験の積み重ねこそが、顧客を熱心なファンに変える最大の原動力になります。
2. 期待以上の体験
顧客の期待に応えるだけでは、「可もなく不可もなく」で終わってしまいます。CXを磨く上で鍵となるのは、顧客が想定していなかったプラスアルファ、つまり「期待以上の体験」を提供することです。
例えば、配送予定より早く商品が届いたり、スタッフが顧客のちょっとした要望を事前に把握して対応したりすることで、「思っていた以上に良かった」という驚きが生まれます。こうした小さなサプライズは、特別な投資を必要とせず、細やかな気配りや仕組み化で実現できることが多いのです。そして顧客は、そのポジティブな驚きを記憶し、再購入・再利用や口コミにつながっていきます。
3. 使いやすさと安心感
どれだけ感情的な価値を提供しても、製品やサービスの基本的な品質が伴っていなければ顧客は離れてしまいます。つまり、「しっかり使える」「不具合がない」「誰でも迷わず利用できる」といった基本的な基盤があって初めて、感情的な価値が生きてくるのです。
例えば、ECサイトなら「検索しやすいUI」「スムーズな決済」「正確な配送」が最低限必要です。こうした「当たり前」の体験を安定的に保証することが、顧客の信頼を得る最初のステップになります。
4. ブランドイメージ
顧客は、商品やサービスそのものだけでなく、企業の姿勢や価値観を体験の一部として捉えます。環境配慮やダイバーシティ推進など、社会的責任を果たす企業には「このブランドを応援したい」という感情が生まれやすくなります。
また、広告、SNS、店舗での体験など、あらゆる接点で一貫したメッセージを発信できるかどうかも重要です。言っていることとやっていることがズレると、顧客は一気に不信感を抱きます。逆に、軸の通ったブランドイメージは、CX全体の信頼感を底上げします。
5. 自分のための体験
現代の顧客は、「大勢の中の一人」として扱われることに満足しません。データ分析やAIを活用し、過去の購買履歴や行動履歴をもとにパーソナライズされた「自分だけの提案」を受けることで、強い愛着やブランドとのつながりを感じるようになります。
例えば、「前回購入したスキンケア商品の残量がそろそろ減っているのでは?」というタイミングでリマインドが届けば、顧客は「自分のことを理解してくれている」と感じます。このように、一人ひとりに寄り添う体験が、CXをさらに強化する鍵となります。

CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上・改善させる方法
CXを向上させるための具体的な方法を5つご紹介します。
1. 顧客視点の徹底
CXを高めるためには、企業側の都合ではなく「顧客がどう感じるか」を出発点にする必要があります。
そのためには、まずペルソナを設定して理想の顧客像を描き、その顧客がどのような行動をとるのかをカスタマージャーニーマップで可視化します。これにより、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの各段階で、どこに不満や離脱の原因があるのかを把握できます。
さらに、アンケートやインタビューを通じて顧客の声を直接聞くことも欠かせません。数字だけでは見えない、顧客の隠れたニーズや本音が見えてくるからです。
こうした調査と分析を継続的に行うことで、「顧客にとって本当に心地よい体験とは何か」を企業全体で共有できるようになり、より本質的なCXの向上につながります。
2. 従業員満足度の向上
CXの裏側には、必ずEX(エンプロイーエクスペリエンス:従業員体験)があります。顧客と直接やり取りする従業員が、不満を抱えたまま働いていては、質の高いCXを提供することはできません。
EXを向上させ、ひいてはES(エンプロイーサティスファクション:従業員満足度)を高めるためには、単に教育や研修でサービススキルを向上させるだけでなく、「顧客第一」の考え方を企業文化として浸透させることが不可欠です。
さらに、成果が正当に評価される仕組みを整えたり、現場の意見を積極的に取り入れるなど、従業員のモチベーションが高まる環境づくりも重要です。
従業員が自身の仕事に誇りを持ち、前向きな気持ちで働けていれば、そのポジティブな姿勢は自然と顧客に伝わり、優れた顧客体験へとつながります。
3. システムツールの活用
CX改善は、データやテクノロジーを活用することで一気に加速します。
まず、顧客データを収集・分析することで、顧客の購入傾向や行動パターンを深く理解し、より効果的な施策を打てるようになります。
また、CRM(顧客関係管理)システムを導入すれば、営業、サポート、マーケティングといった部門間で顧客情報を一元的に共有できます。これにより、どの部門でも一貫した質の高い顧客対応が可能になり、顧客は「たらい回しにされない」「いつもスムーズに対応してくれる」という安心感を覚えるようになります。
さらに、AIエージェントなどのツールを組み合わせることで、問い合わせの一次対応を自動化したり、顧客の興味に合わせた商品をリアルタイムで推薦したりすることも可能です。これにより、顧客は「待たされない」「自分に合った対応を受けられる」という快適さを感じられるようになります。
システムやツールをうまく活用することは、顧客一人ひとりに寄り添ったパーソナライズされた体験を提供するために不可欠な要素です。
AIエージェント型ボイスボット事例 SBIいきいき少額短期保険株式会社さま
生成AIを活用したボイスボット「MOBI VOICE(モビボイス®)」の新機能であるAIエージェント型ボイスボットによって、従来のボイスボットでは対応が難しかった、話し手の特徴や状況に応じて臨機応変に対応し、電話での自動受付完了を支援した事例です。
MOBI VOICEのサービスについて詳しく知りたい方は以下からご覧ください。
4. 顧客フィードバックの活用
CX改善は、施策を実行して「やりっぱなし」では意味がありません。
大切なのは、施策を実行した後に必ず顧客からのフィードバックを収集し、その声を改善につなげるサイクルを回し続けることです。
アンケートやVOC(Voice of Customer:顧客の声)、NPS(Net Promoter Score:推奨度) 調査などを定期的に実施すれば、定量・定性の両面から改善点が見えてきます。
特に、ネガティブな声は改善のための貴重な資源です。そうした声に誠実に対応し、改善を続ける姿勢そのものが、顧客の信頼を高め、結果としてCXを向上させる大きな要素となります。
5. マルチチャネル戦略の推進
現代の顧客は、オンライン・オフラインを意識することなく自由にチャネルを行き来しています。
店舗で商品を確認してから、後日スマホで購入する。あるいは、オンラインで見つけた商品を、実際に触って確かめるために店舗へ足を運ぶ。こうした顧客行動が当たり前になった今、企業はどのチャネルでも一貫した体験を提供することが重要になります。
たとえば、店舗での購入履歴がアプリに自動的に反映され、ポイントに変換される仕組みがあればどうでしょう。顧客は「どこで利用しても同じブランド体験を得られる」と感じ、ブランドへの信頼感や愛着を深めてくれます。
このように、すべてのチャネルを連携させ、顧客にシームレスな体験を提供できるオムニチャネル戦略は、現代のCX向上には欠かせない必須条件と言えるでしょう。
顧客が「どのチャネルを使っても同じように快適だ」と感じられる環境を整えることが、結果として顧客ロイヤルティを高め、企業の成長につながります。

CX(カスタマーエクスペリエンス)の成功事例とは?
次に、CXの成功事例として「スターバックス」「アマゾン」の例を紹介します。
スターバックス ― 「第三の場所」をつくる
スターバックスは、単なるコーヒーショップではなく、「自宅でも職場でもない、心地よく過ごせる第三の場所」というコンセプトでCXを設計しました。
彼らが提供するのは、コーヒーの味や種類の豊富さだけではありません。居心地の良い空間デザイン、バリスタのフレンドリーな接客、そして店内に漂う香りなど、五感に訴えかける体験全体を通じて「ここに来る価値」を顧客に感じさせています。
さらに、モバイルアプリで事前注文やキャッシュレス決済を可能にすることで、利便性も強化しました。物理的な店舗での体験とデジタル体験をシームレスに連携させ、顧客がどのチャネルを使っても一貫して快適に感じられる仕組みを実現しています。
アマゾン ― 顧客中心主義の徹底
アマゾンは創業以来、「地球上で最も顧客中心の企業である」ことを掲げ、徹底的にCXにこだわってきました。
その代表例が、配送スピードと正確性です。「欲しい商品が翌日に届く」という体験は、顧客に強烈な安心感を与え、利用を習慣化させます。また、AIを活用したレコメンド機能によって「自分に合った商品が自然と提示される」仕組みも構築しました。
加えて、24時間対応のカスタマーサポートは、顧客の不満を最小限に抑え、信頼を高めています。これらの取り組みはすべて「顧客が不便を感じないようにする」という視点から生まれており、CXの模範例といえるでしょう。
CX(カスタマーエクスペリエンス)実践時の課題と解決策とは?
CXの重要性は理解していても、実践には多くの課題が伴います。
1. 部門間での目標や評価基準の違い
CXは本来、企業全体で取り組むべきテーマですが、現実には部門ごとに異なるKPIを追っているために、施策の方向性がバラバラになることがよくあります。営業部門は売上を、サポート部門は応答率を、マーケティング部門は新規顧客獲得を重視するといった具合です。このような状況では、顧客に一貫した体験を提供することは困難です。
解決策として有効なのは、経営層が主導して「CXを共通KPIに設定する」ことです。例えば、「NPSの向上」や「解約率の低減」など、顧客体験に直結する指標を全社共通の目標にすれば、自然と部門間の連携が生まれます。さらに、定期的に部門横断で顧客の声を共有する場を設けることで、現場感覚を持ちながら全社で同じ方向を向くことができます。
2. 顧客データの分散と活用の難しさ
CX改善を進める上で最もよくある障害の一つが「顧客データの分散」です。購買履歴は営業部門、問い合わせ内容はカスタマーサポート、Web上の行動履歴はマーケティングといったようにデータが部門ごとに管理されていると、顧客の全体像を把握できません。その結果、「同じ顧客に何度も同じ質問をしてしまう」といった不自然な体験が生まれ、CXを損なうことになります。
この課題を解決するには、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)やDWH(データウェアハウス)を導入し、データを一元化することが効果的です。さらに、データを扱う人材を育成し、マーケティングやサポートの現場が自ら顧客インサイトを活用できるようにすれば、データが実際のCX向上に直結します。
※CDP(カスタマーデータプラットフォーム) CDP(Customer Data Platform) は、顧客データを一元管理するシステムです。 購買履歴やWeb閲覧履歴など、部門やチャネルをまたいで散らばったデータを集約し、一人の顧客情報として統合します。これにより、顧客の全体像を正確に把握でき、パーソナライズされたCX(顧客体験)の実現に役立ちます。
※DWH(データウェアハウス) DWH(Data Warehouse) は、長期的なデータ分析に特化した大規模データベースです。 企業内の様々な過去データを蓄積し、ビジネスの意思決定を支援します。顧客の行動トレンドや購買傾向を深く分析する際に活用されます。CDPが「リアルタイムの活用」に焦点を当てるのに対し、DWHは「膨大な過去データに基づく分析」に強みがあります。
3. ツールやシステム導入の遅れ
顧客体験を改善するためのツールやシステムは数多く存在しますが、「コストが高い」「導入が複雑」という理由で後回しにされるケースが少なくありません。その結果、競合他社が最新のCRMやAIを導入している間に、自社は旧来の仕組みに縛られ、顧客に不便を感じさせてしまいます。
解決策は、いきなり大規模な投資をするのではなく「小さく試す」ことです。例えば、チャットボットを特定カテゴリの問い合わせに試験的に導入してみる、特定の顧客層にだけパーソナライズ施策を実施してみるといったPoC(概念実証)から始めることで、効果を測定しつつリスクを最小化できます。成功事例を積み上げながら段階的に全社へ展開すれば、無理なく最新技術を取り入れることができるでしょう。
4. 社内リソースの不足
CX改善は戦略的にも重要ですが、現場からは「人手が足りない」「専門人材がいない」という声がよく上がります。データ分析ができる人材や、顧客体験を設計できる人材は依然として不足しており、リソース不足が施策推進の足かせになるケースは少なくありません。
この課題への解決策は二段階で考えられます。短期的には外部パートナーやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の活用で不足分を補い、中長期的には社内人材の育成に投資することです。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)人材やCXデザイナーの育成は、今後の競争力を左右します。加えて、業務プロセスを自動化して従業員の負荷を減らすことも重要です。余力が生まれれば、その分CX改善に注力できるようになります。
まとめ
CX(カスタマーエクスペリエンス)の定義から、その重要性、具体的な改善方法、そして成功事例までを網羅的に解説しました。CXとは、単なる「顧客満足度」や「使いやすさ」を超え、顧客がブランドと関わるすべてのプロセスにおける体験そのものです。
デジタル化や競争の激化が進む現代において、CXの向上は、他社との差別化、顧客ロイヤリティの向上、そして最終的な売上アップとコスト削減に直結します。
優れたCXを生み出すためには、顧客データを活用したパーソナライズされた体験、部門横断的な協力体制の構築、そして従業員満足度の向上が不可欠です。
当記事を執筆するモビルスでは、コールセンター(コンタクトセンター)の顧客体験(CX)向上を通じて企業の競争力を高め、収益を最大化するための総合的な支援を提供しております。AIボイスボット、オペレーション支援AI、自己解決を促すビジュアルIVRなど、顧客満足度につながる幅広いニーズに対応できるソリューションを開発提供しています。ぜひご相談ください。
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