AIの進化は、特に生成AIの出現と共に急速な速さで進行しています。この進化は我々の生活やビジネスに大きな変化をもたらし、企業にとっては新たな可能性を拓くものとなりました。その中でも、特にカスタマーサポート領域における生成AIの利用は、大きな注目を集めています。
本記事では、生成AIが実際にどのようにカスタマーサポートで活用され、どのような効果を発揮しているのかを、具体的な事例を交えてご紹介します。この記事を通じて、生成AIの可能性、そして限界が明確になり、業務でのAI導入の参考になれば幸いです。
生成AIとは何か
生成AIとは、画像や文章などさまざまなコンテンツを生成することができるAIの一種です。通常、プロンプトと呼ばれる指示文を自然言語(人間が一般的に利用する言葉)で入力することで、オリジナルの画像や文章を生成することができます。画像生成がブームになったことをきっかけに、生成AIの技術は急速に発展し、今では文章生成においても、非常に高いパフォーマンスを発揮しています。
大規模言語モデルとは何か
特に、大規模言語モデル(Large Language Models:LLM)と呼ばれるモデルを利用した生成AIは、応用範囲の広さから世界中で注目されており、研究・開発が進んでいます。大規模言語モデルは「スケール則」という特徴を持っており、訓練データの量、パラメーター数、計算リソースのいずれを増やしても精度が改善されていきます。現状、世に発表されている大規模言語モデルの多くは人間と同等またはそれ以上の文章生成能力を持つとされています。
大規模言語モデルはビジネス分野においてもその可能性が注目されており、広告のコピー作成、レポート作成、メール文章の作成、プログラミングのサポートなど、さまざまなシーンで活用されています。
大規模言語モデルの中でも特に注目を集めているのが、OpenAIによって開発されたGPT(Generative Pretrained Transformer)シリーズです。GPTはインターネット上の膨大なテキスト情報を学習し、人間のように自然な文を生成することが可能となっています。その初版からGPT-3、さらにその進化版としてのGPT-4まで、その能力は増しており、今や多くの産業でその応用が試みられています。
注目されている主な大規模言語モデル
有名な大規模言語モデルとしては、OpenAIのGPTシリーズをはじめ、GoogleのPaLM、MetaのLLaMA、RinnaのRinna-3.6B、そしてサイバーエージェントのOpenCALMなどが存在します。これらは、テキスト生成における精度と自然さで評価され、今後日本でも主流となる可能性が高いモデルです。それぞれ概要を解説します。
モデル名 | 開発元企業 | 公開 時期 | 特徴 |
GPT-3 | OpenAI | 2020年 | ・文や段落を生成する際のエラー率が低い ・すでに製品に組み込まれている実績がある |
GPT-4 | OpenAI | 2023年 | ・あらゆるタスクでトップクラスの精度 ・マルチモーダル対応(現在未公開) |
PaLM2 | PaLM2 | 2023年 | ・GPT-3を上回る汎化性能 ・Bardに組み込まれており最新情報が利用可 |
LLaMA | Meta | 2023年 | ・小さなモデルでGPT-3相当の精度を達成 ・オープンソースで公開 |
Rinna-3.6B | Rinna | 2023年 | ・日本語に強いモデル ・「汎用型」と「対話型」の2種類を公開 |
OpenCALM | サイバー エージェント | 2023年 | ・日本語に強いモデル ・公開されている国産LLMで最大規模 |
▼生成AIについては、こちらの記事で詳しく説明しています!ぜひご覧ください
~前編~【徹底解説】LLM(大規模言語モデル)とは?基礎知識からChat GPTとの関係、海外/国内のモデル紹介まで
生成AIとカスタマーサポート
大規模言語モデルをベースとした生成AIは人間が使う言語を理解し、自然な文章を生成する能力を持っており、カスタマーサポートの領域での活用が期待されています。生成AIがどのようにカスタマーサポートで活用されるかを解説します。
カスタマーサポートが抱える課題
カスタマーサポートの現場では、慢性的な人材不足が大きな課題となっています。「コールセンター白書2021年(リックテレコム)」の調査でも、オペレーターの採用・育成を課題に掲げる企業が多いです。
こうした状況に対し、生成AIの導入が一つの解決策になり得ると期待されています。これまでのAIソリューションは用途が限定的で、人間をサポートするものが中心でした。しかし、生成AIは非常に幅広い用途での利用が期待されており、また、一部の業務は完全に自動化することで、人間のオペレーターが対応しきれない業務量を補完することが期待されています。
カスタマーサポートで利用されてきた従来のAIと生成AIとの違い
従来のカスタマーサポートで利用されてきたAIは、主に「教師データ作成によるFAQチャットボット」や「分岐作成によるシナリオチャットボット」などが一般的でした。
これらのAIはあらかじめ定められたルールやシナリオに基づいて対話を行い、特定のキーワードやフレーズに対する応答を自動化しています。しかし、ユーザーからの問い合わせが想定外の内容であったり、多角的な視点からの質問であった場合、従来のAIは適切な対応を行うことが困難でした。
大量の学習データを利用しており、文脈を理解することができる大規模言語モデルはこれらの問題を克服できる可能性があります。大規模言語モデルは大量のテキストデータから自然言語のパターンを学習し、それを利用して新しい文章を生成する能力を持っています。そのため、あらかじめ用意されたスクリプトやFAQの範囲を超えたユーザーからの問い合わせにも対応することができます。これは特定のキーワードに対する一定の応答しか提供できない従来のAIとは大きな違いです。
では、後編では各社の具体的取り組みを見ていきましょう!