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前回のコラム ではコンタクトセンターにおける複数の対応チャネルをマルチチャネル化の文脈で整理してみました。CX向上のためにはマルチチャネル化による問い合わせ導線拡充が大切ですが、今回は『非同期』で『テキスト』を使った「メール」というサポートコミュニケーションチャネルに改めてスポットを当てて整理してみたいと思います。

オペレータが兼任での対応をしているコンタクトセンターは約5割、専任では約3割

「コールセンター白書2022年」によると、コンタクトセンターにおけるメール対応体制は 『電話対応のオペレータが待ち時間などを利用して対応している』という調査結果が約50%となっていますが、『メール対応専任のオペレータがセンターいる』という回答も約35%と多く、各社でもそれなりの人的リソースを割いてメールの対応チャネルを運営しているようです。

メールコミュニケーションの「入口」、メリットとデメリット

メールで問い合わせる際には、大きく2つのパターンがあります。①コンタクトセンター専用のメールアドレスがWEBサイトや紙類に記載してあり、そのアドレス宛に直接メールで連絡する、そして ②サポートサイト上にWEBエントリーフォームがあり、自分の連絡先情報を入力した上でその後解決までのやりとりをメールで行う、という2つのパターンです。

電話やチャットに比べるとメールにコミュニケーションの場合は『メッセージの往復に時間がかかる』ため、解決までの即時性は薄くなりますが、急いでいない顧客にとっては、同じテキストコミュニケーションであるチャットよりも『じっくりと考えて問い合わせができる』と言えるでしょう。そしてこの点はオペレータにとっても、『問い合わせ理由が複雑だった場合の社内調査などに慎重に時間をかけられる』と言えるかもしれません。

またこれはチャットでも同様ですが『問い合わせに際して分からない箇所の写真をメール添付したり、URLを本文に挿入したりして、図やイメージを使って説明できる』といった点もテキストであるメールのメリットです。テキストかつある程度時間をかけられるということで、対応するオペレータにとっては周囲の環境騒音に影響されにくい『在宅サポートにも応用可能な範囲が大きいチャネル』とも言えるでしょう。

一方で、電話とは異なりメールのテキストでは『オペレータ(=人)の感情や細かな気遣いが音声より伝わりづらい』というデメリットもあります。上で挙げた通り『時間がかかってしまう』というデメリットもあるので、緊急性の高いコンタクトリーズンが多くメールに流れてきてしまう場合には、サイトTOPからFAQページへダイレクトに導線を貼ったり、有人チャットの対応時間を増やすなどの別の打ち手も必要かもしれません。

また、折り返しが発生し、複数部門にわたる電話での問い合わせ対応でも同じですが、どの問い合わせに対して対応したorしていないかをコンタクトセンター側でしっかり管理していないと、

▼『問い合わせへの返信対応が漏れてしまう』
(問い合わせしたのに返事がない!)

▼『複数のオペレータが重複して返信してしまう』
(つい最近、別の担当の方にご連絡頂いたのに!)

といった問題が起きうるデメリットもあるでしょう。

電話のように口語でのコミュニケーションと少し異なり、文章でのコミュニケーションでも敬語などのリテラシーが必要になります。敬語以外にも『誤字・脱字』が発生した場合よる印象悪化が起きてしまうかもしれません。メールの送信先に異なる人のアドレスを入れてしまう送り間違いや、必要な情報ではない別のファイルを送ってしまうといったセキュリティや個人情報取扱上のインシデントも起きうるでしょう。このような事態につながる人的なミスも起きやすいため、かならずメール対応の運用を常時定期的にチェックすることが大切です。

メールサポートにおけるメリットデメリットの整理

メールコミュニケーションのデメリットを解消するためには?

以上の事をまとめるとメール対応時の注意すべきポイントとしては、

・返信までの担当割り振りや、時間目標をコンタクトセンター内で設定して、最適化に向けてPDCAを回す

・顧客対応のデータベースを確認するフローを設けて返信対応の漏れや重複を防ぐ

・誤字脱字や誤送信を防ぐためのチェックフローを作る(あるいはそういう仕組みを導入する)

・テキストでもできるだけ感情を伝えられるような表現や回答内容のナレッジをおさえ、センター内でテンプレート化して担当全員が均質に対応できるようにする

・対応フローを固められたら在宅オペレータへの業務設計にも挑戦して、運営の効率化をこころみる

などといったことが必要だと言えそうです。

CX(顧客体験)を損なわないためには、やはり「スピードが重要」なのか?

電話やチャットやFAQでの即時対応(解決)とは異なり、お問い合わせへの回答にもメールは時間がかかるとはいえ、実際に各社のコンタクトセンターではどのくらいのスピード感での返信をしているのでしょうか?

同調査「コールセンター白書2022年」によると、返信の目標時間として『24時間以内の返信』が39%、『1営業日以内での返信』が23%、『12時間以内の返信』が17%、『48時間以内の返信』が15%という順での回答割合になっているようです。

おおむねが「24時間ないし1営業日以内でのメール返信」を目標に運営しているようですが、皆様の関係するコンタクトセンターや対応窓口ではいかがでしょうか?もちろん少数回答にように「コンタクトリーズンによって」はメールでも数時間や数日になるお問い合わせ内容もあるかもしれません。

最近では、コンタクトセンターのNPS評価などでよく取り上げられる要素として『対応までの所要時間』『解決までの所要時間』などがよくありますが、 即時性はないチャネルとはいえ、上記の範囲の対応時間を目標にすると、比較的CX(顧客体験)を損なわないコミュニケーションができるのではないでしょうか。

万が一やむを得ず、24時間や1営業日以内の対応が現状センターの人的リソース上で実現できない場合、 「恐れ入りますがお問い合わせ頂いた内容を調査しており、XX時間以内(XX日以内)に改めてご連絡いたします」とこまかな『一次返信』だけはできるように対応フローを整備することが必要でしょう。

コンタクトセンターで活用できる仕組みやメールコミュニケーション用ツールは?

上で挙げたようなポイントに気をつけて業務を組み立てるにあたって「メール問い合わせ管理ツール」を使うとできることもあるようです。たとえば、

▶ 編集管理&共有機能
あるオペレータがメールの返信作業に入るとそのメールは『未対応ボックス』から『編集中ボックス』へ切り替わり、「どのオペレータが返信対応をしているのか」をリアルタイムで確認できるような仕組み(オペレータが二重に編集・返信する事態を防ぐ)

▶ オペレータが誰も対応していない(対応が漏れている)際のアラート機能

▶ 件名や送信内容によって対応するオペレータや部門が異なる場合に自動で振り分けを行う機能
(これは通常のWEBフォームで選択項目を複数作っておき、製品についての質問は製品部門に、請求についての質問は請求部門に、料金についてはカスタマー部門にと通知を分けることでも可能です)

▶ メール送信ツール上に『返信用の文言テンプレート』を設定しておける機能
(異なるオペレータが対応する際にも、また離職率の高いコンタクトセンターで人員が入れ替わる際にも効率的な対応ノウハウを残して共有することができるようです)

▶ メールサポートのための社内コミュニケーション機能
(メール対応時に他の担当者に問い合わせを引き継ぐ場合に「社内でのコメントメッセージ」をシステム上で添付したり、社内コミュニケーションツールとしてチャットでコミュニケーションしたり、返信テンプレートに加えて「メール対応に関する社内用Q&A」までも充実している管理ツールもあるようです)

このような仕組みを備えたツールが提供されているようなので、主にメールでのサポートを強化されたい方は気にして見ると良いかもしれません。

自社のカスタマーサポートの対応チャネルを整理してみよう

今回の記事では、カスタマーサポートの対応チャネルにおける「メール」に特化して再整理をしてきました。メールにフォーカスすることが決まっていれば必要ありませんが、できれば今一度、自社で保有するチャネルに寄せられる問い合わせ数や、その対応内容、対応上の課題やKPIなどを他のチャネルともあわせて整理してみましょう。全体を整理することで課題や改善点も見えてくるかもしれません。 現状運用の全体整理に必要なKPI分析やコミュニケーションの改善などと踏まえた「コンタクトセンターの全体設計」がチャネルの活用と顧客サポートの充実のために必要となってきます。

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