アニコム損保さまは、2017年5月に「モビエージェント」を使用した初のサービス『「LINE」で保険金請求』をリリース。それ以降、有人対応機能を用いて、獣医師とお客様が直に会話ができる『どうぶつホットライン』そして2018年6月には『「LINE」のトーク上から保険加入』ができるサービスをリリースされています。
3つのサービスをリリースするにあたりプロジェクトを推進したのは経営企画部 小川篤志氏、兵藤未來氏。お二方にモビエージェント導入時のお話しを伺いました。
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獣医師がチャットで相談「どうぶつホットライン 」
「より多くの命を救うため。」モビエージェント導入を決意
―まず「どうぶつホットライン」についてお聞きします。本サービス開発のきっかけには小川様が救急病院で働いていた時の経験が大きく影響していると伺っています。
救急病院で働いていた頃、犬に飲ませると良いとブログで紹介されていた”人用のサプリ”を与えた ために、容体が急変した子を診察したことがあります。ある時は、5日前から食欲がなく、重度の 低血糖で運ばれてきた子犬もいました。いずれも「忙しい獣医さんに聞くのも申し訳ないと思っ た」ことで、失った命でした。小さな悩みや疑問でも、気軽に手軽に相談できることで救える命が あります。100人もの獣医師が集まるアニコムには、こうした命を救う義務があると考え、本サービスを開発しました。
― 小川様のそうした想いが、アニコム様のサービスとしてリリースされるまでにはどういった経緯があったのでしょうか?
小川 いつも何かを企画する際にはミッションとパッションの両方を意識しています。「どうぶつホットライン」において、私たちのパッションは『どうぶつを救いたい。もっと救える命があるはずだ』ということ。ミッションとしては、CS(顧客満足度)の向上を目指していました。より多くのどうぶつを救うことにより、CSが向上する。それにより、保険契約の継続率上昇が見込めるとし、リリースに至りました。
― チャットシステム「モビエージェント」導入にあたって、現場への戸惑いはありましたか?
小川 思ったよりなかったです。というのは、まず企画側と現場のオペレーション側とのひずみを生まないために、企画側の私たちも現場と一緒に導入に携わり、悩みも一緒に共有していました。私はこれを「ゼロハチ」と呼んでいます。
企画側は0から1までだけをやるのではなく、8までは一緒にやる。そういった取り組みのおかげで現場の心象的なストレスはほぼなかったと思います。
モビエージェントの操作的なストレスも、正直、全然なかったです。それはモビエージェントが使いやすかった、分かりやすかったためです。すごくユーザーフレンドリーな機能だと思います。
兵藤 モビエージェントの操作は分かりやすかったですし、ここを押したらこうなるのだろうなというのが直観的にわかりました。
最初は、「これで本当にお客さんと直接やりとりするから大丈夫かな」という心理的なドキドキはありましたが、慣れてしまえば本当に問題ありませんでした
今も順次新しい獣医師が入ってきては教育を繰り返していますが、一度一緒に操作をすれば、一人でできるようになっています。使い勝手の面でハードルはなかったです。
少数体制で効率的な対応、育児休暇中の社員のリモートワークも実現
―「どうぶつホットライン」は現在、何名体制で運営をしていますか?
小川 「どうぶつホットライン」の特性上、ひとつの部署でやっているわけではなく、いろんな部署にいる獣医師たちが対応しています。
中には、育児休暇中の獣医師の先生がリモートで「どうぶつホットライン」のオペレーターをやっているケースもあります。
社内にも育休中に仕事をしたいと思う人はいるはずなので、その使い方がすごくいいのではないかなと思っています。
兵藤 オペレーターは常に3名体制です。そのうち一人は「しつけ」が担当なので獣医師ではありません。その上に1名SVがいます。
一日の問い合わせ件数は、平均すると20件くらいです。「こんな症状だけど病院行った方がいいですか?」という相談や、「かかりつけの先生にこう言われたのだけど」という第3者意見を求めに来る相談が多いです。
あとはトイレトレーニング、甘噛みといったしつけに関する相談も多いです。1件の相談に時間を要することもありますので、一人のオペレーターが同時に複数の相談を対応することもよくあります。これは1対1の電話相談ではできない、チャットならではのメリットだと思います。
オペレーター同士のやりとりは社内コミュニケーションツール「モビワーク」を活用。 足りない知識はナレッジ機能を用いて補完
―モビエージェントでよく使う機能は何ですか?
兵藤 ナレッジ機能をよく使っています。お客様からはしつけの相談も数多く寄せられますが、これは基本的にはドッグトレーナーが回答をしています。
しかし、獣医師は100名いるのに対してしつけのトレーナーは社内に数名しかいません。獣医師もしつけの相談に答えられた方がよりお客様のために良いだろうと思い、ナレッジ機能を活用してトレーナーの知識をためています。このように知識を蓄えられるのはありがたいですね。
また、オペレーター同士のやりとりはモビワーク(モビルスが提供する社内コミュニケーションツール)を活用しています。一人のオペレーターが回答に困ったときはモビワークでリアルタイムに周囲に相談して解決しています。
―お客様と直接会話をする中で、印象的なエピソードはありますか?
小川 「こんなサービスがあってよかった」という声もあれば、「相談できて安心した、アニコムに入って本当に良かった」という声。受診を進めた際の対応が親身で丁寧だったため「病院での診察の結果を報告したいくらいの対応で嬉しかった」という声もいただきます。SNSでも「すぐに相談できて、とてもいい」というコメントをよく見かけます。
LINEチャットボットで、「保険の加入手続き」も「保険金の請求」も自動受付
保険金請求の根本的な効率化をもとめて選んだ「やること」と「やらないこと」
―そもそも今までの保険金請求の方法を変えようとしたきっかけは何だったのでしょうか?
小川 当時私はもう一つ部署を兼務していました。保険金支払いのルールや、査定のオペレーション改善を統括する部署です。そこで「社内の手続きも、お客様の手続きも、どちらももっと楽にさせた方がいいのに」という課題意識がすごくありました。
しかし以前、導入だけで数千万、月々100万円、結果的に1,2年で数億円かかるようなソリューションを検討したことがあり、社内はコストに対してセンシティブになっていました。改善しようとしても「どうせ高いんでしょ?」「難しいんでしょ?」という認識の人が多く、ほぼ諦めていたところでした。
当時そんなことを頭の隅におきながら、別件でモビルスさんとお話ししたときにチャットボットの存在を知りました。その時「これなら使える」と思いました。
―アニコム様の保険金請求ボットは分かりやすく、ビジュアル的にも工夫がみられます。このUIは導入当初から意識していたのでしょうか?
小川 ボットを設計する際、「時間」にすごくこだわりました。そのため最終的にリリース文面を最後に書くときに「最短1分で保険金請求できる」と書くことを目指していました。最終的には「3分」という表記になりましたが、いかに手軽にできるかにとてもこだわりました。
もちろんフロー上、もっと聞いた方がいい質問というのはあるのでしょう。しかし、あえてそこを削ぎ落としてミニマムに凝縮させ、必要最低限の質問と操作で完結できるようにすることを意識しました。
「あんなこともできれば」「こんなこともできれば」という声は社内でも挙がりましたが、やりませんでした。それは、7割GOでいいと思っていたからです。
もちろんあれもこれも実現できたらいいのですが、10割を目指すといつまでもローンチできないので「やらない」という選択肢の方が重要だと思って作りました。何をやるかより何をやらないかを決めるほうに心血を注いだ気がします。それが、結果的にシンプルで分かりやすいUIに繋がっていると思います。
―LINEの保険金請求をローンチしてからの反応や変化は?
小川 少額の保険金請求がLINE経由で増えました。これまでは、300円の請求をする際ですら紙の請求書を書いて出さなければいけなかった。それがチャットボットで簡単にできるようになった。そのため数百円といった細かい請求が来るようになったのだと思います。お客様が保険金を請求していないという状況はコンプライアンス的にも好ましくなく、「請求勧奨」ということをします。このサービスにより請求勧奨ができているのではないかと思います。
これまで断念していたお客様からの申し込みが
――今年の6月にはLINEのトーク上から保険加入ができるチャットボットもリリースされました。シナリオを作る上で「保険金請求」を作成していた経験は活かされましたか?
小川 ボットのシナリオ作成に関して大いに活かされたと思います。前回(保険金請求)は手探りで話を進めていましたが、今回は「あれはできて、これはできない」という想像力が働くようになっていたのでスムーズに進められました。
シナリオの分岐の方法も、「先にこれを聞いておいた方がいいんじゃないか」とか「こういうシナリオならこっちを後に持ってきた方がいいんじゃないか」など、そうしたテクニックは活かされたと思います。
兵藤 リッチメッセージを表示させ、タップして選んでもらう方法などが保険金請求で導入されていたので、お客様にとって簡単かつ楽しい仕様を考える上でとても参考になりました。
―リリース後の反響はいかがでしたか?
小川 ひとつ象徴的な出来事がありました。これまで申込を途中で断念していた方から、LINEの加入サービスを通じてお申し込みいただけたんです。きっと、これまでの方法が相当面倒で、入りたかったはずなのに断念していた方なのだと思います。
それが、LINEの保険加入サービスリリース直後に申込があったということは、きっとお客様にとってとても簡単に申込ができたのだと思います。
―お客様の手続きと、社内の業務。両方を効率化するためにリリースした二つのチャットボットですが、総じて何人分の働きをしていると感じますか?
小川・兵藤 社内の意見を平均すると2.5人分です。
小川 社内には来簡(らいかん)という業務をしている社員がいます。お客様から送られてきた封筒を、切って、出して、開いて、手作業でPCに打ち込む作業です。チャットボット導入時当初の目的は、その仕事を効率化するというのが目標でした。
来簡はだいたい5~7名くらいの体制でやっています。現在はその作業の14%くらいをチャットボットで賄っています。そのため2~3名が妥当だと考えました。
―今後やっていきたいことはありますか?
小川 まずは既存のもののブラッシュアップです。やはり今は7割の完成度なので、それを10割にするということが望まれます。例えば保険金請求にしても実はお客様のフローは簡単になりましたが、社内の処理は簡単にはなっていません。オペレーションを変える勇気がまだ持てていないのです。そこを早くアナログではなくPC上でできるようにしていく必要があるなと思います。もう一つはAIを使っていきたいですね。
兵藤 小川のいうとおり、今回は7割でGOしたので、あきらめた機能もありました。もっとユーザーフレンドリーにできる部分もあるのでもう少しブラッシュアップしたいなと思います。それはまた随時、モビルスさんと一緒に取り組んでいけたらと思います。
小川 それから、現在一日の電話の問い合わせは800~1000件くらいです。その一部をチャットで代替したいと考えています。そして、どうぶつに携わる企業はそう多くはありません。
そのため、例えば災害時にも役に立つことが出来ればいいなと思います。例えば迷子が出た時の情報発信とか、避難所はどこにいけばよいか、など、そういう情報はLINEでも活きると思います。
いかがだったでしょうか?今回は、アニコム損保さまの人とロボットの役割分担による効果的な連携を実現した導入事例をご紹介いたしました。チャットボットは、お問い合わせの自動応答だけでなく、よくある手続きの自動化にも活用できます。アニコム損保さまのように、チャットボットでの自動化と、専門家による相談など人にしかできない部分をオペレーターがチャットで対応するというように、人とロボットの役割分担と連携を上手く行うことが重要です。モビルスでは、チャットボット・オペレーターチャットの導入時に、目標設定から役割分担、連携の方法までサポートしています。より詳しい課題背景や解決の具体策などに興味があるお客様は、お気軽にこちらよりお問い合わせください。デモ画面を実際にお見せしながらご紹介いたします。