『セールステック×サポートテックの未来像。Saasスタートアップ2社による「効率的な」解決のためのコミュニケーションデザインのあり方とは?』をテーマにした、amptalk株式会社 代表取締役社長 猪瀬 竜馬氏とモビルス株式会社 執行役員 セールス&マーケティングディビジョン長 柏原 学による対談の後編です。
前編では、両社が目指すイノベーションや現在の市場環境・課題、「顧客のやりたいことの実現」のために実施すべき事、についてお話頂きました。
後編は、導入事例や3年後/5年後のためにいま必要なこと、目指す「より良い社会」についてなどを中心とした内容になっています。
前半はこちら!
【amptalk × モビルス対談】 セールステック × サポートテックの未来像。SaaSスタートアップ2社による「効率的な」解決のためのコミュニケーションデザインの在り方とは?<前編>
対談メンバー
amptalk株式会社 代表取締役社長 猪瀬 竜馬 氏
モビルス株式会社 執行役員 セールス&マーケティングディビジョン長 柏原 学
『amptalk』製品について
『amptalk』は、IP電話とオンライン商談を書き起こし・解析することができるSaaSソリューションです。Salesforceなどのさまざまなツールと連携して書き起こし・解析結果の反映が可能なため、営業現場での情報伝達を効率化させ、生産性を向上します。
熱量の共有や業務効率化。システム連携で「通知」によるプッシュも可能に。
ー現在、顧客のどのような課題の解決を行っていますか?導入事例等を踏まえて教えてください。
柏原:
amptalkでの課題解決と導入事例として、モビルスが抱えていた課題とその解決を私からお伝えします。
当社ではSalesforceを最初に導入した際に、「The Model」をベンチマークにしながら営業プロセスを改善し組織をつくっていったので、案件の進捗管理はある程度テキストベースで可視化できていましたが、可視化されたものが現場で温度感まで伝わる、ということまでは実現できていませんでした。
amptalkを導入して、商談時にお客様が発言する内容や発言の熱量が商談に参加していなくても実感できるようになり、「箱」で理解していたもののなかに「映像」が浮かび上がるようになったイメージです。amptalkを活用させて頂いて、インサイドセールスの状況やzoom商談も含めて、非常にライブ感があるセールスができるようになりました。
猪瀬氏:
Salesforce連携以外にもslack連携も可能ですが、そのあたりもご活用頂いているのでしょうか?
柏原:
slack連携も早速利用しています。zoomで商談した内容をSalesforceに流し、商談終了後はslackで関係者に通知して共有し、活用しています。常にメッセージがプッシュされるので、その都度自分たちで情報をとりにいかなくてもキャッチアップできる点が、非常に便利だと感じています。
柏原:
モビルスの導入事例をお伝えすると、直近ではボイスボットの導入が多くなっています。コロナ禍で出勤抑制が求められる中「お客様が企業に連絡しても電話に出ることができない」という課題をほとんどの企業が抱えていました。
ボイスボットを導入することで、会社の一次受付や問い合わせ対応に活用してもらい、またslack連携が可能なため入電後に必要な人にslackで通知をし、アウトバウンドで対応するなどの事例があります。
また直近では保険会社が保険料控除証明書の再発行手続きにボイスボットを活用し、手続き案内を自動化することで業務効率化に活用頂いている事例もあります。
またチャットボットでは、同じく保険会社の例でいえば、保険金請求手続きをチャットボットで行って頂いている会社もあります。従来は郵送手続きで2週間くらいかかっていたのを、数分で完了することができるようになった等、飛躍的な成果につながった導入事例もあります。
猪瀬氏:
それはすごいですね。他の業界ではどのような導入事例があるのでしょうか?
柏原:
例えば、取扱い製品数の多い家電周辺機器メーカー様がいます。その企業様には有人チャットをご利用頂いていて、お客様から問い合わせがあった際に複雑な説明を要する場合、スマートフォンから写真や画像を使いながら「この部分をこう操作してください」等の視覚的なやり取りが可能となりました。画像を送ることで、電話だとなかなか伝えづらい内容を理解してもらうことが可能なので、業務効率化に貢献できているのではと考えています。
世の中に今ある「思い込みや規制・常識を改めて見直すこと」が、「解」に繋がるかもしれない。
ー3年、5年後の未来に、先ほどの成功事例や導入事例がより市場に広まるためには、いま何が一番必要だと考えていますか?
猪瀬氏:
比較することは良くないとは思っていますが、アメリカとの比較で「慣習」についてよく考えます。チャットボットのほうが明らかに合理的なのに電話を利用するなど、昔からの慣習が経時的に社会に溶け込んでいくと良いなと思います。
たとえば、「日程調整ツールを相手に送ると失礼」など先入観があり、利用するほうがお互いにとって楽なのに、慣習のせいか広まらないなど、そのようなことが年月が経つなかで減っていくと良いですね。
私たちamptalkが関連する部分でいうと、オンライン商談の録画などは、撮る側の営業の方が「大丈夫かな?」心配されることも多いと思いますが、商談相手に聞いてみると大丈夫なことがほとんどです。
これらのように、お互いにとってメリットがあるものに、社会が新しいことにチャレンジし、より効率化できるようになっていく、というのが理想の未来だと考えています。
柏原:
猪瀬さんが仰っていただいたように、amptalkをモビルスで利用し始めた時、録画に対してお客様に断られることを懸念していたのですが、お客様に断られることはほぼゼロになっています。いままでの慣習や思い込みで躊躇することもあるが、利用し始めると便利なことしかないことが多いです。
確かに思い込みや規制・常識を改めて見直していくことに解があるのかもしれないと思います。
現状AIは目的を達成するための手段の一つとして、人と相互に補完し合う。その一方で技術的な意味では「フルAI」を目指したい。
ー両社の事業を支える「AI」は、今後の未来でどのような役割を果たすと思いますか?
猪瀬氏:
「AI」はバズワード的なところもあり、やはり限界もあるというのが多くの方の結論になっていると思います。「AI」のできる事、できない事を分けたときに、例えばオートパイロットやOCRなどの仕分けが向いています。一方で向いていないことは、完璧なボイスコミュニケーションです。
なぜこのような分かれ方をするかというと、単純に精度の問題だと考えています。人の気持ちを100%理解して実行するというのがAIができれば、完璧なボイスコミュニケーションが可能だと思ってはいますが、現状ではあくまで何か目的を達成することのひとつの手段としてAIがあると考えています。
柏原:
わたしも似た考えを持っています。
ひと昔前には「AIが主になるか、人が主になるか」という議論がありましたが、結論としては相互に補完し合うべきものだと思っています。効率化や自動化できるものはAIに任せても、人が必要とされるものも必ず残ります。たとえばコミュニケーションの中での挨拶や、謝罪、クレームを受ける、相手の立場に立って同調するなどは人が得意とする領域だと感じています。
そのような部分で関連する業務は必ず人が必要になってくるので、そこは上手く使い分けができればと思います。一方で「フルAI」というのは、技術的な意味では目指していきたいです。
「チャンス」を多く、大きく生み出す。カスタマーサポートのプレゼンスを高めていきたい。
この先、「社会をこのように良くしていきたい」という具体的イメージがあれば教えてください。
猪瀬氏:
当社は会話のAIを中心としたソリューションを販売していますが、会話をより理解して効率化していくことで、人々がよりエンパワーされていくと考えています。
世の中に会話や交渉は無数に発生していて、たとえば好きな人に告白するとか、裁判、商談など、それが上手くいくことで世の中にチャンスが生まれていくと思います。100回交渉があって、そのうちうまくいくのが20回だとして、将来的に40回、50回に増えていくという世界をAIで作っていきたいです。そのためにはデータが必要で、より定量化されたデータに人は動かされることが多いと思うので、これを利用して「チャンス」というものを世の中に多く、大きく生み出す。そういう世界をつくっていきたいと考えています。
柏原:
日本のカスタマーサポートはポジティブなとらえ方をされていないと感じています。黒子役でクレームを受けたり、なかなかこの業界を将来目指したいという人も少ないのが現状です。
一方でアメリカのカスタマーサポート領域のプレゼンスは高く、個人の権限も多いため、大きな違いがあります。私たちは日本のカスタマーサポートのその部分を変えていきたいと考えています。マーケティングやカスタマーサクセスは華やかなイメージもありますが、それに加えて、カスタマーサポートもそのようになっていく事を、ぜひ目指していきたいです。