<2022年12月26日→2024年9月30日更新>

近年、多くの企業が「カスタマーサクセス」という考え方に注目しています。カスタマーサクセスは、単なる顧客サポートではなく、顧客が自社の製品やサービスを最大限に活用し、期待以上の成果を得るための包括的な戦略の一つと言えるでしょう。

特にコールセンター(コンタクトセンター)業界では、カスタマーサクセスの重要性が高まっており、顧客体験(CX)の向上と長期的な関係構築が、競争優位性をもたらす鍵となっています。

当記事では、カスタマーサクセスの意味から、その業務内容、KPIや導入手順などを詳しくご紹介します。




カスタマーサクセスとは?

まずは、カスタマーサクセスがどういったことを指すのか、意味や背景、カスタマーサポートとの違いについて、詳しくご紹介します。

カスタマーサクセスとは、「顧客の成功」を意味する言葉です。顧客が自社のサービスや製品を最大限に活用できるよう、支援や伴走を行う活動を指します。

カスタマーサクセスの目的は、顧客が望む結果を達成し、利益を最大化することです。そのために、自社の顧客課題を把握し、課題解決のための提案と、その実現を行っていきます。

具体的な活動としては、顧客状況の初期診断、診断に基づくソリューションの活用方法やKPIの設計、ソリューションを実現する手段であるサービス利用状況や効果分析、運用改善に向けたKPI定期レポーティング、仮説検証や追加提案などが挙げられます。

これらの業務を通じて、顧客とのリレーションを強化して、積極的かつ継続的に接点を持ちながらプロジェクトを推進します。

最終的には、顧客との関係を強化し、自社と顧客双方の利益を最大化することを目指します。

カスタマーサクセスが重要視される背景

カスタマーサクセスが重要視される背景には、サブスクリプション型サービスの増加が挙げられます。

従来の売り切り型ビジネスモデルでは、製品やサービスを販売した時点で一旦の活動が終了します。しかし、定期的に契約を更新していくサブスクリプションモデルでは、製品やサービスを継続して利用してもらうことが自社の利益向上に直結します。

そのため、顧客との信頼関係を構築することが、自社の持続的な収益に繋がると考えられ、カスタマーサクセスを導入する企業が増えてきています。

カスタマーサポートとの違い

カスタマーサポートは、カスタマーサクセスと同じく既存顧客を解決に導くという点では同じなのですが、少しだけ役割や目的が異なります。カスタマーサクセスとカスタマーサポートとの違いを、目的、KPI、スタンスの3つの項目で、表にすると以下のようになります。

顧客からの問い合わせに対応し、問題の解決方法を伝えて不満やクレームを取り除く役割がメインとなるため、カスタマーサポートは問い合わせの対応回数や対応時間などが数値目標となることが多い傾向があります。問い合わせ発生がコミュニケーションのトリガーとなるため、カスタマーサクセスよりも受動的な対応が多くなるのも特徴と言えるでしょう。

カスタマーサクセスにおける3つの階層「タッチモデル」

カスタマーサクセスにおいて、顧客とどれだけ頻繁に、どのように関わるか、といった併走の度合いを3つの階層に分けて考える「タッチモデル」があります。これにより、異なるタイプの顧客に最適なサポートやエンゲージメントを提供することが可能になります。

「タッチモデル」を図で表すと以下のようになります。

1. ハイタッチ層
主に大規模な顧客や、収益性の高い重要顧客に対して、定期的なミーティングやカスタマイズされたサポートを提供することで、直接的かつ頻繁なサポートを提供し、エンゲージメントを行います。顧客との強い関係構築や個別対応が重要な場合に適しており、BtoBの大手企業に多くあります。

2. ロータッチ層
中規模の顧客に対して、やや自動化されたプロセスを利用しつつ、適度なサポートを提供します。顧客が自発的に問題を解決できるよう、セミナー、ウェビナー、ガイドラインなどのリソースが提供され、サポートの効率性が重視されます。

3.テックタッチ層
小規模の顧客や大量の顧客に対して、自動化されたツールやソフトウェアを活用します。個別に対応することは少なく、メールキャンペーンや自動化されたチャット、オンラインリソースを通じて顧客をサポートします。拡張性があり、効率的な対応が求められる顧客に向いています。

それぞれの顧客数や顧客への伴走度合い次第で実施する内容は変わってきます。事業上で重要な顧客や複雑なサービス提供形式ほどハイタッチ傾向になるでしょう。


カスタマーサクセスの業務内容とは?

カスタマーサクセスは、具体的には何を実施すればいいのでしょうか。業務内容を見ていきましょう。

オンボーディング

まず製品やサービスの導入が決まったら、顧客側で導入後の運用が定着する状態に導くためオンボーディングレクチャーを行います。運用定着のためには、サービスの基本的な機能や使い方、サービス自体の価値がある程度のレベルまで理解されている必要があります。そのために、マニュアルや機能一覧、あるいは他の導入企業で成功したパターンを「型化」し、新規導入先にレクチャーがしやすく棚卸しておく必要があるでしょう。また、個社ごとに業界や商流、あるいは優先課題の違いによって使い方が異なる場合もあるはずなので、顧客の置かれた状況の「初期診断」を行ってレクチャーの内容自体も「カスタマイズ」する必要があるかもしれません。(※ 初期診断は先の営業フェーズである程度行われている場合もあります)

オンボーディングが完了し運用が定着した顧客は、その後も安定して継続利用してくれる可能性が高く、解約リスクが低い状態になるため、スムーズに実施していくことが大切です。長期間オンボーディングが完了していない顧客は、製品やサービスを上手く使いこなせず効果を実現しづらい状態のため、当然チャーン(解約)の可能性は高まります。

また、オンボーディングの前後で顧客側が目的の実現を測るために一緒に「最適な指標(KPI)を設定する」ことも重要です。指標の設定が間違っていると、どんなに頑張っても目的の実現には至らないため、顧客課題や現場の運用に即して「最適な指標を設定する」必要があります。そして指標は一度決めたらOKではなく、製品やサービスの活用によって指標改善ができているかどうか、改善のために何をしたら成功したか、逆に改善を阻害しているのは何か、などを月次ミーティングなどで定期的に数値結果と仮説を元に顧客と議論&アクション化していきましょう。

顧客からの問い合わせやクレームの収集・解決

顧客の継続利用を促し、解約率を下げることも、カスタマーサクセスの重要な仕事のひとつです。解約率を増加させないためには、顧客がサービスを利用する中で発生する不明点や不満などを漏れなく収集し、迅速に解決することが求められます。

また、FAQページやマニュアルの充実を図り、顧客の自己解決を促すことができるような仕組みを構築することも、カスタマーサクセスの大切な業務となります。

アップセル・クロスセル活動

アップセルとは、顧客が既に利用しているサービスや製品よりも、価格や機能がグレードアップしたサービスに買い替えることを指します。また、クロスセルとは、顧客が自社の他のサービスも併せて購入することを意味します。

サービス導入後は、顧客との関係性や信頼を築く中で、より多くの潜在的な要望や課題をヒアリングすることが重要です。これにより、顧客満足度を向上させると同時に、アップセルやクロスセルの機会を活用して、さらなる売上増加を図ることができます。


カスタマーサクセスのKPIとは?

カスタマーサクセスの業務で見るべきKPIとは何でしょうか。ここでは4つの指標について、計算方法や設定するポイントをご紹介します。

解約(チャーン)数

カスタマーサクセスのKPIとして最もよく用いられる指標は、自社の製品やサービスの解約(チャーン)の数や率です。

  • チャーン数 = 1月など一定期間内での解約数
  • チャーン率 = 1月など一定期間内での解約数 ÷ 一定期間内での全契約顧客数

チャーン数やチャーン率は顧客数についての指標ですが、会社によっては顧客1件あたりの売上が契約サービス種類や従量課金ごとにバラバラになることもあると思います。このため顧客数ではなく、売上でチャーン率を捉えた「レベニューチャーン」の考え方を指標とすることもあります。

  • レベニューチャーン = (一定期間でのサービス単価 × 解約数) ÷ 一定期間内での合計売上

NPS(顧客推奨度)

自社の製品やサービスの「おすすめ度」も指標として設定されることがあります。自社の顧客が「導入した会社/商品/サービスをどのくらい他者に推奨したいか」を数値化したものが NPS(Net Promoter Score=顧客推奨度)と呼ばれるもので、この算出方法はある程度決まっています。

  • NPS(顧客推奨度)= 他者への推奨度を0から10の11段階で評価してもらったうち「批判者(0〜6)」「中立者(7、8)」「推奨者(9、10)」の3つに分類して 回答者全体の中の「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた数値

顧客が成功を実感できない場合、あるいは他の選択肢でより成功できると思った場合は、解約を選択することになるため、チャーン数(率)やレベニューチャーンが上がらないようにカスタマーサクセス担当部門は上で挙げたような提案活動を進めていかなければなりません。NPSは上の定義だとマイナスの数値になることもありますが、プラスの数値になるように提案活動のみでなく製品やサービスの改善も必要になってきます。

LTV(顧客生涯価値)

チャーン数やNPSの行きつく先として、LTV(顧客生涯価値)自体が、カスタマーサクセスの最終的指標となるとも言えます。顧客が契約開始をした後、サービス自体の必要がなくなったり、競合へリプレイスしたり、といった理由で契約終了に至るまで、自社にもたらす契約料金の総額がLTV(=顧客生涯価値)となります。

  • LTV= 顧客の平均単価×平均購入回数、 (あるいは、 一定期間の売上額×収益率×継続期間 など)

マーケティングにおいては『新規顧客獲得にかかるコストが既存顧客維持のコストの約4-5倍はかかる』とも言われています。現在では自社の競合へサービスを切り替えることも簡単にできるため、既存顧客のロイヤリティ(愛着)を高めて、チャーンを抑止し、LTVを向上させることが、多くの企業のカスタマーサクセスには求められているのです。

アップセル・クロスセル割合

アップセルとクロスセルは、どちらも既存顧客から追加の売上を創出するための重要な戦略です。アップセルは顧客がすでに購入している製品やサービスの上位版や関連するオプションを提案する方法で、クロスセルは顧客が興味を持ちそうな別の商品やサービスを紹介する手法です。

これらの戦略を効果的に実施するためには、顧客のニーズや行動を正確に把握することが不可欠です。それに加えて、顧客に対して自社の製品やサービスに対する信頼を築くことが大事になります。

顧客をどれだけアップセルやクロスセルに繋げられているか、その割合は自社のサービスに対する信頼度や顧客満足度を示す重要な指標です。


カスタマーサクセスの導入手順とは?

カスタマーサクセスを導入するまでの5つの手順をご紹介します。

  • 目標の策定
  • メンバーの選定とチームの構築
  • アクションプラン・業務フローの作成
  • ツールの選定
  • アクションの実行と定期的な見直し

目標の策定

まずは、カスタマーサクセスを通じて達成したい目標を明確に策定することが重要です。

目標を策定する際には、解約(チャーン)数、NPS(顧客推奨度)、LTV(顧客生涯価値)、アップセルやクロスセルの成功率など、前述のKPIを参考にしながら、具体的かつ達成可能な数値目標を立てていくことが求められます。

具体的な目標設定により、カスタマーサクセスを推進する組織が、共通の方向性をもって取り組むことができるとともに成果を測定しやすくなります。それに伴って、改善点を明確にすることができるため、長期的な成功へと繋がるでしょう。

メンバーの選定とチームの構築

策定した目標に基づき、その達成に向けて適切な人員をアサインし、チームを編成することがカスタマーサクセスの成功には欠かせません。

カスタマーサクセスにおいては、単に顧客からの問い合わせに対応するだけではなく、時には顧客と伴走しながら彼らの課題を深くヒアリングし、解決策を提示することも重要な役割です。そのため、業務に従事するスタッフには、製品に関する深い知識と、優れたコミュニケーション能力に加え、顧客のニーズに応じた柔軟な問題解決能力が不可欠です。

アクションプラン・業務フローの作成

チームの編成や目標設定が完了したら、次にアクションプランを作成します。このプランは、顧客の製品導入から、問題解決、アップセル・クロスセルの機会の活用、さらに顧客離脱防止策まで、具体的にどのような支援を行うかを明確に示すものです。顧客がどの段階でどのようなサポートを必要とするかを詳細に計画することで、適切なタイミングでの対応が可能になります。

アクションプランが確定したら、その次に顧客との接点や支援を行うタイミングを整理し、フローを作成します。これにより、顧客に対してどのタイミングでどのようなサポートを提供すべきかを可視化し、チームが統一した行動を取ることができます。このフローがあることで、アクション実行時の指針となり、チーム間のスムーズな連携も実現しやすくなります。

ツールの選定

顧客の属性やカスタマーサクセスのフォロー状況を正確に把握し、それを社内で共有しながら顧客の成功をサポートするためには、CRM(顧客関係管理システム)といったツールの活用が重要です。また、開発や営業との情報連携も不可欠となります。また、ミーティングや個別問い合わせの手段以外でも顧客の疑問に答えるために、フォームなど問い合わせ管理システム、WEBのFAQシステムも有効な手段として整えておくと良いでしょう。

顧客数が増えてきた場合、顧客専用のクローズドなサポートサイトを構築し、動画や役立つ資料などのコンテンツを掲載することで、カスタマーサクセスの効率化を図ることができます。自社の製品やサービス、顧客の属性に応じて、顧客コミュニティを立ち上げ、定期的なユーザー会イベントでの成功事例の共有や、コミュニティサイトで顧客同士が協力し合える場の提供も有効です。また、年に一度などの頻度でサーベイツールなどを使い、NPSを測定してみましょう。これらの施策の適用度は、当記事で前述した、ハイタッチ ⇔ テックタッチの併走度合いによっても変わってくるでしょう。

アクション実行と定期的な見直し

ここまで策定したプランや戦略に沿って、実際のアクションを実行に移します。顧客との関係構築を円滑に進めるためには、チーム間でノウハウや成功事例を共有することが不可欠です。また、それらの情報をもとに、必要に応じてプランを柔軟に見直し、改善していくことも大切です。

アクションを開始したら、顧客の反応や成果を定期的に振り返り、評価することが重要です。継続的な見直しを行うことで、カスタマーサクセスの効果を最大化し、長期的な顧客満足度とビジネスの成長に繋げることができます。

まとめ

カスタマーサクセスは、顧客にとっての価値を最大化し、長期的に強固な関係を築くために重要です。カスタマーサクセスをどう進めればよいか、自社で策定しLTVやCXを向上させていきたいと考えても、一朝一夕での実現は困難を極めるかもしれません。今回ご紹介したKPIや導入手順を参考に、自社における顧客活動を整理し、カスタマーサクセスにぜひ取り組んでいきましょう。

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