VOC (Voice Of Customer) とは文字どおり「顧客の声」という意味です。
VOCを具体的にすると、顧客からの自社の製品・サービス・顧客サポートなどに対する 「評価、苦情、改善要望、お問い合せ」など幅広い内容が含まれています。
さまざまなチャネルや方法で届けられるこれら「顧客の声」には、実は自社の製品・サービス・顧客サポートの改善につながるヒントが多く含まれています。改善によって「顧客満足度」を高めてLTVを向上させていくためにはどのようにVOCを収集・活用をすれば良いのでしょうか?今日のコラムでは顧客サポート周辺でのVOCの可能性について、改めて整理してみたいと思います。
VOCの集まるルートやチャネルには何がある?
最近では、電話や対面での窓口以外にも顧客とのタッチポイント、つまりコミュニケーションができるチャネルが増えてきたことで、企業は顧客に関する様々なデータを取得することができるようになりました。
TwitterやFacebookなどSNS上でのやコメントや、ECサイト上でのCGC(クチコミ、コメント)、近年SaaSとしても活用が広がってきた顧客への直接アンケートやオンラインサーベイツール、コンタクトセンターでのオペレータやボットによるチャットログや、電話やボイスボットの音声対話ログなどが例としてあります。VOCを収集できるチャネルを整理すると以下のようなものがあるでしょう。
(例)
・コンタクトセンターの音声認識テキストログ(電話の応対ログ)
・コンタクトセンターのテキストログ(チャットログ、メールログ、メッセンジャーアプリDMなどのログ)
・WEBミーティングの音声ログ
・WEB商談の音声ログ
・SNSのCGC(クチコミやコメント)
・ECサイト上でのCGC(クチコミ、コメント)
・顧客に向けたアンケート、サーベイなど
VOCを活用する方法には何がある?
このようにして見ると、かつては「顧客から企業に向かって発せられた声」(意見・要望・質問)がメインだったVOCですが、発信のみではなく「対話」としてのデータへと収集・分析ができる対象が移り変わってきた傾向もあるようです。
VOCの「データ」はチャネルを介してCRMなどの顧客管理ツールや管理サーバーなどに蓄積されます。そして管理する部門(顧客サポートの場合はカスタマーサポート部門)の中で管理・確認されていきます。ただし、実際にそれらの「データの山」をため込んでいくだけでは意味はなく、情報を掘り返して、上手に分析し、事業上の改善がされなければ意味がないでしょう。
VOCを使った事業上の改善には、以下のような活用法が例として挙げられます。
(例)
・VOCを分析して「潜在ニーズ」をつかみとる
・VOC由来の「顧客ニーズ」から製品やサービスの新規開発や機能改善を行うヒントを得る
・VOCを分析して顧客対応の改善点の発見する
・チャット対応で自動化できる範囲を発見する(FAQやチャットボット用の情報)
・顧客接点の担当者のスキルアップにつながる対話上の成功ナレッジを得る
・顧客満足度調査を上手に分析し顧客とコミュニケーション改善につなげる
VOCの分析にはまだまだ多くの可能性があるようです。しかし、その一方で収集・蓄積のみで活用にまでは至っていない状況でもあると言えます。ただし、以下のように最近ではVOC活用を促進する新しい技術も認知が広まってきました。
音声認識技術とテキストマイニングがVOC活用をドライブさせる
VOCを活かした活動を促進させる最新のテクノロジーでは 「音声認識技術」 と「テキストマイニング」が有名です。
「音声認識技術」とは、人の音声をデジタルデータに変換してから文章(テキスト)化する技術です。スマートスピーカーやボイスボットに使われている技術としても最近は活用されるシーンが増えてきていますが、AIの発展により音声の認識精度が向上してきました。とくに 全体像から細部までの各々の概念を階層構造として関連させて学習する手法、ディープラーニングがAIにおいて発展した来たことも音声認識技術を進化させたと言えます。
※ ボイスボット(AI音声自動対応)については、これらの過去記事 もご参考ください。
「テキストマイニング」とは、大量の文章(テキスト)データから 自社にとって「有益な情報」のみを取り出す(マイニングの文字通り「掘り出す」)ための技術です。 「自然言語処理」という解析の手法を用いて、例えば自由形式の回答文章を「単語・文節」に区切って、 それぞれの単語の「出現頻度」や「単語同士の相関関係」を分析することで特定の「有益な情報」を取り出しているのです。例えば、特定の「単語」を含む投稿やコメントを効率よく取り出す(掘り起こす)ことができるため、口コミサイトのコメントや大量のアンケートへのかk等、SNS上でのVOC収集に役立つと言えそうです。
※自然言語処理については、こちらの過去記事 もご参考ください。
企業のコンタクトセンターでは、音声認識技術をコール履歴の管理ツールやボイスボットで活用し、顧客との会話をテキスト化してから保存することで、その後の顧客サポートの管理や対応フロー・シナリオ改善などにつなげています。例えば、オペレータが顧客と対話しながらテキスト入力を手元で並行して行う作業を、音声認識システムによって自動入力・変換することができます。これによってオペレータ側の負担が大きく軽減されることにつながるでしょう。このような対応時のリアルタイムテキスト化だけでなく、対応履歴のテキストの要約によって社内への対応情報共有やナレッジ共有の効率化も促進されます。
特定の単語を分析することで、それがネガティブかポジティブな単語かが分かります。つまり問い合わせをする「顧客の感情」を分析し、オペレータ対応時にSVへのアラート通知をしたりするなど、サポートの質を高める取り組みもこの数年でコンタクトセンターの現場に実装されてきました。
また、ボイスボットが電話の一次対応をした後で、問い合わせ要件を自動でテキスト化して、オペレータは限られた工数を優先度の高い案件から先に折返し対応をすることができたりします。
これらのようにVOC自体が「テキストマイニング」と「音声認識技術」を通して、顧客対応の効率化にもつながっています。
有益な情報を含んでいる「データ」は「持つだけ」では意味がない
上の例で挙げられたように、有益な情報が眠っているので「音声やテキストのデータを持つ」だけでは意味がないと言えます。
今後の活用として、例えば顧客対応のシーンにおいて、
・最近急に増えてきた問い合わせ
・解決につながらなかった問い合わせ
・回答までに時間がかかりがちな問い合わせ
・事後アンケートで顧客満足度が低い対応となってしまった問い合わせ
などを分析することでお問い合わせの傾向や課題を把握でき、対応改善に向けた課題や効率化のヒントが得られます。問い合わせ単体のデータのみではなく、問い合わせ時の会話の流れをテキストデータで抽出することによって、
・チャットボットに自動回答シナリオがあるのに有人対応してしまうような非効率化になっている対応フローを洗い出す
・的確な回答やご案内ができていないオペレータの把握をして教育を改善する
といったことも効率化されるでしょう。
また、問い合わせの内容と回答(Q&A)について特定の単語・話題のみで絞込んで分析することにより
・FAQを初期構築する際のヒントにする
・既存のFAQと比較して新規のFAQを作成する候補の洗い出し
などFAQの改善運用にも使えます。
・チャットボットやAIインプットするための教師データを生成
・リアルタイムで会話に沿ったFAQやトークフローを表示することで、AHTの短縮や応対品質向上
などの改善にもにもつなげることができるでしょう。
自社のコンタクトセンターでのVOCの活用の可能性を模索してみよう
今回の記事では、顧客サポートシーン周辺でのVOC活用の可能性ついて、整理してみました。顧客対応の改善や効率化のためにVOCを活用することはカスタマーサポート、カスタマーサクセス部門にいらっしゃる方にとってミッション上で気になる可能性を秘めていると思います。自社にはどのようなVOCが眠っているのか、それをどのように収集するチャネルがあるか、自社で活用するためにはどのようなシーンが可能性としてあるか。一度整理してみるのも良いかもしれません。
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