<2022年12月8日⇒2023年11月28日⇒2024年4月30日更新>
電話での問い合わせ数に対してオペレーターが応答できた割合を示す「応答率」は、コールセンター(コンタクトセンター)にとって重要な指標です。応答率が下がると顧客満足度の低下にもつながるので、「コールセンターの応答率を改善するにはどうすれば良いか」と、悩みを抱えている担当者は多いのではないでしょうか。
本記事では、応答率の基礎知識や、目標値とする目安や計算方法から、低下原因と対策まであわせて紹介します。対策の一つとして、「ボイスボット」による自動応答の活用と、ボイス領域の基幹インフラとしてのPBX連携についても解説しています。
応答率や顧客満足度の改善について課題をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。
<目次>
・コールセンターの応答率とは?
・コールセンターの応答率が下がる原因とは?
・コールセンターの応答率を上げる方法とは?
コールセンターの応答率とは?
はじめに、コールセンターの応答率の基礎知識として、応答率の意味・計算方法・目安について説明します。
応答率の意味
応答率とは、コールセンターへの入電数(着信数)に対して、オペレーターが応答できたコール数の割合のことです。コールセンター運営において応答率は、電話のつながりやすさを示す指標になっています。応答率は高くなる方が良いとされており、応答率が下がると顧客満足度の低下や機会損失を起こす可能性があります。
応答率の低さは顧客にとってもオペレーターにとってもストレスになるため、適切な目標値を設定して改善に励むことが大切です。単に数値として「高いか低いか」だけを見るのではなく、応答率が「変化する時間」や「低下の原因」を分析した上で対策を考えていきましょう。
応答率の計算方法
応答率は単位時間あたりに、オペレーターが応対した件数を入電数で割ることで算出できます。
【計算式】
応答率(%)=(応対できたコール数÷すべての入電数)×100
例えば、1時間に10件の入電があるコールセンターで7件に対応出来ていれば、応答率は70%になります。応答率の目標を90%としている場合は、9件の対応が必要です。
応答率の目安
応答率は、顧客にとっては常に100%の状態が望ましいです。しかし、コールセンターの運営面から考えると、常に100%の場合は余剰人員が出ている可能性があります。事故や盗難など至急対応が求められるコールセンターは別ですが、必ずしも100%をめざさないといけないわけではありません。日本の企業では、80〜90%を目安にしているコールセンターが多いです。下記に、応答率ごとの運営状況を整理していきます。
90%以上
理想の応答率は90%以上と言われており、実際に多くのコールセンターで目標としている数値です。人件費・顧客対応のバランスが適切で、入電数が増える朝や昼などピークタイムに取りこぼしがありながらも、全体的に電話がつながる状態と言えます。オペレーター確保・社内教育・応答率といった各種KPIの継続的な分析が、この割合を維持することに繋がります。受付体制が整っていなければ、90%以上を維持するのは難しいです。
80~89%
「電話がつながりにくい」と感じる顧客が出始める数値です。応答率が80%に近づくと、時間帯を変えてもオペレーターと話せず「何度かけても保留時間が長すぎて待っていられない」状況が起こりやすくなります。オペレーター不足・スキル不足・コールセンターの運営方法、いずれかによる場合が多いため、原因分析の上で適切な対処が必要です。一方、人件費を抑えたい場合はこの水準を許容する場合もあります。
50~79%
電話がつながりにくい状態で、ほとんどの時間帯で電話が鳴りやまない状態になっています。明らかに人員不足のため業務が回っておらず、早急に改善が必要です。改善策をとらなければ、自然と応答率が下がり続けます。新設のコールセンターや、1件当たりの応対時間が長いときに起こりやすいです。電話がつながるまでに10分以上待たされている状態のため、顧客の不満が募り満足度の低下を招いてしまいます。
50%未満
極度に電話がつながりにくい状態です。電話がつながるとクレームから始まり、1件の対応時間が長くなります。即時改善が必要です。顧客の不満が強いため、オペレーター側も負荷が高く疲弊した状態が続きます。抱えきれないほどの業務量やストレスが生じ、離職や休職に追い込まれ、さらに応答率が低下する悪循環に陥る恐れもあるでしょう。オペレーターだけでは対応しきれず、管理者がたびたび対応せざるを得ない状況になります。
コールセンターの応答率が下がる原因とは?
続いて、コールセンターの応答率が下がる原因について見ていきます。
オペレーターの不足
対応可能なオペレーターが不足している場合、応答率は低下します。入電数に対してコールセンターが確保したオペレーターの数が少なく、必要な入電に応対できない状況です。オペレーターの数は十分でも、休憩中など離席を理由に対応できなければ応答率は低下します。また、応答内容の記録を残すといった後処理に追われている場合も、電話をとることができません。
オペレーター不足もさまざまな要因があるため、単にオペレーターの数を増やすだけでなく、管理方法やワークフロー、業務効率に問題がないかなどを検証することも必要です。
1件あたりの対応時間が長い
1件あたりの対応時間が長くなると、十分な人員であっても応答率は低下します。対応時間が長くなる原因は、オペレーターのスキルや知識の不足、トークスクリプトの冗長化、マニュアルの不足などが考えられます。
ベテランのオペレーターをそろえることが理想ですが、なかなか難しいです。新人オペレーターでも、必要なスキルや知識を身につけられるように研修を充実させたり、ナレッジの蓄積や共有がしやすい環境構築などによって、ベテランオペレーターと遜色ないような対応をめざしていきましょう。
過剰な入電数
平常時は高い応答率を保っていても、新商品の発売やイベントCM、トラブルの報道などの影響で、コールセンターへの問い合わせが急増した場合は、応答率が大きく低下します。例えば金融業界を挙げると、会員の口座への不正アクセスについて発表した際に、問い合わせの電話が急増するといった状況です。
新商品発表など事前に予測できる場合は、入電の増加率を見越したオペレーターの配置にすることで対策できます。緊急事態で入電数が急増し、オペレーターの増員が難しい場合は、ホームページやSNSなどを使い、多く寄せられる問い合わせへの回答や、電話がつながりにくい状況であることを説明するといった対策を、平常時から検討しておくと良いでしょう。
事務処理に時間がかかっている
電話応答後のデータ入力や更新などの事務処理が膨大・煩雑であることが原因で、次の電話への対応が遅れ、応答率が低下するといったことも考えられます。オペレーターのパソコンスキルが不足していることから、事務処理に時間がかかっているケースもあります。適切なフォーマットやオートメーションツールの導入などで改善が必要です。
例えば、応対内容の書き起こしから要約まで自動化できると、オペレーターが入力しないといけない工程が軽減し、電話対応に費やせる時間が増えます。昨今は生成AIの登場で、書き起こしや要約の自動化といった、オペレーターの後処理を支援するツールの実用化も進んできています。
コールセンターの応答率を上げる方法とは?
次にコールセンターの応答率を上げる方法について考えていきましょう。
オペレーターを増員する
応答率低下の原因がリソース不足にある場合には、オペレーターを増やすことで改善可能です。応答率はコールセンターの「つながりやすさ」を示す指標のため、オペレーターを増員することで応答率は向上します。
一方で、応答率向上の目的でもある顧客満足度の向上は、応答率がすべてではありません。つながりやすいことはもちろん、顧客にとって最も重要なことは困っていることが解決できるかです。
顧客の要望に応えられる会話力、商品やサービスの知識、後処理にかかるスピードなど、オペレーターはさまざまな能力が求められます。ただ人員を増やせばいいというわけではなく、「適切なスキルを持ち、意欲の高いオペレーター」の数を増やすことが重要なのです。曜日や時間別に応答率を算出した上で、適切なオペレーター数を設定することも忘れてはいけません。
オペレーターのスキルアップ
オペレーターのスキル不足は、対応の長時間化を招き、結果として応答率の低下につながります。入社したばかりの新人オペレーターや、新商品・サービスの発売後などにスキル不足による応答率の低下が起こりやすいです。
まずはオペレーター全体の問題なのか、特定のオペレーターによるものなのかを明らかにすることが必要です。多くのオペレーターに共通している課題であれば集合研修やトレーニングの実施、特定のオペレーターのみの課題はOJTやロールプレイングなどで応対スキルを強化していきます。
自己解決を図る導線を作成する
コールセンターの応答率を改善するには、お客さまが自己解決できる導線を作成することも有効です。「消費者の97%は問題解決のために、まずはWebを検索し、78%は公式サイトなどで自己解決を図る。自己解決できない場合、消費者は不満を募らせつつ、最終的にコールセンターや有人チャットなど有人解決に移行する」といった調査結果も出ています。
自己解決を図る導線は、公式サイト上に「ビジュアルIVRを設置し、問い合わせ内容ごとに適した窓口を表示する」「チャットボットやボイスボットでよくある質問や定型的な手続きを自動応答する」「FAQを作成する」といったことが考えられます。
お客さまがWebサイトを開いた際に、最初の入口としてビジュアルIVRを表示することで、「チャットボットやボイスボットの自動対応で解決できるのか」「FAQに書いてあるのか」「電話しないと解決できないことなのか」など、問い合わせ内容に応じて最適な導線へ導いてあげることで、お客さまが疑問を自己解決でき、本当に必要な内容だけがコールセンターへの入電となるため、入電件数を抑えられる、応答率の向上が期待できます。
季節要因や突発的な要因により特定の問い合わせが急増した際に、該当するFAQへのリンクをビジュアルIVRの上部に表示するなど臨機応変な対応ができると、入電数が急増した際にも応答率の維持ができるでしょう。
また、有人チャットも導入することで、画像や動画を用いたやりとりができたり、一人のオペレーターが同時に複数対応も可能になるなど、応答率の向上につながります。
さらに、コールセンターに日々寄せられる問い合わせと対応履歴を元に、生成AIが自動でFAQを作成するといったことも実用化が可能になってきているので、こうしたツールの活用も検討してはいかがでしょうか。
業務フローの見直しと再設計
フローの整理と可視化
従来の有人オペレーターによる電話応対のフローでは、基本的に入電1回で、顧客が望む問い合わせや手続きを、最後まで一貫して対応することが多いでしょう。
再び金融機関を例に挙げると、「本人確認」「利用状況確認(口座引き落とし完了状況)」「住所変更利用額変更」「カードの追加発行」「システム照合」「退会手続き」など、オペレーターが最後まで一貫して対応するコンタクトリーズンは数多くあります。
例えば、銀行やクレジットカードでの紛失盗難の電話対応窓口の場合、①入電からのオープニングトーク、②本人確認、③紛失カードの特定に始まり、⑩カード再発行時の注意事項、⑪住所変更の有無確認、⑫問い合わせ手続き完了に際してのクロージングトーク と終わりに至るまで実に多くのステップを踏んでいる事が分かります。
この結果「通話時間が長くオペレーターが占有されやすい」状態となり、このことが応答率低下につながる課題となっている場合があります。
有人対応・無人対応の役割分担と連携
応答率の向上(あるいは維持)、さらにその先にある「つながりやすさの向上」によってCX(顧客体験)を改善させる新たなヒントとして、ボイスボットによる自動応答の活用と、ボイス領域の基幹インフラとしてのPBX(構内交換機)連携による解決策に注目が集まっています。
「通話時間が長くオペレーターが占有されやすい状態」を、ボイスボットによる無人対応と有人オペレーターが役割分担と連携をいかにできるか再設計していきます。
下記に銀行やクレジットカードでの紛失盗難の電話対応窓口の顧客対応フローを示します。
①~⑫の顧客対応フローを「ボイスボットが対応する範囲」とその後のスムーズなPBX連携を伴って「有人オペレーターが対応する範囲」に分解してみましょう。
すると、①入電からのオープニングトーク、②本人確認、③紛失カードの特定フローまでは少なくとも定型的な設問として、人ではなくボイスボットが前もってヒアリングできることが分かります。
ただし、ボイスボットのみの対応ではCX(顧客体験)が十分に満たされない可能性もあり、ボイス対応の基盤となっているPBXに連携して、人による対応が必要なフェーズはきっちり補う必要があります。
ボイスボットで事前ヒアリングされた対応履歴をオペレーター側に引継いで有人対応に活かすため、PBX連携によるオペレーターへのエスカレーションを行います。オペレーターは上の図の④以降の業務フローに集中できるだけでなく、顧客側も待たされる可能性が減った状態で、従来の有人による丁寧な対応を受けることができるでしょう。
あるいは下の図のようにボイスボットと業務の設計次第では、自動対応でヒアリングする範囲をさらに拡張することも出来るかもしれません。特に、問い合わせフローの中で、複雑な問い合わせやイレギュラー的な問い合わせに対応する必要がある時には有人オペレーターが力を発揮しますので、スムーズに連携できることがポイントです。最終的には有人オペレーターによる対応によって終話することで、顧客体験(CX)につなげることもメリットとしてあります。
まとめ
応答率は、目標値を追うだけでなく低下する原因を分析し、対策を講じることが必要です。オペレーターの増員やスキルアップはもちろん、チャットボットやFAQなど自己解決を図る導線の作成や業務フローの見直しと再設計などできることは多々あります。
業務フローの見直しと再設計として、ボイスボットとPBXの連携について紹介しました。ボイスボットによる自動対応とオペレーターによる有人対応の役割分担と連携は、応答率の改善とその先にあるCX向上へ効果的です。
ボイスボットを活用するコールセンターは増えています。ボイスボットを検討する際は、搭載されている機能や使いやすさ、PBX連携ができるか、といった点も含めて比較することをおすすめします。
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AIボイスボット「MOBI VOICE」製品紹介ページ
AIボイスボット「MOBI VOICE」の特長や機能をご紹介している製品紹介ページは以下URLからご覧いただけます。
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